- やっちゃった!今日の朝日のドキュン記事 その109©2ch.net
434 :☆[]:2017/04/14(金) 21:37:01.77 ID:rCfOF2lY0 - 4月13日(木)朝日新聞東京版朝刊文化面・瀬戸内寂聴「残された日々」22
百まで生きてやろうか 2月19日の寂庵での法話の日、私はいつものように立ったまま、 1時間あまり話をした。 終わりになって最後の言葉は舌がもつれ、呂律が回らなくなった。 聴衆たちは気づかなかったらしく、満足した表情でさっさと帰って行く。 そのうち右の足の親指が猛烈に痛くなった。 痛くない左の足は、いつの間にか2倍にふくれ上がっている。 異常を感じた私はすぐ病院へかけつけた。 カテーテル検査の結果、両足とも、主な血管3本が、すべて詰まっていて、 指先まで血が通っていないとのこと。 このままでは、壊死になると脅かされた。 医師は、 「心臓がもっと心配だ。1本の血管はすっかり詰まっているし、 あとの2本もとても細くなって血が通りにくくなっている」 という。 このままだと狭心症、急性心筋梗塞、心不全が起きる可能性が高いという。 「私はもう十分生きたから、心臓の手術までしたくありません」 と本音を告げても、医師は寝言を言うなという顔で相手にしてくれない。 要するに94歳まで生きのびると、内臓はすべて疲れきって、 ぼろぼろに近くなるということだろう。 (続く)
|
- やっちゃった!今日の朝日のドキュン記事 その109©2ch.net
435 :☆[]:2017/04/14(金) 21:49:02.90 ID:rCfOF2lY0 - (>>434の続き)
その病院では心臓の手術のいい医師がいないからと、 別の病院を紹介され移されてしまう。 手術の名人と名の高いという医者が診てくれ、 当然のようにその日から手術の準備がはじまった。 私のひ孫のような若い可愛らしい看護師が、平然と私の下の毛を剃り落とし、 尿管に管を入れる。 すべてがはじめての経験である。 何のためか、若い娘の指は、膣の中まで入ってくる。 出家して以来44年間、 そんなところを触ったことも触られたこともないので仰天する。 3月上旬、まずは足の血管を広げる手術を受けた。 約2週間後の心臓の手術は2人の医者にされた。 2時間余りかかったそうだが、自分では20分くらいにしか感じていなかった。 その後、ICUで一晩とめておかれた。 「経皮的冠動脈形成術」という非常に難しい手術だそうだが、 受ける方は何ともない。 術後は痛みも全くなくなった。 その3日後には退院して、普通の生活に戻っている。 あれやこれやで、今年に入って長いこと入院していたので、 自分になかなか戻れない。 足の痛みがなくなって、 とぼとぼながら家の中は歩けるようになったのが何よりうれしい。 まだ土の上は歩けていないが、それは日数の問題だろう。 (続く)
|
- やっちゃった!今日の朝日のドキュン記事 その109©2ch.net
436 :☆[]:2017/04/14(金) 21:54:25.54 ID:rCfOF2lY0 - (>>435の続き)
病院で、ある日、突然昼寝から覚めた時、 「早く、早く書いておいて。”この世もあの世も無だ”と書くのよ。 今、それを聞かされたの」 と叫んで、秘書を驚かせた。 確かにその声は今も胸に残っているが、退院して以来、私は病気以前と同じく、 とても「無」とは思えない雑然としたこの世のニュースに、毎日、 耳目を奪われている。 友人はどしどし死んでゆくのに、なぜか私な死ねない。 それだけ業が深いのだろう。 こうなれば、いっそ、開き直って、7万人近くもいるという100歳まで、 生きつづけて、書きつづけてやろうか。 (終り)
|