- 産経抄ファンクラブ第233集 ©2ch.net
246 :文責・名無しさん[sage]:2017/08/13(日) 07:06:14.40 ID:/hy/URwv0 - 【産経抄】バトンが受け継がれる夏 8月13日
何年前だったか。辛口のプロ野球評論で鳴らす豊田泰光さんが、「8月15日」に寄せてコラムを書いていた。豊田さんが西鉄入りした昭和28年は、戦争の影がまだ残っていたらしい。応召し、戦地に赴き、復員した一世代上の選手が各球団にいた。 ▼その多くは長続きせずに、ユニホームを脱いでいる。「おれはもう終わりだから、おまえらに渡す」。西鉄を去る先輩の言葉が、耳から離れなかったという。 「戦争がなければ全うしていたはずの選手生活の残りを渡すから…という意味だったと思うと、切ない」(『豊田泰光 108の遺言』)。 ▼やがて華やかな時代を迎える球界だが、ベンチ裏では誰に聞かれることもなく虚空に消えた「復員選手」の哀歌がいくつもあったに違いない。「オレは確かにバトンを受けました」とつづった豊田さんも、昨年8月14日に他界した。 ▼渡す人がいて、受ける人がいる。その作業を繰り返し、わが国は戦後72年の歳月を歩んできた。 今を生きる世代がなすべきことは記憶という繊細で壊れやすいバトンの感触を手のひらで確かめ、次の世代に渡すことにほかならない。 ▼この夏の帰省ラッシュは一息つき、空の便も鉄路も高速道もこれからUターンラッシュが始まる。父母のふるさとでお盆を過ごし、ご先祖の霊に息災を伝えた子供は多いだろう。 祖父母との語らいを通して、バトンを受け取った子供も多いに違いない。命の重みをかみしめたい、この季節である。 ▼2つの原爆忌があり、12日は日航機墜落事故で犠牲になった520人の三十三回忌が営まれた。15日には、72回目の終戦の日を迎える。 つかの間の地上を謳歌(おうか)するからだろう、日頃かしましく聞こえる蝉(せみ)しぐれに愛(いと)おしさを覚える時節でもある。 ?2017 The Sankei Shimbun & SANKEI DIGITAL All rights reserved.
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