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46 :創る名無しに見る名無し[]:2010/10/03(日) 00:39:43 ID:F8mVzN1F - 近衛志保伝
鬼頭の剣が近衛の白く美しい肌に届くその直前、 全ての動きが止まり、ただ近衛の涙の雫がその頬をながれた。 鬼頭「近衛!大丈夫か!怪我はないか?すまぬ。私が悪かった。 こんなに泣いて、恐かったか?もう大丈夫だ。私がついている」 鬼頭は刀を投げ捨て近衛を力一杯抱き締めた。 近衛は誰も見たことのないくらいの美しく可愛らしい笑顔をつくりながら、今度は 声をあげて泣いた。 近衛がこんなに泣いたのは母が家を出たあの時以来だった。 近衛は鬼頭の剣が恐かったから泣いたのではない。そんなものは避けようとすれば いくらでも出来た。 近衛は、鬼頭に斬られてもかまわないが、マフラーを手渡せなくなることが悲しく て泣いた。 そして今、誰よりも大好きな鬼頭に抱き締められ、心配されていることが嬉しくて 嬉しくて、だから、微笑みながら泣いた。 近衛「志保は恐かったんです、もう千沙様 なんか大嫌いです! 千沙様なんておばかさんです!」 そう言いながら、近衛は、鬼頭の腰にしっかりと手を回し、鬼頭に抱き締められて いる。 鬼頭「近衛、すまぬ。もう大丈夫だ。ほらな、私がついておる。 だからな、恐くないからもう泣くな、なっ」 近衛は、泣き止まない。近衛はずっとこうして鬼頭に甘えたかった。 近衛「じゃあ、私のことずっとずっと守ってくれないと嫌です。 あと、私のことこれから志保って呼ぶんです。」 近衛は甘えた。大好きな鬼頭に抱き締められながら、これ以上ない幸せを感じた。 近衛は、プレゼントの手編みのマフラーを鬼頭の首にそっと巻いた。 その赤いマフラーは鬼頭をよりいっそう美しく映えさせた。 > 近衛はいつものように微笑み、そしてまた、嬉しくなって泣いた > >
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48 :創る名無しに見る名無し[]:2010/10/03(日) 01:05:22 ID:F8mVzN1F - 近衛志保伝
近衛志保は何故いつもニコニコ微笑んでいるのか? 聖星学園学園長の桐島冷子は近衛志保の母である。 いや、母であったと言ったほうが正解かも知れぬ。 かつては、近衛冷子といった。 近衛志保が八歳の頃、物部の乱があり、冷子は越境作戦の参謀として戦いに行った。 作戦が終了し、冷子は家に帰ってきたが、近衛は母がまるで別人のように思えた。 姿形は同じ、だが、中身が違う。 だがそれでも近衛にとって冷子は母であった。たくさん甘えた。 ある日冷子は、近衛に家を出ていくと告げた。物部一族は全滅したが、 物部の首領である物部天獄が生存しているという情報を得、 追討に行くためである。 「これは仕方のないことですから、志保さんは我慢しなければなりません」 と冷子は最後に近衛を抱き締めながら言った。 近衛は泣いた、力一杯泣いた。そんな近衛に冷子は言った。 「志保さん、笑いなさい。どんなに悲しいことがあってもいつも笑ってニコニコして いなさい。 そしたらきっと良いことがあるのです」 近衛は泣きながら不器用に微笑んだ。冷子はなんて可愛い子なんだろう、と想い 別れざるを得ない我が身の不幸を呪った。 物部許すまじ、と冷子は近衛の微笑みに誓った。 近衛はこの時以来、いつもニコニコ微笑んでいる。 微笑みですむのなら、前を向くことができる、近衛志保はそう固く信じている。
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49 :創る名無しに見る名無し[]:2010/10/03(日) 01:43:01 ID:F8mVzN1F - 近衛志保伝
第一次聖星学園紛争後の物語 庭園重大事件を皮きりに学園を二分する近衛派と鬼頭派の抗争が発展し 第1次聖星学園紛争と呼ばれるまでの血を血で洗う戦いとなっていく。 仕掛けたのは近衛派である。 薔薇栽培を趣味とする鬼頭は学園内庭園では配下の親衛隊をつけることを嫌い、 庭園内には親衛隊は立ち入らなかった。 ただ、園芸部の雅薫のみは鬼頭に気に入られ薔薇栽培を手伝っていた。 その頃、近衛志保は、中立を保っていた速攻に優れる黒蝶グループを配下に置き 暗殺部隊を練っていた。 庭園に鬼頭と雅薫の二人しかいないとき、近衛率いる黒蝶暗殺隊が庭園に潜入した 近衛は防御結界陣構築の達人である。 黒蝶暗殺隊二十人が鬼頭を包囲した時点ですでに庭園には防御結界陣が張られ鬼頭親 衛隊の行く手を阻んだ。 近衛「千沙様、あなたおばかさんです。あなた、志保のこと舐めているんです。 今、私たち戦争しているのです。ふふ」 近衛がニコニコしながら可愛い顔でいう。 黒蝶暗殺隊が近衛の笑顔に見惚れるぐらいであった。 だが、近衛にも弱点があった。近衛の防御陣は学園内最強の鉄壁を誇るが、 攻撃は一撃集中型で、初動の一撃がかわされた場合には体力を失い、 防御陣が崩れる。このときを鬼頭の逆手斬りで狙われたら命はない。
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50 :創る名無しに見る名無し[]:2010/10/03(日) 01:44:28 ID:F8mVzN1F - 近衛志保伝
庭園重大事件では、黒蝶暗殺隊を囮に使い、鬼頭の逆手斬りが途絶えたところで 近衛が薄い剣陣を放ち、鬼頭を斬り深手を負わせた。 ここまでは近衛の作戦勝ちである。 しかし、近衛が鬼頭にとどめを刺そうとするとき、 園芸部の雅薫が鬼頭の刀を取り近衛に切り掛かった。 庭園重大事件にて雅薫は鬼頭を庇い、 そのはかない身を散らした。 近衛は雅薫を斬るつもりはなかった。 近衛がひるんだとき、庭園に張っていた結界が破れ、 冷泉率いる鬼頭親衛隊が鬼頭を取り巻き陣形を構築し、戦線は硬着した。 この日を境に鬼頭派と近衛派の闘いは熾烈を極めた。 最終的には互いにこれ以上の犠牲は出せず、近衛が鬼頭に謝罪し近衛派を解散する形 で、 和解がまとめられた。 和解の席上には学園長の桐島冷子が立ち会った。 桐島冷子「鬼頭さんを生徒会長とし、近衛さんを副会長とします。これでおしまいに しましょう」 近衛には紛争に無関係な雅薫を斬ったことに負い目があり、 また、近衛はこれ以上人を斬りたくはなかった。 近衛は、桐島学園長の決定に従い副会長として鬼頭の下に就いた。 だが、近衛派内の最右翼の黒蝶グループはこの和解に満足しなかった。 黒蝶グループは当初中立を保っていたにも拘らず、 近衛に懐柔され、近衛派につき多大の犠牲を払ってきた。 それが急に終戦とは納得のいくものではない。 黒蝶グループは、近衛を裏切り者として近衛に狙いをつけた。
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51 :創る名無しに見る名無し[]:2010/10/03(日) 01:46:49 ID:F8mVzN1F - 近衛志保伝
近衛志保は、黒蝶グループに狙われていることは承知していた。 だが、近衛はあえてその時が来たら、 この身を差し出すのも構わない と考えていた。 庭園内に建てられた雅薫の慰霊碑で祈ることが近衛の日課となっていた。 「志保には祈ることしかできないんです。志保は、本当におばかさんです」 近衛がいつものように庭園の慰霊碑で祈りを捧げているとき、 近衛を取り囲む空気が沈殿し、殺気で満ちた。 「来るべき時が来たんです。 志保は構わないんです。ただ、死ぬ前に最後に千沙様にお逢いしたい。一目でいいん です」 そんなことを考えながら、 近衛はいつものようにニコニコ微笑んだ。 「おかしいです。何で志保はこんな時に千沙様のこと想ってるの、私・・」 近衛の顔がみるみるうちに赤くなっていく。 近衛の様子を伺っていた黒蝶グループは恐れた。 近衛は我らの気配に気付いているはずなのに、 あの余裕は何か、ニコニコしながら顔を赤くしたり小さく笑ったりしている。 何故、我らを恐れないのだ?
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52 :創る名無しに見る名無し[]:2010/10/03(日) 01:48:40 ID:F8mVzN1F - 近衛志保伝
近衛に気を取られていた黒蝶グループは、 その背後にいた鬼頭に気付かなかった。 黒蝶「!鬼頭っ!」 時すでに遅し。 鬼頭は妖刀和泉守國貞を逆逆手に持ち、黒蝶グループ全員を照準に捉えていた。 鬼頭の波状逆手斬りは第一波で六人斬れる。この間合いなら、瞬時に第四派まで繰り 出せる。 完全に勝負あった。 鬼頭「下郎、近衛に手を出したらただでは済まさぬ。戦争は終わったのだ。 それが解らぬのであれば斬る」 鬼頭の刀が共鳴を起こし始めた。 黒蝶は全身に寒気を覚えた。鬼頭がこれ程とは・・・あの庭園重大事件の時の比では ない・・・ 黒蝶「分かった。約束する。今後近衛には手をださん」 鬼頭「ふっ、下郎。近衛がその気ならば、貴様等などとうに斬られておる」 黒蝶グループが去った。 近衛はあたりの空気が元に戻り、そして鬼頭千沙を感じた。 あの方がいるんです。近衛は辺りを見回したが、誰もいない。 鬼頭の気が薄れ消えていく。近衛は鬼頭の残り香を抱き寄せ、 いつものように微笑みながら、静かに泣いた。
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53 :創る名無しに見る名無し[]:2010/10/03(日) 02:17:02 ID:F8mVzN1F - 近衛志保伝時系列
近衛と鬼頭の出会い 近衛派の朱雀暗殺事件 庭園重大事件 第一次聖星学園紛争勃発 第一次聖星学園紛争の和解 黒蝶グループによる近衛襲撃未遂 近衛の千沙様バレンタインデー大作戦! 近衛の千沙様お誕生日プレゼント大作戦! 学園某重大事件 鬼頭親衛隊が消えた日 近衛の闇が始まる 第二次聖星学園紛争勃発 第二次聖星学園紛争終結 近衛自決未遂
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54 :創る名無しに見る名無し[]:2010/10/03(日) 02:26:36 ID:F8mVzN1F - 近衛志保伝時系列その2
近衛の救済 第二次物部の乱 鬼頭と近衛が国軍遠征部隊に編入され、長きに渡る戦いに入る 国軍鬼頭師団の結成 近衛が師団参謀長に就任 鬼頭と物部天獄の死闘 物部天獄死す
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55 :創る名無しに見る名無し[]:2010/10/03(日) 02:34:01 ID:F8mVzN1F - 近衛志保伝時系列その3
鬼頭、国軍第三軍司令官に就任。 近衛、第三軍参謀長に就任。 この頃より鬼頭と近衛の亀裂が修復のつかないものになる 鬼頭率いる第三軍によるクーデターとその成功 鬼頭、国軍最高司令官兼救国会議議長に就任 近衛、国軍参謀総長に就く
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56 :創る名無しに見る名無し[]:2010/10/03(日) 02:43:22 ID:F8mVzN1F - 近衛志保伝時系列その4
近衛参謀総長暗殺未遂事件 近衛、首都防衛師団を率いクーデター決行 近衛によるクーデター失敗 軍事法廷にて死刑判決下る 物部の残党による近衛救出作戦 近衛、物部の残党の首領となる 鬼頭自らによる物部征伐軍遠征 鬼頭不在の隙を突いた旧政府のシンパの首都制圧
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57 :創る名無しに見る名無し[]:2010/10/03(日) 02:54:23 ID:F8mVzN1F - 近衛志保伝時系列その5
鬼頭の危機 鬼頭と近衛の再会 鬼頭率いる国軍と近衛率いる物部軍の和解 国軍と物部軍、首都攻勢 近衛、国軍参謀総長に復帰 名誉回復なる。物部一族の自治区誕生 近衛、国軍最高司令官に就くと同時に国家副総統になる 鬼頭は国家総統に。 近衛による鬼頭逮捕 近衛志保の接吻と鬼頭千沙処刑 近衛志保の後悔 完
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58 :創る名無しに見る名無し[]:2010/10/03(日) 03:34:59 ID:F8mVzN1F - 近衛志保伝
近衛志保の呼び名の遍歴 聖星の菩薩→師団のお嬢ちゃん→人斬りのお嬢ちゃん →三軍のお嬢ちゃん→お嬢ちゃん総長→物部の女神
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