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プリティサミー・懸隔の庭 ◆Qm5TZesUl2
魔女っ子&変身ヒロイン創作スレ6

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魔女っ子&変身ヒロイン創作スレ6
114 :プリティサミー・懸隔の庭 ◆Qm5TZesUl2 []:2010/10/04(月) 20:58:15 ID:gllQwODV


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                       【第六話:月に吠える】

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魔女っ子&変身ヒロイン創作スレ6
115 :プリティサミー・懸隔の庭 ◆Qm5TZesUl2 []:2010/10/04(月) 21:00:36 ID:gllQwODV


「やってやるぜーーー!!!!」

 チュドーン!

 河合銀次の全力パンチの前に、野球賭博女は倒れた。

「やったわね、ジョニー!」
「銀次です、キャサリン。相手が例え何者だろうと、この町の平和と、お相撲さんの未来は僕が守る!」

 銀次は、ダンディに親指を自分の顔にビシッと指す。
 不敵な笑みから漏れた歯が、キラーンとダンディに輝く。

「おすてき、銀ちゃん♪」
「やったねパパ! 明日もホームランだよ!」
「た、助かったよ河合さん、いや最近はスポーツ観戦も物騒になったねえ・・・」
「鷲羽よ」

 駆けよる愛妻と愛娘。
 礼を言う町内会長の井上。
 名前を訂正する鷲羽。

「お〜の〜れ〜! 次回こそ年貢の納め時よん、砂沙美ちゅぁんのパパりん! アイ・シャル・リターン!」
「待ってよ、ミサ!」

 捨て台詞を残してミサは撤退した。
 神速の逃げ足で駆けるミサを、必死に留魅耶が追いかける。
 最早、日常風景になってしまったピクシィ・ミサと河合銀次のバトルが、今日も終わった。

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魔女っ子&変身ヒロイン創作スレ6
116 :プリティサミー・懸隔の庭 ◆Qm5TZesUl2 []:2010/10/04(月) 21:02:48 ID:gllQwODV


 河合砂沙美は正義の魔法少女プリティサミーである!
 しかし、本人には伝えられていない。
 何故なら、もし砂沙美が正義の魔法少女の自覚を持って頑張ってしまうと、脳みそ御花畑の津名魅が神官長になってしまうからだ。

「魎皇鬼、この前、ジェミニの天秤にぶら下って悪の方に傾けようとしましたが、徒労でした♪」
「・・・・・・」
「あ♪ でも、背筋が伸びてちょっと健康になった様な気がします♪ 棚からボタ餅ですね♪」
「大人しく昼寝でもしていて下さい!」

 魔法携帯電話で、津名魅との定期連絡を取っていた魎皇鬼は声を荒げた。

「魎ちゃん? 誰とお話ししているの?」
「さ、砂沙美ちゃん!? つ、津名魅様とだよ! 砂沙美ちゃんと楽しくやっていますって!」

 魎皇鬼はとっさに嘘を付いた。
 目の前の純粋な少女を騙し続けるのは気が重いが、ジュライヘルムの未来の為だった。

「ふ〜ん・・・。それより、エクレアができたよ! バトン出してよ、魎ちゃん!」
「うん、わかった!」

 何も無い空間から魎皇鬼は魔法のバトンを現出させる。
 そのバトンを受け取った砂沙美は、魔法少女プリティサミーに変身する!

「プリティ・ミューテーション・マジカルリコール!」

 光が渦巻き、大変おめでたい衣装とおめでたいバトンを身に付けた魔法少女が現れる。

「えいっ」

 ぽんっ!
 エクレアが二つに増えた。

「どうかな・・・」

 砂沙美は魔法で増やしたエクレアを口に運ぶ。
 ぱくん・・・むしゃむしゃ・・・。

「うん、百点満点♪」
「やったね、砂沙美ちゃん!」

 砂沙美はニッコリと笑顔を魎皇鬼に向け、Vサインを突き出す。
 現在、魔法のバトンはお菓子複製機として河合家で活躍していた。

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魔女っ子&変身ヒロイン創作スレ6
117 :プリティサミー・懸隔の庭 ◆Qm5TZesUl2 []:2010/10/04(月) 21:05:02 ID:gllQwODV


 一方、こちらは魔法の国ジュライヘルム。

「もう嫌だ! 二度と美紗緒をミサに変身させないからね!」
「留〜魅〜耶〜!」

 チュドーーーン!!!!
 爆発音が狭い部屋に響く。
 焔螺爆龍滅覇と呼ばれる厨ニ病的ネーミングセンス全開の、裸魅亜の最強魔法が実の弟に炸裂したのだ。

「・・・・・・ぜ、絶対に嫌だ!」
「こ、このッ!?」

 しかし黒焦げになりながらも留魅耶は、己が意志を曲げなかった。
 愛する少女の為とはいえ、何とも立派なジュライヘルム男児であった。

「大体、河合砂沙美の父親と戦い続けて何になるのさ!? ジェミニの天秤とは何の関係もないじゃないか!!」
「だから、あのダンディ親父を倒せば、プリティサミーが出てくるでしょ!? そんな事もわからないの!!」

 呆れた顔で姉に意見する弟を、姉は更に呆れた顔で諭す。
 しかし留魅耶は納得しなかった。

(あのダンディなオッサン、強すぎるよ・・・!)

 前回の野球賭博女だけでなく、政治献金女、円高女、領土問題女などのラブラブモンスターが次々と倒されていった。
 おかげで砂沙美のご町内の平和だけでなく、極東の島国の未来も明るくなった。

 しかし、どれだけ世の中が良くなってもジェミニの天秤はピクリとも動かない。
 しつこい様だが津名魅と魂を同じくする少女・・・砂沙美は全く活躍していないからだ。
 津名魅はブラーンとジェミニの天秤にぶら下っている。

(ジョニーだけじゃなくって、あのキャサリンとかいうマッドサイエンティストも一緒だし・・・)

 ジョニーこと銀次と、キャサリンこと鷲羽・フィッツジェラルド・小林の完璧超人タッグ。
 人は、二人をブラックエンジェルズと呼んだが本人達は嫌がった。
 ネーミングセンスが厨ニ病的だから。

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118 :プリティサミー・懸隔の庭 ◆Qm5TZesUl2 []:2010/10/04(月) 21:07:17 ID:gllQwODV


「あんな完璧超人コンビをいつまでも相手にしていたら、美紗緒がもたないよ!」
「あっ!? 待てや、コラッ!!」

 留魅耶は鳥に変身して、裸魅亜が作っていた異次元ゲートに飛び込んだ。
 ほとぼりが冷めるまで地球に避難するつもりだった。

(姉さんも、そろそろ頭を冷すべきなんだ!)

 悪しき魔法を使って、地球の少女を悪い魔法少女に無理やり変身させ、神官長の審議を妨害する・・・。
 事が露見したら失脚どころでは済まない重罪だ。
 下手をすれば、永久に魔法の国の牢獄に閉じ込められてしまう程の・・・。

(いい加減にしないと、津名魅様との友情も失っちゃうよ、姉さん・・・)

 心配そうに後ろを振り返る留魅耶だったが、すでに姉の姿は見えず、代わりに眼前に地球の光景が広がっていた。


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 周囲が暗い。
 太陽はとっくに沈んでいる様子だった。
 ジュライヘルムと地球には時差があるので、思った通りの時間帯に訪れる事ができない。

(まいったな、夜か・・・)

 もう美紗緒は眠ってしまっているだろう。
 留魅耶は落胆した。
 最後に美紗緒の顔を一目見て、お別れしたかった。

(つくづくツイてないな、ボクは・・・)

 美紗緒をミサに変身させないのならば、もう地球を訪れる事はない。
 それが分かっていたから、今まで裸魅亜に対して切り出しにくかった。
 しかし、別れが辛くともいつかは決断しなければならない事・・・留魅耶は、そう自分に言い聞かせた。

(せめて最後に、美紗緒の住んでいるマンションだけでも見て置こう・・)

 夜に弱い鳥目を魔法で補助しながら、留魅耶は美紗緒のマンションを目指して飛んだ。

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119 :プリティサミー・懸隔の庭 ◆Qm5TZesUl2 []:2010/10/04(月) 21:11:25 ID:gllQwODV


 夜の十一時。
 美紗緒の部屋には明かりが点いていた。

(アレ? おかしいな・・・)

 マンションの近くまで飛んできた留魅耶は訝しく思った。
 砂沙美との登校を数少ない楽しみとしている美紗緒は、待ち合わせ時間に遅れないよう早寝早起きだ。
 だから、とっくの前に就寝している時間の筈だった。

(・・・様子が変だ? ・・・咳をしている!?)

 カーテン越しに見える美紗緒は、苦しそうに咳き込んでいた。
 華奢な身体が壊れそうに揺れていた。

「キィィィィィィ!」

 留魅耶はそのままベランダに急降下し、嘴で窓を叩く。
 コンコンッと窓ガラスが鳴ると、しばらくしてカーテンがゆるゆると開いた。

「コホッ・・・! と、鳥さん・・・?」

 衰弱しきった美紗緒がびっくりした顔を出す。
 持病の喘息が夜中に起きてしまったらしい。
 目には涙が溜まり、額には汗が滲んでいた。

(美紗緒・・・!)

 声にはならない声で留魅耶が叫ぶ。
 しかし、それはやはり鳥の鳴き声にしかならなかった。

(鳥さん・・・心配して・・・来てくれたの・・・?)

 辛そうに咳をしながらも、美紗緒は笑顔を翠色の鳥に向けた。
 今日もママは帰って来なかった。
 どんなに苦しい思いをしても、朝までは一人ぼっちだと思っていたのに・・・。

 “誰か”が来てくれた。

 それが美紗緒には、本当に嬉しかった。
 かつて、同じように喘息で苦しんでいた時に、砂沙美が手を差し伸べてくれた時の様に・・・。

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120 :プリティサミー・懸隔の庭 ◆Qm5TZesUl2 []:2010/10/04(月) 21:13:40 ID:gllQwODV


(ど、どうしよう!? どうしたらいい!?)

 留魅耶は混乱していた。
 美紗緒が苦しんでいる。
 何とかしなければ、何とかして彼女の苦しみを取り除かないと。

(そ、そうだ・・・!)

 留魅耶の眼から魔法の光が放たれる。
 その光に吸い寄せられるように、美紗緒の意識が失われていく。
 代わりに現われたのは・・・。

 ドッーン!

「ハーロゥ、エーブリバーディ! 全国百兆百億百万とんで百一人のファンの皆様! お待たせぶっこいちゃったわねー!」

 いきなり跳んだ。

「あたーしの名前は、魔法少女ピクシィ・ミがーんッ!!??」

 そして天上に頭をぶつけた。

「アウチ! アウチ! アウチ! アウチ! いってー! 死ぬ! ロリコン・マスト・ダイ!」

 変身したばかりの魔法少女はもんどり打ち、ゴロゴロと床を転げまわる。
 留魅耶の目が点になる。

「だ、大丈夫? ピクシィ・ミガーン?」
「オー! ノー! ミステイク! マイネーム・イズ・ピクシィミサ!」

 軽い既視感。
 留魅耶は、前にもこんな遣り取りがあった気がした。
 天井には二つ穴が開いてるし。

「サンキュー、ルー君! ライフがデンジャラスだったのがリカバリーよん♪」
「う、うん・・・良かったね・・・」

 どうやら留魅耶の狙い通り、ミサに変身した事で喘息は納まったらしい。
 代わりに頭部に巨大なタンコブができていたが。

「じゃ、今からサミー抹殺にレッツビギン!」
「ええ!?」

 真夜中で良い子のお子様はお寝んねしなくてはいけない時間だったが、悪い子ちゃんな魔法少女のミサにはノープロブレムだった。
 夜討ち朝駆けは、悪の魔法少女の華なのだ。

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121 :プリティサミー・懸隔の庭 ◆Qm5TZesUl2 []:2010/10/04(月) 21:17:46 ID:gllQwODV


「プリティ間接固め!!」
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!??」

 砂沙美の私室に忍び込んだミサは、ベッドの上で関節技を極められていた。
 魔法とは何ら関係ない、砂沙美の肉体言語だった。
 大魔法峠よりも数年早い、サブミッション系魔法少女・・・それがプリティサミーだ!

「むにゃむにゃ・・・もう食べられないよ、魎ちゃん・・・」
「マイガッ!? ベタな寝ぼけ方してんじゃないっつーの!!!!」

 砂沙美は寝惚けていた。
 何しろ、夜の十一時といえば、良い子のお子様はお寝んねしなくてはいけない時間だったからだ。
 眠りは砂沙美の筋力に制御という文字を失わせ、身体能力の100パーセントを引き出させる。

「ギブギブギブッ!! マジにジョークにならないってばサミー!! ・・・・・・カクン」

 ミサは落ちた。
 白眼を剥きながら、泡を吹いて。
 ベッドの上で二人の少女が寝息を立てる。
 それは見ようによっては、仲の良い親友同士が寄り添って眠っている様に・・・・・・・・・見える訳がなかった。


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 翌日の放課後、学校を休んだ美紗緒のマンションに、砂沙美はお見舞いに行った。

「美紗緒ちゃん、心配したんだよ。休むのに学校にも連絡が来なくて・・・」
「うん、御免ね、砂沙美ちゃん・・・階段から転んじゃって・・・」

 美紗緒の体中に、ミイラ男の様に包帯が巻かれていた。

「・・・どういう風に階段から落ちたらそうなっちゃうの?」
「ご、ごめんなさい・・・私、運動苦手だから・・・」

 まさか、眼の前の親友に間接を全て極められたとは、夢にも思わない美紗緒であった。
 窓の外では、留魅耶が変身させるんじゃなかったという顔で二人を見ていた。


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 ガクンッ!
 ジュミニの天秤が善の方に傾いた。

 ゴキンッ!
 ぶらさがっていた津名魅の背骨が嫌な音を鳴らした。


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[|[||  To Be Continued....!    >
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122 :プリティサミー・懸隔の庭 ◆Qm5TZesUl2 []:2010/10/04(月) 21:20:06 ID:gllQwODV


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  //           、' レ',fv'" ̄`゙   " ̄`ヾム ヽ V _,.
  /              ̄{.fゝ、 ''"" _'_ ""''' /_ハ | ̄      次回もまうまうだよ!
                   リ   ‐ ._ ` ‐ ´ _,. ′ リ
                  _ (`ヾニニフ' ) _
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