- 産経抄ファンクラブ第252集
93 :文責・名無しさん[sage]:2019/03/25(月) 06:03:23.44 ID:6lA1xRwF0 - 産経抄 3月25日
「庭でふきのとうを二つばかり見つけたので、干しわかめの雑炊にふきのとうを散らして、いかの塩辛で食べる」「お米を倹約して、小麦粉とそば粉でホットケーキ。会社の人にもらったサッカリンを入れて焼いてみた」。 ▼文芸評論家の古谷綱武さんの秘書だった吉沢久子さんが、戦時中につけていた日記である。 召集された古谷さんから、「後で東京の様子がわかるように何でもいいから書いておいてくれ」と頼まれたものだ。乏しくなっていく食べ物の記載が毎日のように続く。 ▼後に夫となった古谷さんのもとには、来客が絶えなかった。手作り料理でもてなしていると、手際の良さや家事の工夫が編集者の目にとまった。新聞や雑誌に原稿を書くと、たちまち売れっ子になる。 ▼ただ夫は、お茶の一杯も自分で入れない亭主関白である。吉沢さんは北海道や九州で講演を頼まれても、日帰りだった。多忙だからこそ、家事を省力化する工夫に磨きがかかっていった。 ▼62歳で姑、65歳で夫を見送り、子供のいない吉沢さんの一人暮らしが始まった。「寂しくありませんか」とよく聞かれた。 吉沢さんは、「家族がくれた自由というプレゼントを大切にしよう」と気持ちを切り替えた。介護体験や高齢化社会の問題など、吉沢さんの仕事のテーマは、家事から生活の全てに広がっていく。 なかでも読者は、吉沢さんの元気の秘密を知りたかった。 ▼「いつも楽しいことを見つけて暮らしていると、年をとったなんて忘れてしまう」。昨年に出たばかりの著書『100歳。今日も楽しい』にある言葉である。 笑顔で台所に立ち、家庭菜園で野菜を収穫する吉沢さんの写真も掲載されている。まさに人生の達人が、101歳の天寿を全うした。
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