- 産経抄ファンクラブ第259集
255 :文責・名無しさん[sage]:2019/11/12(火) 07:03:04.81 ID:8uLjQn5a0 - 11月12日
31年前の今日、85歳で亡くなった草野心平は、「蛙(カエル)の詩人」と呼ばれていた。「トテモキレイナ花。 イッパイデス。イイニオイ。イッパイ。オモイクライ。オ母サン。ボク。カエリマセン。」(「青イ花」)。 ▼まだ幼いカエルはヘビに呑(の)まれてしまった。目の前に広がっているきれいな花は、ヘビの毒による幻覚だ ろうか。意識が薄れるなか、母親に別れを告げているのだ。カエルは常に天敵の脅威にさらされている。その一方で、 親の虐待に苦しむことはない。 ▼11月は国が定める児童虐待防止推進月間である。にもかかわらず、 今月に入って心が凍り付くようなニュースが続いている。福岡県田川市では6日、24歳の夫婦が1歳の三男に対す る傷害の疑いで逮捕された。昨年11月、ライフル型のエアガンを三男に向けて、おもちゃの弾丸数十発を発射した というのだ。三男はその数日後、肺感染症で死亡した。事件当時3歳の長男が撃ったと父親は説明したが、長男は 「パパが撃った」と話している。 ▼7日には、生後7カ月の男児を洗濯機に入れたとして、広島県福山市の 28歳の会社員が逮捕された。監禁の容疑を認めた会社員は、男児の母親と交際していた。男児の体には、複数のあ ざがあり、日常的に虐待されていた可能性もある。 ▼「人間は弱いもんでしょう。 そこへ行くとカエルの生命力は強いねえ。何の武器も持たずに生きている し、ケンカ一つしない」。あるインタビューで「なぜカエルの詩を?」と聞かれたときの心平の答えである。 ▼「みんなぼくたち。いっしょだもん。ぼくたち。まるまるそだってゆく。」(「おたまじゃくしたち四 五匹」)。カエルの詩は、心平の生命賛歌だった。人間の子供も大好きだったはずだ。
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