- 「くぅくぅ土星論」
637 :名無しで叶える物語(たこやき)[sage]:2022/12/29(木) 03:27:27.71 ID:ctpyyijd - ☆
ドンドンドン! 可可「…………かのん! ククデス!」 かのん「クゥクゥちゃん……?」 可可「かのん! いますぐ出てきてクダサイ!」 可可「このままでは、かのんがころされるデス……!」 かのん「えっ……こ、ころされるぅ!? 私が……?」 かのん「……いやいやまっさか〜。冗談、だよね……?」 可可「……お願いデス。急がないと、やつらが来マス!」 かのん「…………」 かのん「む、むりむりむり! 私、ずっとこの部屋にいて……外とか、怖くて出たことないし!」 可可「かのん……!」 かのん「……いやだ、出たくない」 かのん「怖いよ……」
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- 「くぅくぅ土星論」
638 :名無しで叶える物語(たこやき)[sage]:2022/12/29(木) 03:28:52.16 ID:ctpyyijd - 「ここに、神がいるんだね!」
可可「!!」 かのんが渋っているうちに、すぐそこまで追手が迫っていマシタ。 何人いるのかもわかりマセンが、ククは手を横に出し、立ちふさがりマス。 「そこ、どいてくれないかな?」 「……あなた、クゥクゥちゃんだよね。私、ラブライブの予選でLiella!のこと観てたよ!」 「かわいらしいなぁって思ってて……。だからあまり、手荒なことしたくないんだよね」 可可「……どうして、神殺しに執着するのデスか!」 「だって、神だから。私たちを破滅させた悪だから」 可可「違いマス! かのんはそんなことしていマセン! そもそも、時系列を考えても、かのんが惑星国家に来る前から支配はあったはずデス! つまりかのんは、傀儡でしかないんデス!」 「……だから? 神であることには変わりないよね?」 可可「!?」 なんデスか……。言葉が通じマセン……。 これではまるで、バベルの塔の話みたいではないデスか……!
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- 「くぅくぅ土星論」
639 :名無しで叶える物語(たこやき)[sage]:2022/12/29(木) 03:30:08.62 ID:ctpyyijd - ──するするする
「……ど、どいて!」グンッ 可可「うぐぅっ……!?」 死角から巨大なハンマーで殴られマシタ……。全方位すべて死角デスけど……。 ──ぶるぶるぶるぶるぶるぶる 「……灰にするよ?」 可可「っ……!」 かのん「クゥクゥちゃん!? やめて……逃げてよ……!」 可可「……いやデス」 かのん「なんで!? どうして私のこと、そこまでして助けようとしてくれるの……!?」 かのん「私なんかのために……。記憶もないのに……どうして……?」 可可「…………」 可可「ククは……かのんのスバラシイ声に、惚れたんデス」 かのん「え……?」 可可「あの時、かのんと初めて会ったあの瞬間……。ククの運命は変わりマシタ」 可可「かのんはククの、恩人デス……! 絶対に助けてみせマス……!!」 かのん「クゥクゥちゃん…………」
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- 「くぅくぅ土星論」
640 :名無しで叶える物語(たこやき)[sage]:2022/12/29(木) 03:31:02.54 ID:ctpyyijd - ガチャ。
「お、出てきた」 可可「か、かのん!! なぜ出てくるのデスかぁ!?」 かのん「ええっ!? だって、クゥクゥちゃんが出てきてって言うから……」 可可「それは敵がいなかったからデス! いまは状況が変わってマスから……」 「──バイバイ!」ダッ 可可「!! しまっ──」 かのん「クゥクゥちゃん!!」グイッ 敵の突進を、間一髪。かのんのおかげでよけられた! しかし、床に伏せるように倒れてしまったふたり。上から追撃──。 グンッ! 可可「あぐっ!!」 かのん「クゥクゥちゃん!? ああ! ごめんなさい……!!」 可可「大丈夫……デェス……! それより、逃げなきゃ……」
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- 「くぅくぅ土星論」
641 :名無しで叶える物語(たこやき)[sage]:2022/12/29(木) 03:31:49.76 ID:ctpyyijd - 「おっと、どこに逃げるつもりかな?」
可可「……それは…………」 「下よ、下!」 可可「下……」 「あはは。逃すと思う?」 「エレベーターは、袋のねずみ……。階段も、すぐに追いつく……」 可可「……………………」 ありぇ…………いま、違う声が聞こえたような……。 かのん「クゥクゥちゃん……」 可可「…………かのん。この欄干の下は、どうなってマスか?」 かのん「え……下は…………ひぃぃ!? た、高っ!! ここ、こんなに高かったのぉ!?」 かのん「ここから落ちたら、地面まで真っ逆さまだよ……!!」 可可「……そうデスか」 ククはかのんにぎゅーっと抱きつきマシタ。 可可「それでは、かのん。ククといっしょに飛び降りマショウ!」ギュー かのん「……………………え?」
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- 「くぅくぅ土星論」
642 :名無しで叶える物語(たこやき)[sage]:2022/12/29(木) 03:32:51.57 ID:ctpyyijd - かのん「いやいやいやいやいやいやいや!! むりむりむりむりむりむりむりむりむり!!?」
可可「心配いりマセン! 下まで落ちれば、いまこの窮地から、脱出できマス!」 かのん「人生からもね! 普通に死んじゃうよぉ!?」 かのん「…………あ、あの……クゥクゥさん? 本気で言ってるの……?」 可可「もちろんデス!」ギュー かのん「うわぁっ!? 離してくれない……!」 かのん「ちょ、私をころそうとしてるそこのおふたり! 助けてー!!」 「あはは。なんか叫んでる」 かのん「!! 言葉が通じないよぉ!?」 かのん「やだやだやだやだやだやだぁーーー!! 死ぬにしても、飛び降りだけはやだぁぁぁーーー!!」 かのん「私ね、記憶ないけどさ、たぶん高所恐怖症だよ!? さっきからひざガクガクだもん!!」 可可「それでは、いきマスよー!!」 かのん「いやぁ!! 神様ぁ! どうか助けてください……!」 ずりずりと、身体が欄干の外へと引き込まれ……やがて自由落下がはじまりマシタ。 かのん「いやああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!?!?」
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- 「くぅくぅ土星論」
643 :名無しで叶える物語(たこやき)[sage]:2022/12/29(木) 03:33:51.75 ID:ctpyyijd - 可可「ひゃっほおおおおおーーー!!!」
かのん「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」 かのん「死ぬうううううう!!! 死んじゃううううううううううううううううううううう!!!!!」 かのん「いやだああああああああああああああああああああああああああ────」 かのん「」 かのんが気絶すると、空気のこすれる音だけが残った。 ククとかのんは加速し続け、一直線に、地面へと叩きつけられようとしている。 このままでは、かのんは死んでしまいマス。 ……ククは、信じていマスよ。 『まったく……クゥクゥちゃんは無茶するなぁ』 『でも、この行動力が、かのんちゃんを変えたんだよね』 かのん「……………………はっ! え!? まだ落ちてるううううううう!!?」 可可「かのん! 意識戻ったんデスね!!」 かのん「いやあああああああああああああああああああああああああああああああああああ──」 『──よいしょ♪』 落下エネルギーは高次に包まれ、すべて霧散しマシタ。 ククたちは、すべすべの毛に捕まり、地面をすり抜けていきマシタ。 …………千砂都なら必ず、ククたちを拾ってくれると、信じてマシタよ……!
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- 「くぅくぅ土星論」
644 :名無しで叶える物語(たこやき)[sage]:2022/12/29(木) 03:34:44.13 ID:ctpyyijd - ………………………。
………………………。 一筋の風が、髪をなびかせマシタ。 なつかしいにおいが、ククの鼻を撫でマス。 初めて日本に来た時に感じ、ずっと大切にしていた、初めてのにおい──。 可可『…………春のにおいがしマス』 きな子『えっ!』 となりを歩いていたきなきなが、目をまんまるにして驚いていマシタ。 可可『どうかしマシタか、きなきな?』 きな子『あ、いや……ちょっとびっくりしたっす』 きな子『さっき、まったく同じことを、すみれ先輩も言ってたっすから』 可可『!? す、すみれも……デスか……!』
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- 「くぅくぅ土星論」
645 :名無しで叶える物語(たこやき)[sage]:2022/12/29(木) 03:35:40.64 ID:ctpyyijd - ほおが桜色に染まりマシタ。ククは必死に弁明を試みマス。
可可『ち、違いマスよ? これは、すみれのまねではなく、ククが感じた感覚デスから!』 きな子『……じゃあ、感じ方がおそろいなんすね?』 可可『!?』 もっと恥ずかしい解釈をされ、さらに濃く染まりマス。 なんとか話題を逸らそうと、きなきなに提案してみマシタ。 可可『き、きなきな! 今度ククとおでかけしマショウ!』 きな子『! いくっすいくっす!!』 噴水『ブシャー』 ──夢寐にも忘れない思い出。 ………………………。 ………………………。
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- 「くぅくぅ土星論」
646 :名無しで叶える物語(たこやき)[sage]:2022/12/29(木) 03:36:47.10 ID:ctpyyijd - ☆
かのん「…………」 かのん「生きてる?」 可可「はい! なんとか逃げられマシタ!」 かのん「よ、よかったぁ……」 ガサゴソ。 かのん「ひぃ!? な、なにかいる……!」 かのん「真っ暗でなにも見えないよ……クゥクゥちゃあん……!」 可可「ククはここデスよ〜」 どうやらククたちは、地面を貫通し、地下まで落ちてきたようデス。 光が途絶えた闇の中。かのんは怯えて、ククの腕にしがみつきマス。 恋「うぅ、穴に飲み込まれたと思ったら真っ暗……ここはどこなのですか……?」 可可「レンレン──!」
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- 「くぅくぅ土星論」
647 :名無しで叶える物語(たこやき)[sage]:2022/12/29(木) 03:37:35.03 ID:ctpyyijd - 恋「クゥクゥさん!? はあ……よかった、無事だったのですね……!」
可可「レンレン〜! おけがはないデスか?」 恋「はい、わたくしは大丈夫ですよ」 かのん「……だ、だれ? 何語しゃべってるの……?」 恋「! かのん、さん……!?」 可可「レンレン。かのんは新言語がわからないので、日本語で話してクダサイ」 恋「そうでしたね……こほん」 恋「かのんさん! わたくしです、葉月恋です!」 かのん「……ごめんなさい。私、記憶がなくて……。葉月さんとはどういった関係だったの?」 恋「か、関係……ですか」 恋「んー、わたくしとかのんさんはお友だち……いえ、親友? 流石に僭称かもしれませんね……ここはやはり、仲間と呼ぶのがふさわ──」 千砂都「かのんちゃんっ!!」シュルシュル かのん「うわあ! また増えたー!?」 恋「ち、千砂都さん!?」 可可「千砂都! 助けていただき、ありがとデス!」 千砂都「もう〜! あんまりひやひやさせないでね?」 かのん「人がいっぱい……!」 恋「いったいなにがどうなってるのですか……!?」 可可「各々で察してクダサイ!」
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- 「くぅくぅ土星論」
648 :名無しで叶える物語(たこやき)[sage]:2022/12/29(木) 03:38:33.96 ID:ctpyyijd - ☆
かのん「……あなたが、お友だちの恋ちゃん」 恋「はい」 かのん「で、あなたが……幼馴染の、千砂都ちゃん?」 千砂都「違うよ、ちぃちゃん!」 かのん「え……ご、ごめん! ちぃちゃん…………」 千砂都「うん。……うんっ!!」 かのん「私たちは、Liella!っていうアイドルグループの、仲間だったんだね……?」 可可「はいデス!」 恋「正確には、スクールアイドルです」 かのん「スクールアイドル……」 千砂都「……だめそう?」 かのん「うん……。全然思い出せない、ごめん……」 千砂都「いいのいいの! 記憶がなくても、かのんちゃんはかのんちゃんだもん!」 かのん「……ありがとう。そう言ってもらえて、ちょっと楽になれたかも」
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- 「くぅくぅ土星論」
649 :名無しで叶える物語(たこやき)[sage]:2022/12/29(木) 03:39:08.09 ID:ctpyyijd - かのん「それで……ここどこ?」
千砂都「地下にある、この星の核部分だよ」 恋「なぜそのような場所に……」 千砂都「クゥクゥちゃんの意思が、ここに来たいって言ってたの」 可可「…………」 遠くのほうで、光がいざなっていマス。 可可「あちらに光が見えマス! 行ってみマショウ」 恋「クゥクゥさん、目が見えるんですか……?」 可可「太陽などの強い光であればわかりマスよ」 恋「……? あの、クゥクゥさん……」 可可「どうかしマシタか?」 恋「……光なんて、どこにもありませんよ」 可可「あぇ……。あそこに見えマセンか? 確かな輝きが!」 かのん「ううん、なにも……。クゥクゥちゃんには、なにが見えてるの……?」 どうなってるのデショウか? あれだけ煌々としているのに、見えない……? 目が見える人には見えなくて、目が見えない私には見える……なんだかなぞなぞみたいデス。
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- 「くぅくぅ土星論」
650 :名無しで叶える物語(たこやき)[sage]:2022/12/29(木) 03:39:54.47 ID:ctpyyijd - 可可「…………ほんとに、見えないのデスか?」
かのん「うん」 恋「これだけ暗いのですから、多少の光があれば敏感に気づくはずです」 可可「……………………」 トクン。心臓が強く鳴りマス。 暗澹に沈むククを、照らしてくれた光──。 迷うククを、導いてくれた一番の親友──。 …………グソクムシ、なのデスか……? …………。 いえ、違いマス。これは……。 根拠もなにもありマセンが、とある直感が心を掻き立てマシタ。 可可「…………………………………………」 可可「…………………………………………」 可可「すみれ?」
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- 「くぅくぅ土星論」
651 :名無しで叶える物語(たこやき)[sage]:2022/12/29(木) 03:40:53.46 ID:ctpyyijd - 一歩、また一歩。
近づくにつれ、その光は大きくなり、強い輝きを放ちマシタ。 そして、手に触れられる距離まで来マシタ。 震える手で、彼女のほおを撫でマス。 「クゥクゥ……」 声はすみれのものデシタ。容姿も、体格も、すべてがすみれデス。でかいの果実も立派に実ってマシタ。 デスが、指に伝わるプラスチックの質感が、現実を突きつけマス。 これはアンドロイド。すみれではありマセン。 「ごめんなさい……」 「私、死んじゃって……。こんな身体になっちゃったわ」 可可「…………」
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- 「くぅくぅ土星論」
652 :名無しで叶える物語(たこやき)[sage]:2022/12/29(木) 03:41:48.74 ID:ctpyyijd - 「みじめったらみじめよね、私……。こんな姿になってまで……」
「それでも……クゥクゥに、会いたくて…………」 「一度だけでいいから……あんたのかわいい声が聞きたくて…………」 「クゥクゥに謝りたくて…………それで……」 可可「…………」 「……ごめん、こんな再会でがっかりさせちゃったわね…………。もう消えるわ」 「クゥクゥ……元気で──」 ギュー! 「!!」 可可「どこにも、行かせないデス」ギュー 「クゥクゥ…………」 これは、オッカムの剃刀というやつデス。 いろいろ質問していけば、本物のすみれかどうか、判別できるデショウ。 ……でも、そんなもの必要ありマセン。 いま感じた、ククの心が、答えデス。
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- 「くぅくぅ土星論」
653 :名無しで叶える物語(たこやき)[sage]:2022/12/29(木) 03:43:05.33 ID:ctpyyijd - 可可「ああ……あ……」
可可「っ…………すび……え…………」 可可「あああ……ああ…………ああ……!」 可可「すみぃ……ぐすっ……うみえ…………!」 可可「あああああ……ああ、ああああ…………!」 可可「うっ……ああああ……すぅ…………あああ……」 可可「うに! あああああ……!」 抱きしめた、その固くて冷たい無機質な身体。 ククはその身体から、やわらかいぬくもりを感じマシタ。 言葉にならない想いが、抱擁をさらに強くさせマス。 この日のために、備えておいた"会話しゅみれーしょん"。 でも、言葉はなにも出てきませんデシタ。 可可「あああ…………ああ……ああああああああ……!!」 可可「すみれぇ……! すみれ、すみれ、すみれぇぇ…………!!」 すみれ「…………クゥクゥ」 可可「ごべんなざい……! クク……クク……!」 可可「ずっとぉ…………ああ……うぐっ……すなおじゃあ…………なくて……」 可可「すびれ……にぃ…………ぐすっ、ああああ……すみれにぃ……ひどいこと、言って……」 可可「あやまりぃ……たかった……! けど…………すみれ……あああ……会えないから、あやまれ……なくてぇ…………」 可可「ごめんなざい……! すびえぇ……!! ググ、すびれをぉ…………だぐさんきずつけて……!」 可可「ごべんなあい……!! ごえ……あああ! ああああ……ああああああ……! ごべんなざいぃ…………!!」
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- 「くぅくぅ土星論」
654 :名無しで叶える物語(たこやき)[sage]:2022/12/29(木) 03:44:03.18 ID:ctpyyijd - 可可「すみえ……すみれぇ…………」
すみれ「もう…………泣き虫なんだから」 すみれの腕が、ククを包みマシタ。 すみれ「……私こそ、ごめんなさい…………」 すみれ「約束……守れなくて……」 可可「うっ……ぐすっ…………やくそく……?」 『私が絶対に、まもるから……!』 可可「ああ……あの時の……」 すみれ「クゥクゥ…………」 すみれ「もう絶対、放さないから……!」 すみれ「二度と離ればなれになんて、ならないから……!!」 可可「…………はい! ククも絶対、離れマセン!」 すみれ「私は、機械になっちゃったけど……」 すみれ「……クゥクゥ! これからもずっと、私のとなりにいなさいったらいなさいよ……!!」 可可「…………はいデス!」 ああ……やっぱり、グソクムシはすみれデス……! いつも、ククの心の闇を照らしてくれていた……。 ──ククの最光星!
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- 「くぅくぅ土星論」
655 :名無しで叶える物語(たこやき)[sage]:2022/12/29(木) 03:44:50.03 ID:ctpyyijd - ☆
ククはひとしきり泣くと、気持ちを切り替え立ち上がりマス! 可可「すみれ! いつまで泣いてるデスか? すみれは泣き虫さんデスねぇ〜」 すみれ「!? あんたのほうが泣いてたでしょ! ……というか、私はアンドロイドだから涙出てないわよ!」 可可「あぇ、そうなのデスか? ククの肩にあたたかいしみができてマスが」 すみれ「……きっと気のせいよ」 恋「ううううう……感動しましたぁ……!」 かのん「……あの人も、Liella!の仲間?」 千砂都「うん! Liella!のグラビア担当、平安名すみれちゃん!」 かのん「グラビア……」 すみれ「ギャラ!? 嘘を教えるんじゃないわよ!」 恋「すみれさん……なのですね?」 可可「はい、正真正銘すみれデス! ククが保証しマァス!」 すみれ「……久しぶり。なんか、変な感じね……」
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- 「くぅくぅ土星論」
656 :名無しで叶える物語(たこやき)[sage]:2022/12/29(木) 03:45:42.32 ID:ctpyyijd - 恋「すみれさんは、どうしてこんな地下に?」
すみれ「あー、それはね」 すみれ「私が憑依してるこのプロトタイプの仕事が、ここを守ることだからよ」 千砂都「"循環器"、だよね」 すみれ「ええ。この人工的に作られた星を維持するための、心臓部よ」 すみれ「……でも、かなりガタがきてるみたい。そう長くは保たないでしょうね」 可可「! それはつまり……」 すみれ「この人工惑星の寿命は、よくて10年ってとこかしら」 恋「!? そ、そんな……」 かのん「この星で、生きられなくなっちゃうってこと……!?」 千砂都「私が何度も見てきたから、間違いないよ」 千砂都が言うならそうなのだと思わさせる、謎の説得力がありマシタ。 それからククたちは、千砂都の力を使って、再び地上へと上昇しマス。
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- 「くぅくぅ土星論」
657 :名無しで叶える物語(たこやき)[sage]:2022/12/29(木) 03:46:45.21 ID:ctpyyijd - ☆
地上に戻ったククたちを待ち受けていたのは、阿鼻叫喚の地獄絵図デシタ。 かのん「な、なにこれ……」 すみれ「戦争でもやってるの!?」 「うっ……」 可可「! うるうるさん!?」 「ああ、どうしてかしら……。こんなはずじゃ、なかったのに……」 恋「……いったい、なにがあったのですか?」 「かのんさんが、飛び降りて……神殺しは、成功……。それですべて、終わるはずだったのに……」 「革命は、標的を失ったまま、いまだ続いているわ……」 「私も……同士の暴走を、止められなかった……。リーダー失格ね…………」 可可「うるうるさん……」
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- 「くぅくぅ土星論」
658 :名無しで叶える物語(たこやき)[sage]:2022/12/29(木) 03:47:30.69 ID:ctpyyijd - かのん「ど、どうすればいいの!」
かのん「このままじゃ、みんな死んじゃうよ……!」 千砂都「惑星の寿命より先に、住民が全滅なんて笑えないね……」 恋「惑星脱出はいくらでも叶いますが、いまのままでは……」 すみれ「大ピンチったら大ピンチじゃない!?」 可可「…………」 可可「みんな、気づいてマシタか?」 すみれ「……?」 可可「……いま、ここに……5人のLiella!がそろってるんデスよ」 恋「ほ、本当です……! 事態が二転三転して、それどころではありませんでした……」 千砂都「Liella!はそろったけど……どうするの?」 可可「……そんなの、決まってマス!」 可可「──歌いマショウ、この5人で!」
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- 「くぅくぅ土星論」
659 :名無しで叶える物語(たこやき)[sage]:2022/12/29(木) 03:48:09.28 ID:ctpyyijd - ☆
カンカンカンカンカンカンカンカンカンカン。 5人でいっせいに、階段を駆け上がりマス! 恋「はあ……はあ……なぜ、エレベーター……また止まって……はあ……」 千砂都「かのんちゃんが引きこもってた部屋から、惑星国家全域に、歌を届けるんだね?」 可可「はいデス! 洗脳ソングのために、各地にスピーカーが設置してありマスから! 放送室を使えば効果的に歌を響かせることが可能デス!」 すみれ「それはわかるんだけど……なんで歌なの?」 可可「なにを言ってるデスか! 歌の力は絶大デス!」 可可「ククはいつも、歌によって救われてきマシタ! ミナサンだって、心に残る歌のひとつやふたつ、あるはず!」 可可「音楽を聴けば、きっとこの不毛な争いは終わるはず!」 すみれ「確証はないわけね? ……でも、いいじゃないの、この展開!」 千砂都「歌でみんなを救うんだね!」 かのん「はあ、はあ、はあ、はあ、はあ…………」 恋「か、かのんさん……がんばってください……はあ、はあ……」 かのん「はあ、はあ…………ありがとう……うっ、死ぬ…………」
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- 「くぅくぅ土星論」
660 :名無しで叶える物語(たこやき)[sage]:2022/12/29(木) 03:49:03.86 ID:ctpyyijd - 千砂都「……そういえば、クゥクゥちゃん! 頭……!」
可可「? ククの頭が、どうかしま──」 手に触れたこの感触……! 薄くて平べったい、いくつかの"カンゲキ"を持った円盤がありマス。 なつかしき〈環〉が、くるくると回っていマス……! 可可「あ……あああああ…………!」 可可「見て! ククの頭! 環、環!」 可可「すみれぇ!」 すみれ「はいはい、見てるわよ」 可可「……かわいいデスか?」 すみれ「ええ、かわいいわ」 可可「っ〜〜〜!!」 可可「らん♪ らん♪ らん〜♪ 環が、我が頭に〜♪」 千砂都「クゥクゥちゃん、うれしそう!」 すみれ「ほんと、子どもねぇ?」 可可「いいんデス! すみれがかわいいと言ってくれマシタから!」 すみれ「っ……!!」 千砂都「……すみれちゃん、照れてる?」 すみれ「!? あ、アンドロイドに感情なんてないったらないから!」
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- 「くぅくぅ土星論」
661 :名無しで叶える物語(たこやき)[sage]:2022/12/29(木) 03:50:03.47 ID:ctpyyijd - かのん「ぜえ……ぜえ…………待ってよぉ……」
千砂都「かのんちゃん! 運動不足解消のチャンスだよ! さあ、頂上まであと半分!」 恋「かのんさん……ふぁいとぉ……です……」 すみれ「まったく、だらしないわねー」 すみれ「……まあ、私は機械だし、千砂都はなんか超常的ななにかだから、疲れなくて当然なんだけど……」 可可「らんららんららーん♪」 すみれ「クゥクゥのスタミナ、どうなってるのよ……!?」 恋「14年のサバイバルの……たまものですね……」 可可「ふふん! もう"ドリブルのクク"とは言わせマセンよ!」 可可「これからは、"スタミナのクク"デェス!」 すみれ「ほんとにそのあだ名でいいの……?」 かのん「はあ……はあ…………もう限界……」 かのん「脚が──」フラッ 千砂都「かのんちゃん!」 かのん「……ちぃちゃん」 千砂都「わ、私が支えるから……。だから、がんばって!」 かのん「…………」 かのん「うん……!」
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- 「くぅくぅ土星論」
662 :名無しで叶える物語(たこやき)[sage]:2022/12/29(木) 04:11:01.81 ID:ctpyyijd - ☆
倒れ込むかのんとレンレンをよそ目に、歌配信の準備を整えマス。 すみれ「……たぶんこれでよさそうね」 千砂都「さ、みんなー! 準備できたよー!」 恋「はあ……はあ……かのんさん、行きましょう」 かのん「…………」 恋「かのんさん……?」 可可「どうかしマシタか?」 かのん「……ご、ごめんね……私……」 かのん「下で起きてる、戦争を止めなきゃなのに……歌える自信がなくて……」 千砂都「かのんちゃん……」 すみれ「あんた、ずっと洗脳ソング歌ってたんでしょ? だったら喉も衰えてないはずよ」 かのん「違うの……!」 かのん「私……みんなのこと、やっぱり覚えてなくて……。そんな私が、Liella!を名乗って、いっしょに歌っていいのかなって……」 可可「…………」
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- 「くぅくぅ土星論」
663 :名無しで叶える物語(たこやき)[sage]:2022/12/29(木) 04:12:13.84 ID:ctpyyijd - 可可「ククは、かのんが好きデス!」
かのん「!!」 可可「かのんといっしょに歌いたいデス!」 可可「もうこの際、Liella!とかスクールアイドルとか、忘れてしまいマショウ!」 可可「ひとりの人間、澁谷かのんとして……歌ってくれマセンか?」 かのん「クゥクゥちゃん……」 可可「響かせマショウ! この惑星中に、かのんのスバラシイ歌声を!」 かのん「…………」 かのん「ちぃちゃん」 かのん「すみれちゃん」 かのん「恋ちゃん」 かのん「……そして、クゥクゥちゃん」 かのん「みんなが並んでる、この景色……」 かのん「覚えてないのに……なんだか、よく知ってるような気がする」 かのん「私は……たぶん、いつも、この輪の中にいたんだろうなぁ……」 かのん「毎日、楽しかったのかな……? きっとそうなんだろうなぁ〜……」 かのん「うらやましいなぁ……記憶があったころの私」
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- 「くぅくぅ土星論」
664 :名無しで叶える物語(たこやき)[sage]:2022/12/29(木) 04:12:54.31 ID:ctpyyijd - かのん「…………私はずっとここで、ひとりで歌ってきた……。自分のために……」
かのん「でも、いま! 私のためだけじゃなくて……みんなのために歌いたいって思えた!」 かのん「みんなと、いっしょに!」 可可「かのん……!」 かのん「かつての私がいた場所に、いまの欠けてる私が入るのは、すごく勇気がいるし……本当は怖いけど……」 かのん「でも、なんでだろう……。みんなといると、安心する……」 千砂都「かのんちゃん!」 すみれ「かのん!」 恋「かのんさん!」 かのん「……そっか。私はもう、ひとりじゃないんだ……!」 かのん「──歌える、みんながいるから!」
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- 「くぅくぅ土星論」
665 :名無しで叶える物語(たこやき)[sage]:2022/12/29(木) 04:14:08.77 ID:ctpyyijd - 千砂都「それじゃ、久しぶりにいつものやつ……やってみよう!」
恋「き、緊張しますね……」 すみれ「ほーら、手出して」 可可「…………本当に、5人そろったんデスね」 すみれ「なにたそがれてるのよ。ここからが本番でしょ♪」 可可「……はい!」 さあ、変えてやりマショウ! かのん「…………それじゃ、いくよ!」 歌の力を信じて──! かのん「Song for me! Song for you!」 5人「Song for All!!!!!」 第8章 冥王星的迷走 終
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