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名無しで叶える物語(光)
彼方「遥ちゃん、実はね? 彼方ちゃんには彼氏がいるんだ」

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彼方「遥ちゃん、実はね? 彼方ちゃんには彼氏がいるんだ」
1 :名無しで叶える物語(光)[]:2021/04/13(火) 10:24:12.52 ID:l7fUl07b
※ここまでのあらすじ※

長年連れ添った互いに好意を持っている仲の良い近江姉妹
しかし最近になって妹の遥が「部活疲れ」を理由にスキンシップを控えてしまう

悩みに悩んだ彼方は夕飯の最中、おもむろに「彼氏がいるんだ」と嘘をつくのだった
彼方「遥ちゃん、実はね? 彼方ちゃんには彼氏がいるんだ」
2 :名無しで叶える物語(光)[]:2021/04/13(火) 10:29:27.89 ID:l7fUl07b
遥「えぇっ!?」ガタンッ

彼方「今まで、黙っててごめんね?」フイッ

遥「そんな……い、いつから?」

彼方「……実は、ニジガクに通うようになって、すぐ……」

遥「そんな……」

遥(あ、ありえない)

遥(自意識を持つようになってから、今まで)

遥(お姉ちゃんのことは1から100までしっかりと把握してきたはずなのに)

遥(訳3年も前からの交際に気づかないなんて、絶対にありえない……)

彼方「………」チラッ

遥「………」フルフル

彼方(来た!)

彼方(遥ちゃんが悩んでる!)

彼方(本当はお付き合いしてる人なんていないけど、これで少しは――)

遥「そうなんだ……驚いちゃった」

遥「教えてくれたってことは、紹介してくれるってことだよね?」

彼方「えっ?」

遥(どうせいないもん、紹介なんてできるはずがないっ!)

遥「お姉ちゃんが好きになった人、私会ってみたいな〜」
彼方「遥ちゃん、実はね? 彼方ちゃんには彼氏がいるんだ」
3 :名無しで叶える物語(光)[]:2021/04/13(火) 10:34:04.50 ID:l7fUl07b
彼方「え、えぇ〜……どうしようかな〜」

彼方(の、乗ってきた……!?)

彼方(慌てて、嘘だよね!? って詰め寄ってくるくらいだと思ったのに)

彼方(平然と笑いながら会いたいって言ってくるなんて……)

遥「変な人じゃないなら、邪魔したりしないから大丈夫だよ〜」

遥(本当は付き合ってる人なんていないはず)

遥(慌てずに、冷静に聞いていけば本当はいないよって言ってくれる)

遥(私を慌てさせたいだけ……慌てさせたいだけ……っ)ドキドキ

彼方「変な人じゃないよ」

彼方「優しくて、格好良くて……すっごくいい人だよ〜」

遥「へ、へぇ……そ、そうなんだ」
彼方「遥ちゃん、実はね? 彼方ちゃんには彼氏がいるんだ」
6 :名無しで叶える物語(光)[]:2021/04/13(火) 10:38:44.96 ID:l7fUl07b
彼方「う〜ん……」

彼方(遥ちゃんが引いてくれそうな気配がない)

彼方(私が、本当はいないよ。って自白するまでは絶対に)

彼方(こうなったら……誰かに彼氏役をお願いして……)

彼方「いいよ〜」

遥「え゛っ!?」ビクッ

彼方「いいよ〜会わせてあげる〜」

遥「わ、わ〜い」

遥(何で!?)

遥(い、いないはずじゃ……)

遥(う、ううん……まだわからない)

遥(呼び出しが確定するまでは、お姉ちゃんは嘘をつき続けられる)

遥(……こうなったら)

遥「じゃぁ、さっそく明日会えないかな?」
彼方「遥ちゃん、実はね? 彼方ちゃんには彼氏がいるんだ」
7 :名無しで叶える物語(光)[]:2021/04/13(火) 10:42:30.05 ID:l7fUl07b
彼方「あ、明日!?」

遥「駄目かな〜?」

遥(この反応……お姉ちゃんは代役でも頼むつもりだったはず)

遥(明日なら、代役に余計な準備させることはできないし)

遥(頼むのだって、今日これから急遽お願いすることになるはず……)

遥(本当にいるなら、万事休すで首をくくる準備が必要だけど)

遥(でも、きっと、いない……うん)

遥(私のお姉ちゃん記録がいないと言ってるもん)

遥(でも……代役って、誰になるかな?)
彼方「遥ちゃん、実はね? 彼方ちゃんには彼氏がいるんだ」
10 :名無しで叶える物語(光)[]:2021/04/13(火) 10:48:20.24 ID:l7fUl07b
彼方「そうだなぁ……」

彼方(ここで変に拒んだりしたら、絶対に怪しい)

彼方(本当はいないんじゃないの? って詰め寄ってくる可能性が高い)

彼方(相手の予定も考えないといけないから〜って常套句はあるけど)

彼方(そんな使い古された時間稼ぎが遥ちゃんに通用するとは思えない)

彼方(なら――)

彼方「じゃぁ、これからちょっと電話して聞いてみるね」

遥「んぐっ!?」ビクッ

遥「い、今から……電話!?」

遥(あ、ありえないよっ!)

遥(電話する場合、私に会話を聞かれる可能性を考えれば相手に対してあたかも彼氏のような会話を必要とする)

遥(急にそんな話し方をされたら相手はびっくりするし、お姉ちゃん自身が変に思われる)

遥(つまり……)

遥「うん、ごめんね。お願い」

遥(込み入った話がしやすい相手――同好会のい人たちに代役を頼むと見た!)

遥(じゃないと死ぬしかない……お願い神様っ!)
彼方「遥ちゃん、実はね? 彼方ちゃんには彼氏がいるんだ」
11 :名無しで叶える物語(光)[]:2021/04/13(火) 10:54:44.13 ID:l7fUl07b
彼方「じゃぁ、ちょっと部屋に行くね」

遥「うんっ」

――パタンッ

彼方「ふぅ……」

彼方(遥ちゃんのあの反応……私にはいないって前提で考えてるって予想は当たってたかも)

彼方(でも……あえてハイリスクな電話をするって言うことで)

彼方(遥ちゃんはきっと、代役ではなく本当にいるって考えを持たざるを得なくなったはず)

彼方(問題は明日っていうところ)

彼方(先延ばしにすればするほど、遥ちゃんはやっぱり代役では? って疑ってくる)

彼方(今の遥ちゃんの動揺を維持して、その波に乗って揺さぶるには)

彼方(明日の顔合わせを受け入れる必要がある)

彼方(となると……相手は)
彼方「遥ちゃん、実はね? 彼方ちゃんには彼氏がいるんだ」
12 :名無しで叶える物語(光)[]:2021/04/13(火) 11:05:06.06 ID:l7fUl07b
遥「……」チラッ

ガサゴソッ

遥(ドアに紙コップ……なんかちょっと楽しい)

遥(じゃ、なくて)ドキドキ

遥(お姉ちゃん、本気で彼氏役を作るつもりなのかな)

遥(同好会の中で、彼氏役に向いてるのは誰だろ)

遥(しずくさんが一番演技に長けてるけど……女の子女の子とした雰囲気は消しきれないはず)

遥(なにより、お姉ちゃんより小さかったはず……ほぼ同じような感じだったし)

遥(お姉ちゃんより背が高いって時点で、愛さん、エマさん、果林さんに絞られる)

遥(エマさんはありえない……というか、無理だと思う)

遥(愛さんなら軽いノリで彼氏役に付き合ってくれそうだけど……ウエストが細すぎる)

遥(明らかに男の人のくびれじゃない……ダボっとした服でごまかすと、ダサくなるだろうから)

遥(背が高くて、今の体系に見合った男の人っぽい……あるいはボーイッシュファッションを持ってて)

遥(……こうなったら、果林さんくらいしかいないよね?)
彼方「遥ちゃん、実はね? 彼方ちゃんには彼氏がいるんだ」
14 :名無しで叶える物語(光)[]:2021/04/13(火) 11:12:46.32 ID:l7fUl07b
――あ、もしも〜し

遥「!」ピクッ

――えへへ〜ごめんねぇ

遥(ほ、本当に電話してる?)

遥(……いや、これは果林さんが相手なはず)

遥(なら、やることは一つ)

スッ

遥(姫乃さんに、果林さんが男の人とデートしてるっぽいって嘘ついて、電話してもらおう)

遥(電話出なかったから違ってたってフォロー入れれば大丈夫だろうし)

遥「……果林さん、ごめんなさい」ボソッ

遥(……送信)スッ

――うん。うん。えぇっとね

遥「……」

ヴィーッ

遥(あ、姫乃さん返事早い……!?)

ガタンッ

遥(電話したけど、出てくれた!?)

遥(え、じゃ、え……今、誰と電話してるの!?)

――えへへ、もちろん、彼方ちゃんも好きだよ〜

遥(あ、死にそう)ビクッ
彼方「遥ちゃん、実はね? 彼方ちゃんには彼氏がいるんだ」
15 :名無しで叶える物語(光)[]:2021/04/13(火) 11:22:26.91 ID:l7fUl07b
――ガタンッ

彼方「えへへ〜」チラッ

彼方(遥ちゃんが聞き耳を立ててるのは想定内)

彼方(遥ちゃんなら私の交友関係は把握してるだろうから、頼む相手はきっと見透かされてる)

彼方(彼氏役のファッションが準備なしに出来そうな子……そう、果林ちゃん)

彼方(遥ちゃんは、私が本当に彼氏に電話してるのかを確かめるために)

彼方(絶対に、電話中に果林ちゃんに何らかのアクションを起こす)

彼方(でも……この時間なら果林ちゃんも手が空いてるだろうからその何らかのアクションに応えてくれるはず)

彼方(じゃぁ、今こうやって私が楽しく話してるのは本当に彼氏なのかも? って思い始める)

彼方(これ……空電話だけどね)

彼方「も〜テレビ通話はだ〜め」

彼方「それより、遥ちゃん……妹にね。あーくんのこと紹介したいなって思って」※あーくん(朝香くん)

――ガタタッ

彼方(かわいい)

彼方「うん。うん。明日かな〜。良い?」

彼方「えへへ〜よかったぁ……これでようやく、ちゃんとお付き合いできるねぇ〜」

――ガタンッ

彼方「えへへ。うん……愛してるよ〜」チュッ
彼方「遥ちゃん、実はね? 彼方ちゃんには彼氏がいるんだ」
17 :名無しで叶える物語(光)[]:2021/04/13(火) 11:28:58.76 ID:l7fUl07b
――パタンッ

遥「コホンッ……」チラッ

遥「どうだった?」

彼方「うんっ、オッケーだって」

彼方「明日の放課後に会ってくれるよ」

遥「そっか、楽しみだな〜」

遥(ほ、本当に彼氏が来るのかな……)

遥(それとも、果林さんじゃない別の代役?)

遥(代役じゃなかったらどうしよう)

遥(バイト先の人とか、ほかの学校の人とか、近所の人とか)

遥(そういうのだったらどうしよう)

遥(……)グスッ

彼方「はる――」

遥「ご馳走様っ」ガタンッ

タタタタッ

彼方「……遥ちゃん」
彼方「遥ちゃん、実はね? 彼方ちゃんには彼氏がいるんだ」
19 :名無しで叶える物語(光)[]:2021/04/13(火) 11:40:34.45 ID:l7fUl07b
彼方(ど、どうしよう)

彼方(遥ちゃん泣いちゃった……)

彼方(気を引きたかっただけなのに)

彼方(だって、遥ちゃん最近かまってくれないから……)

彼方(だから、彼方ちゃんからちょっと誘ってみようって)

彼方(うぅぅ)グスッ

彼方「……遥ちゃん」

彼方「っ」

タタタッ

   パタンッ

彼方「遥ちゃん、あのねーー」

遥「明日早いからもう寝させて」

彼方「え……で、でもっ」

遥「お願い、疲れてるから」

遥「練習中に体調不良で倒れたりとか、したくないから」

彼方「う、うん……」

彼方(明日、朝起きたら落ち着いて話聞いてくれるかな?)
彼方「遥ちゃん、実はね? 彼方ちゃんには彼氏がいるんだ」
21 :名無しで叶える物語(光)[]:2021/04/13(火) 11:46:09.33 ID:l7fUl07b
――翌日

果林「え、待って……なんで私がそんな厄介ごとに巻き込まれてるの?」

彼方「だって、遥ちゃんが最近かまってくれなかったから……」

果林「それで彼氏いるって嘘ついた挙句」

果林「引き際を誤った結果、私がその……刺殺されるかもしれない彼氏役をやる羽目になったの?」

果林「冗談でしょ?」

彼方「お願いっ!」

果林「どうして昨日のうちに誤解を解かなかったのよ」

彼方「……電話する振りした後、遥ちゃん泣いちゃって」

彼方「まったく口をきいてくれなかった挙句、朝起きたらもう家を出ちゃってた」

果林「電話とかしてみたの?」

彼方「朝からメッセージは既読にならないし、電話しても出てくれなくて」

果林「はぁ……じゃぁ、私から遥ちゃんに電話してみるわ」

果林「それで話が通じそうになかったら、彼方……家で土下座して遥ちゃんを待ってなさい」

果林「連れて帰るから」

彼方「う、うん。わかった」

果林「念のため、離れてて頂戴」シッシッ

彼方「うぅ」フラフラ....
彼方「遥ちゃん、実はね? 彼方ちゃんには彼氏がいるんだ」
22 :名無しで叶える物語(光)[]:2021/04/13(火) 11:54:28.58 ID:l7fUl07b
果林(こんなわけのわからないこと頼める相手が限られたんだろうけど)

果林(そもそも、私が彼氏役って……無理があるでしょ)

果林「はぁ……」スッ

ピリリリリリッ

ピッ

遥『もしもし?』

果林「もしもし? 果林よ。朝香果林……遥ちゃんよね?」

遥『はい。そうです……えぇっと、今日はよろしくお願いします』

果林「えっ?」

遥『果林さんが、お姉ちゃんの彼氏役を引き受けてくださるんですよね?』

果林(なんだ、わかってるんじゃない……)

果林「ええ、ついさっきそのことを頼まれたわ」

果林「遥ちゃんに彼氏がいるって嘘ついて取り返しがつかなくなったからって」

遥『……じゃぁ、お姉ちゃんは誰とも付き合ってないんですよね?』

遥『本当に、誰とも……彼氏なんて、存在してないんですよね?』

果林「ええ、私が知る限り影も形もないし、彼方の好意に満ちた会話に出てくるのは遥ちゃんだけよ」
彼方「遥ちゃん、実はね? 彼方ちゃんには彼氏がいるんだ」
25 :名無しで叶える物語(光)[]:2021/04/13(火) 12:07:51.21 ID:l7fUl07b
遥『よかった……』

遥『もし本当に彼氏がいたら、クリスさんに寝取って貰わないといけなくて……』

果林「えっ?」

遥『お姉ちゃんから来るよりも、私から行くことが多くなったなぁって悩んでたら』

遥『クリスさんが、押してダメなら引いてみるのも手ですよ? なんて教えてくれたのを実践してたんです』

果林(うん……?)

遥『そのせいでお姉ちゃんに彼氏ができてたりなんかしたら』

遥『悪いのはクリスさんですよね?』

果林(3年前からの彼氏が、最近の助言でできるっていう理屈がわからない……)

果林「3年前からの彼氏って設定だって聞いたけど」

遥『いえ、それだけは絶対、何があっても、100%、確実にありえないので』

遥『できてたとしても直近なのは間違いないので、クリスさんのせいです』

果林「へ、へぇ……」
彼方「遥ちゃん、実はね? 彼方ちゃんには彼氏がいるんだ」
26 :名無しで叶える物語(光)[]:2021/04/13(火) 12:13:25.67 ID:l7fUl07b
果林「まぁその、そういうことだから」

果林「彼方に彼氏なんていないし、代役は私」

果林「だから遥ちゃんは安心してーー」

遥『いえ、このまま付き合って代役お願いします』

果林「どうして?」

遥『お姉ちゃんに彼氏ができたって信じ込んだ私が、どうなるかをお姉ちゃんに見せつけて気を惹きます』

遥『彼氏がいるなんて、酷い冗談がダメだって知るべきだと思います』

果林(何なのこの姉妹……でも、まぁ、この酷い茶番に二度と巻き込まれないためには)

果林(それも必要なことかしら?)

果林(遥ちゃんに刺殺される心配もないし……)

果林「仕方がないわね。付き合ってあげるわ」

遥『ありがとうございます』

遥『あ、あと……』

果林「なに?」

遥『姫乃さん嗾けてすみませんでした。フォローはしたので大丈夫だと思います』

果林「あぁ、いいのよ。ええ……」

果林(私に彼氏がいるのかなんて、急に電話来た理由は遥ちゃんだったのね)

果林(部屋掃除に来てたエマにまで詰め寄られて死ぬかと思ったんだけど……)

果林「もう、私を巻き込まないでね?」
彼方「遥ちゃん、実はね? 彼方ちゃんには彼氏がいるんだ」
36 :名無しで叶える物語(光)[]:2021/04/13(火) 14:11:30.31 ID:l7fUl07b
果林「はぁ……」スタスタ

彼方「ぁ……果林ちゃん……」

果林「えぇと……」

果林(この数分で一気に憔悴したように見えるんだけど……)

果林(え、これ……嘘ついて大丈夫?)

果林「彼方、その、電話は繋がらなかったわ」

彼方「そっか……」トボトボ

果林「でも、私が彼氏役で遥ちゃんに会って、パパっと誤解を解いてしまえばいいでしょ?」

彼方「うん……」フラフラ

果林「彼方、大丈夫?」

彼方「うん……」トボトボ

果林「……どこ行くの?」

彼方「屋上から羽ばたこうかなって」

果林「何言ってるのよ」

果林(あぁもう……目を離したら本当に飛んでいきそうだし)

果林「午後は保健室で休みましょ。彼方、酷い顔してるから」

ギュッ

果林「……今日は私と一緒にいなさい。私の彼女なんでしょ?」

彼方「え……」

果林「ね?」ニコッ

彼方「ごめん、本気にはなれないかな」

果林「なられたら困るわよ!」イラッ


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