- 千歌「モンスターハンター!」
222 :名無しで叶える物語(えびふりゃー)[]:2020/03/29(日) 00:05:48.63 ID:cOlxoKAl - 「オォォォォォ…………!」
矢と銃弾の雨を頭に食らった恐暴竜は大きく態勢を崩した。 イビルジョーは元々、細い脚に太い胴体というアンバランスな体を自らの筋力で強引に支えている。 よって、梨子と善子による頭部への集中砲火に耐え切る事が出来ず、バランスを大きく崩してよろめいた。 さらに、足元が降りしきる雨でぬかるんでおりすぐに態勢を立て直す事が出来ずにいた。 善子「しめた!千歌、頭に当たったわ!今がチャンスよ!」 合図を受け、再び千歌はイビルジョーの懐へと潜り込む。狙うは、右脇腹。三人が作り出してくれた、巨竜という途方もない生物からこじ開けた、一点の綻び! 正真正銘、最後の一発。ラストバレット。龍を穿つ、必殺の一撃 それが今、木製のライトボウガンから放たれる!!!!! 千歌「これで、最後だぁぁ!!!!!!!!!!」 千歌が放った滅龍弾は、イビルジョーの脇腹を捉え、腹部を貫通し、その本体へと絶大なダメージを負わせた
|
- 千歌「モンスターハンター!」
223 :名無しで叶える物語(えびふりゃー)[]:2020/03/29(日) 00:17:01.58 ID:cOlxoKAl - 「ゴガァッ…!!!ガァァァ!!!!!!」
弾丸を急所へと食らったイビルジョーは大きく怯んだ。その巨大な躰で、立っているのが精一杯の様子だった。 体を雨で冷やされ、動きも鈍っていた。基礎体温が高いイビルジョーは熱を失えばまともに活動が出来ない。 善子が放った滅気弾も、その体内のエネルギーを奪うことに一役買っていた。 善子「あんだけ体に銃弾貫通しといて生きてるなんて……正真正銘のバケモノね」 花丸「口元から涎が落ちてる……スタミナ的にはあと一歩なんだろうけど」 千歌「はぁっ……はぁっ……」 曜「千歌ちゃん、滅龍弾は…?」 千歌「はぁっ……もう、これで……使い切っちゃった」 ルビィ「ルビィの閃光玉も、あと一個しかない……」 「ガァァァァァァァ!!!!!」」 その時、イビルジョーが吠えた。大地を踏みしめ、地が振るえる程の轟音で咆哮した。 しかし、次の恐暴竜の行動は攻撃では無く、向きの反転だった。 警戒して武器を構える少女達に尾を向け、先に続く坂道へと向かって走り出していく。 野に生きる獣として、生命の危機を察知しての逃亡だった。
|
- 千歌「モンスターハンター!」
224 :名無しで叶える物語(えびふりゃー)[]:2020/03/29(日) 00:31:11.87 ID:cOlxoKAl - ルビィ「逃げたよ…!」
善子「どうする……引き分けにする?正直、もうこっちは持ってる駒全部出し切ったわよ、出て行ってくれるならそれでいいと思うわ」 花丸「ダメずら!」 善子「……どうしてよ」 花丸「あっちは山道に繋がってるずら!あっちに逃げたら、またいつかは森へ降りて来るずら!!!」 千歌「……行こう!今ならまだ何とかなるかもしれない!」 雨はその勢いを増していた。吹きすさぶ風は、嵐の如き突風となって吹き荒れた 遠くから、雪崩の如き音が聞こえてきた。おそらく山の反対側で土砂崩れでもあったのだろう。 先へ進むほど雨はその速度を増し、風はまるで体を切るかの如き速さで体へと襲い掛かって来た。 六人は流れ落ちる水でぬかるんだ道を、残された巨大な足跡を元に追いかけていった
|
- 千歌「モンスターハンター!」
225 :名無しで叶える物語(えびふりゃー)[]:2020/03/29(日) 00:39:42.11 ID:cOlxoKAl - 【山頂】
山の頂にて、恐暴竜はその様子を一変させていた。 体は、赤く変色し、筋肉の膨張により生々しい古傷が体表へとよりハッキリと浮かび上がっていた。 体の内側から裂けた血管から体液が染み出し、黒光りした体表へと流れ落ちる 口からは黒い煙を吐き出しており、内臓から、龍の力が溢れ出していた 梨子「あれは……?」 花丸「イビルジョーの怒り状態ずら!」 曜「怒り状態…?」 花丸「イビルジョーは生命の危機や外敵による侵略による脅威が迫ると、精神の興奮に同調して全身の筋肉を膨張させるずら!体に着いた古傷がそれにより更にイビルジョーの体に激痛を走らせて、誰にも手が付けられない暴走生命体となるずら!!」 善子「そんなの…ムチャクチャじゃない!」 ルビィ「あれでも、イビルジョー……あっち向いているよ?」 千歌「確かに……というか、なんかいる…?」
|
- 千歌「モンスターハンター!」
226 :名無しで叶える物語(えびふりゃー)[]:2020/03/29(日) 01:06:03.81 ID:cOlxoKAl - イビルジョーが威嚇していたのは、千歌達に対してでは無く山頂の中心に対してだった。
そこには、竜が居た。 翼も使わず、羽ばたかず、ただその場にて浮遊する“白き竜”が居た 風が、その竜から吹き荒れていた。雨が、その頭上から降りてきていた。存在するだけで、世の理に触れる、圧倒的な存在がそこには居た。 千歌「あれは…?」 花丸「知らない…あんなの見たこと無いずら!何もしないで浮いてるとか、物理的にあり得ないずら!!」 曜「ねえ、ルビィちゃん……あれって果南ちゃんが前言ってた……」 ルビィ「うん……“白き竜”」 梨子「うそ…だとしたら……」 善子「少なくとも……只者では、ないわね」
|
- 千歌「モンスターハンター!」
227 :名無しで叶える物語(えびふりゃー)[]:2020/03/29(日) 01:06:31.66 ID:cOlxoKAl - “白き竜”はその場に佇んでいる。体を蜷局の様に巻き、只その場に浮遊している。
「ガァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!!」 その様子を見て、先に行動を起こしたのはイビルジョーだった。口元に登る黒煙を、勢いよく白き竜へと吐き出した。龍の力を秘めた、特大の一撃。 全ての物を怒りと共に破壊しつくす、恐暴竜としての渾身の一発 暴虐の限りを尽くした、イビルジョーから繰り出される最大にして最強の一撃!!!!
|
- 千歌「モンスターハンター!」
228 :名無しで叶える物語(えびふりゃー)[]:2020/03/29(日) 01:09:04.58 ID:cOlxoKAl - しかし、白き竜はその場から動くことなく、その攻撃を受け止めた。
純白の体には傷一つなく、少したりとも身動ぎすることなくそこに在り続けた。 まるで“なにもなかった”かのようにその場にて優雅に佇んだ 「……………………コォォォォ……………」 白き竜へと、風が集まって来る。糸の如き風が束になり、全てを吹き飛ばす轟風となりて竜の体へと取り込まれる “白き竜”が嵐の中心へと変化していく。体を折り曲げ、その場に在る全てを呑み込む厄災へと、その身を変貌させていく!! その姿はまさしく、嵐の化身だった ルビィ「ひゃあああああ!!!!」 善子「ちょっと!!!洒落になって無いわよ!!!!」 花丸「木に掴まって耐え凌ぐずら!!!」 曜「この風の勢い、木も抜けちゃいそうなんだけど!!!」 花丸「その時はその時ずら!!!」 梨子「いいから!早く掴まりなさい!みんなで固まるわよ!!!」 「ガァァァァァァァァ!!!!」 千歌「………!!!!」
|
- 千歌「モンスターハンター!」
229 :名無しで叶える物語(えびふりゃー)[]:2020/03/29(日) 01:15:53.61 ID:cOlxoKAl - 千歌「ごめん、ちょっと行ってくる!!」ダッ
善子「はぁ!?アンタ馬鹿なの!?死にたいの!?」 梨子「千歌ちゃん!!!戻りなさい!!!」 曜「千歌ちゃん!!!!」 千歌「(私達が狩りに出たのは、この村を、私達の島を守るため……その為に、倒さなくちゃいけない相手がいる)」 千歌「(ここで、逃げちゃいけない、臆しちゃいけない。鞠莉ちゃんに頼まれた、『みんなを導いて』って。だから、私がやらないと)」 大地を踏みしめ、白き竜から遠ざかる様に走り出した恐暴竜に向けて千歌は風を切り、一心不乱に走り出す。 剣を握り、地を駆ける。持てる全ての力で足を回し、全速力で接近する! 千歌「(あの暴風の中心にイビルジョーを叩き込めれば、今度こそ!)」 全ては、不意の一撃の為に! 千歌「これでも、くらええぇぇぇぇぇ!!!!!!!!」
|
- 千歌「モンスターハンター!」
230 :名無しで叶える物語(えびふりゃー)[]:2020/03/29(日) 01:21:59.20 ID:cOlxoKAl - 懐から取り出した小剣を、恐暴竜の足首へと突き立てる!!!
通常なら、掠り傷を負わせるほどの軽い一撃。しかし、不意を突かれた今の状況においてそれはイビルジョーにとって致命傷となった 「グガッ!!!!」 ただでさえバランスの悪い体、突風が吹いている中足元を狙い撃ちされたイビルジョーは均衡を崩し、嵐の中心へと吸い込まれていく。 崩れ去ったバランスを立て直す事も敵わず、イビルジョーは白き竜の元へとまるで吹き飛ばされる様に吸い込まれていく 「ギァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!!!!!!」 吹きすさぶ風が、纏う嵐が、恐暴竜の頭を、腹を、八つ裂きにした。 凄まじい勢いの風が、山頂の大地ごと、その場に在った物全てを切り刻み、呑み込む。 千歌「(ごめん、みんな……私、やったよ」 嵐は、竜を、少女を、辺りにある全てを等しく呑み込んでいく。 残る力を一撃に叩き込んだ千歌は、力なくその場に倒れ伏した。
|
- 千歌「モンスターハンター!」
231 :名無しで叶える物語(えびふりゃー)[]:2020/03/29(日) 01:39:08.21 ID:cOlxoKAl - 「千歌!!!」
不意に、手が差し伸べられた。千歌の手のひらより一回り大きい、優しく温かい掌。 千歌の体を掴み“巨大な大剣を地面へと突き刺して”この轟風に耐えている その手が今、地に伏した千歌を引き上げ、立ち上がらせる! 千歌「かなん……ちゃん……?」 果南「無茶しすぎだとか……とにかく説教は後にするから、今は少しでもいいから踏ん張りな!!」 千歌「………うん!!」 二人の少女は、身を寄せ合い、暴風に備えた。突き立てられた大剣にしがみつき、必死に吹き荒れる暴風に抗おうと地面へ食らいついた。 「コオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」 嵐を巻き起こし、大地を捲り上げ、白き竜は天へと舞った。その姿は、羽衣を纏って舞い踊る天女の様でもあり、その場に居るだけ悉くを破壊し尽くす厄災であった。 全てを捻じ伏せ、吹き飛ばし、薙ぎ払う天災を巻き起こし、やがてその姿を……天空へと暗ました。 ほんの少し前まで辺り一帯を吹き荒れていた風は止まり、延々と降っていた豪雨もピタリと止んだ。 雲が流れ、天から光が差した。七色の大きな虹が、地平線の端から、青く広がる大空へとかかっていた。 海と潮風の村に再び、太陽が顔を覗かせた瞬間だった。
|
- 千歌「モンスターハンター!」
232 :名無しで叶える物語(えびふりゃー)[]:2020/03/29(日) 01:39:55.65 ID:cOlxoKAl - 今日はここまで、エピローグへ入ります
|