- 産経抄ファンクラブ第144集
468 :文責・名無しさん[sage]:2010/12/24(金) 06:31:28 ID:onU5EJZ4P - 産経抄 12月24日
数日前に紙上でお知らせしたように、元日から、新連載小説『ダン吉』がスター トする。作者は、社会部の将口泰浩記者である。 ▼記者と小説といえば、司馬遼太郎を思い浮かべる読者がいるかもしれない。 確かに福田定一(本名)記者が昭和35年に『梟(ふくろう)の城』で直木賞を受 賞したときは、文化部に所属していた。もっとも『竜馬がゆく』や『坂の上の雲』 を小紙に発表したのは、退社して作家活動に専念してからだ。 ▼在職中の記者が連載小説を書いた例としては、論説委員長などを歴任した 八木荘司さんの『遥かなる大和』など、古代史をテーマにした一連の作品が挙 げられる。もっと遡(さかのぼ)れば、戦前から戦後にかけて活躍した無頼派作 家、織田作こと織田作之助に行き着くことを、最近知った。 ▼織田作が、大阪市北区に本社があった小社の前身、日本工業新聞社に入 社したのは、昭和14年9月だった。「戦争と産業」の課題作文や面接の入社 試験を受けて、合格したという。記者としては、主に鉱山監督局を担当して、非 鉄金属の動向を取材した。勤務態度はまじめとは言い難かったが、文才は評 判だった。 ▼インタビューした阪急グループの創業者、小林一三から、的を射た質問だと ほめられた、とのエピソードも残す。まもなく僚紙の夕刊大阪新聞に異動すると、 たまたま文芸欄に空きができ、15年10月から約3カ月間、『合駒富士』という 時代小説を連載した。結局在職は3年足らずだったが、代表作の『夫婦善哉 (めおとぜんざい)』もこの間に書かれた。 ▼織田作は、終戦直後の小紙にも執筆している。その後連載したふたつの小 説の作者も、小紙の記者だった。将口記者は、こんな歴史に連なっている。乞 うご期待。
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