- やっちゃった!今日の朝日のドキュン記事 その119
129 :☆[]:2019/08/22(木) 22:07:29.01 ID:+Ad06nrj0 - >>127
(続き) 作品のいちばん大きな主題は、「魂のこと」である。作家自身のように具体的な信仰を 持たぬ者は、いかなる宗教にも頼ることなく、いかにして魂の救済を想像しうるのか。 小説は、自らの魂の問題に取り組むために四国の森の中の土地に移り住んだ男の受難を 描く。「ギー兄さん」と呼ばれる主人公は、「救い主」として教会を設立するのだが、 この小説を通して、大江は「宗教」なるものがどのように誕生し、組織化されて いくかを、壮大な構想力で再現しているようにも見える。 「救い主」の教団の一部が、教団施設を基地化して武装化していくあたりは、第3部が 刊行された95年3月に、オウム真理教による地下鉄サリン事件が起きたことを思うと、 すぐれた小説のもつ予言的な力というものを考えさせずにはおかない。 また、「救い主」の教団は、四国にある原発(伊方原発であろう)の前まで行進して、 そこで祈りの力によって、原発停止を実現しようとする。 大江健三郎が『ヒロシマ・ノート』(岩波新書)以来、核の廃絶を願って社会的な 発言・活動を粘り強く続けてきた事実を思えば、このような場面が描かれているのは 驚くべきことではないのかもしれない。 しかし、2011年の東日本大震災と福島の原発事故を経験したあとでは、この場面の 僕たちの受け止め方もまた、小説の刊行時以上に切実なものにならざるをえない。 (以下略)
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