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名無しで叶える物語(茸)
千砂都「かのんちゃんのコスプレをしてくれない?」

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千砂都「かのんちゃんのコスプレをしてくれない?」
166 :名無しで叶える物語(茸)[]:2022/01/20(木) 01:25:53.66 ID:Ky5vhIWe
《4》
可可「かのん、一緒にたこ焼きを食べに行きませんか?」

千砂都(放課後、真っ先にかのんちゃんの方へ飛んでいくクゥクゥちゃん)

千砂都(今日はたこ焼き屋のバイトの日)

千砂都(だからきっとかのんちゃんも誘って、遊びに来てくれようとしているのかな)
かのん「ごめんね、今日は恋ちゃんと作曲の打ち合わせがあって」

可可「えー、じゃあすみれー」

すみれ「私もその手伝いがあるから」

可可「すみれも? 新曲はグソクムシの歌なのですか?」

すみれ「違うわよ!」
千砂都「かのんちゃんのコスプレをしてくれない?」
167 :名無しで叶える物語(茸)[]:2022/01/20(木) 01:26:50.97 ID:Ky5vhIWe
かのん「今日はね、どうしてもすみれちゃんが必要な日なんだ」

可可「可可や千砂都では力になれないのですか?」

かのん「うん、今日だけは特にね」

可可「そうですか……」

かのん「じゃあそういうことで、また明日ね!」

可可「はいー」

かのん「ちぃちゃんも、バイバイ」

千砂都「う、うん」
千砂都「かのんちゃんのコスプレをしてくれない?」
168 :名無しで叶える物語(茸)[]:2022/01/20(木) 01:27:40.56 ID:Ky5vhIWe
千砂都(取り残されてしまった私たち)

千砂都「フラれちゃったね」

可可「うー、つまらないです」

可可「かのん、いつもこんな感じですよね」

千砂都「……だね」

千砂都(最近、かのんちゃんはすみれちゃんや恋ちゃんと仲良しで)

千砂都(私たちはどこか、避けられているというか)

千砂都(考え過ぎ、ではないと思う)
千砂都「かのんちゃんのコスプレをしてくれない?」
169 :名無しで叶える物語(茸)[]:2022/01/20(木) 01:28:22.76 ID:Ky5vhIWe
可可「寂しいですね、かのんと一緒に居られないのは」

千砂都「そうだね……」

千砂都(直接、何かをしたわけじゃない)

千砂都(考えられるとすれば、私たちの関係についてなにか感づかれたとか)

千砂都(そして、もしそれが事実だとしたら)

可可「かのん……」

千砂都(私は、自分勝手な行動でこの子まで巻き込んでしまったことになる)
千砂都「かのんちゃんのコスプレをしてくれない?」
170 :名無しで叶える物語(茸)[]:2022/01/20(木) 01:29:09.44 ID:Ky5vhIWe
可可「千砂都?」

千砂都「あ、ごめん。ちょっとね」

可可「……今日うちに来ます?」

千砂都「いや、バイトだから」

可可「なら終わった後とか。今日の千砂都は心配です」

千砂都(駄目だな、私)

千砂都(迷惑だけではなくて、心配までかけてしまって)

千砂都「大丈夫だから、帰ろうよ」

可可「……はい」
千砂都「かのんちゃんのコスプレをしてくれない?」
171 :名無しで叶える物語(茸)[]:2022/01/20(木) 01:29:57.79 ID:Ky5vhIWe
  ◆


千砂都「はぁ」

千砂都(お客さん、全然来ないな)

千砂都(その原因の一つは、きっとうかない顔をしている店員)

千砂都(営業スマイルぐらい、上手く作らなきゃなのに)

千砂都(……かのんちゃん、もうずっとここへ来ていない)

千砂都(そもそも、最後に一緒に帰ったのはいつだっけ)

千砂都(最後に遊んだのはいつだっけ)

千砂都(なにやってるんだろ、私……)
千砂都「かのんちゃんのコスプレをしてくれない?」
172 :名無しで叶える物語(茸)[]:2022/01/20(木) 01:30:36.30 ID:Ky5vhIWe
千砂都(……人、来ないかな)

千砂都(何かをしていたい)

千砂都(考えたくない)


??「すいませーん」

千砂都「あっ、いらっしゃい」

可可「千砂都ー、きたですよ」」

千砂都「く、クゥクゥちゃん」
千砂都「かのんちゃんのコスプレをしてくれない?」
173 :名無しで叶える物語(茸)[]:2022/01/20(木) 01:31:27.82 ID:Ky5vhIWe
千砂都「わざわざ来てくれたの?」

可可「違いますよー」

可可「今週のたこ焼きを貰いにきただけです」

千砂都「あったね、そんな話、すっかり忘れていると思ってた」

千砂都(というかそれをクゥクゥちゃんから言い出したの、始めてだし)

可可「そんなことありません、いっぱい食べたいので貯めているだけです」

千砂都(きっと、ちょうどいい理由を探して思い出したんだ)

千砂都(いい子だな、ほんと)
千砂都「かのんちゃんのコスプレをしてくれない?」
174 :名無しで叶える物語(茸)[]:2022/01/20(木) 01:32:23.57 ID:Ky5vhIWe
千砂都「一セットでいい?」

可可「いえ、二つお願いします」

千砂都「二つ?」

可可「千砂都も一緒食べませんか?」

千砂都「あはは、それは駄目だよ。私はバイト中だから」

可可「そうですか……」

千砂都「じゃあ一個でいいかな、なんかおまけはするよ」

可可「あ、ありがとうございます」
千砂都「かのんちゃんのコスプレをしてくれない?」
175 :名無しで叶える物語(茸)[]:2022/01/20(木) 01:33:10.69 ID:Ky5vhIWe
可可「相変わらず、器用に焼くですね」

千砂都「そう?」

可可「さらに上手になっています、修行の成果ですね」

千砂都「かもね」

千砂都(微妙に気まずい空気)

千砂都(気をつかってくれるクゥクゥちゃんと、そっけない私)

千砂都(私たちまで、ギクシャクしてしまっているみたいで)
千砂都「かのんちゃんのコスプレをしてくれない?」
176 :名無しで叶える物語(茸)[]:2022/01/20(木) 01:33:54.54 ID:Ky5vhIWe
可可「来る前、一応かのんも誘ったのですよ」

可可「だけど、今日はどうしても来られないと言われて」

可可「もしかして可可、かのんに嫌われてしまったのでしょうか……」

千砂都「そんなことはないと思うよ」

千砂都(かのんちゃんはそんな子じゃない)

千砂都(クゥクゥちゃんを嫌うなんてあり得ない)

千砂都(そのぐらいで煙たがられるようなら、私なんてしょっちゅう)

千砂都(私、なんて……)
千砂都「かのんちゃんのコスプレをしてくれない?」
177 :名無しで叶える物語(茸)[]:2022/01/20(木) 01:34:53.27 ID:Ky5vhIWe
可可「千砂都?」

千砂都「……はい、たこ焼き」

可可「わっ、いっぱい」

千砂都「おまけしておいたから、今日は帰って」

千砂都「私を一人にしてくれるかな」

可可「……ごめんなさい、しつこくて」

千砂都「ううん、心配してくれるのはありがたいよ」

千砂都「だけど、今日は話したい気分じゃないんだ」

千砂都「明日になったらいつもの私に戻るからさ」

可可「……わかりました」
千砂都「かのんちゃんのコスプレをしてくれない?」
178 :名無しで叶える物語(茸)[]:2022/01/20(木) 01:35:50.81 ID:Ky5vhIWe
千砂都(去っていくクゥクゥちゃんの背中は、どこか寂しそう)

千砂都(私はまた一人になってしまった)

千砂都(嬉しかったのに、もう少し一緒に居たかったのに)


千砂都(かのんちゃんの話をする気分じゃない)

千砂都(私とクゥクゥちゃんは、かのんちゃんを好きであるということ)

千砂都(それによって繋がっている)

千砂都(かのんちゃんがいないと、成立しない関係)

千砂都「……馬鹿みたいだ、私」
千砂都「かのんちゃんのコスプレをしてくれない?」
179 :名無しで叶える物語(茸)[]:2022/01/20(木) 01:36:39.15 ID:Ky5vhIWe
千砂都「クゥクゥちゃん」

千砂都(大切なのに)

千砂都「かのんちゃん」

千砂都(大好きなのに)


かのん「よ、呼んだ?」

千砂都「えっ」

千砂都(目の前には)

千砂都(紛れもない、かのんちゃんの姿)
千砂都「かのんちゃんのコスプレをしてくれない?」
180 :名無しで叶える物語(茸)[]:2022/01/20(木) 01:37:52.88 ID:Ky5vhIWe
遅くなって申し訳ないです、長期間の保守ありがとうございました。
近いうちに最後まで書いて投稿できるかなと思っています、もう少しだけお付き合いください。
千砂都「かのんちゃんのコスプレをしてくれない?」
189 :名無しで叶える物語(茸)[]:2022/01/20(木) 23:17:10.06 ID:Ky5vhIWe
かのん「う、ういーっす」

千砂都「かのんちゃん……?」

かのん「ちぃちゃん、久しぶり」

千砂都「久しぶりって、さっき学校で一緒に居たよね」

かのん「うん、でもさ」

かのん「久しぶりかな、って」

千砂都「かも、ね」
千砂都「かのんちゃんのコスプレをしてくれない?」
190 :名無しで叶える物語(茸)[]:2022/01/20(木) 23:18:02.79 ID:Ky5vhIWe
千砂都「作曲は済んだの?」

かのん「まあ、一応」

千砂都「クゥクゥちゃんとすれ違いだったね、残念」

かのん「知ってるよ、去り際までこっそりみていたから」

千砂都(見ていた?)

千砂都「それなら、声をかけてくれればよかったのに」

かのん「うん」

千砂都「クゥクゥちゃん、可哀想だよ。かのんちゃんにフラれたこと残念がってたし」

かのん「知ってる。だからお詫びも埋め合わせもちゃんとするつもり」
千砂都「かのんちゃんのコスプレをしてくれない?」
191 :名無しで叶える物語(茸)[]:2022/01/20(木) 23:18:56.78 ID:Ky5vhIWe
かのん「だけどね、今日はちぃちゃんと二人で話したいことがあったの」

千砂都「私と?」

かのん「うん」

千砂都(やっぱり、かのんちゃんは)

かのん「ちぃちゃん、最近元気ないよね」

千砂都「そ、そんなことないよ」

かのん「クゥクゥちゃんと、何かあった?」

千砂都「…………」

千砂都(私たちの事を、何か……)
千砂都「かのんちゃんのコスプレをしてくれない?」
192 :名無しで叶える物語(茸)[]:2022/01/20(木) 23:20:33.97 ID:Ky5vhIWe
かのん「見ちゃったんだ、私」

千砂都「見た?」

かのん「二人がその、部室でしていたの」

千砂都「えっ」

千砂都(ある程度の覚悟はしていた)

千砂都(実際、私は不自然な行動を取っていたし、感づかれていてもおかしくはないと)

千砂都(だけど、そこは予想外だし)

千砂都(絶対に、見られたくなかった部分で)
千砂都「かのんちゃんのコスプレをしてくれない?」
193 :名無しで叶える物語(茸)[]:2022/01/20(木) 23:21:41.34 ID:Ky5vhIWe
千砂都「……その、それはいつ見たの?」

かのん「割と最近、だけど」

千砂都(最近、でも部室では)

千砂都(気をつけていたはず、かのんちゃんに見つかるようなことは――)


『クゥクゥちゃんのコスプレをしたかのんちゃんって設定で――』

『気のせいだって、ドアも開いていないし――』


千砂都「あっ」

千砂都(あの時、もしかして学校へ、部室へ戻ってきていた?)
千砂都「かのんちゃんのコスプレをしてくれない?」
194 :名無しで叶える物語(茸)[]:2022/01/20(木) 23:22:28.82 ID:Ky5vhIWe
かのん「二人は恋人、みたいな感じなのかな」

千砂都(かのんちゃんは、私がクゥクゥちゃんにしている事を知らない)

千砂都(たまたまクゥクゥちゃんがかのんちゃんにならずに行為をしていた姿しか見ていない)

かのん「水臭いよ、幼馴染なんだから」

千砂都(だから、かのんちゃんからみた私たちの関係は)

かのん「クゥクゥちゃんのことが好きだったなら、教えてくれればよかったのに」

千砂都「そ、それは」

千砂都(違うよ)
千砂都「かのんちゃんのコスプレをしてくれない?」
195 :名無しで叶える物語(茸)[]:2022/01/20(木) 23:23:39.72 ID:Ky5vhIWe
かのん「ごめんね、最初は幼馴染と友達がって複雑な気持ちになって」

かのん「気づいた後も、なかなか言い出せなくて」

千砂都(間違った認識が、かのんちゃんの中で確信になっている)

かのん「大好きな二人の関係にさ、ジェラシー的なものを感じていたのかな」

千砂都(待って、待ってよ)

かのん「でも、すみれちゃんや恋ちゃんに相談するうちに気持ちを整理出来てさ」

かのん「二人がそういう関係だとしても、ちゃんと受け入れられるつもりだから――」


千砂都「違うよ!」


千砂都(自分でも信じられないぐらい、大きな声が出た)
千砂都「かのんちゃんのコスプレをしてくれない?」
196 :名無しで叶える物語(茸)[]:2022/01/20(木) 23:24:12.98 ID:Ky5vhIWe
かのん「ち、ちぃちゃん」

千砂都(わからない)

千砂都(私が一番好きなのは、かのんちゃん、だよね)

千砂都(かのんちゃんは私の全てで、憧れで、ヒーローで、大好きで)

千砂都(だけど、今はクゥクゥちゃんの事も頭に浮かんで)

千砂都(それでもここで、かのんちゃんの言葉を否定したくて)

千砂都(もう、なんだか)

千砂都(駄目、わからない)
千砂都「かのんちゃんのコスプレをしてくれない?」
197 :名無しで叶える物語(茸)[]:2022/01/20(木) 23:24:56.18 ID:Ky5vhIWe
千砂都「私はクゥクゥちゃんのことを好きなわけじゃない」

千砂都(違うのに)

千砂都「クゥクゥちゃんのことは、好きとかじゃなくて」

千砂都(好きなのに)

千砂都「私が好きなのは」

千砂都(言葉が、止まらない)

千砂都「私が、好きなのは」

かのん「…………」

千砂都(好き、なのは)

千砂都「クゥクゥちゃんじゃなくて――」
千砂都「かのんちゃんのコスプレをしてくれない?」
198 :名無しで叶える物語(茸)[]:2022/01/20(木) 23:26:12.03 ID:Ky5vhIWe
 ドサッ


千砂都(何かが地面に落ちる音)

かのん「あっ」

千砂都「なっ」

千砂都(なんで)

可可「…………千砂都」

千砂都(呆然とした顔で、遠くから私たちを眺めるクゥクゥちゃん)

かのん「く、クゥクゥちゃん」

可可「あ、あの、可可は、やっぱり、千砂都を、一人にできない、と、思って」

千砂都(身体、震えている。目には涙が溜まっている)

千砂都(私はすぐに理解した)

千砂都(私が、私の言葉が、この子を深く傷つけたこと)
千砂都「かのんちゃんのコスプレをしてくれない?」
199 :名無しで叶える物語(茸)[]:2022/01/20(木) 23:27:09.01 ID:Ky5vhIWe
可可「っ」ダッ

千砂都「あっ……」

千砂都(走り去るクゥクゥちゃん)

かのん「待って!」

千砂都(追いかけるかのんちゃん)

千砂都「……………………」

千砂都(私は二人の背中を見送ることしかできなくて)

千砂都(地面にはクゥクゥちゃんの落とした、たこ焼きの残骸だけが転がっていた)


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