- SS 小泉花陽はお腹がすいた -第二幕 魔法大国UDX編
263 :名無しで叶える物語(奈良漬け)[sage]:2019/09/09(月) 23:30:48.70 ID:NQ/d0VjE - バンッ! ダダダダ……
エミ「ハナヨちゃん、待ってください!」バッ 意識や思考が回るよりも早く、私は宿屋を飛び出していました 花陽「……そんな……まさかっ!」ダダダダ… 昨日見た女の子の顔が脳裏から離れない どんなに考えようとしても冷静になんてなれません 死んでた……誰が……あのお店に居たのって……っ! 花陽「くっ…ぅぅ……」ダダダダ…
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264 :名無しで叶える物語(奈良漬け)[sage]:2019/09/09(月) 23:31:24.56 ID:NQ/d0VjE - 昨日訪れたお店の前には数人の大人がいました
皆お店の入り口に集まって何か話している…… 胸がザワつく…… 喉が熱い…… 花陽「………ハァ…ハァ…」フラッ …………………いた 花陽「………ハァ、フゥ……」 大人達に囲まれるようにしてあの子がいました 自分を見下ろす大人達を見上げている……生きてる…… 花陽「………………」ヘタッ
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265 :名無しで叶える物語(奈良漬け)[sage]:2019/09/09(月) 23:32:14.43 ID:NQ/d0VjE - エミ「ハナヨちゃんっ! ゼェ…ど、どうしたんですか……ハァハァ…」ヨタヨタ…
花陽「………………」 あの子が無事でいる……私の早とちりだった…? エミ「ハナヨちゃんっ!」ガッ 花陽「あっ……いえ、その……ごめんなさい」 無事………だけど、あの人達はなに? 死んだというのは……誰のこと? 花陽「ん、しょ……」グッ エミ「ハナヨちゃん?」 花陽「ちょっと行ってきます。宿で待っていてください」タッ ちゃんと冷静に考えてみても、あの子が死んだという疑問に対してスキルは発動していませんでした そんな事も忘れて頭が真っ白になって飛び出してしまいました だけどそれならあの状況はどういう事なんだろう?
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266 :名無しで叶える物語(奈良漬け)[sage]:2019/09/09(月) 23:32:54.17 ID:NQ/d0VjE - 花陽「あの、すいません」
「ん、なんだいアンタ?」 「あ………」 女の子と目が合うと私に気づいてくれたのか、小さく声を出しますがそれきり… この状況がどういう事なのか、彼女自身もよく理解しきれないままに困惑しているようにも見えました 花陽「何かあったんですか?」 「アンタこの町の人かい?」 花陽「いえ、昨日このお店で買い物をした客です」 「………ああ、アンタだったのか」 花陽「………?」
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267 :名無しで叶える物語(奈良漬け)[sage]:2019/09/09(月) 23:33:41.99 ID:NQ/d0VjE - 集まっていた大人の人達はこの辺りのご近所さんでした
このお店はご夫婦とお子さん……この女の子一人の、三人で暮らしていたそうです しかし先の戦争時、旦那さんが仕入先で戦火に巻き込まれお亡くなりになったと… 残された奥さんはショックで寝込んでしまったということです 花陽「…え、じゃあこのお店って……」 「奥さんが倒れてからは店はやってなかったんだよ」 「ずっと娘さんが奥さんの看病をしていると思っていたからねぇ…」 花陽「…………」 時折お店に明かりが点いているのを確認していたので、なんとかやっているのだと思っていたそうです でも実際はこの子がお母さんのかわりにお店番をしていたと
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268 :名無しで叶える物語(奈良漬け)[sage]:2019/09/09(月) 23:34:27.18 ID:NQ/d0VjE - お母さんが元気になるまで、お母さんのマネをして……あのお店を……
花陽「それじゃ……亡くなったのって……」 「結構な時間が経過していたようだけど。あの子の母親さ」 「寝たままで、衰弱してしまったんだろうねぇ…可哀想に……」 花陽「……………」 とても哀しいお話です あの小さな女の子は看病していたお母さんが死んでいるのがわからず、元気になるまで自分が店番をしようとがんばっていたのです やがて家の食料も底をつき、それでもお母さんが起きてくるまで一人でお店を守って…… エミ「なんという事でしょう……」グスッ 花陽「エミちゃん、いつのまに!?」
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269 :名無しで叶える物語(奈良漬け)[sage]:2019/09/09(月) 23:35:36.23 ID:NQ/d0VjE - エミ「ハナヨちゃんの様子がおかしかったので着いてきてしまいました……でも……こんな事が……」
花陽「うん………」 「朝早くにうちの門を叩くから何かと思ったらよ、嬢ちゃんが薬を売ってくれって来たんだよ」 花陽「薬……お母さんのために?」 「酷くやつれてるんで、これは何かあったに違いないと、数人で様子を見に行ったのさ……そしたら」 エミ「亡くなっているお母さんを発見した…という事ですね……」 「……?」 私達の話もあまり理解できないまま、女の子はキョトンとしています 生きていてよかった……そう思っていたのに、今は違う感情で胸が締め付けられます…… 花陽「……………あの」 「ん?」
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270 :名無しで叶える物語(奈良漬け)[sage]:2019/09/09(月) 23:36:43.53 ID:NQ/d0VjE - 花陽「この子……これからどうなるんですか?」
エミ「………ハナヨちゃん……」 「どうなるってもなぁ…他に身よりがいるなんて話は聞いた事ないし……」 「戦後の統制がまだ落ち着いてないから、どこも大変なのよねぇ…」 「物資の流通も滞ってばかりだしなぁ…」 「余裕あるとこなんてどこもねー……」 「戦争やったばかりなんだしどこもないだろ、余裕なんて…」 花陽「……………」 また戦争……。ここでもやっぱり戦争です。その影響でこんな状況になってもみんな心に余裕がありません 手を取り合うなんて考えもない…… 自分や家族を守るのに精一杯なのは理解できます でも、こんな小さな子供一人どうにもならない……しようという考えもない…… 花陽「…………」
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271 :名無しで叶える物語(奈良漬け)[sage]:2019/09/09(月) 23:37:20.62 ID:NQ/d0VjE - -宿場町のはずれ
フワ「あなたねぇ…………」 花陽「……………」 エミ「…………」 チセ「ちっこい〜」ツンツン 町の人に聞いて、身寄りのない子供を受け入れてくれる施設があるとすれば王都にしかないという話だったので…… 「つつかないでー…」 連れてきちゃいました、女の子 この子自身、まだお母さんが亡くなった事を知りません。むしろ人の死を理解できません そんな中あの家で一人で生きていくなんてきっと無理です
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272 :名無しで叶える物語(奈良漬け)[sage]:2019/09/09(月) 23:38:11.89 ID:NQ/d0VjE - フワ「だからって……王都には確かに立ち寄るけど……その施設とやらはあるの?」
花陽「………無いです」 施設の可能性を考えて見たけど、スキルは反応しませんでした 王都にこの子を預かってくれるところはありません エミ「え、でもこの子を責任もって王都に連れて行くという理由で預かったのでは……?」 花陽「……………」 フワ「自分で預かろうっていうのね……」 花陽「だって……誰もこの子を助けてあげられそうになかったですし……」 どの可能性を考えてもあの町でこの子を保護できる存在はいませんでした だったらしょうがないじゃないですか……
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273 :名無しで叶える物語(奈良漬け)[sage]:2019/09/09(月) 23:39:10.53 ID:NQ/d0VjE - フワ「花陽ちゃんのする事に、きっと誰も文句は言わないわ。言える立場でもないし」
花陽「そうかもしれません……けど……」 フワ「でもいい?花陽ちゃん。あなたのその優しさは、いつかきっとあなた自身を動けなくさせてしまうわよ」 エミ「………………」 花陽「ど、どういう意味……ですか?」 フワ「そのままの意味。花陽ちゃんは元の世界に帰りたいのでしょ?」 花陽「それは勿論……そうですけど……」 フワ「だったらその事を第一に考えて注力すべきなの。でもあなたはこの世界で色々なものを背負いすぎてるわ」 花陽「助けるなってことですか?」
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274 :名無しで叶える物語(奈良漬け)[sage]:2019/09/09(月) 23:40:09.00 ID:NQ/d0VjE - フワ「ユリカちゃん達のためにすること、アイドル活動も良いと思う。あの子達との約束もある。でも、それ以外に花陽ちゃんは何人助けるつもりなの?」
花陽「そんなの……」 フワ「あの盗賊達を助けて、あの騎士の……名前忘れたけどアイツもほっとけない……そして今度は身寄りのない子を引き取る……」 花陽「何が言いたいのフワちゃん」 フワ「人を助けるって、簡単じゃないのよ?」 花陽「わ、わかってます……私は私にできる事があるならやりたいだけです」 フワ「……その子の人生、今日がとても大きな分岐点になるのよ。その道の先へあなたが連れて行くのに、あなたは元の世界に帰れるの?」 花陽「…………」 フワ「生きていける環境だけ用意すればいいなんて考えてないわよね?」 エミ「フワちゃん……それは……」 フワ「その子の人生に、関わろうとしているのよ、あなたは…。もしかしたらこの先もっと増えるかもしれない」
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275 :名無しで叶える物語(奈良漬け)[sage]:2019/09/09(月) 23:41:15.22 ID:NQ/d0VjE - 花陽「ダメ………なんですか?」
フワ「そうは言わないわ。私だってあなたのする事を否定はしない。でも、その先にあるものもちゃんと見て、考えて欲しいの」 花陽「……………」 フワ「花陽ちゃん。あなたはその子にとっての希望になるかもしれないのよ?」 花陽「希望………」 フワ「事情をある程度知っている私達だけならともかく、あなたが手を差し伸べる人達に、あなたはどう映るのか……一度考えてみて」 花陽「……………」 チセ「ケンカしてるのー?」 エミ「大丈夫ですよ」 「…………おうまさん……」 フワ「馬じゃないわよー」
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276 :名無しで叶える物語(奈良漬け)[sage]:2019/09/09(月) 23:41:34.82 ID:NQ/d0VjE - 続くー 保守感謝す
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