- エマ「ただいま果林ちゃん」果林「おかえりエマ」
53 :名無しで叶える物語(しうまい)[]:2021/01/14(木) 07:11:50.15 ID:D8bygdj4 - ――――――
スクールアイドルフェスティバル 果林「♪〜……ッ!」 観客:ワァァァァァッッッ!!!!! 観客:きゃーーー!!果林さーーん!!!!! 観客:素敵ーーー!!!TOKIMEKI〜〜〜〜〜〜!!!! ……——————ライブ会場は盛大な熱狂に包まれて、私のステージは幕を閉じた。 果林「みんな、今日は私の魅力たっぷりなステージを堪能してくれてありがとう♪」 果林「……ここで遠く離れた地から中継が繋がっているわ」 果林「私達のかけがえのない仲間……」 果林「エマ・ヴェルデです」 ……いったん照明が暗くなり、ステージ背後のモニター画面が照らされる。 そこに映っていたのは……スイスの高原をバックにした私の親友。 観客:きたああああああ!! 観客:エマさん!? エマさんと中継!? 観客:待ってたよ〜〜〜!!!!
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54 :名無しで叶える物語(しうまい)[]:2021/01/14(木) 07:15:23.94 ID:D8bygdj4 - エマ『えぇー……みんな、聞こえますか?』
エマ『虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会3年、エマ・ヴェルデです!』 エマ『えっと……この映像をみんなが見ているということは』 エマ『わたしはもうそこにはいないでしょう』 観客:えっ…… 歩夢「え、エマさん……なんか死んじゃった人みたいな紹介しちゃってる……」 しずく「日本でそれっぽい映画でも見て影響されてるんでしょうか……」 かすみ「……ていうかこれ、ライブ映像ですよね?!」 愛「ちょっ! あははっ……! エマっち、おもしろ……っ!」 エマ『実はおうちの事情で、スイスに帰らなきゃいけなくなって』 エマ『今回はオンラインで参加します』 エマ『本当はみんなの前で直接歌って踊りたかったんだけど……』 エマ『それはまた次の機会、ということで! 楽しみにしててね!』 エマ『すぐに帰って、みんなの心をぽかぽかさせるよ〜♪』 観客:うおおおおおおおおおおお!!!!! 観客:エマちゃーん! オンラインでも可愛い! 観客:母性を感じたのは初めてです
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55 :名無しで叶える物語(しうまい)[]:2021/01/14(木) 07:17:31.42 ID:D8bygdj4 - エマ『あ! 果林ちゃ〜ん』テーフリフリ~
エマ『すっっっごく素敵なステージだったよ〜♪』 ……なにいってるのよ、もう。 でもそんなところが本当にエマらしいわ。 エマ『果林ちゃんだけじゃなくて、みんなもすごかった!』 エマ『同好会のメンバーは最高の最高の、最高の仲間です!』 エマ『そしていつも応援してくれるみなさま、本当にありがとうございます!』 エマ『スクールアイドルとしてキラキラでいられる日本は、わたしにとっての心の故郷です!』 観客:ワァァァァァァァ! パチパチパチ…… エマ『……それで今回は!』 エマ『わたしが生まれた大切な故郷で、歌を歌います!』 エマ『実は病院のお庭だから踊ったりとかはあまりできないけど……』 エマ『アカペラで一曲、歌います!』 エマ『聴いてくだ……』 エマ『いや、届いてください! 「La BeLLA Patria」!』
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56 :名無しで叶える物語(しうまい)[]:2021/01/14(木) 07:21:00.61 ID:D8bygdj4 - ――――――
数か月後…… 「えー、3年生のみなさん、」 「ご卒業おめでとうございます……」
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58 :名無しで叶える物語(しうまい)[]:2021/01/14(木) 19:51:47.25 ID:D8bygdj4 - ――――――
体育館外 かすみ「果林先輩、卒業おめでとうございますっ!」 果林「あら、かすみちゃん。ありがとう」 卒業生がつける胸の花バッジ。 在校生がそのバッジを卒業生に渡す役目なのだが私はたまたまかすみちゃんだった。 時は流れて……そう、今日は卒業式。 私にエマ、彼方はこの日もってこの学校を卒業する。 かすみ「いやぁ〜? 卒業しちゃったらかすみんと会えなくなって寂しくなっちゃいますねぇ?」 果林「うふふ、そうね」 しずく「寂しいのはかすみさんの方でしょ」 かすみ「うっ、しず子!」 しずく「果林さん、ご卒業おめでとうございます。胸のお花、とてもよくお似合いですよ」 果林「ほんと? しずくちゃん」 しずく「はい♪」 かすみ「もぉ〜! しず子! かすみんから果林先輩との時間奪わないでよぉ!」
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59 :名無しで叶える物語(しうまい)[]:2021/01/14(木) 19:52:54.41 ID:D8bygdj4 - しずく「……かすみさん、以前果林先輩についてこう言ってたんです」
しずく「“3年生の人みんな尊敬してるけど、果林先輩を一番尊敬してる”って」 かすみ「えっ?! ちょ、しず子?!」 しずく「“果林先輩はかっこよくて、自分にないものを一番持っているから”って」 果林「うふふ、嬉しいこと言ってくれるわね」 かすみ「も、もうやめてよ!? 恥ずかしいじゃん〜!!!」 しずく「だから一度、エマさんのことで果林さんと言い合いになってしまったこと、すごく後悔してました」 かすみ「あ、あっ」 しずく「“大好きな先輩に酷いこと言ってしまった、冷たい人間なんて最低なコト言ってしまった”って……」 しずく「“取り返しがつかないことをことを言ってしまった”……って」 かすみ「し、しず子〜〜〜!!! そ、それだけは本当に言わないで! いわないでぇっ!」 ……怒ってない。 ただ冷淡にエマの帰国を見過ごそうとした私を、かすみちゃんが本音をぶつけてくれたんだ。 あの時のかすみちゃんの言葉がなかったら。 私は大人ぶって、余計な感情を抱くことを面倒にしてエマを見送っただけだと思う。 かすみちゃんのあの言葉があったから、私は前向きな気持ちでステージに立てた。
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60 :名無しで叶える物語(しうまい)[]:2021/01/14(木) 19:55:06.93 ID:D8bygdj4 - 果林「むしろ感謝してるくらいよ、かすみちゃん」
果林「……本当にありがとう。大好き」ナデナデ かすみ「ふえぇっ?! しぇんぱいっ?」 かすみ「そ、その……恥ずかしいですから……っ」 かすみ「やめてください、わ、わたし、果林先輩に最低なコト言ったんです……」 かすみ「エマ先輩も嫌な気持ちにして……だから優しくしないでください……かすみんのことは」 かすみ「しず子とりな子を可愛がってください……」 果林「……アハハ! もーう! 素直なかすみちゃんは特に可愛いわね」 果林「あの日すぐ許したじゃない。そんなずっと気にするようなことじゃないわ」 果林「そんな自分のこと、責めないで」 かすみ「……しぇ、しぇんぱぁい……」 かすみ「うっ、うっ、うわーん……っ!!!」 しずく「……果林さん。応援に回るのはまだ早いですよ」 しずく「だってまだ卒業公演のステージが一つ残ってるんですから!」 果林「……そうだったわね。本番までよろしく頼むわ」 しずく「はい!」 しずく「今度は……エマさんと9人で!」
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61 :名無しで叶える物語(しうまい)[]:2021/01/14(木) 19:56:49.26 ID:D8bygdj4 - ――――――
部室 ?「……りん……〜ん」 ?「かり……ちゃ〜ん……果林ちゃ〜ん……?」 果林「んっ……」 ?「おやっ……第一声、セクシーだったねぇ」 卒業式が終わって部室に訪れた私は、 どうやらそのまま部室で眠ってしまっていたみたいだった。 部室で過ごす最後の時間。少しでも味わっておきたくて。 果林「……まさか彼方に起こされるなんてね」 彼方「いやぁ〜……珍しいこともあるもんですなぁ」 彼方「すごく幸せそうな寝顔だったよ〜♪」 果林「からかわないでよ、もう」 彼方「……卒業しちゃったね」
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62 :名無しで叶える物語(しうまい)[]:2021/01/14(木) 19:57:45.05 ID:D8bygdj4 - 彼方「いやぁ……私たち最高の3年生だったねぇ」
果林「それ自分で言う?」 彼方「言っちゃうよ〜♪」 彼方「……エマちゃんから連絡は?」 果林「……ないわ、全然」 彼方「そっかぁ……」 エマは卒業式までに帰ってこれなかった。 やはり家のことでなかなか手が離せず、大変だったらしい。 いまはもうお父さんの怪我は完治し、もう問題はすべて解決したようだ。 それを聞いて安心していたのにそこから連絡がなかなかつかなくなってしまった。 もうすぐ帰ってくるはずなのに……どうしても連絡がない。 彼方「……でも果林ちゃん、約束したんだよねぇ」 彼方「最後のステージは一緒に立つって」 果林「……えぇ」 彼方「大丈夫。エマちゃんは……絶対約束を守る、いい子だもの」 彼方「特に愛する親友の約束はね〜♪」 果林「な、なに言ってんのよ……そんなんじゃないから」
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63 :名無しで叶える物語(しうまい)[]:2021/01/14(木) 19:59:06.00 ID:D8bygdj4 - 果林「ところで同好会の送別会は何時から?」
彼方「17時から。愛ちゃんのもんじゃ焼き屋さんでだよ〜」 果林「……まだ時間あるわね」 彼方「みんないろいろ買い出しとかしてくれてるのかなぁ?」 卒業式のあと、私たちの卒業を祝って同好会一同で送別会をしてくれるらしい。 彼方「幸せな先輩だよね〜、私達」 果林「えぇ……ほんとに」 彼方「……ねぇ、果林ちゃん」 彼方「彼方ちゃん、果林ちゃんとエマちゃんにいっぱい感謝してるんだ」 果林「私とエマ?」 彼方「だって彼方ちゃん、果林ちゃんみたいにかっこよくないし」 彼方「エマちゃんみたいな包容力もないし……みんなに甘えてばっかりだったから」 彼方「『わがままお姫様〜』なんて言って、あんまり先輩らしいことしてこなかったからね〜」 果林「……そんなことないわよ、彼方」 果林「私もみんなも彼方に救われたこと、たくさんあるわ」 彼方「……ほんとぉ?」 果林「嘘なんてつく必要ある? 本当よ」 彼方「……えへ、えへへへ〜♪」ギュー 果林「もう、後ろから寄っかからないでよ……重いわ」 彼方「いいんだも〜ん♪ これからも果林ちゃんとエマちゃんにたくさん甘えるよ〜♪」 彼方「ずっと仲良くさせてね〜♪」 果林「……ほんと調子いいんだから……」
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64 :名無しで叶える物語(しうまい)[]:2021/01/14(木) 20:00:23.92 ID:D8bygdj4 - ピロリン♪
突然、私の携帯に連絡が入った。連絡元は…… 背中に寄っかかる彼方とその内容を確認する。 彼方「うおっ……うおおおおおおおおおっ!!!」 そんな……まさか。 彼方「果林ちゃん! 空港だよ! 迎えに行ってあげて!」 果林「で、でも送別会の時間……間に合うかしら」 彼方「えっ……えええええええええっ!!?」 彼方「な、何言ってんのさ! 迎えに行く以外ないでしょ?! ヘタレ!? ヘタレなの?!」 まるで眠気がすべて吹っ飛んだかのような口ぶりで彼方は私にまくし立てた。 彼方「いま果林ちゃんが迎えに行ってあげて、」 彼方「私たち3年生3人、卒業後のステージに立つんだよ!」 果林「……そう、よね!」 果林「私、行ってくる!」ダッ 彼方「うん、またあとで〜!」 彼方「……いやぁ〜〜〜」 彼方「きっと素敵な卒業ライブになるねぇ……」 彼方「……あの子にも届きますように」 彼方「……すやあ」
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65 :名無しで叶える物語(しうまい)[]:2021/01/14(木) 20:01:36.07 ID:D8bygdj4 - ――――――
空港 息を切らしながら同好会のみんなで見送った空港のロビーに着いた。 あまりに突然すぎる。そんな素振り全くなかったのに。 帰ってくるの、どれだけ待ち望んでいたと思ってるの? いたずらを含めたサプライズにしては、大きすぎるわ…… 果林「はぁ、はぁ……」 卒業式の花バッジを抱えた制服のまま、空港まで走ってきた。 浮いてるように見えたかもしれないけど、そんなの気にしない。 ずっと会いたかった親友がやっと…… ?「どうしたの? 何か困りごと?」 それはまるでかつての私の真似事のような口調で、私に話しかけてきた。 果林「……エマぁ……!」
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66 :名無しで叶える物語(しうまい)[]:2021/01/14(木) 20:02:41.52 ID:D8bygdj4 - エマ「……わたしがはじめて虹ヶ咲に来たとき、こんな感じだったよね♪」
果林「なによ……なんで何も言わずに突然帰ってくるのよ……!」 エマ「えへへ……ちょっとドッキリさせたくて」 果林「だめよ、こういうドッキリは……」 果林「……こんなの朝香果林のイメージじゃないのよ」 エマ「あはは……どんな果林ちゃんでも大好きだよ♪」 エマ「あっ、お花のバッジ……そっかあ! 卒業おめでとう」 果林「エマもでしょ」 エマ「ふふ、そうだねぇ」 エマ「でもたぶん卒業してもあんまりわたし達の関係、変わらないよね」 エマ「そんな気がする」 果林「そうね……そうよ」
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67 :名無しで叶える物語(しうまい)[]:2021/01/14(木) 20:05:54.77 ID:D8bygdj4 - これから先、私たちがスクールアイドルじゃなくなっても、
私達の関係はきっと、ずっと続いていく。 高校を卒業しても、エマがスイスに帰っても、どんな大人になっても。 私はエマのことを…… 「やりたいと思ったときから、きっともう始まってるんだと思う」 そしてそれは、きっと、ずっと続いていくものだと思う。 だから次のライブは同好会のみんなと一緒に、 私達の魅力をたっぷり……見せつけてあげないとね? エマ「……ただいま、果林ちゃん!」 果林「おかえり……エマ!」 おわり
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- エマ「ただいま果林ちゃん」果林「おかえりエマ」
68 :名無しで叶える物語(しうまい)[]:2021/01/14(木) 20:08:13.58 ID:D8bygdj4 - おわりました!
ここまでお付き合いしてくれた方、ありがとうございました。 エマかり、大好きです。
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