- 続・怪物を作りたいんですが
34 :「赤い鳥とんだ」[sage]:2010/10/13(水) 22:57:49 ID:FDiS+5fy - 「娘の、恵美の通う幼稚園から電話があったのは正午少し前ごろです。
とるものもとりあえず、私は幼稚園に駆けつけました。」 『あの、ご連絡いただいたんですが、娘になにか?!』 『ああ、恵美ちゃんのお母さんですね。どうぞこちらに…』 「担任の先生に案内された部屋で、娘は疲れ切ったように眠っていました」 『二三分まえに、やっと落ち着いたところです』 『あの、いったい何があったのでしょうか?』 『それが…クラス全員で絵を描いていたんですが、突然に……』 「…突然悲鳴を上げたかと思うと、椅子から転げ落ちたのだそうです。 床を転げまわりながら目の前で両手を闇雲にふり回して……何か目の前にある物を遠くに押し退けようとするような仕草だったと、先生はそうおっしゃいました」 『恵美ちゃんのバニックが他の子にも伝染して、たちまちクラス全体がパニック状態になってしまいまして。それでこの部屋に恵美ちゃんを……言葉は悪いですが『隔離』したんですが…』 「私が来る少しまえ、パニック状態は始まった時と同じく、前ぶれもなしに突然治まったのだそうです。そして急に…」 『一緒にもって来てあったクレヨンと画用紙を掴むと、急に絵を描き始めたんです』 『恵美が?絵を??』 『はい、なんだか怖いくらいに一心不乱に。赤いクレヨンを掴んで絵を』 「そして先生は、娘の横にあった一冊のスケッチブックを取り上げると、私に向かって開いて見せたんです。それが……」 そう言って三枝未希は、クリアファイルの中から二つ折された一枚の画用紙をとりだした。 「それがこの絵なんです」 未希が「絵」だと言わなければ、その場にいた誰もがそれを「絵」とは思わなかったに違いない。 真っ赤なクレヨンが、幼い子供の必死の力で、画用紙いっぱいに塗りたくられていた。 何重にも円を描いてグルグルと。
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