- ルビィ「スターチス」
84 :名無しで叶える物語(東日本)[]:2020/04/03(金) 02:46:48.25 ID:1HfknL0s - ※
鞠莉「いらっしゃーい」 理亞「は、はひっ」 理亞(翌日、大きな声で私を出迎えてくれた確かに色々と大きい人) 理亞(だけど想像とは全然違う、フレンドリーな雰囲気) 鞠莉「あなたが理亞ちゃんね、曜から話は聞いているわよ」 理亞(ただやっぱり、独特の雰囲気がある) 理亞(偉い人に会うとき、みたいな感じ?) 理亞(私はさしずめ、蛇に睨まれた蛙) 理亞(人見知りも相まって、まともに喋ることさえできない)
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- ルビィ「スターチス」
85 :名無しで叶える物語(東日本)[]:2020/04/03(金) 02:47:26.51 ID:1HfknL0s - 鞠莉「もー、緊張しなくてもいいのよ」
理亞(ポンポンと頭に手を置かれる) 理亞(同じだ) 理亞(曜と同じ、やさしい手のひら) 理亞「えっと、ルビィは」 理亞(待ってくれているのかな) 鞠莉「ああ、地下よ」 理亞「地下……」 理亞(それは、つまり)
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- ルビィ「スターチス」
86 :名無しで叶える物語(東日本)[]:2020/04/03(金) 02:48:19.35 ID:1HfknL0s - 理亞(それは、つまり)
鞠莉「結構暴れちゃってね、最近は落ち着いていたらしいんだけど」 理亞(二度目だ、ルビィが地下に閉じ込められるのは) 理亞(最初だけ、たまたまタイミングが悪かっただけ、というわけではなくて、やっぱり日常的に起こること?) 理亞(弱っているルビィと会うのは、ちょっと嫌かな……) 鞠莉「とりあえず、地下へ行きましょうか」 理亞「う、うん」
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87 :名無しで叶える物語(東日本)[]:2020/04/03(金) 02:48:56.99 ID:1HfknL0s - 理亞(無言で二人並んであるいて)
理亞(地下室へたどり着くと) 理亞(そこにはぐったりしているルビィの姿) 理亞(曜の時とは違い、口にまでさるぐつわのような物を付けられている) 鞠莉「また暴れてる」 理亞(小原鞠莉も手慣れた手つきで、ルビィを正しい位置へ戻す) 鞠莉「私が来るといつもこう」 鞠莉「最近は落ち着いてると言われても、なかなか信じがたいわね」 理亞「……」
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- ルビィ「スターチス」
88 :名無しで叶える物語(東日本)[]:2020/04/03(金) 02:49:38.61 ID:1HfknL0s - 理亞(この人、嫌われているのかな)
理亞(それとも何か余計なことを話したりしちゃうとか……) 鞠莉「やっぱり、曜がいないと止められないのかしらねぇ」 理亞「曜が?」 鞠莉「あの子がいるときは比較的落ち着いているのに」 鞠莉「私が時々代わりにくると、いつもこれ」 鞠莉「そんなことを知ったら、曜はずっとルビィの傍を離れなくなるだろうから、話してないけどね」 鞠莉「私も、ルビィも」
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89 :名無しで叶える物語(東日本)[]:2020/04/03(金) 02:50:40.71 ID:1HfknL0s - 理亞(信頼できる相手がいるから落ちつける?)
理亞(だけどこれは発作ではない。彼女は死を望んで生きている) 理亞(むしろ冷静な方が、確実な方法を選ぶことができるはずだ) 理亞(例えば私と再会した時のように、逃げ出して死に場所を探したりとか) 鞠莉「元々ね、ルビィとはそれなりに仲良くはしていたはずなの」 鞠莉「困っている二人を助けてあげたこともあった」 鞠莉「ルビィだって私のことを信頼してくれてたはずなのに、正直悲しいわね」 理亞(とても疲れた顔をしている) 理亞(きっとこの人は忙しい中の合間を縫って、ルビィに会いに来ているんだ)
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- ルビィ「スターチス」
90 :名無しで叶える物語(東日本)[]:2020/04/03(金) 02:51:20.87 ID:1HfknL0s - 鞠莉「あなたは、ルビィと仲が良いのよね」
理亞「一応、そうだと思う」 理亞(少なくとも私の中では、一番仲のいい、友達) 鞠莉「そしてルビィのことは、曜から色々と聞いて知っている」 理亞「うん」 理亞(本人からは聞けない。だけど知りたいことは曜が全部教えてくれる) 鞠莉「それじゃあ、曜のことは知ってる?」 理亞「曜の?」 鞠莉「あの子自身のこと、尋ねたりはしないでしょ」
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- ルビィ「スターチス」
91 :名無しで叶える物語(東日本)[]:2020/04/03(金) 02:51:57.29 ID:1HfknL0s - 理亞(言われてみると、そのとおり)
理亞(私が曜について知っているのは、一つ年上) 理亞(ルビィの元先輩で、何らかの事情でいつも面倒を見ている人) 理亞(たった、それだけ) 鞠莉「曜はね、とても才能に溢れていた子」 鞠莉「大きな輝きと放ち、皆を惹きつけることができる、特別な子だった」 鞠莉「こんな問題に巻き込まれなければ、もっと幸せな生活を送っていたはずの」 理亞「……」 理亞(優秀な人なのは知っている) 理亞(普段の行動のそつのなさ、才能) 理亞(なんでもできる、だけどそれを誇示したりしない)
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- ルビィ「スターチス」
92 :名無しで叶える物語(東日本)[]:2020/04/03(金) 02:53:13.82 ID:1HfknL0s - 鞠莉「やさしすぎる、自分より他人を優先してしまうような子」
鞠莉「本当は解放してあげたい」 鞠莉「でも曜がいるから、ルビィは生きてる。彼女がいないと、ルビィは生きられない」 鞠莉「今の歪なルビィは曜抜きでは考えられないの」 理亞(あぁ、そうか) 理亞(ルビィは曜を裏切れない) 理亞(だから彼女の前では、正常な判断ができる限り、死を避けようとしている) 理亞(曜はルビィを縛る鎖だ) 理亞(彼女の存在が、死の選択を躊躇させている) 理亞(だから目の前から姿が消えると、ルビィは死のうとする)
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- ルビィ「スターチス」
93 :名無しで叶える物語(東日本)[]:2020/04/03(金) 02:54:20.98 ID:1HfknL0s - 理亞(きっとここで死んでも、この小原鞠莉やその他の人間は、曜を傷つけないように、上手く誤魔化すだろう)
理亞(そうすれば曜は傷つかない) 理亞(ルビィは彼女が傷つかない場所で、死のうとしているんだ) 鞠莉「それを理解しているから、曜はここから離れられない」 鞠莉「例えルビィが望んでいなくても」 鞠莉「やさしいあの子には、それもまた辛いと思うけど」 理亞「……」 理亞(背負っている物の重さ、彼女たちの苦しみ、ジレンマ) 理亞(また少し、理解できた) 理亞(だけどもし、曜が言うように私が来るようになってから症状がさらに落ち着いているとしたら) 理亞(私もルビィを縛る鎖となれる可能性がある人間なのかもしれない)
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- ルビィ「スターチス」
94 :名無しで叶える物語(東日本)[]:2020/04/03(金) 02:54:56.90 ID:1HfknL0s - 鞠莉「こんなこと、今日会ったばかりのあなたに頼むのも変だけど」
鞠莉「二人の、ルビィと曜のこと、支えてあげてくれないかしら」 理亞「……はい」 理亞(自信はない) 理亞(大きな力になれると思い込めるほど、自分に自信はモテない) 理亞(頑張っても、二人の奥深くまで入り込めるとは限らない) 理亞(けどきっと、この人は私ならできると信じてくれている) 理亞(少なくともルビィが昔は信頼していて、曜は今でも信用している人) 理亞(信じてみる価値はある) 理亞(目標) 理亞(できたかもしれない)
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- ルビィ「スターチス」
95 :名無しで叶える物語(東日本)[]:2020/04/03(金) 02:55:37.54 ID:1HfknL0s - 【曜】
曜(目を覚ますと、外はまだ薄暗い) 曜(その光景を見て寝過ごさなかったという事実を認識し、安堵する) 曜(横で眠るルビィちゃんは静かに寝息を立てている) 曜(私は彼女近づき、腕についていた手錠を外す) 曜(この子が眠ってからつけて、起きる前に外す) 曜(あまりこういうことはしたくないけど、寝起きは特に精神状態が安定しないから) 曜(意識がある間は拘束具が付いていないのだから、ストレスは最低限、であってほしい)
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- ルビィ「スターチス」
96 :名無しで叶える物語(東日本)[]:2020/04/03(金) 02:56:05.71 ID:1HfknL0s - 曜(最低限の家事をこなし、簡単な朝食を用意して)
曜(眠り続けるルビィちゃんを横目に身支度を整える) 曜(そこまでして、あとは彼女が起きるのを待つ) 曜(今日は珍しく、大学の用事で忙しいという理亞ちゃんが来ない予定) 曜(久しぶりの二人きり) 曜(ここ数年は当たり前の時間だったはずだけど) 曜(少し緊張するかも、なんて)
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- ルビィ「スターチス」
97 :名無しで叶える物語(東日本)[]:2020/04/03(金) 02:56:59.91 ID:1HfknL0s - ルビィ「……曜ちゃん」
曜(お目覚めのお姫様) 曜「おはよう、ルビィちゃん」 曜(毎朝繰り返される、まるで恋人か家族のようなやり取り) 曜(私たちの場合、姉妹かな) 曜(死にたがりの妹と、狂った姉) 曜「朝ごはん食べる?」 ルビィ「……うん」 曜(朝ごはんは拒否されることが多いから珍しい) 曜(今日は調子がいい日なのかな) 曜「ちょっと待って。すぐに準備するから」
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- ルビィ「スターチス」
98 :名無しで叶える物語(東日本)[]:2020/04/03(金) 02:57:34.67 ID:1HfknL0s - 曜(用意しておいたのは、スプーンで食べられるリゾット)
曜(衝動的な行動に走らないよう、切れたり尖ったりしている物は使わない) 曜(この部屋も地下ほどではないけど、物が少ない) 曜(時間を潰せるように、本や安全な手芸用品は揃っているけど、せいぜいその程度) 曜(昔ルビィちゃんが住んでいた、アイドルグッズや可愛い小物で溢れた部屋とは大違い) 曜「美味しい?」 ルビィ「うん」 曜(一緒に朝食を食べて、ルビィちゃんは少しだけど笑顔) 曜(これだけで、私は幸せだったり)
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- ルビィ「スターチス」
99 :名無しで叶える物語(東日本)[]:2020/04/03(金) 02:58:25.08 ID:1HfknL0s - 曜「今日は、外に出ようか」
ルビィ「えっ、いいの」 曜「うん」 曜(幸い今日は平日で外の人も少ない) 曜(最近は状態も落ち着いているし、私の体調も悪くない) 曜(鞠莉ちゃん経由で事情をある程度把握している人がいる場所になら、問題ないから) 曜(せっかく天気も良さそうだし、最近は彼女が逃げ出した日を除いて外出していない) 曜(タイミングとしてはちょうどいい)
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- ルビィ「スターチス」
100 :名無しで叶える物語(東日本)[]:2020/04/03(金) 02:59:04.13 ID:1HfknL0s - 曜「どこか行きたいところはある?」
ルビィ「うーん……綺麗な物を見たいかも」 曜(綺麗な物……) 曜(そういえば近くに温室の植物園があった) 曜(家族で遊べる休日以外、地元の人はまず行かない) 曜(時期によっては観光客が多い場所だけど、オフシーズンの今なら人はほぼいないし) 曜(最悪外国人になら見られてもあまり問題にならないかな) 曜(あそこなら鞠莉ちゃんの顔も効いた筈)
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- ルビィ「スターチス」
101 :名無しで叶える物語(東日本)[]:2020/04/03(金) 02:59:50.74 ID:1HfknL0s - 曜「分かった。ちょうどいい場所を知ってるから、お昼になったら行こう」
ルビィ「う、うん!」 曜(あっ、また笑った) 曜(よかった、今日はたくさん笑っている) 曜(私はいつも、この子の顔を曇らせてばかり) 曜(最近家へ来るようになった理亞ちゃんは、簡単に笑顔を作らせてあげているのに) 曜(私は彼女を苦しめる原因なんだから、仕方ないけどね)
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- ルビィ「スターチス」
102 :名無しで叶える物語(東日本)[]:2020/04/03(金) 03:00:57.57 ID:1HfknL0s - ※
ルビィ「わぁ、凄いよ!」 曜(植物園に着くと、まるで子どものようにはしゃぎ始めるルビィちゃん) 曜(いつも家の中ばかりだから、こういう風景は新鮮だよね) 曜(それは私にも言えることなんだけど) ルビィ「見てみて、このお花綺麗だよ!」 曜「うん、そうだね」 曜(花か) 曜(これで喜ぶなら、庭でなにか育ててみようかな) 曜(いや、駄目か。私に世話をする時間なんてない) 曜(でも理亞ちゃんに手伝ってもらえればできる?) 曜(……真面目に考えてみようかな)
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- ルビィ「スターチス」
103 :名無しで叶える物語(東日本)[]:2020/04/03(金) 03:01:53.52 ID:1HfknL0s - ルビィ「曜ちゃん、あっちも色々ありそうだよ〜」
曜(楽しそう) 曜(ルビィちゃん、久々に心から笑っていた) 曜(私はやっぱり嬉しかった) 曜(心の底から、ルビィちゃんの笑顔を喜んでいた) 曜(そして一緒に見る光景の美しさも頭では理解していた) 曜(それでも私は笑えなかった) 曜(必死に笑顔というものを思い出し、顔に貼り付けようとしても) 曜(それが、できなかった)
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- ルビィ「スターチス」
104 :名無しで叶える物語(東日本)[]:2020/04/03(金) 03:02:39.58 ID:1HfknL0s - ルビィ「……曜ちゃん」
曜(そんな私の様子に気づき、申し訳なさそうに俯くルビィちゃん) 曜(ああ、せっかく咲いた花を、私が枯らしてしまった) ルビィ「……ごめんね」 曜「……ううん」 曜(ごめんね) 曜(それは私が言わなきゃいけない言葉だよ)
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