- あなた「余命1年?」菜々「……」
178 :名無しで叶える物語(りんご)[sage]:2020/04/06(月) 02:04:08.04 ID:uLvmTZCj - >>43 でも言った通りいざ書き始めてみるとほとんど別物になってるんですよね
自分の中ではほとんど新作みたいなものですが気に触ったのなら申し訳ない
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- あなた「余命1年?」菜々「……」
183 :名無しで叶える物語(りんご)[sage]:2020/04/06(月) 15:41:27.51 ID:uLvmTZCj - ありがとうございます
更新ペースが亀で申し訳ない
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- あなた「余命1年?」菜々「……」
184 :名無しで叶える物語(りんご)[sage]:2020/04/06(月) 15:41:37.38 ID:uLvmTZCj - せつ菜「もしもし……もしもーし」
あなた「……うん?どうかした?」 せつ菜「大丈夫ですか。少し、怖い顔してました」 あなた「え、そうかな。ごめん、何でもないよ。持ってきてくれた原稿見せてもらえる?」 せつ菜「……!えと、その」 あなた「うん?」
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- あなた「余命1年?」菜々「……」
185 :名無しで叶える物語(りんご)[sage]:2020/04/06(月) 15:42:19.63 ID:uLvmTZCj - なんか、緊張してる。
どうしたんだろう。 口をワナワナさせて、渡そうか渡さないか逡巡してるみたい。 自信ないのかな? でも、今までは自信なくても渡してくれてたよね。 手が、少し震えてるように見える。
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- あなた「余命1年?」菜々「……」
186 :名無しで叶える物語(りんご)[]:2020/04/06(月) 15:43:03.92 ID:uLvmTZCj - せつ菜「どっ、どうぞ!!!」
あなた「あっ、うん」 ようやく渡してくれた原稿は、少なく見積もっても百枚はあろうかという、分厚い紙の束だった。 文庫本一冊分である。 あなた「ありがとう。読んでもいいかな?」 せつ菜「えぇっ!?い、今……ですか?あの、自宅に帰ってからの方が……!」 あなた「え?駄目だった?」 せつ菜「……いえ!あなたがそこまで言うのなら、やぶさかではないというか……!!」
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- あなた「余命1年?」菜々「……」
187 :名無しで叶える物語(りんご)[]:2020/04/06(月) 15:44:12.21 ID:uLvmTZCj - そりゃあ編集者なんだから、作家の前で読んでそのまま批評するのが一番だと思うけど。
あなた「じゃあ、読ませてもらうね」 いつかせつ菜ちゃんに、本当に読んでるんですか?と聞かれたことがある。 編集者の文字を読む速度は、異常だ。 傍から見ると、この人本当にちゃんと読んでるの?と怪しむくらいには。 でも実際、毎日原稿を何百枚も読んでいると、自然と読むスピードが速くなっていく。 というか、そうならないと仕事が終わらない。
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- あなた「余命1年?」菜々「……」
188 :名無しで叶える物語(りんご)[]:2020/04/06(月) 15:44:33.23 ID:uLvmTZCj - そんな強迫観念も含まれているのかもしれないけれど。
編集部に勤めてから、1年半が経った。 私の読書速度はどんどん速くなって、今ではプロのそれに達していると自負している。 せつ菜ちゃんに疑問視されてすぐ、私が作品の長所と短所を事細かに説明すると、次から彼女は、読む速度については何も言わなくなった。 その時と同じように、ペラペラと原稿を捲りながら読み進めていく。
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- あなた「余命1年?」菜々「……」
189 :名無しで叶える物語(りんご)[]:2020/04/06(月) 15:44:53.82 ID:uLvmTZCj - ……が。
次第にその速度が落ちていくのが、自分でもわかった。 ふと、違和感を覚えたんだ。 あなた「ね、ねえ……これ」 尋ねても、彼女はじっと俯いたまま。 けれど少しだけ、私に聞こえるかどうかという声量で呟いた。 せつ菜「……だから、お家に帰ってからって言ったのに」
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- あなた「余命1年?」菜々「……」
190 :名無しで叶える物語(りんご)[]:2020/04/06(月) 15:45:23.22 ID:uLvmTZCj - 登場人物は、入院中の主人公と、日々お見舞いに訪れる同級生。
その同級生は、主人公が在籍する部活動のマネージャーで、いつも、選手の自分を的確にサポートしてくれて、頼りがいもあって。 主人公は次第に、彼女を好きになっていく。 それは恋愛感情で、決して抱いてはいけないものだった。 なぜなら、主人公もまた、女の子なのだから。 禁断の恋だった。
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- あなた「余命1年?」菜々「……」
191 :名無しで叶える物語(りんご)[]:2020/04/06(月) 15:48:02.59 ID:uLvmTZCj - 主人公は、この感情を心に秘めたまま高校を卒業することを決めた。
卒業して物理的に離れれば、きっとこの想いも消えていくだろう。 そう思っていた。 でもある日、主人公は、部活中に持病の発作で倒れ、救急車で病院に運ばれてしまう。 同級生は、管理に不手際があったからだと自責の念に駆られている。 全て自分のせいなのに、本気で自分のことを心配してくれる彼女に、ますます心惹かれてしまう主人公。 主人公は、彼女に一つ、ワガママを伝えた。 『漫画家になりたい』
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- あなた「余命1年?」菜々「……」
192 :名無しで叶える物語(りんご)[]:2020/04/06(月) 15:48:16.82 ID:uLvmTZCj - 彼女の性格、加えて今の状況でそれを言えば、彼女はきっとそうするのだろうとわかっていた。
要するにそのワガママは、彼女を自分の傍に縛り付けるための、口実だったのだ。 思った通り、彼女は、主人公の望む言葉を口にしてくれた。 『……それ、私も手伝っていいかな?』 『私に手伝わせて欲しい。何ができるかわからないけど、私にできることなら』
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- あなた「余命1年?」菜々「……」
193 :名無しで叶える物語(りんご)[]:2020/04/06(月) 15:49:16.93 ID:uLvmTZCj - そこまで読んで、私はめくる手を止めた。
原稿を裏返して、文字が見えないようにする。 あなた「ふ……ぅ……うぅ……」 せつ菜「ご、ごめんなさい……でも、どうしても書きたくて……」 その物語は、私とせつ菜ちゃんが共に過ごした時間と、そっくりだったんだ。 違うのは、私の知りえない感情が書き綴られているということ。
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- あなた「余命1年?」菜々「……」
194 :名無しで叶える物語(りんご)[]:2020/04/06(月) 15:50:00.46 ID:uLvmTZCj - これが彼女自身の想いだと決まったわけじゃない。
けれど……仮に感じたことのない感情を文字にしたならば、それは安っぽくみえてしまうものだ。 せつ菜ちゃんが持ってきた原稿からは、そんな安っぽさは微塵も感じられない。 つまり、この主人公の"大好き"は…… あなた「うぅ……///」 せつ菜「あの……どうでしょうか……///」 あなた「どうって……」
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- あなた「余命1年?」菜々「……」
195 :名無しで叶える物語(りんご)[]:2020/04/06(月) 15:50:28.07 ID:uLvmTZCj - 羞恥心で死んでしまいたいと思ったのは、生まれて初めてだよ。
なんて、本人には言えないけれど。 だって、要するにこれ、小説の体をなしてはいても……そういうことでしょ? ――私宛のラブレター(大長編)。 こんなの出版されてたまるか!! 恥ずかしくて死んじゃうよ!!
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- あなた「余命1年?」菜々「……」
196 :読みづらいので直しました(りんご)[sage]:2020/04/06(月) 16:24:55.50 ID:uLvmTZCj - >>192
彼女の性格、加えて今の状況で夢を語ったとき、彼女がどうするのかはわかっていた。 主人公の"夢"は、彼女を自分の傍に縛り付けるための、口実だった。 思った通り彼女は、主人公の望む言葉を口にしてくれた。 『……それ、私も手伝っていいかな?』 『私に手伝わせて欲しい。何ができるかわからないけど、私にできることなら』
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