- スレを立てるまでもない質問スレin創発板2
15 : ◆X2eF6cXcIA [sage]:2010/09/27(月) 07:25:38 ID:CLATJKjG - TST
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272 : ◆X2eF6cXcIA [sage]:2010/09/27(月) 07:30:21 ID:CLATJKjG - 乙です!
>>「考えは変わったか?」 >>「考え過ぎてたって事は分かった」 >>「そんだけわかりゃ十分だ」 これは良い親子関係 キッコ様もきちんとお仕事なさって満足ですぜ! そして墓標をイカス塗装にしようぜ! さて、自分も続けて、桃太郎りましょうかねぇ
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273 :& ◆stOS6UxujuzP [sage]:2010/09/27(月) 07:31:56 ID:CLATJKjG -
「そこな少年」 その日。 良平が呼び止められたのは道場帰りの道すがら。 「この街で食べ物を提供する店を、知っているだけ教えてくれまいか?」 振り返れば変な人がいた。 新緑のスーツ。 深緑のマント。 真緑のケースを片手に、仮面で素顔を隠した―― 「変態だ――――――――ッッ!!!」 りょうへいは にげだした 「ハッハッハッ、やんちゃな年頃だな、少年! しかし人の質問に答えてからはしゃぐんだよ!」 しかし まわりこまれた とても緑色だった。 とかく緑色だった。 緑の男。 「私の名はマスクド・ベジタブル! さすらいの仮面料理人、マスクド・ベジタブル!」 絶対に関わってはいけない類の人だと良平は子供ながらに判断する。 信昭も常々怪しい人物に対して軽率な行動をするなと言い聞かせているのだからこの判断に間違いはない。 「少年、君は嫌いな野菜はあるかな?」 質問は唐突だった。 しかも、先程の質問と変わっている。 良平は震えながら首を横に振るばかり。 これはこの仮面の男に対する返答ではなく拒絶反応であるのだが、眼前の人物は返答として受け取ったようだ。 「ふむ、嫌いな野菜がないとは……! 気に入った! 気に入ったよ、少年! 君はとても素晴らしい大人になる事をこのマスクド・ベジタブルが保証しよう! 野菜を厭う事のない人生は、ただそれだけで太陽のように光輝く! 君の将来は野菜色に彩られてしかるべきだね!」 大きく手を広げ、良平の未来を歓迎するかのようにマスクド・ベジタブルは高らかにそう言い切った。 「さて少年」 そして優しく見下ろすのだ。 いまだ怯えてすくんで、どうすればいいのか皆目検討もつかずにただ震えるばかりの良平を。
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274 :甘味処繁盛記 仮面料理人編[sage]:2010/09/27(月) 07:32:53 ID:CLATJKjG - 「そろそろこの街で食べ物を提供する店を、知っているだけ教えてくれてもいいだろう?
君と私の仲だ、なぁに、遠慮する事はない。 自分自身の舌に自信が欠けて、私に下手な店を紹介してしまう懸念を抱えて悩んでいるのは良く分かる。 しかし、しかしだ、少年。店の料理の是非は重要ではないのだよ 無論、食べ物を提供する店の事、美味であるに越した事はない。 だが料理という物は才能と経験が必要になるところがある。 才能は運が、経験には時が必要なのだよ。 才能や経験なんて、こんなあやふやな物に、味と言うものは左右されてしまう。 だから味云々については仕方がないと広い度量を私は持てるさ。 理不尽だと思うね? いや、少年、君の気持ちも分かる。分かるがこればっかりは仕方がない。 しかし、しかしだ、少年。才能と経験は、味を作るうえで武器になるが、必要かどうかと問われれば実は否だ。 そう、心だよ、少年。食べる物には心さえあればそれだけで口にするに足るのだ。 分かるかい、少年? つまり君が味の良い店を私に紹介しようと心を砕くのはいささかズレた発想だよ。 私に紹介すべきは、心。気持ちを料理に乗せる事ができるか否かだ。 さぁ、分かったね、少年。今一度考えてくれ。私に紹介できる店について! それでもやはり、心というものは不透明だ。眼に見えない。だから、君が知っている店、全てを教えて欲しい。 吟味は私がすればそれでいいからね!」 長々と、だらだと、舌をくるくる回す眼前の仮面料理人に対して、良平の思考はどうすればこの窮地を脱するかで一杯だった。 道場までは、遠すぎる。 武装隊に助けを求めるにも、いささか遠い。 この場所から、最も近くにある、命の安全につながる場所――あるいは誰か。 そこで良平は閃く。 そうだ。 眼には眼を。 歯には歯を。 変な人には、変な人を。 かくして良平の口からその名が飛び出す。 <甘味処 『鬼が島』>。 ◇ 昼も過ぎ、おやつ時さえ過ぎ去った夕刻。 <甘味処 『鬼が島』>。 屋外に設置した長椅子に座り、ひとりお茶をすすっている男がいた。 桃太郎。 茶請けにいつもの吉備団子。 ぼんやりと、西に沈む太陽を眺めながら、何をするでもなく。 店の中では、真達羅が掃除をしている。 客足が止まる隙間のような時間であった。 だから桃太郎の休憩時間。 何気ない時間。 何もない時間。 茶の残りを飲み干した。 「店長」 まるでそれを計っていたかのように。 真達羅が店から現れる。 片手に急須。片手に自分の湯飲み。
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275 :甘味処繁盛記 仮面料理人編[sage]:2010/09/27(月) 07:33:34 ID:CLATJKjG - 「おう」
湯飲みを差し出し、茶を注がせた。 「おい、真達羅」 「なんです?」 「久しぶり」 「……はぁ?」 「二ケ月ぶりぐらいか?」 「何を言ってるのか、よくわかりません。さっきから私はいるでしょう?」 「いや、リアルで」 「ふざけてるんでしょうか?」 「俺がふざけてない時がいったいいつあるか?」 こめかみに指を当てる真達羅の眉間にしわ。 ずず、と桃太郎が茶をすする音。 真達羅も横に掛けた。 自分の湯飲みに茶を注ぎ。一息。 少しだけ、間。 ゆっくりとした、ゆったりとした茜色の世界。 あれから。 桃太郎の正体を。 真達羅の正体を。 摩虎羅の正体を。 招杜羅の正体を。 余さず残らず赤裸々に、語ってしゃべって明かして隠さず、全てを告白してから。 角谷たちは彼らを受け入れた。 いや、受け入れたとか許容とか、そんな話ではない。 そういう次元では、ない。 「ああ、そんな過去があったのか」と、頷いて、これまでと別段変わらぬ対応を。 門谷たちの内で何かが更新されたわけでなく、何かを気張った様子もなく。 何も変わらない。 忌み嫌われる事も、今まで以上の好意を受ける事もなく。 あるままに。 それは……彼らに心良かった。 「なぁ真達羅」 「なんです」 「和泉ってすげぇな」 「そうですね」 「いろんなモンを行き来するのにこんなに穏やかだとは」 「ちょっと稀有な例ですよね。薬畑も、結局は私たち十二騎が睨みを利かせていたから穏やかだった」 「お前は幼女と遊んでいただろう」 「……吉備団子、おかわりどうですか?」 「頼む」 すごすごと、吉備団子補充に真達羅が店の中へ。 ずず、と茶をすする音。 もう日が沈む。 太陽の半分が隠れてしまった西の空。
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276 :甘味処繁盛記 仮面料理人編[sage]:2010/09/27(月) 07:35:31 ID:CLATJKjG - ふと。
異様な気配を察して桃太郎が湯飲みを置いた。 そしてどこからか、笑い声が聞こえた気がする。 いや、気のせいではなく。 徐々に、その笑い声は、大きくなってくる。 近づいて、くる。 それに乗じて悲鳴。 「ハァ――――ッハッハッハッハッハッハッハッハッ!!」 「うわあああ!!」 良平が抱えられていた。 緑色の人影に。 思わず桃太郎が唸った。 新緑のスーツ。 深緑のマント。 真緑のケースを片手に、仮面で素顔を隠した―― 「なんて――」 ずざ、と地を滑って止まったその身。 緑の男。 仮面の男。 小粋なチャームポイントとして良平を抱えるというコーディネイト。 「――……なんて、おしゃれな奴だ!」 「ハァ――――ッハッハッハッハッハッハッハッハッ!! ここが甘味処かね、君!」 眼が合った。 マスクド・ベジタブルの仮面の奥。 覗いてくる涼やかな目元が、桃太郎と相対して。 「う」 桃太郎は、 「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおあああああああああああああああああ ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ ああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!」 逃げ出した。 ◆ 桃太郎の大声が遠のいていく中、何事かと吉備団子片手に真達羅が出てくる。 そこで邂逅するのだった。 マスクド・ベジタブルと。 そして良平。 「おや、良平くん、また拉致されたんですか?」 「た、助けて……」 「おっと、失礼。少年……いや、良平少年、抱えたままだったね。道案内、感謝するよ」
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277 :甘味処繁盛記 仮面料理人編[sage]:2010/09/27(月) 07:37:09 ID:CLATJKjG - 思いの他あっさりと、マスクド・ベジタブルは良平を解放した。
当の良平といえば、ホッとしていた。あてが外れたとしか言えない。 マスクド・ベジタブルなるこの奇人に対して、桃太郎という変人を当てようとした試みが潰えたからである。 真達羅が出てきたのは、運が良かった。 桃太郎が逃げた今、この緑色の仮面料理人と二人きりというのは想像しただけで身の毛もよだつ。 「それで……その、お客さんでしょうか?」 おそるおそる。 真達羅が、マスクド・ベジタブルに尋ねた。 どこか、警戒した様子なのは当然だろう。 こんなに緑色した人間なんて、真達羅は初めて見る。 「うむ、この店にある品、全てを所望する」 「かたっぱしでしょうか?」 「かたっぱしだ」 分かりました、と頷く真達羅をよそに。 良平がこっそりとその場を離れようとして。 「さぁ、良平少年! 案内してくれた君をねぎらう意味もある。存分に飲み食いしてくれて構わんよ! なぁに、君と私の仲だ。遠慮は無用だよ? 子供は食べて遊ぶのが仕事だからね、支払いの心配はしなくてもいいさ!」 あっさり首根っこ掴まれてしまった。 「良平くん……随分と、個性的なお友達がいるんですね」 「違うよ! 知らない人だよ!」 「はぁ……あの、どのような方なのでしょうか?」 真達羅の問いに、マスクド・ベジタブルがマントを大仰に翻して――……謳う。 「私か? 私を問うたか? いいだろう、答えようではないか! 名乗ろうではないか! 私は野菜を愛する者! 私は野菜を殺す者! 私は野菜を活かす者! 私は野菜に忌避される者! 私は野菜に嫌われる者! 私は野菜に呪われる者! 私は野菜と共に生きる者! 私は野菜から最も遠い者! 私は野菜にひれ伏す者! 私は野菜に君臨する者! そう、私の名はマスクド・ベジタブル! 謎の仮面料理人! マスクド・ベジタブル! さぁ、私は名乗った。次は君の名前はを、教えてもらおうか!」 ドカーン、とバックに爆発でも背負わんばかりの名乗りであった。 ごくりと真達羅が喉を鳴らした。 「し、真達羅と申します」 「ほう? 真達羅くん、君がこの店の主かね?」 「いえ、こちらの店長は先程逃げてった人です」 「む? 彼か。彼が主だと? それは不愉快だな。それはまったく度し難い。 客を相手に悲鳴を上げて、全速力で逃げ惑う店主など聞いたこともないよ」 「はぁ……申し訳ないありません。なにぶん、ちょっと良く分からない人ですので」 「まぁ、いい。今いない者を、今いる者に対してどうこう言っても仕方がない。 まずは君だ、真達羅くん。まずは君から問いかけよう。全てはこの問いからだよ、真達羅くん。 真達羅くん、君は嫌いな野菜はあるかね?」 やはり大仰なポージングで、マスクド・ベジタブルは問いかける。 やや小首を捻ってから、こう真達羅は答えるのだ。 「特にありません。何でも美味しくいただきます」 そんな真達羅の両肩をがっしとマスクド・ベジタブルは叩くのだ。
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278 :甘味処繁盛記 仮面料理人編[sage]:2010/09/27(月) 07:38:09 ID:CLATJKjG - 「素晴らしい! 素晴らしいよ! 真達羅くん!
君は君を誇っていい! 誇るべきだ! 君はあの沈み行く太陽よりも、昇り行く月よりも美しく偉大に輝いている! さぁ、食べよう! さぁ、頂こう! この店の全てを所望するよ!」 「……良平くん、君は逃げなさい」 「わ、わかった」 こっそりと、良平を帰路に帰しながら真達羅はマスクド・ベジタブルの入店を見届けた。 ◇ 「いやー、殺されるかと思った」 「誰に?」 「緑色した仮面の男」 「帰れ」 武装隊詰め所で書類仕事していた門谷のとなりで。 息を切らせて桃太郎はくつろいでいた。 マスクド・ベジタブルから逃げて、やってきたのがここだった。 真に迫って駆け込んだ桃太郎に、門谷も最初は何事かと心配したが心配するんじゃなかったと五秒で思い直してしまった。 「本当に、やばかったんだよ。あれは俺じゃ逆立ちしてもどうしようもねぇ。逃げるしか選択肢がねぇ」 「……俺は忙しいんだが?」 「市民が危険にさらされているのに、それよりも重要な事があるってのか」 「この前栄養補給したんだから、下手な異形よりもお前は強いだろうが」 「強い弱いは、関係ないんだよ。いいか、俺と、その緑色の男。これだけの間で成立する不等式だ。俺は、どう手出ししても、あの緑色の男に勝てない。いや、勝つとか負けるとかじゃねぇ。殺される事はもう、これは決定してるようなもんだ」 「……俺は忙しいんだが?」 「植物ってのは動けねぇ。だから動ける植物である俺は、逃げるという余地を選択できたが、これはもう裏技みてぇなもんだ。他の植物という植物に同情するぜ。あいつと相対しても逃げる事ができねぇんだからな」 「……」 うっとうしいが、しかし門谷は桃太郎の話を聞くだけ聞いてやる。 真剣なのは、伝わるのだ。 殺し合いをした事がある、門谷だから理解できる空気。 「とりあえず、不審人物ではあるんだな?」 「おうよ、あんなに緑色した男は初めて見たぜ」 「……明日、まぁ、職務質問してみるか」 「今すぐ頼む」 「忙しいっつってるだろう」 「人使ってくれよー。恐くて恐くて仕方がねぇよ」 「……招杜羅か摩虎羅がいるだろう。連れてけ」 「馬鹿な、誰かの職務の邪魔をするような不埒な真似をこの俺が 「今お前が俺に対して邪魔してるだろうが」 「あ、良平」 角谷の主張を無視して窓の外へと視線を向ければ。 駆け、こちらへ向かう良平の姿が眼に映る。 窓を開けて手招き。 「おい良平、あいつまだ店か?」 「う、うん、店のメニューを全部食べるって言ってた」 「なぁ、あいつ何者だ?」 「えっと、マ、マスクド・ベジタブルって名前だったけど……」 「どんな名前だ」
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279 :甘味処繁盛記 仮面料理人編[sage]:2010/09/27(月) 07:39:36 ID:CLATJKjG - さしあたって、料理人というらしいのも良平の口から出てきた情報である。
そして、和泉に存在する飲食店について聞いてきた事も。 流浪の料理人の、味探求の旅すがらであるかもしれないが、それにしては怪しい。 「マスクド・ベジタブル! マスクド・ベジタブルだと!?」 門谷が唸った。 「知ってるのか?」 「マスクド・ベジタブル……神出鬼没の謎の仮面料理人だ。野菜を扱う腕にかけては右に出る者はいないと聞く。まさか、まさかそのマスクド・ベジタブル……!」 「ご名答!」 バサリと、マントが翻る音。 見れば。 上空から緑色が落ちてきた。 「ハァ――――ッハッハッハッハッハッハッハッハッ!! 天が呼ぶ地が呼ぶ人が呼ぶ! 野菜を料理しろと私を呼ぶ! 聞け! 善人ども! 私は謎の仮面料理人マスクド・ベジタブル!」 良平の、すぐ背後。 その男は現れた。 新緑のスーツ。 深緑のマント。 真緑のケースを片手に、仮面で素顔を隠した―― 「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおあああああああああああああああああ ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ ああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!」 また桃太郎が逃げ出そうとしたのを、いつの間にいたのか真達羅が止めた。 「店長、ちょっと待ってください、あの緑の方、店長にお話があるみたいなんですよ」 「どけ! どけ! どけえええええええええええええええ!!」 一秒たりともマスクド・ベジタブルと同じ空間にいたくない。 離れていたい。近づくなんて考えられない。 なのに。 桃太郎とマスクド・ベジタブルは再び相対するのだった。 「貴方が桃太郎店長か! 貴方が、あの吉備団子の創造主! 相違ありませぬか?」 がちがちと、歯の根が合わない桃太郎に、マスクド・ベジタブルは慇懃に礼を施した。 格好こそ奇妙だが、門谷の目からも敬意を見て取れるほどである。 「そうです、こちらの店長が吉備団子作った人です」 代わりに、真達羅が頷いた。 満足げに、マスクド・ベジタブルは微笑んだ――のだろう。 素顔は見えない。しかし微笑んだと分かる気配。 「どうか! 私に吉備団子を教えていただきたい!」
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280 :甘味処繁盛記 仮面料理人編[sage]:2010/09/27(月) 07:40:32 ID:CLATJKjG - 真摯に。
実直に。 誠意に。 マスクド・ベジタブルは、頭を下げた。 「断る!」 桃太郎の答えは二秒で返ってきた。 しかし、それでも仮面の料理人なる男は退かない。 「お願いです。どうか! 私に吉備団子をお教えください! どのような修行とて厭いません! どうか! どうか! どうか!」 「帰れよ! 帰れ! 帰れと言ってるのに人の言う事聞かずに居座る奴なんて最低だ!」 「……」 門谷の双眸が「お前が言うな」と語るが、今の桃太郎には届くまい。 かつて、これほど取り乱す桃太郎を門谷は見たことがなかった。 常に悠々。 いつも飄々。 だからだろうか。 こんな風に取り乱す桃太郎を、もうちょっと見ていようと思って手助けしない方向に決めた。 そしてそれは、真達羅も同じだったようだ。 怯えてる桃太郎を見る真達羅の表情はとても穏やかである。 溜飲が下がってる感じだ。 (店長を助けなくてもいいのか?) (その、もうちょっと、見ていようかなぁ……と) (俺ももうちょっと見てようと思う) (門谷隊長も意地悪ですねぇ) (お前もな) 言外にこんな通じ方をした雰囲気であった。 「団子と野菜関係ないだろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」 「黍から作られます。故に、私もこれを覚えたい! この団子を慈しみたい!」 「俺を慈しめええええええええええええええええ!!」 「なんなりと! お申し付けください!」 「帰れ! 帰れよおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!! 真達羅助けてくれえええええええ!」 真達羅はとても優しい笑顔であった。 「そんなに邪険にしちゃ駄目ですよ」 「たいちょおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」 「そんなに邪険にしちゃ駄目だろ」 「良平えええええええええええええええええええ!!」 「そんなに邪険にしちゃ駄目だよ」 「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」 真達羅。 門谷義史。 良平。 三者三様のほくほく顔であったという。 結局マジ泣き寸前でブレイク。 ひとまずその日は別れとなった。 「ふふふ、伝授していただくまで……甘味処に通いましょうぞ!」
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281 :甘味処繁盛記 仮面料理人編[sage]:2010/09/27(月) 08:06:19 ID:CLATJKjG - そうマスクド・ベジタブルが宣言した次の日、桃太郎が「探さないでください」の書置きと共にどっか行ってしまったという。
◆ 「というわけでかくまってくれ」 「帰れ」 門谷隊長にかくまってもらえず、すぐに真達羅に引き取られましたけど。 <甘味処 『鬼が島』> 店長:桃太郎 従業員:真達羅 不在:摩虎羅、招杜羅 入店志望:マスクド・ベジタブル <お品書き> ・吉備団子 ・きなこ吉備団子 ・カルピス <お品書き・裏> ・吉備団子セットA ・吉備団子セットB ・吉備団子セットC
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282 : ◆X2eF6cXcIA [sage]:2010/09/27(月) 08:08:27 ID:CLATJKjG - 以上です
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