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創る名無しに見る名無し
◆IR/QgbEYHM
【シェアード】チェンジリング・デイ 4【昼夜別能力】

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【シェアード】チェンジリング・デイ 4【昼夜別能力】
186 :創る名無しに見る名無し[]:2010/09/23(木) 17:25:16 ID:g6T2Afge
投下乙!
鎌田さんと晶の活躍に期待

だがファングは動物なのか……ww
そして陽太はどうなるww
【シェアード】チェンジリング・デイ 4【昼夜別能力】
187 : ◆IR/QgbEYHM [sage]:2010/09/23(木) 17:28:50 ID:g6T2Afge
じゃーちょっち投下しますかね

「そういえば、こんな噂、聞いたことありますか?」
「ん?」
 とある地下組織の研究室で、助手の青年が上司である研究員へ声をかけた。
 研究員にしてはがっしりした体つきと、知的な雰囲気を演出する銀縁眼鏡、そして高価そうなスーツを着こなす『主任』は、コーヒーカップ片手に疑問符をその頭上に浮かべる。

「ウチの組織……というか、第七班の弓月主任なんですけど」
「あぁ……彼ね」
 弓月、という名を出した瞬間に、主任の顔に苦々しげな色が広がった。
 自分でも無意識に出てきた渋面に気がついたのか、主任はコーヒーカップに注がれていた液体を一気に飲み干す。
 
 未曾有の大災害の果てに人々が得た力。まだその全てが解明されたわけではなかった。
 当然だ。未だ、あの災害から十年ほどの月日しか流れていないのだから。
 
 だが、世界にはその能力を解析するべく、とある組織が存在している。それがこの地下組織『ERDO』である。

「悪いけれど、彼の研究は好きになれないね……」
「ええ、まあ、僕もですけどね」
 主任の言葉に、助手が首肯した。
 この地下組織は、諜報部門、特務部門、研究部門と、大きく分けて三つの部門に分けられている。
 そして、研究組織としての活動を行う研究部門もまた、いくらかのチームに分けられていた。
 当然各研究班が主題に据えるテーマは異なるが、その全てが己が手を汚さずに済む内容というわけではない。
 結果を出すために、何かを犠牲とする研究を続ける班も往々にして存在し、そして今話題に上がった第七班、そして主任研究員弓月は、そのような研究を悪びれずに行っていたのである。
「で、彼がどうかしたのかい?」
「何でも組織が裏で運営する高等学校に、第七班主導の『能力開発カリキュラム』が組み込まれてるとか」
「……それは、ぞっとしないね」
「ええ、あくまで噂なんですけど……、ただ、あの弓月研究員ですからね。もし本当の話だとすると……」

 心なしか声を潜めた助手は、脳裏に第七班主任の顔を思い浮かべ、ぶるりと身を震わせた。
 深い隈、痩せこけた頬、正気を失ったかのように見える瞳。
 あの底知れぬ怖ろしさは、正面切って立たない限り理解することは叶わないだろう。


【Imitation / 1:夜見坂高校】
【シェアード】チェンジリング・デイ 4【昼夜別能力】
188 : ◆IR/QgbEYHM [sage]:2010/09/23(木) 17:30:34 ID:g6T2Afge
「畜生……昨日は酷い目にあった」
 ゴキゴキと体全体の関節の調子を確かめながら、俺は夜見坂高校への入り口である正門を潜り抜け、校庭を横切っていた。
 校庭の端に並び、おそらく四月時点では美しく咲き誇りながら新入生を優しく迎えていたであろう桜並木も、緑の葉を見せる頃合いになっている。
 俺が高校生になって一月。元通っていた羽華高校に別れを告げた俺の新たな母校は、ここ夜見坂高校だ。
 一月遅れながらも良い感じのスタート切るぜ、と意気込んでみたのは良いものの、昨日は途中交通事故に巻込まれるわ変な女にぶん殴られるわで良いところが全くなかったのがつい昨日のこと。
 だが、まあいい。日も変わったし心機一転今日から頑張るぜー!

「いや、その前に三上静ァァァァ! 俺はお前を絶対に――!」
『お、おいあの男……』
『夜見坂最強の女に告白するつもりかよ!?』
『マジか……。あの伝説の入学式……夜見坂二十人斬りの三上にか!?』
『無謀だ……。無謀としか言えない……』
 ちょっと待て。何か壮大な誤解が生まれてるんですけど!
 俺は三上静へのリベンジを誓っていただけで決してそういう気持ちがあったわけじゃない! 
 いやまあ少し可愛いかもと思ったが、あんな化けもん召喚した挙げ句に気絶させられたらそんな気持ちソッコーで吹っ飛ぶわ!
 ていうか三上静恐るべし……。二十人斬りって……。
『頑張ってね、キミ!』
『応援してるわよ』
『うおおお、ダメだ三上、やっぱ俺もう一度――!』
『無駄だって、玉砕されるだけだ!』
 周りの生徒達の暖かい視線と黄色い歓声が非常に居心地悪くなって、俺は全速力で校庭を駆け抜け昇降口へと急いだ。
 やめて! そんな眼で俺を見ないで! 俺はそんなつもり微塵もないんだってぇぇぇぇ!



「やれやれ……」
 好奇の視線に晒されるという、羽華では一度も体験したことのない出来事に、俺は完全にテンパっていた。
 何か壮大な勘違いが生まれてるが、誤解はおいおい解いていくこととして……、まずは職員室に向かわないとダメだな。
 昨日は迷って職員室に辿り着けなかったが、今日は人の流れがあるから万事問題なし。
 俺はまだ自分がどのクラス配属かは知らされていないので、脱いだ靴片手に夜見坂の校舎に足を踏み入れた。
 記念すべき第一歩だ――って?

「おい、ちょっとそこの気弱そうな男子」
「えっ、僕……?」
「そうそう、お前しかいないって……なァ、武藤ク〜ン?」
 昨日、俺が放課後に不良に絡まれているところを助けに入った男子生徒がすぐ側にいるのを見て、思わず声をかけてしまった。昨日の今日でまた出会うことになるとは。
「あっ……君……」
「よう。おかげさまで昨日は――」
「き、昨日は、ありがとう!」
「――はい?」
 酷い目にあったぜ、と続けようとした俺を制するかのように、武藤が急に頭を下げた。
 武藤の突然の行動に、俺の動きが一瞬止まる。
「おかげさまで助かったよ……。お礼、言わないとって思ってたんだけど……」
「……」
「そ、その……本当にありがとう」
 心からの感謝の意を述べる武藤の姿に毒を抜かれ、俺は喉まで出かかっていた言葉を胸の内に引っ込めた。
「いや……まあ……、ちょっと暴れたかったとこだったし」
「そう言ってくれると少し気分が楽になるよ。……僕、武藤耕太。君は?」
「俺は上守琢己。転入生だ。……悪いんだけど職員室まで案内してくれないか?」
 武藤は笑顔で頷き、俺を先導してくれた。人が良い奴で助かったぜ。
【シェアード】チェンジリング・デイ 4【昼夜別能力】
189 : ◆IR/QgbEYHM [sage]:2010/09/23(木) 17:32:49 ID:g6T2Afge

 職員室で武藤と別れ、十五分ほど経過して。
 昨日姿を現さなかったことを担任にこってりと絞られた俺は、彼に連れられ廊下を歩いていた。
 もうすぐ始業時間のため、廊下に生徒の姿はない。昼間能力の力によるものか、ぷかぷかと胡座のまま浮かび上がる担任――名前は聞きそびれた。通称は仙人らしい――の後にひっつき、一年生に割り当てられた三階の廊下を進む。
「しかしまー、こんな時期に転入とはな」
「家庭の都合ですよ」
「こっちからしたら面倒なこと極まりねぇな」
 ぷかぷかと浮かびながら、板垣退助ばりの髭を持つ仙人先生が非常にめんどくさそうに言った。
 教育者としてその台詞は良いんだろうか。いやまあこれくらいぶっちゃけてくれる方が俺としてはやりやすいし好感が持てるが。
「さっきも言ったが、お前さんは1年B組所属な。わりかしくせ者揃いだがまあ何とかやってくれや」
「羽華で鍛えた俺を舐めないで下さいよ」
「たかだか一月だろうが……。っと、着いたぞ」
 仙人がその動きを止め、それに習い俺も歩みを止めた。目の前のドア上部には1年B組のプレート。
 到着か……。自己紹介の台詞とか考えてないな……。どーすっかな、まあいいか。
 自己紹介くらい何とかなるだろうと一人頷き、ドアを開けた仙人に続いて教室に入った。
 既に転入生がやってくることが知らされていたのか、どこか浮ついた感じのクラス全体を見渡し、仙人が咳き込む。
 一瞬で静まりかえる教室に、俺は内心で苦笑した。怖いのかね、この仙人。
「あー、お前らも知ってるとおり、転入生が来た。じゃ、自己紹介頼むわ」
「はい。……えー、羽華高校から来ました、上守琢己です。どうぞよろしく」
 当たり障りのない挨拶をしておく。友人なんてもんはその内勝手に出来るだろうというのが俺の信条なのだ。
 とりあえず儀礼的に頭を下げる。次に、顔を上げた俺の視界に飛び込んできたのは、見知った顔だった。
「あ、武藤」
「上守君、一緒のクラスなんだね。嬉しいなあ」
 一番前の席に陣取るは、気弱な男子武藤耕太。なるほど、こいつはB組だったのか。
 知り合いがいるってのはなかなか幸先が良いな。
「ん? 知り合いか……。と、じゃあ上守の席は、と……お、窓際最後尾が開いてんな」
「マジですか? ラッキー」
「じゃ、そういうことで、隣の三上! 上守の世話は任せたぞ」
「……はい」
 ん? 三上……?
 どこかで聞いたことのある名前、そして声。俺の席となるであろう窓際最後尾の隣。憮然とした態度を崩さず、こちらを睨み付けるのは……。
「あーっ! てっめぇぇぇ! 蜘蛛女……」
「……ごきげんよう」
「お前も同じクラスかよ……」
「こっちの台詞だわ」
「なんだ、お前ら知り合いなのか?」
 傍らの仙人の不思議そうな呟き声を無視し、俺と三上は見つめ合った――否、睨み合った。
 昨日の出来事は、お互いに忘れちゃいないのだ。


 必ずぶっ潰す!


 俺は(多分三上も)心の中で改めて誓った。
【シェアード】チェンジリング・デイ 4【昼夜別能力】
190 : ◆IR/QgbEYHM [sage]:2010/09/23(木) 17:35:23 ID:g6T2Afge
 通常授業が過ぎ、質問攻めの休み時間も過ぎ、安息の昼休みも終わりを迎えつつあった。
 運悪く隣の席となった三上は、非常に形式的に俺の世話をしてくれた。当然俺も、形式的な笑みを浮かべそれに応対した。
 ぎこちない笑顔のまま、俺たち二人は午前中の授業を乗り切ったのだ。
 しかしそんな意地の張り合いが続いていたため、結構俺は疲れていた。三上の奴、ポーカーフェイスも良いところだ。
 なんだか自分ばかり空回りしているような気がして、俺は深く深くため息を吐いた。

「上守君、元気ないね」
「ああ、いやまあ疲れてな……」
 嘆息した俺を気遣うような声を出したのは、朝からずっと俺にひっついている武藤だった。
 何だろう、懐かれたのだろうか。鬱陶しいと言えば鬱陶しいのだが、邪険に扱うのも気が引ける。難しいところだ。
 さて、我ら1年B組の生徒は、昼休みを終えつつある今、五限目の授業が開始される修練場なる場所へと集まり始めていた。
 修練場の広さは大体、野球のグラウンドと同じくらいだろうか。ウチのクラスメイト全員が入っても、まだ十分スペースが有り余っている。

「ここで何するんだ? 体育か?」
「え? 違うよ……、能力開発だよ」
「あぁ、ここで能力開発なんか」
 武藤の言葉に、俺は合点がいったという顔で頷いた。
 夜見坂高校が、他の教育機関と一線を画しているのは、『能力開発』を主眼に置いているということにある。
 普通の教育機関にも、単に知識として、能力に関する授業が存在するが、夜見坂は能力の『知識』と同時に『経験』を得ることが出来るようカリキュラムが組まれている。
 なんでも、チェンジリング・デイ以降に人々が手に入れた数々の能力の長所を伸ばし、短所を補うことでよりよい生活が出来るように、という意味があるらしい。
 例えば世には火を出す能力などがあるが、始めはライター程度の火しか出せなくても、能力開発のカリキュラムで熟練していくことにより、ガスコンロ並みの火を出すことも出来るのだという。
 なるほど便利なことだ。自分の能力を極めたいと考えている者にとっては、これ以上なく魅力的な学校と言えるだろう。

 そして俺も、自身の能力に磨きをかけたい者の一人なのであった。

「腕が鳴るぜ。んで、武藤、お前の能力は何なんだ?」
「あ……僕は、何も」
「ん、未発現か。まー俺も夜はまだ出てきてねえし、ほっときゃ出てくんだろ」
「……うん、ありがとう上守君」
 うーむ、ちっと話題の振り方ミスったか? 
 以降能力開発担当の教師が姿を現せるまで、武藤の顔が晴れることはなかった。


「よし、これから能力開発の授業を始める。班に分かれろ」
 能力開発担当の教師は、薄汚れた白衣を着ている、いかにも研究者然とした男だった。
 教師のどこかぶっきらぼうな物言いを気にするでもなく、我らがB組の生徒達は楽しそうな顔で移動を開始し、男女五人ほどの班になって修練場の各地へと散らばった。
 既に班は決まっているのだろうか。あれ、俺はどうしたらいいんです?

「先生、俺はどうしたらいいですか」
「転入生か。そうだな……確か三班が四人しかいなかったろう」
 教師の言葉に、俺は一瞬修練場の空気が止まったような感覚を覚えた。
 何と言えばいいのだろう、三班という言葉には、誰も触れてはいけないような何かが内包されている感じだ。
 導火線に火の付いた爆弾を扱っているような、そんな雰囲気が修練場全体に流れている。
 実に嫌な空気だ……。
「上守、お前は三班に入れ」
「あの、三班って……、何かあるんですか?」
「B組最低の班なだけだ。早く行け」
 どういうこっちゃ。
 首を傾げる俺を追い払うように、教師が件の三班の面子が集まる一角を指し示した。あ、武藤がいる。
 武藤とは切っても切れない縁でもあるんだろうか。
 ……まあ、別に悪くはないかな、などと思いつつ、俺は武藤と他の班員が待つエリアへと歩を進めた。


Next【Imitation/ 2:最低の三班】に続く
【シェアード】チェンジリング・デイ 4【昼夜別能力】
191 : ◆IR/QgbEYHM [sage]:2010/09/23(木) 17:41:45 ID:g6T2Afge
設定一部

夜見坂高校
進学校であると同時に、能力開発という新しい試みを取り入れている点で世間的な知名度も高い高校。
制服は男女ともにブレザー。学年によりネクタイの色が異なる。

公には知られていないがERDOによって運営されている教育機関。
学園上層部にはERDO関係者がずらりと顔を並べているらしい。
ERDO研究部門の実験場的な意味合いが強く、『能力』の開発、成長、分析に力を入れている。


とりあえず投下終了。
次回でようやくメインが出てこれる……ふぅ。
【シェアード】チェンジリング・デイ 4【昼夜別能力】
194 :創る名無しに見る名無し[sage]:2010/09/23(木) 23:03:22 ID:g6T2Afge
感想ありがとうございます
まあ実体不明ということでERDOにはこんな役をやってもらうことになりましたww

>>193
是非是非どうぞww
舞台共有するのがシェアの醍醐味ですからねww


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