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「 グレートサラマンダーZ 」
創る名無しに見る名無し
ウーパールーパーで創作するスレ+(・─・)+2匹目

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ウーパールーパーで創作するスレ+(・─・)+2匹目
31 :「 グレートサラマンダーZ 」[sage]:2010/09/23(木) 01:03:57 ID:VAng+//+

「君は…………?」

――蛍光ピンクのうぱるぱ……

 記憶が鮮明に蘇る。
週刊誌にグレートサラマンダーZの記事を載せるためにSOS信号を発したピンクのうぱるぱ。
グレートサラマンダーZが大山椒魚型ロボットではないか。という噂を流したと思われるうぱるぱ……

「はいはい、その節はどーも。でも昔話をしてる暇はないの。早くここから出して頂戴」
「でも…………」
「あなたの使命はウーパールーパー助けることなんでしょ!うだうだしてないで早く助けなさいよ!
ご老人から目つけられてるのよ!こんなとこで長居してちゃ命がいくらあったって足りないのよっ!!!」
コックピットの中でためらううぱ太郎をよそに、ピンクのウーパールーパーは語気を荒げて
グレートサラマンダーZを睨めつけた。
「…………」

『うぱ太郎、聴こえるか?』
「はい」
戸惑ううぱ太郎にスピーカー越しのうぱ松から指示がでる。
『お前が躊躇する気持ちも分かるが今は救出が先だ、早急に保護しろ。その娘には聞きたいことが
山ほどある、救出完了したら速攻で基地に戻って来い』

――敵かもしれないのに……

「……了解しました」
理不尽な思いは消せなかった。
うぱ太郎は気乗りしないままグレートサラマンダーZを動かし、バケツの蓋になっている
網棚と出刃包丁をよせた。そしてゆっくりとバケツを倒し3匹のウーパールーパーを救出する。

「早く逃げて頂戴!」
コックピットに乗り込んだとたんだった。2列の3人掛けシート前列にふんぞり返り、ピンクの
ウーパールーパーは開口一番そう言い放った。後列シートに座った白と黄色のウーパールーパーは
借りてきた猫よりもおとなしく、一点を見据えたままなにも喋らない。
「うぱ松さん、うぱるぱ3匹救出完了しました。これより帰還します」
ピンクのウーパールーパーを無視し、苦々しい気持ちのままうぱ太郎はうぱ松に報告する。

『了解。しかしその前にひとつだけ確認したいことがある。ピンクの娘さん聴こえるか?』
「あたし? 聴こえてるわよ。あなたは?」
外付けされたスピーカーからうぱ松の声がコックピットに響く。
全方向型集音マイクがうぱ太郎の直後に座るウーパールーパーの声を拾う。

『俺は、うぱるぱ王国科学技術省特殊銃器開発課特殊車両部第二班メカニック担当うぱ松というものだ』
「無駄に長いわよ。あたしはうぱ華子、ハナは華麗の華。あと白がうぱ倫子。倫理のリンよ。
黄色がうぱ民子。民衆の民でタミ。それで聞きたいことって?」
『単刀直入に聞く。お前は我々が老人Xと呼んでいる者の手先か?』
「!?っ…………」
核心をつくうぱ松の問いに、うぱ太郎、基地スタッフの面々が息を飲んだ。


ウーパールーパーで創作するスレ+(・─・)+2匹目
32 :「 グレートサラマンダーZ 」[sage]:2010/09/23(木) 01:08:15 ID:VAng+//+

「失礼ね、人をスパイみたいに言わないで頂戴。確かにご老人はあたしの飼い主だけどそんなんじゃないわ。
ある意味あたしも被害者なんだから」
『被害者……?』
「……そう。倫ちゃんと民ちゃんは養殖モノだけどあたしは天然モノ。ソチミル湖出身の生粋の
メキシコサラマンダーよ。自然種のメキシコサラマンダーはワシントン条約で保護対象になって
久しいのに密漁、密売で何の因果かこんなところにいるわけ。それがご老人の手によるものか
密売者の手によるものかは、あたしが小さかった時のことだから判断つかないけどね。
ようはさらわれて無理矢理連れてこられたってこと。誘拐事件の被害者よ、ニュースにもならないけど」

『…………判った。詳しい話は基地に戻ってから聞こう。うぱ太郎、大至急帰還しろ』
「…………了解しました」

――被害者……

 うぱ華子をどこまで信用していいか判らなかった。
わだかまりを残したままうぱ太郎はハンドルを握り直す。

「あたしからひとついいかしら?」
『あぁ、答えられる範囲でだが』
グレートサラマンダーZを発進させようとした矢先、うぱ華子がマイクに向かって話しかけた。

「このロボット造ったのうぱ松さんだっけ、あなた?」
『あぁ、そうだが……』
「そう。他の人は信じてなかったけどご老人は褒めていたわよ、面白いもの造るな。って」
『ほう、そりゃ光栄だ』
「馬鹿ね、こんなもの造って。あなたご老人に目をつけられたのよ。それがどういう意味か分かる?
もう生きちゃ行けないのよ、このロボットに関わった者すべてが。あたしを含めてね」

――どういうこと?
『ずいぶん悲観的だな』
うぱ太郎が口に出そうとした瞬間、すでにうぱ松の声がスピーカーから流れていた。
「あなた達だって分かってるんでしょ、ご老人がどんな怪物かって……
死ぬ前に外から地球を見たいって自家用スペースシャトルを発注するような大馬鹿者なのよ。
天文学的な桁の資金を持っているのよ!ほとんどのことはお金で解決できる人なのよっ!
それがたかだか1匹の大山椒魚のロボット全力で潰しに来るのよ!無事でいられるわけないじゃない!!!」
『……その手はずをお前は知っているのか?』
「知るわけないじゃないっ!!!変なクスリで眠らされて気づいたらこの有様よっ!!!」
うぱ松の問いかけに身を捩じらせてうぱ華子は怒り声で答える。


ウーパールーパーで創作するスレ+(・─・)+2匹目
33 :「 グレートサラマンダーZ 」[sage]:2010/09/23(木) 01:10:33 ID:VAng+//+

『……分かった、ありがとう』
「…………」
慣れない女の激情を目の当たりにしてうぱ太郎は言葉を失う。
それを知ってか知らずか、うぱ華子は冷静さを取り戻したかのように静かに続けた。

「こうなった以上あたしはあなた達に命を預けるしかないの。生半可な気持ちでいたら為すすべもなく
秒殺されるわ。ウーパールーパーを守るのが使命なら命を張ってでもあたしを助けて頂戴」
『あぁ、努力する。……うぱ太郎、聴こえるか?』
「……はい」
激昂にあてられて萎縮しているのか、うぱ太郎の返事に覇気はない。
それを諭すかのように、うぱ松は穏やかな口調になる。
『予定変更だ。相手の出方を見る。うぱ太郎はとりあえず川に入って隠れていてくれ』
「川……ですか?」

『そうだ。それでゆっくりでいいから1ヶ所に留まらず絶えず移動してくれ』
「ちょっと、なによ川って。そんなところいて安全なわけ?」
指示に不安を覚えたのかうぱ華子は聞き返す。

『絶対安全とは言えないがとりあえず身を隠すには絶好の場所だ。基地に戻ってきてもらいたいのは
やまやまなんだがもし老人Xが実力行使でグレートサラマンダーZや俺達を排除しようというなら
基地の場所を知られるのは困る。尾行されたりGPSの発信機でもつけられて位置情報を把握
されている可能性も否定できないからな。いずれにしてもグレートサラマンダーZの中でおとなしく
している限りは安全だ。それは保障する』
「……あ、あの、うぱ華子さん達はグレートサラマンダーZの中に居るより協力隊の人達に
匿ってもらったほうが安全じゃないですか?」
思いついたままにうぱ太郎は提案する。しかしうぱ松は聞き入れない。

『うぱるぱ王国協力隊はあくまで協力者であって我々の戦いに巻き込むことは出来ない。
最悪のことを想定すれば、彼女達の体に発信機が埋め込まれていてそれを辿って老人Xの手の者が
彼女達を襲いに行く可能性もある。そんな争いに無関係の人間を巻き添えにするわけにはいかない』
「ちょっと待ってよ。なによ発信機って。そんなもの埋め込まれている訳ないじゃん」
疑惑の目で見られていると思ったのかうぱ華子はうぱ松に食い下がる。

『最悪の場合を想定してのことだ、君を疑っているわけじゃない。ただ最新の技術なら豆粒大の
大きさで電波を発するものを作ることは容易だ。それにさっき君が言っただろう。変なクスリで
眠らされたって。その間、君が気づかないうちにその手のモノを君の体に取り付けられている可能性も
ある。取り越し苦労で済めばそれにこしたことはない。しかし老人Xに対しての君の言葉を信じるならば
このくらいの用心はしておいたほうがいい』
「……分かったわ。まぁ用心にこしたことはないからね。あなた達の思うままにして」
『他になにかあるか?うぱ倫子さんうぱ民子さんは?』
「彼女達は気にしないで。あまり喋らないから」
『……了解』
うぱ松は一呼吸置いた。
――被害者……。
うぱ太郎はうぱ華子のことを考えながらじっとハンドルを見つめ指示を待った。


ウーパールーパーで創作するスレ+(・─・)+2匹目
34 :「 グレートサラマンダーZ 」[sage]:2010/09/23(木) 01:12:07 ID:VAng+//+

『うぱ太郎、聴こえるか?』
「はい!」
うぱ松の声にうぱ太郎は思わず身を硬くした。

『さっき言ったとおり、まずは川を目指して移動してくれ。川に入ったらなるべく深いところに
潜って水面にはでないように。あとは遊泳していてかまわない』
「了解しました!」
『こちらから指示はだすがうぱ太郎も最悪の事態を想定して行動するように。まずはそこのビルを
出るときだ。充分周囲を確認してからビルから脱出してくれ。だが、もし万が一襲撃されることが
あってもグレートサラマンダーZにちゃちな鉄砲や刃物は通用しないから安心しろ。それは警察との
一戦でお前も分かっている筈だ。それでも人海戦術で次から次へと敵が現れるようなら相手にしないで
速攻で逃げろ。川に入ってしまえばこちらの勝ちだ。なんなら海まで行ってしまってもいい。
水中に入ったらこちらからの指示がでるまで陸には上がらないでくれ。老人Xがどんな武力装備で
来るかはなんともいえないが水中に居る限りはたとえ居場所が知られていても武器の殺傷能力は水の力で
半減する。それと通信は切らないでそのままにしていてくれ。約30分後にこちらから呼びかけるから
そのつもりで』
「了解しました!」
『頼んだぞうぱ太郎!』
「はい!」

 心を落ち着かせるために大きく息を吐いた。

――僕がしっかりしないと駄目なんだ。
 強く自分に言い聞かせた。

――大丈夫、うぱ松さんもスタッフのみんなも見守ってくれる。
 シートベルトのバックルを確認し滲んだ手の汗を拭った。

「あの、僕、運転荒いんでシートベルト必着でお願いします。それと結構揺れるんでいつでも踏ん張れる
ように体をしっかり支えていてください。あと舌噛んじゃいけないんで川に入るまでの間はなるべく喋らない
でください。それじゃこのビルから離れます」
「……了解」
うぱ倫子とうぱ民子の返事はなかった。うぱ華子の声だけが緊迫するコックピットに小さく響いた。

――大山椒魚さん、もう少しで協力隊の人が助けに来ますのでそれまで頑張ってください。
 心の中で縄を解けなかった大山椒魚にお詫びを入れた。
 窓の外を見る。まだ日が沈むには早い時間で午後の日差しが目に眩しい。

――よし、行くぞ!!!

 どんな戦いが待ち受けているかは分からない。それでもうぱ太郎は救出した3匹のウーパールーパーを
乗せて力強くグレートサラマンダーZを発進させた。


ウーパールーパーで創作するスレ+(・─・)+2匹目
35 :創る名無しに見る名無し[sage]:2010/09/23(木) 01:12:58 ID:VAng+//+
今日はここまで。


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