- ルビィ「スターチス」
45 :名無しで叶える物語(もこりん)[]:2020/03/29(日) 01:41:13.54 ID:C1f4aSyA - 【理亞2】
理亞(あの日から私は、毎日のようにルビィの元へ通うようになった) 理亞(彼女のことは放っておけなかったし、どうせ友達もいないつまらない大学生活) 理亞(ルビィと一緒にいる方が楽しいという、少し悲しい事実もある) 理亞(でも私が行けばルビィは喜ぶし、曜もある程度落ち着くことができるから) 理亞(きっと役には立てている)
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- ルビィ「スターチス」
46 :名無しで叶える物語(もこりん)[]:2020/03/29(日) 01:41:42.34 ID:C1f4aSyA - 曜「やあ、いらっしゃい」
理亞(家を尋ねると、いつも最初に顔を出すのは曜) 理亞(私を信頼してくれているのか、特に警戒することもない) 理亞(逆の立場なら絶対に考えられない行動、お人よし) 曜「ルビィちゃん、結構前から理亞ちゃんを待ってたよ」 理亞「そうなの?」 曜「うん、今日はいつ頃来るのかな〜なんて。可愛いよね」 理亞(照れる) 理亞(初対面の彼女感じた、人懐っこさに近いものを感じる)
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- ルビィ「スターチス」
49 :名無しで叶える物語(もこりん)[]:2020/03/29(日) 08:52:26.09 ID:C1f4aSyA - 理亞(ルビィが乱れていたのは、再会したあの日だけ)
理亞(あとはそれなりに落ち着いて、曜と一緒に家の中で生活をしている) 理亞(曜曰く、一度暴れるとしばらくは大人しくなるらしい) 理亞(その後に『理亞ちゃんの力も大きいけどね』と付け加えてくれたのは、とても嬉しかったっけ) ルビィ「あっ、理亞ちゃん」 理亞(あからさまに表情が変わるわけではないけど、どこか輝いたような顔) 理亞(会話を出来る相手が、今の彼女にはそれだけ貴重ということなのかな) 理亞(曜は自虐的に『私は敵みたいなものだから、話し辛いんだよね』と言っていたけど)
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- ルビィ「スターチス」
50 :名無しで叶える物語(もこりん)[]:2020/03/29(日) 08:56:46.46 ID:C1f4aSyA - 理亞「ルビィ、今日はなにしてたの」
ルビィ「本、読んだり」 理亞(彼女はよく読書をしている) 理亞(それはマルちゃん――国木田花丸が趣味にしていた行為らしい) 理亞(普段は絶対に、彼女の名前を出さないけど) 理亞(だけど行動の節々に影響が色濃く残っているらしい) 曜「ちょっとしたハンドクラフトもしていたんだけど、今は少し休憩中なんだ」 理亞(曜が私の分のお茶を持ってきてくれる)
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51 :名無しで叶える物語(もこりん)[]:2020/03/29(日) 08:57:33.97 ID:C1f4aSyA - 理亞(ルビィはスクールアイドル部で衣装係を務めていて、手先が器用で手芸も趣味らしい)
理亞(そして意外(失礼)なことに、曜も似たような趣味を持っていて) 理亞(Aqoursの衣装はこの二人で作っていたとか) ルビィ「本を読み終わったら、理亞ちゃんも一緒にやる?」 理亞「そ、そうね」 理亞(スクールアイドル時代もほとんど姉さまに任せきりなぐらい) 理亞(細かい作業は苦手なんだけど……) 理亞(器用な人は羨ましい) 理亞(二年生になってから一人になったスクールアイドルでは、結局最後まで一人で衣装は作れなかったもの)
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- ルビィ「スターチス」
52 :名無しで叶える物語(もこりん)[]:2020/03/29(日) 09:10:24.84 ID:C1f4aSyA - 曜「苦手なの?」
理亞(ルビィに聴こえないように、こっそりと曜が尋ねてくる) 理亞(この人は、本当に目ざとい) 理亞「うん」 理亞(私も素直に打ち明ける) 理亞(一応年上な分、私も素直になりやすい) 曜「それじゃあ、ルビィちゃんの読書が終わるまで色々教えてあげるよ」 曜「そのほうが、やりやすいでしょ」 理亞「ありがとう」 理亞(ルビィに格好悪いところを見せたくないから、とてもありがたい助け舟)
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53 :名無しで叶える物語(もこりん)[]:2020/03/29(日) 09:11:17.53 ID:C1f4aSyA - 曜「それじゃあ、ちょっと道具持ってくるから。ルビィちゃんのことお願いね」
理亞(パタパタと、部屋を出て行く曜) 理亞(私は頼まれたとおり、ルビィに目を移す) 理亞(相変わらず、集中して本を読んでいる) 理亞(学校教育を受けた人間なら誰もが聞いたことのある、自ら死を選んだ作家の作品) 理亞(アイドルが好き、裁縫が好き) 理亞(そんな彼女本来の人間性からは、想像もつかないような本) 理亞(間違いなく、国木田花丸が愛していた類の物語)
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- ルビィ「スターチス」
54 :名無しで叶える物語(もこりん)[]:2020/03/29(日) 09:12:16.44 ID:C1f4aSyA - 理亞(ルビィは花丸を意識して生きている)
理亞(それなのに私が知る限り一度も名前を出していないのは) 理亞(意識しないようにするため) 理亞(花丸を思い出すと、衝動的に死を選択しようとするから) 理亞(だけど死を望んでいるはずの彼女が、なぜ自分にストッパーをかけているのか) 理亞(そこで引っかかってしまう) 理亞(本当は死を望んでいない?) 理亞(いや、それはない) 理亞(ルビィの国木田花丸への異常なまでの愛情、そして実際に見た行動から考えれば) 理亞(それならなぜかは私には分からない) 理亞(曜はある程度理解しているかもしれないけど、内容的に尋ね辛い) 理亞(考えてみるしかない) 理亞(自分の頭で考えて答えを導き出す。それしかない)
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- ルビィ「スターチス」
55 :名無しで叶える物語(もこりん)[]:2020/03/29(日) 09:54:30.08 ID:C1f4aSyA - 【善子】
善子(目を覚ますと、顔に大きなクマのぬいぐるみが張り付いている) 善子(きっと寝相の悪い私が、枕元に置いてあったこいつを倒してしまった結果) 善子「……邪魔」 善子(こんな可愛いの、全然私の趣味じゃない) 善子(ウザったい、いつも眠るときに気に障る) 善子(引きはがし、壁へ放り投げる) 善子(ちょうど古ぼけたアイドルのポスターの下へ当たり、小さな落下音が部屋へ響く) 善子「あーあ」 善子(危なかった。あと少しで代えの利かないものを破いてしまいそうだった) 善子(私じゃこれがどこで売っているかも、代わりに何を張ればいいのかも分からない)
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- ルビィ「スターチス」
56 :名無しで叶える物語(もこりん)[]:2020/03/29(日) 09:55:05.98 ID:C1f4aSyA - ダイヤ「ルビィ!」
善子(ぼんやりとしていると、駆け込んでくる仮の姉) 善子(心配するのはポスターだけじゃなかった) 善子(あの壁の隣は、ダイヤの部屋) 善子(数々の出来事の末に、妹に対して異常なまでに過保護になってしまった姉の部屋) ダイヤ「ルビィ、ルビィはどこですか」 善子(かつての美貌からは見る影もない乱れた髪) 善子(荒れ果てた顔、さらに細く、骨のようになってしまった身体) 善子(まるでゾンビのような人間が、部屋を這いずり回り、最愛の妹を探す)
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- ルビィ「スターチス」
57 :名無しで叶える物語(もこりん)[]:2020/03/29(日) 09:56:56.53 ID:C1f4aSyA - 善子?「……ここだよ、お姉ちゃん」
ダイヤ「ああ、ルビィ。ちゃんと」 善子(声で存在に気づき、彼女は私に、黒澤ルビィに抱き着く) 善子(私はルビィだ) 善子(かつては存在した津島善子はもうこの世にはいない) 善子(ここに居るのは、黒澤家の次女で、ダイヤの妹の黒澤ルビィ) ダイヤ「うふふ、今日も可愛らしいですわね」 善子?「ありがと、お姉ちゃん」 善子(本物のルビィは生きている) 善子(だけど私たちはそれを知るのが遅かった) 善子(そしてダイヤに伝わった時には、もうこの状態)
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- ルビィ「スターチス」
58 :名無しで叶える物語(もこりん)[]:2020/03/29(日) 09:57:52.01 ID:C1f4aSyA - ダイヤ「ルビィ、ルビィ……」
善子(この細い身体からは想像もできないような力で、私を抱きしめ続ける姉) 善子(絶対に放さないという、強い意志) 善子(かつて黒澤ダイヤだったものの名残) 善子(この道を選んだのは私自身だ) 善子(俳人と化していくダイヤへの贖罪から始めた行為) 善子(最初はただ、傍に居て彼女を支えるだけ) 善子(今の曜さんが、ルビィにやっているのと同じこと) 善子(私に裏切られたせいで妹を失ったのにもかかわらず、ダイヤはそれを受け入れていた) 善子(それぐらい彼女は弱っていた) 善子(というより、既に正気を失っていたのかもしれない)
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- ルビィ「スターチス」
59 :名無しで叶える物語(もこりん)[]:2020/03/29(日) 09:58:44.29 ID:C1f4aSyA - 善子(傍にいるにつれて、次第に、記憶が書き換えられていく)
善子(ダイヤの頭の中で、ルビィの死は否定されて) 善子(いつも傍に居た私は善子という妹となり) 善子(気づけばルビィへと名前が変化して) 善子(津島善子と、本来の黒澤ルビィの存在は、抹消されていた) 善子(私はそんな状況を受け入れざるをえない) 善子(罪悪感が、逃げることを許してくれない)
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- ルビィ「スターチス」
60 :名無しで叶える物語(もこりん)[]:2020/03/29(日) 10:01:54.74 ID:C1f4aSyA - 善子(そんな偽りの生活が続いたある日、果南さんが黒澤家へやってきた)
善子(密かにルビィを助け出してしまったこの人から、この状況について私は何度も謝罪を受けた) 善子(土下座と、数えきれないほどの詫びの言葉) 善子(きっと彼女は、自分を罰してほしかったんだ) 善子(それなのに私は、ただ謝罪を受け入れるだけで、何もしなかった) 善子(果南さんは、ダイヤにも真実を話した) 善子(いま彼女の傍に居るのは津島善子であること) 善子(本当の妹は、黒澤ルビィは別にいて、まだ生きているということ) 善子(だけど)
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- ルビィ「スターチス」
61 :名無しで叶える物語(もこりん)[]:2020/03/29(日) 10:02:48.34 ID:C1f4aSyA - 『何を言ってるのですか、ルビィはここに居るでしょう』
善子(果南さんの言葉に対して、私を抱きしめながら、冗談でも言われたかの様に鼻で笑うダイヤ) 善子(既に私は黒澤ルビィになっていたのだから、仕方ない) 善子(そしてその瞬間、私の偽りの生活は終わった) 善子(私は、黒澤ルビィは偽りではなく、真実になった) 善子(津島善子はかつて私がヨハネと呼んでいたある種の副人格、痛々しい存在と同じようなものだ) 善子(ダイヤは壊れてしまったんだ) 善子(私も、もう壊れてしまった) 善子(けどせめて、その結果で得た平穏は保っていたかった)
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