トップページ > ラブライブ! > 2019年05月17日 > edE1HvF1

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名無しで叶える物語(やわらか銀行)
理亞「ルビィ..絶対助けにいくからね..」chapter3
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理亞「ルビィ..絶対助けにいくからね..」chapter3
54 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)[]:2019/05/17(金) 00:00:19.71 ID:edE1HvF1
花丸「理..理亞ちゃん!!」

理亞が必死に善後策を練るために頭を働かせていると..花丸の恐怖に上ずった声を上げた

理亞「え?なに?どうしたの?」

ドシュ..ビイイ〜〜ンンン..

理亞「な..!!」

理亞の顔のすぐ横に位置する壁に..ボウガンの矢が深々と突き刺さり、小刻みに震える弓矢の羽が理亞の頬をくすぐった

理亞「あ..あ..」

理亞は恐怖に目を大きく見開き..真横の壁に突き刺さった矢を呆けたように見つめた
理亞「ルビィ..絶対助けにいくからね..」chapter3
55 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)[]:2019/05/17(金) 00:01:09.27 ID:edE1HvF1
花丸「あわわわ..も、もう来たずら!!」

理亞「なんで!?どうして私たちがここに逃げ込んだってわかって..ハッ!!」

月明かりがプールサイドを薄く照らし出し..花丸から流れ出た血痕が道しるべのようにコンクリートの上に点在しているのに理亞は気が付いた

理亞(クッ!花丸の血痕を辿ってきたのか..こんなことに気が付かなかったなんて!!)

襲撃者は矢を取り換えて再び理亞に狙いを定め..ボウガンの引き金を弾いた
ドシュッという音の直後、銀色の弓矢が疾風のごとく理亞目がけて飛来する..

理亞「わああ!!」

理亞は腰を抜かしてしまい、地面にへたり込んでしまう..
ボウガンの矢は理亞の顔面があった場所に突き刺さり、壁の粉末がパラパラと理亞の頭に降り注いだ
理亞「ルビィ..絶対助けにいくからね..」chapter3
56 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)[]:2019/05/17(金) 00:01:46.67 ID:edE1HvF1
襲撃者は矢が外れたことに特に反応を示すこともなく..淡々とボウガンに矢を装填する作業に取り掛かった

理亞(姉さま..姉さま助けて!!)

理亞は想像の中の聖良に縋った..

いつも明るく優しい姉聖良..弱きを助け強きを挫く..どんな相手にも果敢に立ち向かっていく理想の姉..
幼いころ..人見知りが激しくイジメられていた理亞を助けてくれた姉の姿が脳裏に浮かんできた
理亞「ルビィ..絶対助けにいくからね..」chapter3
57 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)[]:2019/05/17(金) 00:02:21.57 ID:edE1HvF1
せいら「もう大丈夫よ..あなたを虐めていた子達は私がやっつけてあげたから..」

りあ「ひっぐ..ひっぐ..」

せいら「もう..泣かないの..私の妹なんだからめそめそしないの!」

りあ「姉さま..ありがとう..」

幼き日の理亞がお礼を言うと聖良は苦笑し、肩をすくめた

りあ「ねえ..姉さま..」

せいら「な〜に?りあ?」

りあ「姉さまは..どうしてそんなに強いの?」
理亞「ルビィ..絶対助けにいくからね..」chapter3
58 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)[]:2019/05/17(金) 00:03:24.52 ID:edE1HvF1
せいら「鍛えているからね..そんじょそこらの奴相手になら負けないわ」

りあ「姉さまは..怖くないの?相手はあんなに大勢いたんだよ?」

せいら「怖くないって言ったら..ウソになるわ 私だって人間だもの..傷つくのは怖いし、痛いのはイヤよ」

りあ「じゃあどうして?どうして姉さまはどんな相手にも立ち向かっていけるの?」

せいら「大切な人を守るため..だからね」

りあ「守る?」

せいら「そう..りあは私にとって大切な人だから..たとえ相手が誰であろうと..何人だろうと..りあの為だったら立ち向かっていくことができるの」

りあ「私も..鍛えれば姉さまみたいになれる?」
理亞「ルビィ..絶対助けにいくからね..」chapter3
59 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)[]:2019/05/17(金) 00:04:27.59 ID:edE1HvF1
せいら「あなたは鍛えなくてもいいわよ..いざとなったら私が駆けつけて守ってあげるから」

りあ「...やだ」

弱い自分が嫌だった..いつも泣いてばかりでメソメソして..そんな自分を..変えたかったんだ

せいら「りあ?」

りあ「私も姉さまみたいになりたい!!姉さまは私の憧れ..いつか私も姉さまみたいになって..姉さまを守ってあげられるようになりたい!!」

せいら「りあ..」

りあ「これからは私も姉さまと一緒に特訓する!!」

せいら「わかった..これからは私があなたをみっちりと鍛え抜いてあげる..」

りあ「うん!早く強くなって..私も姉さまや誰かを守ってあげられるようになるの!!」
理亞「ルビィ..絶対助けにいくからね..」chapter3
60 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)[]:2019/05/17(金) 00:05:03.63 ID:edE1HvF1
そうだ..私はあの日誓ったんじゃないか..もうメソメソ泣かない..強くなって姉さまや大切な人を守れるような強い人間になるんだって..

矢の装填を終えた襲撃者は理亞目がけてボウガンの矛先を向けた

理亞(私が殺されたら次は花丸が殺される..守るんだ..私の大切な友達を..守って見せる!!)

ドシュッ!という鈍い音の直後に銀色の弓矢が理亞目がけて高速で飛来する..
アドレナリンが脳内に分泌された理亞にとって、飛んでくる矢はコマ送りのスローモーションのように見えた

心臓目がけて飛来する矢を理亞は紙一重で交わし、矢は壁に突き刺さった
理亞「ルビィ..絶対助けにいくからね..」chapter3
61 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)[]:2019/05/17(金) 00:05:45.07 ID:edE1HvF1
理亞「守る..私は..友達を守って見せる!お前なんかにやられてたまるか!!」

矢を回避されたことで襲撃者に僅かな戸惑いが生じるも、理亞を抹殺すべく次の矢を装填する作業に取り掛かった

花丸「理亞ちゃん逃げて!!」

理亞「逃げない!私は絶対に友達を見捨てない!!」

理亞は壁に突き刺さったボウガンの矢を掴むと思い切り引っこ抜く..
襲撃者も矢の装填作業を終え、再び理亞目がけてボウガンの狙いを定めた

理亞「せいッ!!」

理亞は体を捻ると襲撃者目がけて矢を投げ放つ..それとほぼ同じタイミングでボウガンが撃ちだされるドシュっという鈍い音がプールサイドに響き渡った
理亞「ルビィ..絶対助けにいくからね..」chapter3
62 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)[]:2019/05/17(金) 00:06:21.98 ID:edE1HvF1
理亞「ッ..!」

ボウガンの矢は理亞の頬を掠め、一筋の血液がツッ..と頬を流れた

ガシャン..!という固いコンクリートの上に金属を落とす音が鳴り響く..
理亞の投げた矢は襲撃者の肩に突き刺さり、敵は肩に刺さった矢の痛みでボウガンを取り落した

理亞「ヤッタ..」

黒いローブから赤い血液がコンクリートの上に滴り落ちる..襲撃者はボウガンを拾い上げると走りだし、プールサイドから逃げ去っていった
理亞「ルビィ..絶対助けにいくからね..」chapter3
63 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)[]:2019/05/17(金) 00:07:09.12 ID:edE1HvF1
花丸「理亞ちゃん..すごい..」

理亞「た..助かった..」

敵の撃退に成功し、自分と花丸を守ることができたことに安心した理亞はヘナヘナとその場に崩れ落ちた

花丸「理亞ちゃん!血が出てるずら!」

理亞「あ..本当だ..かすり傷だから大丈夫よ」

花丸「ダメずら!ジッとしてて!」

花丸は足の痛みをこらえて立ち上がると、乾いたハンカチを取り出し理亞の頬にあてがった
理亞「ルビィ..絶対助けにいくからね..」chapter3
64 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)[]:2019/05/17(金) 00:07:46.82 ID:edE1HvF1
理亞「ありがとう..アンタも大丈夫?」

花丸「さっきよりは痛みも軽くなって来たずら..心配かけてごめんね?」

理亞「よかった..ねえ、今の..ボウガンで私たちを襲ってきた奴..何者なの?」

花丸「わからない..あんな恐ろしい人見たことないよ..」

理亞「ルビィの失踪にアイツが関わっていると思う?」

花丸「もしかしたら..そうなのかも..考えたくないけど」

理亞「またアイツが来るかもしれないから..ここを離れよう..立てる?」

花丸「うん..」
理亞「ルビィ..絶対助けにいくからね..」chapter3
65 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)[]:2019/05/17(金) 00:08:22.77 ID:edE1HvF1
理亞「とにかく人がいるところまで非難するわよ..町まで歩けるかしら?」

花丸「大丈夫..心配いらないずら..早くここから逃げよう!」
理亞は花丸に肩を貸して立ち上がらせ、2人は校門を目指して歩き出した

花丸「フウ..フウ..」

理亞「花丸..大丈夫?ペース早かったら言ってね?」

花丸「うん..大丈夫だよ..それにしても..理亞ちゃんさっきはすごかったね..矢を投げてボウガンの人を追い払っちゃうなんて..」

理亞「別に..さっきは夢中だったから..それに..姉さまだったらああするんじゃないかって..」

花丸「聖良さんが?」
理亞「ルビィ..絶対助けにいくからね..」chapter3
66 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)[]:2019/05/17(金) 00:09:07.48 ID:edE1HvF1
理亞「うん..ウチの姉さま..ものすごくケンカが強いんだ..人見知りの激しい私は..昔から意地の悪い奴にからかわれたり..いじめられたりすることがあって..そのたびに姉さまが助けてくれたの」

花丸「聖良さんが..妹思いの良いお姉さんだね」

理亞「ええ..自慢の姉よ..さっきも姉さま助けて!!って思ったら..昔姉さまが私を助けてくれたときのことが頭に浮かんできて..姉さまだったら誰かを守るために戦うんだろうなって..それで..」

花丸「さっきは守ってくれてありがとう..こうしてマルが生きていられるのは理亞ちゃんのおかげだよ」

理亞「べ..別に..私は..//」

人から感謝されたことが少ない理亞は頬を赤らめて顔を背けた
理亞「ルビィ..絶対助けにいくからね..」chapter3
67 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)[]:2019/05/17(金) 00:09:50.59 ID:edE1HvF1
花丸「あ!理亞ちゃん赤くなってる! 暗くてもよくわかるずら!!」

理亞「あ、赤くなんてなってない!!」

花丸「照れちゃってかわいいずら」

理亞「バカにしてんの?ここに置いてくわよ?」

花丸「ずら!?じょ..冗談キツイずら!!謝るから勘弁してほしいずら〜!」

理亞「それより..早くここから逃げて警察をって..待って..校門の前に何かいる..」

花丸「え?」
理亞「ルビィ..絶対助けにいくからね..」chapter3
68 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)[]:2019/05/17(金) 00:10:28.85 ID:edE1HvF1
グルルル..グルルルルルル...バウ!!ワンワン!!

真っ暗な校門の前に..一頭の大型犬が門番のように待機していて..理亞と花丸目がけて大きく吠えまくってきた

花丸「え?ちょ、ちょっとなんずらこの犬!?お願いだからそんなにほえないでずら!!」

ワンワンワンワン!!ワオオオオオオ〜〜ンン!!

大型犬は2人目がけて跳びかかってきて、校門をぶち破らんばかりの勢いで吠えまくった

理亞(クッまずい!こんなに大きな声で吠えられたらさっきのボウガンの奴に居場所を知られちゃうじゃない!!それに私一人だったらともかく..ケガをした花丸を連れてこんな凶暴な犬がいる夜道は危険すぎる!!)
理亞「ルビィ..絶対助けにいくからね..」chapter3
69 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)[]:2019/05/17(金) 00:11:21.89 ID:edE1HvF1
ワン!!ワンワン!!ワンワン!!

花丸「やめて!!そんなにほえないで!イイ子だから大人しくして!!」

理亞「花丸!ここは危険だから校舎の中に戻るわよ!!」

花丸「え?ち、ちょっと理亞ちゃん!?」

理亞は花丸を担ぎ上げると校門に背を向けて走り出し、校舎の中へと非難した

理亞「なんなのよあのバカ犬!!どうしてこんなときに限ってあんな変なのが出てくるのよ!」

理亞は次から次へと降りかかる異常事態へのいら立ちを隠すことができずに、教室の壁を蹴り飛ばした

花丸「怖かったずら..まだ心臓がドキドキしてるよ..」

理亞「クソッ!あんな凶暴な犬がいるんじゃここから逃げられないじゃない!」

花丸「落ち着くずら..焦っている時ほど冷静さを保たなくちゃだめだよ..」

理亞「これが落ち着いていられるかっての..どうしよう..このままじゃ..」
理亞「ルビィ..絶対助けにいくからね..」chapter3
70 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)[]:2019/05/17(金) 00:13:52.47 ID:edE1HvF1
花丸「ここにいたらあのボウガンの人に殺されるのも時間の問題ずら..どこか身を隠すことができる安全な場所を探そう」

理亞「安全な場所って..どこよそれ?」

花丸「それは..ト..トイレの中とか?」

理亞「絶対にイヤよ..!!アイツはトイレの中で待ち伏せしていたのよ!?それに何かあったら袋の鼠で逃げられないじゃない!!」

先ほどトイレで襲われたことがトラウマになったのか..理亞は花丸の提案を一蹴した

花丸「あう..ごめん..」

その時..廊下からギシ..ギシ..という木製の床が軋む音が聞こえてきた
理亞「ルビィ..絶対助けにいくからね..」chapter3
71 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)[]:2019/05/17(金) 00:14:28.91 ID:edE1HvF1
理亞(まずい..誰かくる!!)

花丸(き、きっとさっきのボウガンの人がマルたちを探しに来たんだよ!!)

理亞(隠れるわよ!!こっちへ!!)

理亞は花丸を連れて教卓の中へと逃げ込んだ

ギシ..ギシ..という足音は次第に大きくなってゆき..足音は理亞達の隠れる教室へと近づいてきた

花丸(せ..狭いずら..)

理亞(し!静かに..絶対に動くんじゃない!)
理亞「ルビィ..絶対助けにいくからね..」chapter3
72 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)[]:2019/05/17(金) 00:15:06.34 ID:edE1HvF1
ギシ..ギシ..ギシ..ギシ..

そして..フードをかぶった何者かが理亞達が隠れる教室の中を覗き込んだ

??「...........」

漆黒のローブをまとった襲撃者はボウガンを手に携え..教室の中を一歩..一歩..と慎重に歩を進めながら見てまわった

花丸(〜〜〜!!)

理亞(絶対に声を出すな!!)

理亞は怯える花丸の口を両手で塞ぎ、見つからないように自分の気配を殺すことに力を注いだ

そして..襲撃者は異常がないと判断し、次の場所を探索すべく、理亞達の教室を去って廊下に出て行った..
理亞「ルビィ..絶対助けにいくからね..」chapter3
73 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)[]:2019/05/17(金) 00:15:49.89 ID:edE1HvF1
花丸(た..助かったずら..)

理亞(静かに..まだ奴はすぐそこにいるのよ..物音を立てたら気づかれる..)

理亞は廊下を歩き去ってゆく襲撃者の足音に注意深く耳を傾け..足音が聞こえなくなったとき..ホッと安堵の溜息を吐いた

理亞「行ったみたいね..とりあえずは大丈夫よ」

花丸「生きた心地がしなかったずら..」

理亞「ここも安全じゃないわね..奴が去った方とは反対の方に逃げるわよ..」

花丸「反対方面だったら..マルたちの部室があるずら..あそこは内側からカギをかけることができるからここよりは少し安全ずら」

理亞「そう..それじゃあそこに移動するわよ..案内をお願い」

花丸「わかったずら..」

そして二人は部室を目指し廊下を歩き出した
理亞「ルビィ..絶対助けにいくからね..」chapter3
74 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)[]:2019/05/17(金) 00:16:30.10 ID:edE1HvF1
ギシ..ギシ..
1歩..1歩と足を踏み出すごとに木製の床が軋む音がする..

理亞「ちょっと..もう少し足音静かにできないの?」

花丸「これが限界ずら..建物が古いから..どうしても床が軋むのは仕方のないことずら..」

理亞「まったく..よくこんなオンボロ校舎で勉強しているわね」

花丸「オンボロでも..ずっと通っていると愛着が沸くものなんだよ..」

理亞「アンタ達って..確かこの学校を守るためにスクールアイドル活動をしているのよね?」

花丸「うん!そうだよ..ルビィちゃんがいなくなっちゃってからは活動は休止してるけど..みんなこの学校を大切に思って活動してるんだ:
理亞「ルビィ..絶対助けにいくからね..」chapter3
75 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)[]:2019/05/17(金) 00:17:08.56 ID:edE1HvF1
理亞「どうしてこんな辺鄙なところに立っている学校を守ろうとしているの?私は学校なんて大嫌いだから..アンタ達がなんでそんなに必死になっているのかがわからないわ」

花丸「学校が..そして..生まれ育ったこの土地が大好きだから..かな..」

理亞「内浦が..?」

花丸「内浦の人達は..みんな心が温かい人達ばかりで..マルは子供の頃から地元の人たちの優しい愛情を感じながら育って来たずら」

花丸「ホントの田舎だけど..マルは生まれ育ったこの町が大好き..内浦の人たちが大好き..」

花丸は両目を瞑り、優しい微笑みを浮かべ..慈しむように地元への愛情を語りだした
理亞「ルビィ..絶対助けにいくからね..」chapter3
76 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)[]:2019/05/17(金) 00:17:49.80 ID:edE1HvF1
花丸「確かに校舎は古いし..海以外は何にもない田舎だけど..この学校には、今まで地元の人がたくさん通ってきて..みんながこの学校を大切にしてきたんだよ..この学校は地元の人たちの思いがいっぱい詰まっているんだ..だから..失くしたくないんだ」

理亞「ごめん..無神経なこと言った」

花丸「ううん..いいの..こんな状況じゃなかったら、理亞ちゃんを色々な場所に案内してあげたいけど..」

理亞「気持ちだけで十分よ..今はそれよりルビィの手がかりと、安全な場所を探さないと」

花丸「もうすぐ部室だよ..話していたらすぐついたね..」

花丸はスクールアイドル部の部室の扉に手をかけて..ドアを開けようとするが..
理亞「ルビィ..絶対助けにいくからね..」chapter3
77 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)[]:2019/05/17(金) 00:18:29.77 ID:edE1HvF1
ガツン

花丸「ずら?」

理亞「ん?」

扉が開くことはなく..カギが掛かった扉が僅かに振動するだけだった

ガツン..ガツン..

2度..3度と引っ張るも結果は同じ..部室にはカギがかかっていて入れなかった

花丸「しまった..部室にはカギが掛かってたんだ..カギは千歌ちゃんが持っているから入れないずら〜〜!!」

理亞「なんですって!?」

花丸はオロオロと頭を抱え、縋るような目で理亞を顔を覗き込んだ
理亞「ルビィ..絶対助けにいくからね..」chapter3
78 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)[]:2019/05/17(金) 00:19:09.71 ID:edE1HvF1
花丸「どうしよう..部室に入れないよぅ..」

理亞「しょうがないわね...他に安全な場所を探しましょう..」

花丸「ずら..ここからだと..図書室がいいと思うずら!」

理亞「図書室?」

花丸「図書室も中からカギが掛けられるし..隠れる場所も多いずら!」

理亞「また鍵がかかってるんじゃないでしょうね?」

花丸「大丈夫ずら!図書委員はマルだから..図書室の鍵はほら..ここにあるずら!」
花丸はポケットから図書室の鍵を取り出して理亞に見せた

理亞「図書室か..もしかしたらルビィの手がかりがあるかもしれないし..わかった..図書室に行ってみよう」
理亞「ルビィ..絶対助けにいくからね..」chapter3
79 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)[]:2019/05/17(金) 00:19:48.41 ID:edE1HvF1
二人は目的地を図書室へと変え、学院の真っ暗な廊下を音を殺してゆっくり歩いて行った

ギシ..ギシ..

1歩..1歩と足を進めるごとに木製の床が軋む音が小さく鳴り響く

理亞「2階の廊下も軋むわね..」

花丸「校舎が全体的に古いからね..ポジティブに考えればそれだけ歴史と伝統があるんだよ..それより..真っ暗で怖いずら..」

理亞「我慢しなさい..懐中電灯で照らしたらあのボウガンの奴に居場所がバレちゃうじゃない..」

花丸「こんな暗い中であの人と遭遇したら..想像するだけで鳥肌が立つずら」
理亞「ルビィ..絶対助けにいくからね..」chapter3
80 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)[]:2019/05/17(金) 00:20:29.30 ID:edE1HvF1
理亞「私これでも耳がいいのよ..私たち以外の足音は聞こえないから..アイツは近くにいないはずよ」

花丸「そ、そうなの?それを聞いて少しだけホッとしたよ..」

理亞「花丸..私この学校について調べたいんだけど..図書室の中にこの学校について詳しく書かれた本とかある?」

花丸「それなら..この学校の会報を読めばいいずら..マルは読んだことないけど..古いモノから新しいモノまで揃っていたと思うよ」

理亞「図書室についたら、その本のところに案内してくれる?」

花丸「わかったずら..っと..話をすれば..ほら、そこが図書室だよ」

理亞「ここが..」
理亞「ルビィ..絶対助けにいくからね..」chapter3
81 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)[]:2019/05/17(金) 00:21:10.08 ID:edE1HvF1
2人は図書室の扉の前へとたどり着いた..灯りのついていない図書室はシン..と静まり返っていて、暗闇の中に何かが潜んでいるのではないか..という恐怖が理亞の背筋を冷たく凍らせた

花丸「開けるよ?ちょっと待ってて..」

花丸はポケットの中から図書室の鍵を取り出して、扉を静かに開けた

花丸「マルの大好きな図書室へようこそ♪」

理亞「待て..図書室の中に異変がないかをまず確認して..イスがいつもと違う場所にあるとか..モノが無くなっているとか..」

花丸「大丈夫だよ..図書室にはカギがかかっていたし、このカギはマルしか持っていないからこの図書室には誰もいないよ」

理亞「そう..」

理亞はホッと安心し、軽く溜息を吐いた
理亞「ルビィ..絶対助けにいくからね..」chapter3
82 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)[]:2019/05/17(金) 00:22:04.61 ID:edE1HvF1
花丸「それより..カギを閉めるから早く中に入って」

理亞「あ、ごめん」

理亞は花丸に促されて図書室の中に入ると、花丸は扉を閉めて内側からカギを閉めた

花丸「これでよし.と言っても相手はボウガンを持っているから..絶対安全とは言えないけど..」

理亞「花丸..私はこの学院の歴史や成り立ちについて調べたいから..本がある場所まで案内して」

花丸「わかった..こっちだよ..」

花丸は理亞を連れて図書室の奥の棚へと案内した

理亞「この棚に..この学院の秘密が書いてある本があるかもしれないのね..」

花丸「本が古すぎて虫食いがある本もあるから..手がかりになるかどうかはわからないけどね..」
理亞「ルビィ..絶対助けにいくからね..」chapter3
83 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)[]:2019/05/17(金) 00:22:57.22 ID:edE1HvF1
理亞は懐中電灯を取り出すと、スイッチを入れた。掌で灯りが外に漏れるのを防ぎ、本棚の背表紙に書かれたタイトルが見える程度の明かりを灯す

内浦の漁業
古代内浦の歴史
内浦の民俗学

理亞「内浦の歴史書ばかりだ..私が知りたいのはこの学校について書かれた本よ」

花丸「あれ?確かここにあったと思うんだけど..マルの記憶違いかもしれないずら..」

理亞「しっかりしてよ..」

花丸「ちょっと待ってて..他の本棚を探してくるずら」

花丸はそう言うと理亞をその場に残してさらに奥の方へと歩いて行った
理亞(それにしても..内浦の歴史や文化について書かれた本か..ちょっと興味があるかも..)

理亞は暇つぶしがてらに、内浦の民族学について書かれた本を取り出し、パラパラとページをめくった
理亞「ルビィ..絶対助けにいくからね..」chapter3
84 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)[]:2019/05/17(金) 00:23:42.65 ID:edE1HvF1
この内浦という土地には独特の風習がある..
理亞はあるページのその一文に目を引かれて、ページをめくる手を止めた

理亞(へえ..風習ね..やっぱり古い土地だからそういう習わしもあるのね..)

この内浦という土地は漁業と農業を主として生計を立てていた
かつて大規模な干ばつがこの地を襲い、作物はできず、また漁も不漁で飢饉に襲われたことがあった

理亞(飢饉って..たしか歴史で習ったわね..食べ物が取れなくて人がたくさん飢え死にすることよね..?そんな悲惨な過去が内浦にもあったなんて..)

数百名にも及ぶ餓死者が出て、この飢饉の影響で当時の内浦の人口の2割ほどが死に絶えたという..

内浦の民たちは沼津の者たちに支援を求めるも、当時の沼津も苦しい状況で他の地域を助けられるほどの余力はなかった

飢えで困窮した内浦の民は死んだモノの遺体を解体してその肉を食べた
理亞「ルビィ..絶対助けにいくからね..」chapter3
85 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)[]:2019/05/17(金) 00:24:25.13 ID:edE1HvF1
理亞「え?」

人肉の味を占めた内浦の民たちは、次々と飢餓で死んだモノたちの遺体を解体してその身を食べることで飢饉を凌いだのだった
内浦の民たちの暴挙とも取れるこの行動を沼津の者たちは忌み嫌い、交流を閉じることで、内浦はますます孤立した

飢饉を乗り切り、全滅の危機を免れた内浦だったが、人肉の味を忘れられない内浦の者達はよそから人をさらってきて、生贄としてその身を食すという
暴挙に乗り出した

理亞「は..え?え?」
理亞「ルビィ..絶対助けにいくからね..」chapter3
86 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)[]:2019/05/17(金) 00:25:06.23 ID:edE1HvF1
主に生贄として連れ去られるのは沼津近郊の人間が多かったため..内浦と沼津の中はさらに険悪になり、内浦のモノたちを忌み嫌う沼津の住民たちは兵を起こし、内浦と沼津の間で戦が勃発した

数で勝る沼津だったが..当時の内浦の当主を筆頭とし、結束した内浦の民たちは襲い来る沼津民たちを撃ち破り、殺した者たちの肉を食べたという逸話が残っている

現代ではもう人を食すことはほとんどないが..内浦の人間たちのDNAには食人の遺伝子が刻まれているのだろうか..数十年に1度よそからさらってきた子供を自分たちの好みの味になるように育て上げて、残虐に食い殺す生贄の儀という伝統が残っているのだ..

生贄の体を痛めつければつけるほど、肉は旨みを増すと言われ..生贄の儀に選ばれたものは凄惨な末路を遂げると言う

そして儀式が終了次第、いなかったものと扱われ、その名を2度と口にしてはいけなくなる

だから、儀式を行う際は生贄を弔うために、ひたすら哀れな贄の名前を皆で口ずさむのだ

この土地に拠点を構えられたことを私は幸せに思う..
この風習を研究してこれを....××××××××
理亞「ルビィ..絶対助けにいくからね..」chapter3
87 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)[]:2019/05/17(金) 00:25:48.02 ID:edE1HvF1
理亞「ここからは虫食いで読めないわ..それにしても..悪趣味だわ!これを書いた奴はとんでもない夢想家ね..現実とフィクションをごっちゃにしてるんじゃないかしら..気持ち悪くて鳥肌が..」

理亞の全身が粟立つように総毛立ち..腕に鳥肌が立つのを感じた..

手がかり一つ残さずに突然失踪したルビィ..
学校に現れて自分たちの命を狙っている謎の襲撃者..
内浦の者たちから理亞に向けられる奇妙な視線..

理亞の中で恐ろしい仮説が組みあがった

理亞(ルビィは..まさか...タ・べ・ラ・レ・タ?)
理亞「ルビィ..絶対助けにいくからね..」chapter3
88 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)[]:2019/05/17(金) 00:27:12.95 ID:edE1HvF1
ルビィちゃん..ルビィちゃん..ルビィちゃん..ルビィちゃん..ルビィちゃん..ルビィちゃん..ルビィちゃん..ルビィちゃん..
ルビィちゃん..ルビィちゃん..ルビィちゃん..ルビィちゃん..ルビィちゃん..ルビィちゃん..ルビィちゃん..ルビィちゃん..

内浦の住民たちがルビィを取り囲んで、ルビィの名前をひたすら口ずさんでいる..

泣き叫び、命乞いをするルビィを..バラバラに切り刻み..そして..

ピギャアアアアアアアアアアアアアアアア〜〜〜〜〜!!!!!

理亞の頭の中で..ルビィの断末魔の叫びが聞こえた...ような気がした 👀
Rock54: Caution(BBR-MD5:1341adc37120578f18dba9451e6c8c3b)

理亞「ルビィ..絶対助けにいくからね..」chapter3
89 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)[]:2019/05/17(金) 00:27:58.05 ID:edE1HvF1
理亞「う...」

突如めまいに襲われた理亞は、膝の力が抜けてその場に崩れ落ちた

理亞の額や背中から冷や汗が噴き出してくる

貧血のような立ちくらみを覚えた理亞は、しばらく床に座ってめまいが通り過ぎるのを待った

理亞(なにをバカなことを考えているのよ私は..そんなバカなことがあるわけないじゃない..ルビィが?食べられた?内浦の住民たちに?)

ナンセンス..そう..まったくもってナンセンスだわ..現代日本にそんな..そんなおぞましい風習があるわけないじゃない..
これを書いた奴は頭がおかしいのよ..それかこれはきっと創作なんだわ..あるいは性質の悪い怪談を作って生徒をからかっているのか..

そうよ!!ここは学校の図書室なのよ?図書室にこんな本が置いてあるのがそもそもおかしいわ
こんなの生徒が読んだら..絶対気分を悪くするし、保護者が知ったらクレームモノよ!
理亞「ルビィ..絶対助けにいくからね..」chapter3
91 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)[]:2019/05/17(金) 00:28:56.44 ID:edE1HvF1
でも..もし..もし..ルビィを殺したのが内浦の住民たちで..それをみんなで隠しているんだとしたら..

あのボウガンの奴は..私を殺そうと奴らが差し向けた刺客..だとしたら..辻褄があってしまう..

つまり内浦の住民の仕業じゃない? それとも罠? そもそもあんなトイレの中で待ち伏せしていたのがおかしい..

ここに私が来るように仕向けたのは花丸..そしてあのボウガンの奴が待ち伏せして襲ってきた..
つまり、花丸とボウガンの奴は..グル?

でも、あのボウガンの奴は私と一緒に花丸も殺そうとしている..少なくとも花丸が味方なのは間違いない

でも..もしも花丸がボウガンの奴とグルで..私を殺そうとしているんだとしたら..

何言ってるのよ?殺そうとしているヤツが、わざわざこんな本が書いてあるところに連れてくるわけがないじゃない..
こんな本を私に読ませたら殺そうとしていることがバレバレになるのよ?

それに..花丸はあんなにルビィと仲が良かったのよ?そんな花丸がルビィを殺そうとなんてするわけがない!!

花丸はとっても優しい女の子よ..虫一つ殺せない人畜無害な人..
理亞「ルビィ..絶対助けにいくからね..」chapter3
92 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)[]:2019/05/17(金) 00:29:47.38 ID:edE1HvF1
理亞(もしかしたら..ルビィの失踪には内浦の人間が関わっているのかもしれない..でも、花丸やダイヤ達が関わっているとは思えない..私はみんなを信じる..)

理亞(ルビィ..絶対あんたを探し出してみせるからね..待ってなさいよ!!)

花丸「理亞ちゃん!!」

そんな理亞の背中に花丸の声がかけられる

花丸「理亞ちゃん!学校について書かれた本がみつか..どうしたの?大丈夫?」

花丸は顔面蒼白になった理亞の顔を見て、心配する声を掛けた

理亞「大丈夫..なんでもない..」

理亞は読んでいた本を本棚に戻し、自分の想像を必死でかき消した
理亞「ルビィ..絶対助けにいくからね..」chapter3
93 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)[]:2019/05/17(金) 00:30:29.76 ID:edE1HvF1
理亞(こんなバカげた妄想を花丸に話すわけにはいかない..心配をかけないように、なんでもないように装わないと..)

花丸「ならいいんだけど..あ、それでね?さっき本を見つけたんだよ!もしかしたら何かの手がかりになるかもしれないずら!!」

そう言うと花丸は理亞に1冊の本を手渡した

理亞「これは..」

花丸「浦の星女学院の会報ずら..」

理亞「ずいぶん古いモノみたいね」

会報は黄色く黄ばんでおり、所々に虫食いの跡があった

花丸「ここなんだけど..」

花丸がページを開くと年月を経たすえた臭いが理亞の鼻を突く..
理亞「ルビィ..絶対助けにいくからね..」chapter3
94 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)[]:2019/05/17(金) 00:31:10.68 ID:edE1HvF1
浦の星女学院の皆さん!こんにちは!この学院の初代理事長の小原です!

理亞「初代理事長って確か..体育館に置いてあった胸像の..」

花丸「鞠莉ちゃんのお爺ちゃんずら」

我が小原グループが内浦の女子教育を推進するために、この学院が設立してから1年がたちました。
自然豊かな土地で地域の皆様と共に日々を過ごせることを幸せに思います。

花丸「この自然あふれる澄んだ空気の元で皆様がすこやかに成長し、知恵を付けて社会に通用する人材になることを切に願っています..これで終わってるずらね」

花丸「さすがに噂の事までは書いてないずら..」
理亞「ルビィ..絶対助けにいくからね..」chapter3
95 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)[]:2019/05/17(金) 00:31:58.76 ID:edE1HvF1
理亞「あくまでウワサだから..信憑性もないし..それに学校の会報に..この学院で人が行方不明になったことがあるなんて書かないでしょ..あら?」

花丸「どうしたの?」

理亞「この本..表紙の裏になにか挟まっているわ..」

花丸「え?」

理亞はそう言うと本の表紙を外して、本をむき身の状態にした..
すると..カツンという音を立てて固い何かが図書室の床の上に落ちた

理亞「これ..レリーフね..」

理亞は床の上に落ちたレリーフを手に取るとクルクルと角度を変えて、レリーフを観察した
理亞「ルビィ..絶対助けにいくからね..」chapter3
96 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)[]:2019/05/17(金) 00:32:50.50 ID:edE1HvF1
花丸「本当だ..この形は浦の星女学院の校章ずら..なんで本の間にこんなものが..」

理亞「校章を象ったレリーフ..はっ!!」

理亞の頭に体育館にあった創設者の胸像が思い浮かんだ..

理亞「このレリーフ..もしかしてあの胸像の..あの胸像にこのレリーフをハメれば何かが起こるのかも!」

花丸「なにかって..なんずら?」

理亞「わからない..でも..他に手がかりがない以上これに賭けるしかないわ!花丸!今から体育館へ.いくわ..危ない!!」

花丸「へ?わあ!!」

理亞は花丸の体を掴むと地面に押し倒した。床の上に倒れこむドサリという固い音が鳴り響く..
2人が床に倒れた約1.5秒後に銀色のボウガンの矢が、2人が立っていた場所を猛烈な勢いで通過して行った

壁に矢が突き刺さるドガッ!という音の後に、ビイイ〜〜ンと矢が振動する少し間の抜けた音が響き渡った
理亞「ルビィ..絶対助けにいくからね..」chapter3
97 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)[]:2019/05/17(金) 00:33:45.66 ID:edE1HvF1
理亞「アイツだ!!」

花丸「ど..どうして!?」

理亞が指を差した先には..黒衣のローブを纏った襲撃者が貸出カウンターの中からボウガンを構えて立っていた

理亞「カウンター机の中に隠れて待ち伏せしていたのよ!!逃げるわよ花丸!!」

花丸「ま、待って!!」

理亞は立ち上がって逃走の体制を整えるが..足をケガした花丸はもたついてしまう..
襲撃者は矢を継げ変えて狙いを花丸に定めた

理亞「危ない!!」

ドシュッ!!という矢を射出する音が鳴り響く
理亞「ルビィ..絶対助けにいくからね..」chapter3
98 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)[]:2019/05/17(金) 00:34:23.43 ID:edE1HvF1
理亞は花丸の体を抱きしめて自分へと引き寄せた..
理亞の体に花丸の温かくやわらかい触感が伝わってくる

理亞「イタッ!!」

理亞は手の甲に焼け付くような激痛を覚えた

花丸「理亞ちゃん!?」

理亞「イタッ..クソッ!!」

ボウガンの矢は理亞の手の甲を掠め、理亞の手に鋭い切傷を刻み込んだ
図書室の床に理亞の手から滴る血液が零れ落ちる..
理亞「ルビィ..絶対助けにいくからね..」chapter3
99 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)[]:2019/05/17(金) 00:34:58.96 ID:edE1HvF1
理亞「この!!ヤッタな!!」

理亞は浦の星女学院の歴史について書かれた本を取り上げると、襲撃者目がけて思い切り投げつけた

??「!!」

襲撃者は自分目がけて飛んでくる本に対してとっさに反応することができず、本が真近になってから慌てて回避行動をとろうとするが間に合わず、額にガツンと言う固い音を立てて本が命中した

襲撃者はのけ反り、天井を仰ぐ。フードの隙間から長い髪の毛がファサッという軽やかな音を立てて背中に零れ落ちた
理亞「ルビィ..絶対助けにいくからね..」chapter3
100 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)[]:2019/05/17(金) 00:35:35.28 ID:edE1HvF1
理亞「え?あたった?」

花丸「理亞ちゃん逃げよう!!」

花丸は理亞の手を引いて図書室から脱出を促す..

理亞「あ..うん..そうね..早く逃げましょう!!」

額を抑えて悶絶する襲撃者を尻目に、理亞は花丸に肩を貸し2人は図書室のドアの鍵を開けると廊下へと飛び出した

花丸「ふう..ふう..」

足を引きづりながら、花丸は息を切らしつつも精いっぱいに前へ前へと足を進める..
理亞は花丸を気遣いながらも、早足に廊下を歩き出した
理亞「ルビィ..絶対助けにいくからね..」chapter3
101 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)[]:2019/05/17(金) 00:36:23.80 ID:edE1HvF1
理亞(クソッ..こんなノロノロしていたらすぐに追いつかれちゃう..私一人だったら簡単に逃げ切る自信があるのに..)

その時..理亞の心の中に保身に走る自分の声が聞こえてきた

理亞(花丸を置き去りにすれば...そうだ..私は足が速いから..逃げることができる..花丸を囮にしてしまえば..あのボウガンの奴も花丸を狙うから時間を稼げる..私はその間に山を下りて町へ逃げれば..)

理亞(逃げ..るか?)

理亞は痛みに顔を歪めながら必死に歩く花丸の顔を見つめ..花丸をこのまま見捨てて自分だけ助かってしまおうかどうか..
理亞の心は良心と非常の狭間で揺れ動いた
理亞「ルビィ..絶対助けにいくからね..」chapter3
102 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)[]:2019/05/17(金) 00:36:58.47 ID:edE1HvF1
理亞..

理亞(!! 姉さま..)

追い詰められた理亞の脳裏にいつかの聖良とのやり取りが再生された

理亞『ねえ、姉さま..姉さまはどうして私を助けてくれるの?』

聖良『なによ理亞..急にどうしたの?』

理亞『私が困ったときいつも手を差し伸べてくれるじゃない..いじめっ子たちをやっつけてくれた時だって..相手はあんなにたくさんいたのに..姉さまはちっとも怖がるそぶりをみせずに立ち向かっていって..やっつけちゃった』

理亞『そんな姉さまを凄いと思うし..尊敬もしてる..でもね?姉さまは..怖いとか..イヤだ..とか思わないの?』
理亞「ルビィ..絶対助けにいくからね..」chapter3
103 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)[]:2019/05/17(金) 00:37:37.49 ID:edE1HvF1
聖良『前にも言ったでしょ?私だって人間だもの..痛いのはイヤだし、傷つくのは怖いわ』

理亞『じゃあ、どうして私を助けてくれたの?もしかしたら姉さまが逆にやられちゃってひどい目に合わされるかもしれないのに..』

聖良『確かに..返り討ちにされてしまうかもしれないって..考えたことがないわけじゃないわ..』

理亞『そうなの?』

聖良『理亞..私はアナタのヒーローなんかにはなれない..』

理亞『え?』

理亞は唖然としてしまいポカンと口を開けた..理亞の目に映る聖良の姿は、どんな強大な敵にも猛々しく立ち向かってゆき..悪を挫くその姿はまさしくヒーローだった..

その姉が..憂いを帯びた表情で自分はヒーローではないなんて口にするなんて..この姉は一体何を言っているんだろう..
理亞「ルビィ..絶対助けにいくからね..」chapter3
104 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)[]:2019/05/17(金) 00:40:01.25 ID:edE1HvF1
聖良『正直に告白するわ..私ね..あの時迷っちゃったの』

理亞『迷ったって..何を?』

聖良『理亞を見捨ててしまって..見て見ぬフリをしてしまおうかって..』

理亞『え?』

聖良は気まずそうな顔を作ると罪悪感から逃れるように、理亞から顔を背けた

聖良『あんな大勢を相手にするのに..怖くないなんて人..いるわけないわよ..理亞がいじめられているのを見て怒りを感じたのは本当よ..助けてあげたいって思った..』

聖良『もしもやられたら..自分があんな目に合わされたら..そんなことを考えちゃったら..怖くて足の震えが止まらなくなった..』

聖良『このまま見て見ぬフリをしてしまおう..そして、事情を知らない風を装って理亞にいつも通りに接すればいい..そんなことを考えて逃げようとしたの..』
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