- 夏美(25)「鬼ポータブル多機能プレーヤぁ~」 すみれ(26)「(ニコニコ)」
121 :名無しで叶える物語(わんこそば)[]:2023/03/07(火) 19:16:59.84 ID:UkaDHYSe - 1週間後、株式会社オニナッツ事務所
夏美「……」ソワソワ かのん「私達の曲、大会で使われてないのを『カラオケ一等賞』(天王寺製)に入れられないかな」 可可「高ラ連は自分たちはメチャクチャやるのに、権利関係はキビシイと聞いてマスよ?」 かのん「連盟理事の恋ちゃんか、取材対象にしてるメイちゃんなら相談に乗ってくれるよきっと」 可可「イザとなったら研究室に突撃して、シキシキに何かスゴイ薬を作ってもらって売りまショウ!」 すみれ「あんた達、恋たちはそれぞれカタギの仕事が順調なんだから…迷惑掛けるような当たりはダメったらダメよ?」 かのん「何か私達、ヤクザさんみたいだね」クス
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122 :名無しで叶える物語(わんこそば)[]:2023/03/07(火) 19:22:48.44 ID:UkaDHYSe - 可可「確かに、迷惑は掛けられマセン」ウンウン
可可「ここにいる敗北者たちと違って…」 かのすみ「言い方ぁ…」 可可「巻き込まれてないメンバーは、頑張って社会的立場を築いたスバラシイ人たちなのデスからね」フンス キョドっている私を尻目に、クカスの3人は楽しそうに話をしている。 言っておきますけど、私は低空飛行だっただけで過去に挫折したわけじゃないんですからね。 …現在進行形で心折れそうになってますけど。 あの夜以降、微妙な距離感になってるすみれさんとの関係も悩みの一つだけど、主たる原因は…やはりきな子の事。
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123 :名無しで叶える物語(わんこそば)[]:2023/03/07(火) 19:26:30.38 ID:UkaDHYSe - 恋愛関係が自然消滅した後も、きな子とはたまに他愛もないメッセージで連絡は取り合っていた。
でも、あの夜の後すみれさんからそれとなく?聞いたところ、実は彼女はすみれさんともやり取りしていて…。 特にすみれさんがオニナッツの所属になってからは、「遠距離恋愛中」としてよく私の事を話すようになったらしい。 「恥ずかしいから本人の前では話題にしないで欲しいっす//」と念を押して。 確かに、私もあなたも「別れる」とは言っていない。 でも、連絡の頻度や話題から…聡いあなたならとうに察して納得したものだと思っていたし、言葉に出して伝えるなんて事は当時のメンタルにはあまりにも辛過ぎた。 でも、どうして今…。 あなたは今、何を考えているの? …その彼女がこれから、ここに来る。
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124 :名無しで叶える物語(わんこそば)[]:2023/03/07(火) 19:29:43.59 ID:UkaDHYSe - きな子(25)「お邪魔しますっす!」ガラガラ
みんな「「!!」」 きな子「…ここは一体どこっすか~?」パタパタ クカス「「株式会社オニナッツ~!」」 きな子「教えてくれてありがとうっす☆」 かのん「きな子ちゃん!」 可可「久しぶりデェス!」 すみれ「元気そうねぇ!」 皆に囲まれて、パアッと笑顔を咲かせるきな子。 医療関係の仕事だからと大きく切られた髪。 でも、底抜けの愛嬌は以前のまま。 …少しだけ太ったかな? 事情はどうあれ、とにかく再会できた嬉しさが込み上げて来る。
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125 :名無しで叶える物語(わんこそば)[]:2023/03/07(火) 19:34:23.93 ID:UkaDHYSe - 胸に詰まる思いを言葉に出せないでいると、彼女はまっすぐ目の前まで近付いてきた。
きな子「夏美ちゃん…」 夏美「…きな子」 きな子「久しぶりだね…CEO?」ニコリ 夏美「…ッ」 やめて。 その声で、その呼称を口にしないで。 あなたを思い出したくなくて、名乗るのをやめたのに。 きな子「今までの番組、全部観てたっすよ?」 きな子「あれじゃあ、すみれさんがCEOの愛人みたいっすね~」ニパ 夏美「……」 きな子「でも、この日が来るまで『元先輩』と楽しくああいう番組を作って頑張って来れたのは…とっても素敵な事だときな子は思ってるっすよ?」
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126 :名無しで叶える物語(わんこそば)[]:2023/03/07(火) 19:39:43.51 ID:UkaDHYSe - …どういう意味?
この日って何? 可可「ナッツ、何かすごいイイ顔してマス//」ホゥ すみれ「……」 かのん「いやぁ若いねぇきな子ちゃん!」 かのん「私もその辺は、まだ行ける自信はあるんだけどね?」ドヤ 今は心底どうでもいいけど…この人、完全に以前の調子を取り戻してる。 そっち方面に寛容になった分、余計にタチが悪いし。 すみれ「またウィーンの話?」 かのん「それ地名と名前を掛けてる?上手いなぁすみれちゃん」ケラケラ 可可「よくもマァ自分から触れ回れマスね…」ハァ
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127 :名無しで叶える物語(わんこそば)[]:2023/03/07(火) 19:46:39.62 ID:UkaDHYSe - 先生「澁谷さんには、外国の女性と懇ろになれる適性があるようですね」カンシン
可可「…機会があっても、かのんは絶対姐姐とは遭わせないデス」ジト 先生「まぁ私も、そのあたりは何とか…//」 すみれ「もう、先生まで何言ってるのよ」 こっちの気も知らないで、なんつう話をしてるの…。 ちゃっかり混じってる先生も、見た目によらずイケる口なんですかね。 …って、先生!? 夏美「何できな子と一緒に…?」 先生「あ、お疲れ様です鬼塚社長」ペコ きな子「師匠の事、CEOは先生って呼んでるんすねぇ」 先生「…皆様、普通に名前で呼んで頂いてもいいんですよ」ハァ 夏美「あの、2人はいったい…」オロオロ
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128 :名無しで叶える物語(わんこそば)[]:2023/03/07(火) 19:50:03.28 ID:UkaDHYSe - 先生「桜小路様は、3年ほど前から弊社と契約していたのです」
先生「鬼塚社長を、自分の名前は秘して支えて欲しいとね」 夏美「…え?」 先生「コンサルティング料金がお安くなっていたのは、そういう事ですよ」 3年くらい前といえば、私が会社の将来に悩んでいた頃。 そして、あなたの恋人であることを諦めた頃。 私が過去の遺産で細々と暮らす中、あなたは北海道の大学の獣医学部で忙しい中でもキラキラしていて…。 大学を卒業したら、地元の動物病院で働くって聞いて…。 これからもっと人生を豊かにしていくあなたの足かせになりたくなくて…。
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130 :名無しで叶える物語(わんこそば)[]:2023/03/07(火) 20:01:16.47 ID:UkaDHYSe - …いや、彼女のためなんかじゃない。
全部、私の都合。 あなたと差が開いていく中で関係を続けるのが惨めで、耐えられなかった。 そして、捨てきれなかったすみれさんへの想いが…私の勝手な決めつけの背中を押してしまっただけ。 きな子「側で支える事も出来なかったし、きな子が助けるって言ってもガンコな夏美ちゃんは嫌がるでしょ?」 夏美「……」 きな子「だから、黙って応援する事にしたの」 きな子「でも、会社をここまでにしたのは夏美ちゃんの実力っす!」 先生「その通りです」 先生「理念に反したとしても、スクールアイドルで得た物を後人生に直接生かしていきたい…。出逢った大切な人と歩んでいきたい」 きな子「(ウンウン)」 先生「そのEMOTIONを社会に合わせる形ではなく、逆に風穴を開けるような力を束ねて実現させる適性がある人たち…」 先生「私共、『株式会社無問題』(通称『ラ!』社)は、そんな我儘で頑固な似た者同士…皆様を待っていたのですよ」
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132 :名無しで叶える物語(わんこそば)[]:2023/03/07(火) 20:07:44.62 ID:UkaDHYSe - かのん「な、なんかすごい話!」
すみれ「まぁ、この年まで揃いもそろって往生際が悪い連中なんてのは、私達くらいのものかもね」 先生「今後の鬼塚様の会社の戦略について、弊社代表の鐘手づから策定したロードマップがこちらですので…是非参考にして頂きたいと」スッ 可可「ナニナニ…?『澁谷かのんの歌手デビュー』、『各メディアへの進出とイベントの企画実行』、『新ブランド立ち上げと所属タレントとのタイアップ』…」パラパラ すみれ「それと同時進行で、『桜小路きな子氏の能力を生かしたタレント活動の第一歩として、動物病院を都内に開業』…」パラパラ かのん「『ネックとなる賃料は、鬼塚商店1階の小規模改装によりクリア可能と認める』…だって!」パラパラ 先生「私の知る中で最も優秀な人間が、勝算をもって作ったものです」イ^⇁^ナドヤ は? 私の家、動物病院になるの? てことは、さっきのきな子の言葉…。 「東京に居を構える日が来た」って意味か…!
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134 :名無しで叶える物語(わんこそば)[]:2023/03/07(火) 20:12:13.98 ID:UkaDHYSe - すみれ「じゃあきな子は20代で開業する事になるのね?やるったらやるじゃない!」
きな子「そうなんすよそうなんすよ~!この話が実現可能だと太鼓判を押してくれた師匠と鍾社長に感謝っす!」バシバシ 先生「痛いです」ニコ この家の所有者…父親は志半ばでこの店を閉じた人だから、私達の望みとあれば快く認めてくれるだろう。 そこまでの読みであればショー社長という人は大したものだけど、ちょっとですね。最短距離を突っ走り過ぎと言いますか。 かのん「それなら、きな子ちゃんもこっちに引っ越すって事だよね?やったぁ!」パアァ きな子「ようやくCEOの会社で働けるっす。これからはずっと一緒ですよ?夏美ちゃん!」パアァ だからそれが一番混乱してる事なんだってば! だって、今の私にはすみれさんが…。
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136 :名無しで叶える物語(わんこそば)[]:2023/03/07(火) 20:24:34.22 ID:UkaDHYSe - 先生「個人的な話ですが、私は昔大切な人が去って行くのを追う事ができませんでした…」
先生「素晴らしい仲間たちがいたので事なきを得ましたが、何故一人でも彼女を追う事ができなかったのかという後悔は…今でも残っています」 可可「それは難しい問題デスね…」チラッ すみれ「やめて//」 先生「でも、同じような悩みを持つ桜小路様のために働き…このような素晴らしい結果に繋げられたことで、心のモヤが晴れた気がします」 働くって…すみれさんの件の報告もそれに含まれてたって事ですよね。 きな子の気持ちを即ぶつければ、すみれさんを得た私のモチベに影響すると予測した…。 そして…私がすみれさんとニャハりそうになるか、会社が動物病院を開業できるくらいに大きくなるまで、事情は隠しておこうときな子に提案した…。 こんな顔して色恋沙汰まで監視してたとか…恐ろしい人だ。 きな子「本当にありがとうっす、師匠ォ!」ヒシッ 先生「良かったですね、きな子さん!」ヒシッ いや、すごくいい話だけど…私の意思は? すみれ「………」 すみれさんは何か切なげに微笑んでるし!
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137 :名無しで叶える物語(わんこそば)[]:2023/03/07(火) 20:30:01.65 ID:UkaDHYSe - …あ。
すみれさんのたまらん表情を見てたら思い出してきた。 あの時…すみれさんは酔っていたとはいえ、私ときな子の関係(きな子談)を知っておきながら…。 その、愛人候補みたいな何かに手を挙げかけたって事ですよね? それ、すごくエッチだと思わない?ねぇかのんさん可可さん!? 今の状況だからこそ摂取できたものに、ニャハ~の気持ちが湧き出てくる。 そう、今までも原動力にしてきたこの気持ちがあれば…これからも皆で夢を叶えるための会社経営ができるはず。 …でも、きな子との事はこのままじゃいられないし(無限ループ)。 浴びせられる情報と感情が多すぎて、もう脳がオニナッツ状態。
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138 :名無しで叶える物語(わんこそば)[]:2023/03/07(火) 20:33:12.23 ID:UkaDHYSe - えぇと?
大規模投資を受けて所属4人を抱え、音楽事業やらファッション事業にも乗り出して…。 ついでに、ここは動物病院になって。 何と言っていいか分からない関係のきな子が引っ越してきて、何と言っていいか分からない関係のすみれさんもいて…? 夏美「ど…」「ど…」 可可「…ど?」 すみれ「……」 かのん「ど う な っ ち ゃ う の ~ !?」ドアップ 夏美「あなたが言うんかいですのーー!!」
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139 :名無しで叶える物語(わんこそば)[]:2023/03/07(火) 20:55:21.62 ID:UkaDHYSe - 可可「かのんのそのカオ、久しぶりに見マシタ~」ゲラゲラ
きな子「これから楽しくなりそうっすね~!」キャッキャッ 先生「皆様の夢、そしてあなたの夢にも一歩近づきましたよ?ランジュ…」ウルウル ワイワイガヤガヤ すみれ「もう、ちかたないったら仕方ないわねぇ…」フゥ 夏美「…ナッツ?」 騒ぎの中、すみれさんがこちらをチラリと見てくる。 …もしかして、一人でいつまでもキョドってたから色々とバレた!? 『きな子がすみれさんに話していた事は嘘じゃなかっけど、私は勝手に終わった事にしてて、さらにすみれさんに粉かけようとしてました』 文章にするとひどすぎる。 これ私最低な女になるじゃん? 今でさえ微妙な空気なのに、余計避けられる!! すみれ「あなたが『そう』なら、私もこれからもっと頑張らないとね?」 夏美「…!?」 周りの話題にも合うような…それでも意味深な言葉を漏らす。 そして、非難の表情に変わると覚悟していたそれは…。 すみれ「これからもよろしくね…」 今まで見たこともない大人の女性の顔…かつて夢想していた「完璧なモデル」もかくやの表情になって。 すみれ「な つ み?」クスッ 夏美「…はいですの//」 ゆるりと紡がれたその言葉に、私はただ頷くしかなかった。 おわり
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