- 産経抄ファンクラブ第188集
306 :文責・名無しさん[]:2013/07/19(金) 06:34:55.84 ID:xURFdlnLP - 産経抄 7月19日
文芸評論家の奥野健男によると、昭和20(1945)年の敗戦直後の女 流作家には、「とまどった感」があった。確かに女性解放と男女同権は 実現した。それは、戦前戦中、彼女らが果敢に戦ってきた男性中心の 社会という、敵を失うことも意味していた。 ▼32年ごろからようやく、男の目を意識しない、豊かな仕事が目立つ ようになる。当時の文壇は、「ちょっとした平安朝時代」のようだった。 紫式部や清少納言が活躍した時代になぞらえたのだ。 ▼女流作家の活躍は、その後ますます目を見張るものがあった。奥野 は49年に出した『女流作家論』のなかで、述べている。日本の小説は、 「近い将来、女性の占有物になるのではないだろうか」。 ▼平成8年の第115回芥川賞は川上弘美さん、直木賞は乃南アサさ んが受賞した。史上初の女性のペア受賞が話題となったものだ。第 149回の今回の両賞は、藤野可織さん(33)の『爪と目』と桜木紫乃さ ん(48)の『ホテルローヤル』に決まった。日本でもっとも知名度の高い 文芸賞は、またも「女性の占有物」となった。もはや誰も驚かない。 ▼生後数カ月の娘を連れたシングルマザーがカフェで小説を書き、世 界中で大ブームを巻き起こす。以前コラムに取り上げた『ハリー・ポッ ター』の作者、J・K・ローリングさんについて、英日曜紙が最近、特ダ ネを書いた。「ロバート・ガルブレイス」と名乗る男性の新人作家が書 いた探偵小説が、英国では今評判となっている。実は本当の作者は、 ローリングさんだったという。 ▼女が男の小説を書く。その逆もある。「女流作家」は、すでに死語に なったようだ。まして「閨秀(けいしゅう)作家」などという言葉は、若い 人にはちんぷんかんぷんだろう。
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