- 産経抄ファンクラブ第252集
533 :文責・名無しさん[sage]:2019/04/08(月) 08:07:38.80 ID:uYI20xkA0 - 産経抄 4月8日
評判になっていると聞いて、久しぶりに生物の教科書を開いた。同僚の長辻象平記者が先月、連載記事で紹介した『生物・生命科学大図鑑』である。遺伝学の章でこんな記述を見つけた。 ▼「タンパク質合成が起こる前に『メッセンジャー(伝令)』がまず核内のDNAから遺伝暗号を細胞質中に運ばなければなりません。 この遺伝のメッセンジャーは、リボ核酸あるいはRNAとよばれます」。このリボ核酸の存在を1960年に解明したのが、英国の分子生物学者、シドニー・ブレンナーさんである。 ▼ブレンナーさんは次に、遺伝情報からどのようにして生物の複雑な機能がつくられるのか探ろうとした。そこで目をつけたのが、土壌などに生息する体長約1ミリの線虫である。来る日も来る日も、受精卵が細胞分裂して成長する様子を観察し続けた。 ▼その過程で、不要な細胞が自滅する「アポトーシス」と呼ばれる仕組みを突き止めた。がんの治療などにも応用されている業績で、2002年のノーベル医学・生理学賞を受賞している。線虫の研究はまた、ヒトのゲノム(全遺伝情報)の解読にもつながった。 ▼昨日の新聞で、親日家としても知られたブレンナーさんが92年の生涯を終えたことを知った。およそ偉大な学者のイメージからほど遠い、気さくな人柄だったらしい。とにかく、おしゃべりを始めたら止まらない。 ▼「私が邪魔されずに科学の話ができたのは、ただ一度だけ、彼がバイクの衝突事故で入院しているときだった」。共同研究者の一人の証言である。だじゃれの連続にあきれた孫も祖母に質問した。 「おじいちゃんは生まれつきお馬鹿(ばか)さんだったの? それともそうなるように勉強したの?」(『はじめに線虫ありき』)
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