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硬質 ◆BfO3GzMb/w
ヒューマン・バトロイド ◆BfO3GzMb/w
ロボット物SS総合スレ 41号機

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ロボット物SS総合スレ 41号機
424 :硬質 ◆BfO3GzMb/w [sage]:2010/10/11(月) 03:47:29 ID:8mRkon4U
投下乙です。
師匠の描いたメルフィーを見てみなぎり、続きをこんな時間に書き上げてしまいましたw
という訳で、HBの8話投下します。
ロボット物SS総合スレ 41号機
425 :ヒューマン・バトロイド ◆BfO3GzMb/w [sage]:2010/10/11(月) 03:50:11 ID:8mRkon4U
昔の夢を見た。義父が私のことを引き取ったときの夢だ。
孤児院の一室で里親を待たされていた。
どんな人が来るのだろう、そんな緊張が幼い私を包んでいた。
現れたのは厳格な雰囲気の男性だった。
こんな怖い感じの人に引き取られるのかと、少し表情を強張らせた。
その男性はその様子を見て優しく笑い、その手で私の頭を撫でた。
その感触は荒々しかったけど、とても温かかった。
義父に引き取られてから、私は家族の温かさを知った。
義兄も私に優しく接してくれた。
とてもうれしかったのだ。
孤児であった自分が知る筈もない家族のぬくもりを知れたのだから。


「え、艦長がどんな人か?俺達に聞くより副長に聞いた方が早いぞ」
「それでも聞きたいんです。皆さんから見た艦長が」
リクはクルーの一人一人に艦長の事を聞いて回っていた。
今、目の前にはジョージとウィンスがいた。
「艦長は第三次大戦時の私の部下だ。すぐに追いぬかれたがな」
「俺達のいた部隊に配属された新人の一人だよ」
二人は記憶を掘り返しながら話始めた。
「試作されただけの欠陥機、つまり金若王(トップガン)なんだが、それに成り行きで乗り込んだ事で軍に入ったんだ」
「すぐには軍には馴染めなかったが、そのうち仲間を守りたいと強く思ったらしく、そこからは迷いが無くなった」
「お二人は艦長とはどういう関わりをしたんですか?」
リクの質問には自分が行った事がどういう意味があるのかを知るための行為だった。
「さっきも言ったが、部下だ。新兵の部隊を率いていた私の部隊の新人だった。彼に戦い方、生き残る術を教えたのは私だったからな」
「俺はこいつの部隊の整備士だったんだ。訓練生時代からの友人だったから整備士としてついていって、殆ど最初期から金若王の整備やってた
し」
「あの人は恐ろしいほどの成長ですぐに私を追い抜いた。そして最終決戦時は大隊の隊長になっていた。戦後は艦を任されてすぐに私達に声を
かけて、今に至る」
二人に頭を下げてラウルにも聞く。
「俺?俺は若いせいで周りから色々されてたんだよ。そこを艦長に引き抜かれた感じだよ」
「色々って、何が?」
「あー、あれだ。いじめとか、そんなの」
「あ……悪い……」
ラウルにもつらい話があったらしい。
「いいって、艦長に引き抜かれてからはよくしてもらったし」
苦笑いしながら手を振るラウル。
リクは礼を言ってその場を離れた。


私は義父さんと義兄さんがやっていた訓練に参加したいとすぐに駄々をこねた。
二人は苦笑いしながら少しずつ稽古をつけてくれた。
私はすぐに頭角を現して、強くなった。
上手く出来るたびに義父さんも義兄さんも笑って私を褒めた。
強くなるたびに、褒めてくれた。
いつからか、私は褒めてもらうために強くなった。
そしていつの間にかエースと呼ばれた。


「艦長との話?」
「なぜ俺等に聞くんだ?」
「皆さんから見た艦長がどんな人か気になったんです」
リリとゴースはなつかしそうな眼をした。
「オレはさ、親に無理矢理軍に入れられたんだよ。見ての通り手の着け様の無いじゃじゃ馬だったからな。それで入ってすぐに上官を殴っちゃ
ってな。そこを拾われた」
罰の悪そうに笑うリリ。
「俺は上官に嫌われてたからな〜。気にいらない上官にはささっと近づいて耳打ち、それで大抵の上官は黙ったもんだ。だけどそのせいで体の
いい左遷されたんだよ。大佐の所から准将の所だから文句も言えないしな。そんでここにきて、あの人に色々世話になったんだ」
「なるほど……カルラさんは?」
「私はあの人の同期ですよ。多分一番そばであの人の活躍を見ていましたね」
ロボット物SS総合スレ 41号機
426 :ヒューマン・バトロイド ◆BfO3GzMb/w [sage]:2010/10/11(月) 03:51:20 ID:8mRkon4U
カルラは誇らしげに語る。
「あの人に憧れて、その背を守りたいと思って、強くなって、支えられる位置に来たんです。私にとっての目標で、光でした」
「……僕は……」
「自分を責めないでください。誰も貴方を責めていません」
リクの暗い顔にカルラはごく自然に言った。
ちなみに、その時ブリッジの端では――
「リリちゃん、リク落ち込んでるぞ?」
「そうだな。やっぱり艦長を自分の手で殺しちゃった事は堪えたみたいだな」
「励まさないでいいのか?チャンスだぞ?乙女は細かく距離を詰め(がすっ)…………」
カルラとリクはそれを見た瞬間、顔を引き攣らせた。
「い、一撃……」
「黙ってろ!(がすっ)この!(どごっ)余計なお世話なんだ!(めきょっ)よ!!(ぐしゃ☆)」
「まじ……やめ…が………」
かっくり逝ったゴースを見てシエルは思った。
ここは本当に軍隊か?と。


義父さんは前大戦時からのエースだった。
とても強く、その強さは軍に入ってしばらくして望まない形で知ってしまった。
私の陰口の中にあった一言、たまたま聞いてしまった一言。
父親のコネで軍に入った小娘。
私はそう言われていたらしい。
私はちゃんと軍の試験を受けて、訓練を経て軍に入った。だが、私はとても傷ついた。
義父さんがそんな事をするように、私の所為で思われてしまった。
私は少しだけ落ち込んで、すぐに思い立った。
なら、そう思われない程の力を見せつければいいんだ、と。
それから色々な戦場に志願した。大量の敵を撃墜して、生き残って、突き進んだ。
すぐに私はエースと呼ばれるようになった。


「ともかく、貴方は落ち込む必要はないんです。そんな顔してるとこっちまで落ち込んできます」
「そう……でしょうか………」
カルラの励ましも、リクの心を軽くは出来ない。
背負う事など、出来ないかもしれないのに。
「そうそう、落ち込む必要無いって。あの人はやりたい事やって死んだんだから」
あっさり復活したゴースもそう言う。
「やりたい事、ですか?」
「艦長はさ、仲間を守りたかったんだよ」
「仲間を……守る……」
リリが言った言葉をかみしめる。
多分、ハーミストにとっての仲間、それは自分にとっての復讐と同じくらい彼の心を占めていたんだと思う。
それはこの艦のクルーの話から想像できた。
「なぜ艦長は、そこまで仲間に拘っていたんですか?」
人に与えた印象、誰もが仲間を守るために戦う人だという印象が感じ取れた。
「あの人は守れなかったんです。仲間を守れず、だからこそ失いたくないと強くなった」
その言葉は、自分と違った。
同じ様に心を大きく占めるような事に、なぜ我を失わずにいられるのだろうと、そう思った。
「貴方はどうですか?」
「え?」
「貴方は艦長をどう思いましたか?」
カルラの質問に答える為、ハーミストの印象を思い出す。その中で一番しっくりきたものを口に出す。
「強い人、ですかね」
「強い、ですか」
「ええ、僕はあの人に勝てると思った事は一度もありませんでした」
ゴースは目を丸くする。
「おいおい、珍しいな。俺はてっきりお前は負けず嫌いでプライド高い奴だと思ってたのに」
「僕だって無謀な戦いをしようと思いませんよ。それに……」
「それに?」
ロボット物SS総合スレ 41号機
427 :ヒューマン・バトロイド ◆BfO3GzMb/w [sage]:2010/10/11(月) 03:52:45 ID:8mRkon4U
リクは今回の質問で感じた事を言う。
「意思が、強いです。僕にあえて……いや、なんでもありません」
「?」
あえて、僕みたいな奴に人を殺させようなんて、もし僕が死ぬ直前に同じ場面に会っても思わない。


ミキは、目を覚ます。
目に入ってきたのは見慣れない白い天井。
独特の匂いからここが医務室である事を理解する。
「そうか、私は……」
薄れゆく景色の中で、Typeαに引っ張られる光景、恐らく敵艦に捕虜と言う形になっているのではないか?
「そうか……もう……」
視界が滲む。義父と義兄が落ちていく姿がフラッシュバックする。
「私に、戦う理由は……」
「あ、目が覚めましたか?」
部屋に入ってきたのは見慣れない男。
歳は自分と同じぐらい、顔つきは東洋人らしい。
その顔には柔和な笑みが浮かんでいるが、目だけは違う。その目がミキに緊張感を取り戻させる。
「こんにちわ、黒揚羽(ブラックバタフライ)」
「お前は何者?」
「始めましてではないんですが……どうも、白い魔弾(ホワイトブレット)です」
目を見開く。目の前の男が白い魔弾、自分を軽々と撃ち負かした男。
そんな因縁がある相手がなぜ目の前に現れるのか。ミキには分からなかった。
「本物?」
「なぜ偽物を立てる必要があるんですか?」
しばらく睨みつけていたが、すぐに警戒を解くミキ。
「そんな事はどうでもよかったわね。なぜ私が生きているの?」
「助けたからですよ。僕が」
目を見開く。
「なぜ助けたの?」
「人を殺したくないからですよ」
苦笑いするリク。
「あ、それと貴女はただのテストパイロットという事になっています。黒揚羽では無いので、そのようにお願いします」
「それこそ、なぜ?私は捕虜でしょう?それなのに、どうしてそんなの……」
「ここの艦長の意向に従ったまでですよ。捕虜にも自由に与えて、望むのなら仲間にもする。僕にはまねできないですよ」
「でも、この艦の艦長って……」
爆炎の中心、金若王のパイロット。ハーミスト・レイン。
彼がこの艦の艦長の筈だ。
「ええ、死にました」
「そう……ならなぜ?」
「僕にはあの人の意思を継ぐ義務があります」
「なら、一ついい?私の願い」
ミキは俯いて呟く。
「私を……殺して……」


「ふむ、これ結構違うな……」
ラウルはグラビレイトTypeβの細部を調べてそう判断する。
「なら強化にはあれを……端末端末っと、どこ置いたっけ?」
ラウルはその場を離れる。
『お久しぶりです、イザナギ』
『……お久しぶりですね、イザナミ』
同タイプのイザナミとイザナギ。
しかし、今二人には決定的な違いがある。
『少し落ち込んでいますか?』
『私の所為でマスターを傷つけてしまったんです。私はどうしたらいいんでしょうか?』
イザナギが言っている事は情報過多でミキの意識を奪ってしまった事だ。
『貴方は反省していますか?』
ロボット物SS総合スレ 41号機
428 :ヒューマン・バトロイド ◆BfO3GzMb/w [sage]:2010/10/11(月) 03:53:55 ID:8mRkon4U
『もちろんです』
『ならば、もうそんな事が起きない様に対策を立てるべきです。マスターが望む事をくみ取り、そしてそのように自信を変えていく事が大切で
す。少なくとも私はそうしています』
イザナミは言い切った。今のイザナミはリクの望む事が少しずつ理解できるようになっていた。
彼が望んでいる事も、自分がどうあるべきかも。
『……イザナミ、頼みがあります』
だからこそ、目の前の変わろうとする同類にも精いっぱい力を貸そうと思う。
イザナミは、既にAIの枠を越えた成長をしていた。
「なに話してんの?」
ラウルの質問にイザナミは答える。
『手のかかるマスターへの愚痴ですよ』
「ぷっ!?」
噴き出すラウル。
「随分と人らしいね。それも成長の一環かな?」
『だといいですね。口だけ達者になっても仕方ありませんから。その後ろのやつは?』
イザナミが言った物。それを見てラウルは口の端を釣り上げる。
「その手のかかるマスターの要望だよ。許可はとってあるけど、組み込むには時間がかかるね」
そこには、二つの装置と一つの武器が鎮座している。


「ここが貴女の部屋になります。何か不便があったら呼んでください」
リクは回復したミキを彼女に割り当てられた部屋に案内した。
「なぜ、私を殺さないの?」
ミキの殺してという呟きを、リクはあえて無視していた。
「……むしろなぜ死のうとするのかが分かりませんよ。なぜです?」
「私には、生きる理由がもう無いからよ。戦う目的も、大事な家族も一緒に失ってしまったの」
「もしかしてその家族って……」
リクの顔が強張る。
「道化死(クレイジーピエロ)よ。私の義父なの」
「……すいません」
「謝る必要はないわ。戦場にいれば誰だって人を殺すもの。でもね……」
一瞬でミキの手刀がリクの首筋を狙う。
「許せるかどうかは、別なの!」
しかし、それをリクは逸らしてミキの足を払う。
派手に転倒しそうになるミキを、腰かけるような格好になるようにそっと押す。
「……ふざけてるの?私を殺すか、お前を殺すか。どっちかしかないの!」
「僕は死にたくない。それに殺す気もない」
「ふざけないで!そんな子供みたいな話が通ると思ってるの!?」
「通すために僕は戦っていた。でも、そろそろ限界も感じてはいますよ。僕だって馬鹿じゃない」
「なら!」
リクの顔には悲痛な色が浮かんでいる。
ミキはそれを睨みつけるが、その顔は今にも泣きだしそうな顔だ。
「……貴女はだめです。貴女は生きる目的を見失って、自暴自棄になっているにすぎない。また見つければ何とかなりますよ」
「そんな事、出来る訳ないじゃない……私の一生を懸けて築き上げてきた物を、そう簡単に作り直せる訳ないじゃない!!」
「なら、そのために生きてみてはどうですか?生きる目標を持って、そのために何かをなすのなら僕は犠牲になります。でも無為にその場の感
情だけで動くのなら、僕は全力で止めます」
リクの言葉に目を見開いて、そして俯くミキ。
「どうすればいいっていうのよ……こんな私に、戦いしか知らない私に……」
「なら戦ってみてはどうですか?向こうに戻るなら手助けはしますし、同盟が嫌ならここの人たちなら受け入れてくれますよ」
リクは微笑んでそう言い、静かに部屋を出ていこうとする。
「待ちなさい」
「なんですか?」
「あなたは、何で戦っているの?」
それは、理由を見つけるためのミキの一歩。しかしそれは、重い一歩だった。
「……いきなり僕に聞きますか……」
「離せない訳無いわよね?私にも言わせたんだから」
苦笑しながらリクはミキの隣に腰掛ける。
「復讐です」
ロボット物SS総合スレ 41号機
429 :ヒューマン・バトロイド ◆BfO3GzMb/w [sage]:2010/10/11(月) 03:55:30 ID:8mRkon4U
「え?」
「戦う理由。ある男、いや、キセノ・アサギに復讐する事が僕の生きる理由です」
ミキは驚愕する。
今、生きる理由を失う喪失感を知ったミキにはそれの辛さが分かる。
崖に向かって歩いて行っている様なものだ。自分なら絶対出来ない事を目の前の男はいとも簡単にやってのけている。
「それは……危険で、虚しい事じゃない?」
「少し前にも、人にいわれました」
「なら、いや、理屈じゃないのよね?」
「そう、ですね。理屈じゃなく、心が叫んでるんです。殺せって。奪い取られた借りは叩き返せって」
ミキは、目の前の男に勝てなかった理由を知った。
常に死を覚悟した生き方は、強さを生むだろう。
だがミキは同時に新たな疑問も持った。
「じゃあ、何で人を殺さない戦い方を?」
「…………」
リクは黙りこくる。しばしの躊躇の後、ゆっくりと口を開く。
「貴女は自分の手で大事な人、家族でも親友でも、殺した事がありますか?」
「……ないわ」
その声色は、色々な感情を孕んでいた。
怒り、悲しみ、苦痛、恨み、そして――
「俺はあります。親友を、同じ里親の所に引き取られた家族を、この手で殺しました。あっさりと」
狂気。
「そういう時って、どんな感情になると思います?どんな表情をすると思います?」
クーリを殺した時の感情を思い出す。
「悲しいと思うし、泣くと思う」
ミキは、リクの内面を見た。それは他人がずけずけと入っていいものではない物だと、今更気付いた。
「俺は、笑っていました」
覗けば、恐ろしいものを見てしまう事に、今更気付いた。
親しい者が、狂気を知っても受け入れられるほどに信頼した者こそが、見るべき物を見てしまった。
「涙を流しながら、俺は愉しくて笑っていたんです」
「そ、れって……」
「狂ってるんです。俺は、完成孤児(パーフェクトアーミー)だから」
完成孤児、その言葉にミキは更なる驚きを覚えた。
それは確かでない話。
しかし、その実物が目の前にいる。
「日本で造られた最終訓練型強化孤児。人を越えた者を生みだす実験。そんな中で俺は体の隅から隅までいじくられたんです。俺はこの艦では年齢を偽っています。ばれない様に、狂っていると、気付かれない様に」
「そんな……そんなの……」
「嘘だと思いますか?なら語ってあげましょうか?第三次世界大戦の最終決戦の様子を。俺はあそこで戦っていたんですよ?」
そう、リクは戦っていた。たった五歳のころに。
「そのせいで、殺す事に何も覚えない。それどころか愉しみを覚えるんです。俺は」
暗い、あまりに暗いその独白は、ミキの体を震えさせるには充分だった。
「だから殺さない」
「……そう」
「俺は、キセノを殺すまで、その目標を見失わない為に殺さない」
「あなたは……そんな理由で……」
そう、リクが人を殺さないのは、人が死ぬのが嫌なのではない。ただ、どこまでいっても、リクは自分の為にしか行動しない。
「でもね、それも限界なんです。殺してしまったから。その結果、人を巻き込んでしまったから」
リクの攻撃が起こした状況。それは最低限以上の人を殺した。
爆風に煽られて何人もの同盟軍のHBが海に落ちて行った。
「とても、愉しかったんです。どうしようもないほどに」
「ひっ……?」
一瞬、喉が引き攣る様な音を出したミキだが、リクの顔を見てすぐに疑問に塗りつぶされた。
「あなたは、なんで泣いているの?」
「その時は愉しかった。でもですね、後から、貴女が目覚めるまでの間に、艦長の話をこの艦のクルーから聞いて回っていたんです。そしたら
……とても、辛くなりました」
それは、リクにとっての成長。人の死を理解した結果の涙だった。
「艦長は、この艦のクルーの中では、恩人であったそうです。色々な所で、人を救って、引き寄せて、守っていたそうです。その恩人の為に皆
は戦っているんです」
ロボット物SS総合スレ 41号機
430 :ヒューマン・バトロイド ◆BfO3GzMb/w [sage]:2010/10/11(月) 03:57:04 ID:8mRkon4U
「………」
「艦長の死は、皆にとって生きる理由を失う事と同義なんです。人の死は、誰かの生きる理由を奪う物なんです」
当たり前の事だろう。だが、リクには理解できていなかった。だから殺す相手に何も感じなかった。
「ずれているんでしょうね、俺の感性は。でもその方が分かりやすかった。俺が復讐を失う事を考えたら、人を殺す事が辛くなりました」
「あなたはどうするつもりなの?」
そこまで辛いのなら、戦場に立つ事は無くなるのではないか?
ミキはそう思っていた。
「戦います。そして殺します」
「何で!?」
「当たり前でしょう?人を殺す事で、我を失う危険性はもう無いんです。だから、殺します。戦います。そして、その死を背負います。仲間の
理由を守るために、仲間にとって一番大切な絆を守るために。何より僕自身の理由をまっとうするために」
リクが感じた事。もう一つはこの艦の絆だった。
ハーミストが築いた絆は、クルーにとっての生きる理由になっている。
その理由を守る事が、リクにとっての―――
「それが、僕の罪滅ぼしです」
「でも、あなたはそれでいいの?復讐に行くまで、あなたはボロボロになり続けるんでしょ?それでも……理由を一つに絞る気?」
「……それも言われました」
リリに言われた事を思い出す。
「生きる目標を持て。それに向き合うために敵討ちをしろ、って」
「心配してくれているんでしょ?なら――」
「無理ですよ。僕は、いや俺は、一度その言葉から逃げたんだ。酔った振りをして、忘れたふりをして、目をそむけたんだ。それなのに、今更
すがりつけませんよ。それにね……」
リクは自嘲気味に笑う。
「完成孤児はね、細胞までいじくるんですよ。それって、どういう意味か、分かりますよね?」
ミキは呆然とする。声にならないモノが、喉を通りぬける。あまりにも残酷な現実。それが目の前の男を襲っている事に気付いた。
「寿命、短いんですよ。人の半分くらいですかね?せいぜい生きて40年。だから……」
部屋から出ていこうとしながらリクは言う。その声は―――
「目標に意味がない。キセノを殺して、そしたらもう、時間が無いんです。取り戻せないんです……」
泣いていた。
絆が欲しい、仲間が欲しい。そう思った事もある。
だが、それは自分の周りを傷つける事に他ならない。
リクは、人には何も見せずに、泣いていた。
ロボット物SS総合スレ 41号機
431 :ヒューマン・バトロイド ◆BfO3GzMb/w [sage]:2010/10/11(月) 04:01:01 ID:8mRkon4U
以上で8話終了です。
リクの過去と変化で終了です。
この7話、8話、9話辺りがやりたくてHBは書き始めたんで書いてて楽しいです。話は暗いけど。
ロボット物SS総合スレ 41号機
454 :硬質 ◆BfO3GzMb/w [sage]:2010/10/11(月) 11:22:45 ID:8mRkon4U
徹夜のテンションでお送りします。
>>434
自分でも速いと思いますw
少しペースダウンしますかね(9話を書きながら)

>>445
確かに種っぽいのは自覚してました。
ですがリクはここから凄い事やらかしますから、ひょっとしたら更にぽくなるかもしれません。
>不謹慎
大丈夫です、俺が一番楽しんでますw

>>449
投下乙です!

AI組はここから人らしくなります。
ちなみにイザナミはいたずら好きのお姉さんキャラ、イザナギは完璧執事キャラになる予定。
イザナミははっちゃけますよ〜。
>日本神話をからめたエピソード
微妙、ですかね。
ただAI同士の関係性はちなんでます。
>リクの過去
実は明るい話が好きなのに、いつの間にかこんな事に・・・
だけど一つ気付いたことが・・・


ダークヒーローは書いてて楽しいww


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