- 「令安かすみん物語」
419 :名無しで叶える物語(もんじゃ)[sage]:2020/03/29(日) 23:44:05.27 ID:5QGbPbJj - 🍄cι˘σ ᴗ σ˘* 〜9〜
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420 :名無しで叶える物語(もんじゃ)[sage]:2020/03/29(日) 23:45:08.16 ID:5QGbPbJj - せつ菜先輩の話をしましょう。
騒がしくって、オタク趣味で、なんだかんだ初心で。 暴走しがちで、トラブルメーカーで、根っからの正直者で。 いつだって、自分の大好きに一直線に向かっていて。 同好会のみんなのことが、一人のファンとして大好きなんて言っちゃう。 ――――そんな、素敵な女性のお話を。
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421 :名無しで叶える物語(もんじゃ)[sage]:2020/03/29(日) 23:46:04.89 ID:5QGbPbJj - たとえばこんなことがありました。
部室での出来事です。 せつ菜「歩夢さん! 次はこの通りにお願いしますっ」 歩夢「え、え〜?」 エマ「わくわく〜♪」 歩夢「えーとえーと、うん……おほん」 歩夢「『い、一回しか言わないんだから! ちゃんと聞いてよねっ……―――好き、だよ』」 せつ菜「ふわぁ〜〜〜〜!!」 エマ「きゃぁ〜〜〜」 歩夢「も、もう恥ずかしいよ〜」 かすみ「……なにをやっているんですか? あれは」 果林「せつ菜がエマに『萌え』を理解してほしいからって、いろいろ実践してるのよ。歩夢は巻き込まれちゃったってわけ」 かすみ「はぁ」
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422 :名無しで叶える物語(もんじゃ)[sage]:2020/03/29(日) 23:47:01.36 ID:5QGbPbJj - エマ「これが萌え萌えなんだね〜」
せつ菜「ん、うむむ、まだ手応えが弱いです……」 歩夢「わ、私そろそろ着替えるねー……」 せつ菜「あぁ……次、次のセリフは……」 せつ菜「あ! かすみさんお願いします!」 かすみ「え、急に来た!?」 せつ菜「お願いです! このセリフにはかすみさんの可愛さが必要なんです」 かすみ「か、かすみんの可愛さ……??」 かすみ「ふ、ふ〜ん。それなら仕方ないですね〜」
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423 :名無しで叶える物語(もんじゃ)[sage]:2020/03/29(日) 23:48:20.53 ID:5QGbPbJj - せつ菜「どうぞ!」
かすみ「ふっふっふー。いざ!」 かすみ「『ほぉら卑しい豚さん? 次はどこをぶってやろうかしら……』」 かすみ「ってなんですかこれは!」 せつ菜「い、いいっ! 良きですよ、かすみさん!」 かすみ「なにがですか!? こんなのかすみんのイメージじゃないですよ!」 エマ「あ、これがノリツッコミ! ってやつだね♪」 せつ菜「え、あの、そこではないのですが……」 かすみ「うぅ、二重に損した気分です……」 この後、果林先輩に慰めてもらいました。「予想通りだけどね」なんて言葉をもらっちゃいましたけど。 せつ菜先輩はみんなのいろんな姿を見れて、心から幸せそうにしていました。
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424 :名無しで叶える物語(もんじゃ)[sage]:2020/03/29(日) 23:49:03.15 ID:5QGbPbJj - たとえばこんなことがありました。
せつ菜「…………」 せつ菜「……」 せつ菜「………………」 かすみ「あの、せつ菜先輩、どうかしたんですか?」 せつ菜「聞いてくれますかかすみさん!」 かすみ「いやぁ、さすがに部室でずーっと呆けられたら気になるというか……」 せつ菜「すみません、部活の時間中に。実は、昨日……」 昨日見たアニメが最終回だったという話でした。「難民になってしまいました……」とかなんとか。 盛り上がるのも全力、落ち込むのも全力。それがせつ菜先輩なのでした。
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425 :名無しで叶える物語(もんじゃ)[sage]:2020/03/29(日) 23:50:24.15 ID:5QGbPbJj - たとえばこんなことがありました。
璃奈「カードゲーム?」 せつ菜「はい! 同好会メンバーを元にしたゲームなんです。自分でルールをつくってみたのですが、テストプレイに付き合ってもらってもいいでしょうか?」 璃奈「面白そう。やる。璃奈ちゃんボード『わくわく』」 璃奈「――『愛』さんに『衣装:めっちゃGoing!』を装備で歌唱力500UP、ビジュアル1000UP。プレイヤーにライブ」 せつ菜「『璃奈』さんでアライブします!」 璃奈「む、素の『私』だとポイント足りないはず」 せつ菜「その通りです。ただし、『璃奈』さんへ攻撃が通る場合にのみ手札から発動できるカードがあります―――『衣装:猫耳』を特殊発動! 『璃奈』さんに装備です」 璃奈「ねこみみ……」 せつ菜「『愛』さんから『猫耳』装備の『璃奈』さんへの攻撃は成立しないので、無効となりますね」 璃奈「そ、そんな……!」 愛「仕方ないよ、りなりー」←観戦組 彼方「うんうん、わかるなぁ」←観戦組 璃奈「複雑な気分……いや、負けない!」 せつ菜「次は私のターンですね。ドロー!!」 結局、このゲームは同好会メンバーの力関係がややこしい上、気恥ずかしいということで流行りませんでした。 最後は彼方先輩が家に持ち帰って、妹さんとローカルルールで楽しんだのだとか。 そんなゲームの結末を聞いて、せつ菜先輩は嬉しそうにしていました。 自分の創作が一つの形として受け入れられるというのは、常に大好きを放出しているせつ菜先輩にとって、これ以上ない幸福だったのかもしれません。
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426 :名無しで叶える物語(もんじゃ)[sage]:2020/03/29(日) 23:51:57.79 ID:5QGbPbJj - ----
----------- -------------------- 運転席の横を電柱が一本また一本とすり抜けていく度に、ヴェールがめくられていくように、せつ菜先輩の記憶が少しずつ浮かび上がってきます。 そういえばこんなこともあったな、なんて、思い出してみれば忘れていたことがおかしなほど奇天烈な出来事だったり、やっぱり忘れていたかったくらい恥ずかしい出来事だったり。 思い出話にもならないような、なんてことないただの日常の記憶が、いまとなっては一つ一つ、握りしめずにはいられないほどまばゆく輝いていました。 もう忘れることのないように。 これ以上失うことのないように。 思い起こしては頭の中で反芻して、大事に、大事に刻んでいきます。
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