- 産経抄ファンクラブ第143集
446 :文責・名無しさん[sage]:2010/11/22(月) 06:29:14 ID:DtjWLCQa0 - 産経抄 11月22日
「ロシアから賠償金も取れずに条約を結んだのはけしからんといって、日比谷公園が 焼き打ちされる大騒動に発展した。(衝突事件でも)釈放や逮捕だけ取り出してどう のこうのと声高に叫ぶことはよろしくない」。 ▼中国漁船衝突事件をめぐって、日比谷焼き打ち事件を引き合いに出した、仙谷由 人官房長官の発言は前にも取り上げた。戦争の実態を知らされなかった民衆が、マ スコミに扇動されて起こした事件−そんな“史実”を踏まえた、マスコミ批判らしい。 ▼もっとも、事件にはまだ謎が多い。各地で警察署や市街電車が襲われた現場に は、指揮者がいた、との証言が当時からあった。黒幕は当時の首相、桂太郎その人 だと主張する研究者もいる。 ▼民衆の怒りの「ガス抜き」を図り、その上で言論統制に乗り出したというのだ。確 かに事件の翌日、戒厳令と新聞雑誌取締令を発した政府の手際はあまりによすぎ た。この説に従えば、情報隠蔽(いんぺい)に走る政府の恐ろしさが強調され、仙谷 氏の発言はやぶ蛇となる。 ▼ところで以上の知識は、『日露戦争 勝利のあとの誤算』(文春新書)で得たもの だ。加山雄三さんの曾祖父が、警察によって封鎖された日比谷公園の柵を最初に 乗り越えた人物であり、別の演説会場では、小泉元首相の祖父が捕縛され、電柱 に縛り付けられた。興味深いエピソードも満載だ。 ▼その著者、黒岩比佐子さん(52)の訃報(ふほう)には驚いた。古書市などで集 めた資料を読み込み、紡ぎ上げた歴史物語の評価は高まるばかりだ。編集者とし ての国木田独歩、食育の先駆者、村井弦斎、日本初の編集プロダクションを率いた 堺利彦…彼らに続く、隠れたヒーローの物語をもっと読みたかった。
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