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創る名無しに見る名無し
星新一っぽいショートショートを作るスレ3

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星新一っぽいショートショートを作るスレ3
102 :創る名無しに見る名無し[sage]:2010/10/10(日) 18:20:20 ID:Dg8FyhgB
【キノイさん】

「おい!今日、探検に行かないか?」
授業が終わった途端、いきなりS君から声を掛けられた。
「面白いところがあるんだぜ!」
僕はこの小学校に転校してまだ3ヶ月。初めてできた友達がS君だ。
彼は毎日のように僕をこの町の『名所』に連れて行ってくれる。
駄菓子屋はもとより、用水路のザリガニ釣りや裏山の秘密基地まで。
都会から来た僕にはすべてが新鮮だった。
「どんなところ?」
「うーん、まだちょっとお前には無理かなー」
S君は何かにつけ大人ぶった言い回しをする。
「言っとくけど、僕のほうが誕生日が早いんだからね!」
「へへっ!お前、お化けとか大丈夫か?」
「へ…平気さ!」(平気じゃない!まったく平気じゃない!)
「ほんとかなー?」
「ああ本当さ!」(嘘ですごめんなさい)
「じゃあ俺が地図を書いてやる。今日はお前一人で行って来いよ」
「ええー?」
「怖いんだ」
「怖かないさ!」(一緒に行ってくれよー)
「決まり!」

S君は国語のノートを破って鉛筆で意気揚々と地図を描きはじめた。
「ここを曲がってこう行くと右手に石の階段がある。こいつを上ると、古い寺があるんだ。
 階段は108段、一気に上れば大したことはない」
「ちょっと疲れそうだな。もう少し体を鍛えてからの方が…」
「寺の境内に入ると、本堂がある。でもここじゃない」
S君は容赦なかった。
「本堂の裏に廻る。ここに渡り廊下があって、その下をくぐるんだ」
下手だけどやたら詳しい地図が出来上がる。
「ここに小さなお堂がある。これだ!ロウソクが並んでるからすぐ分かるぜ」
「そのお堂がこわ…面白いの?」
「そうさ、自分で確かめて来いよ。よし、こうしよう!そこでお前は『キノイさんこんにちは』って
 声を掛けて、ロウソクを1本持って帰ってくるんだ!」
「『キノイさん』?」
「ああ、みんなそう呼んでる」
「その人に『こんにちは』って言うだけ?怒らないかな」
「大丈夫さ、それと、明るいうちに行った方がいい。でないとお堂の中が真っ暗になって
 何にも見えないぞ。ロウソクを持ってくるの忘れるなよ、証拠だからな!」
S君は命令口調でそう言うと、僕に地図を押し付け、笑いながら帰っていった。
星新一っぽいショートショートを作るスレ3
103 :創る名無しに見る名無し[sage]:2010/10/10(日) 18:27:31 ID:Dg8FyhgB
>>102つづき

僕が家に帰ったのは3時ごろだった。しばらくの間地図とにらめっこ。どうしたものか…。
行かなきゃ弱虫決定だ。僕は二度とそうなりたくなかった…思い出したくもない。
お父さんとお母さんは、ここへ引っ越したために2時間もかけて仕事場に行っている。
またここでいじめられるようなことがあったら…。
僕は決心した。外はまだ明るい。今ならきっと大丈夫だ。
さっそくS君作の地図と、念の為懐中電灯を持ち家を出る。
隣町との境にあるお寺まで自転車を走らせる。歩いて行けば結構時間がかかる距離だ。
ようやく到着したそのお寺の階段の前で、僕はちょっと立ちすくんでしまった。
108段あると言うその階段は、上に行くほど霞んで薄暗くなっている。
あまり上を見ないように1段1段ゆっくりと上って行く。
『30…50…80…100…』あと8段のところで顔を上げると、すぐ目の前が本堂だった。
『108っ!』うっそうとした木に囲まれた境内はそんなに広くない。
S君作の地図を見返してみる。本堂の右に向かうように矢印が描いてある。
この先の渡り廊下の下をくぐるんだっけ。
渡り廊下は結構高いところにあって、しゃがまずにくぐることができた。
本堂の裏に廻るといっそう薄暗くなり、持って来た懐中電灯が役に立った。
S君の言っていた小さなお堂が見える…抑えていた恐怖心がじわじわ湧いてくる。
そろそろと近づいて行くと、お堂の前にロウソクの明かりがちらちらと揺らめいているのが見える。
こんな所へ一人で来るなんて、僕は弱虫じゃなくなったんだろうか?いや別に何も変っちゃいない。
もしかしたら今まで、あいつらの…いじめっ子達の暗示にかかっていたのかも知れない。
そう思うと、先ほど湧き出した恐怖心がすうっと引いて行く。

ついにお堂の前にやって来た。そうだ、まずは声を掛けるんだ。
「キノイさん…こんにちは」(ちょっと声が震えた)
「はい、こんにちは」
「わっ!」
まさかお堂の中から返事があると思っていなかったので、びっくりして尻餅をついてしまった。
懐中電灯もどこかへ吹っ飛んでしまった。
「キ…キノイさん?」
「まあそう呼んでくださるお方もおいでじゃのう」
話し方がやさしく、なんとなく僕のおじいちゃんを思い出した。
「ゆっくりと話をしたいところじゃがもうすぐ夕立が来るでの、今日はまっすぐ帰るがええ」
「あ…え…あの、ロウソクを一本…」
「代りにまた新しいのを持っておいでなされや」
ピカッ!近くではないが稲光が光った。キノイさんの言う通り夕立が来そうだ。
「ありがとうキノイさん」
返事も待たず走り出し、境内を抜け108段の階段を転がるように下り、元来た道を自転車で
全速力で飛ばす。雨は次第に強くなり雷も近づいて来た。
ずぶぬれになりながらもようやく家にたどり着いた途端、ガラガラピシャーン!
稲光と同時に轟音が鳴り響いた。どこかに落ちたみたいだ。
その日は一晩中雨が降り続き止むことはなかった。
星新一っぽいショートショートを作るスレ3
104 :創る名無しに見る名無し[sage]:2010/10/10(日) 18:29:13 ID:Dg8FyhgB
>>103つづき

翌日、学校へ着くと…。
「おい、お前昨日だいじょうぶだったか?」
S君が駆け寄ってきて言った。
「ああ、別に怖くもなんともなかったよ!ロウソクもこの通り」
「違うよ、雷だよ!あのお寺に落ちたんだぜ!知らなかったのかよ!」
町では大騒ぎだったらしいが、新入りの我が家には連絡がなかった。
「それでキノイさんは?無事だったの?」
「ほら、これ」
S君が差し出したのは今朝の新聞記事の切り抜きだった。

『古寺の木乃伊 落雷で消失』

「ええっ!キノイさん死んじゃったの?」
「死ぬわけないじゃん、ミイラだぜ?」
「…ミイラ?」
「『木乃伊』って書いて『ミイラ』って読むんだ。『キノイさん』ってのは俺達がつけたあだ名さ」
S君はミイラになった即身仏の伝承を詳しく話してくれたが、ほとんど覚えていない。
ましてや、キノイさんとの会話など僕の口から話せる状態にはなかった。

放課後、すっかり焼け落ちてしまったあのお堂へ新しいロウソクをお供えに行った。
もちろん僕一人きりで。

終わり
星新一っぽいショートショートを作るスレ3
105 :創る名無しに見る名無し[sage]:2010/10/10(日) 18:55:08 ID:Dg8FyhgB
僕のもちょっと星さんのタッチからはずれちゃったかな?
あんまりオカルトチックなのは無かったもんね。
星新一っぽいショートショートを作るスレ3
107 :創る名無しに見る名無し[sage]:2010/10/10(日) 20:31:59 ID:Dg8FyhgB
>>102-104です

夕立が一晩中降るってのはおかしいな

「夕立は日暮れまで止むことは無かった」ぐらいかな


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