- 善子「ダイヤがお見合い!?」
258 :名無しで叶える物語(らっかせい)[]:2019/04/16(火) 06:14:39.38 ID:QGw0HLcF - ―――――
――― ―― 善子「なんで深海水族館?」 善子「この時間なら、まだマリンパークも行けるでしょうに」 鞠莉「ダイヤがお願いしたんじゃない?」 鞠莉「マリンパークだと、たまに曜がうちっちーになってるし、バイトしてるからね」 ルビィ「確かに」 ルビィ「お見合いのこととか秘密にしてるから」 ルビィ「見られるのは困るもんね」 善子「特に曜になんか見つかったら面倒なことになりそうだし」 善子「できる限り見つからないように行動したいわよね」 善子(でも、深海水族館って薄暗いから嫌なのよね……) 善子(どさくさに紛れて手を繋ぎそう) 善子(映画館でできなかったみたいだし) 善子(大丈夫……だとは、思うけど) 善子「………」 ルビィ「どうかしたの? 善子ちゃん」 善子「なんでもない」 ルビィ「鞠莉ちゃんが心変わりしたかも。なんて言ってたのが気になってるの?」 善子「……あんた、ほんと怖いわ」 ルビィ「ルビィは怖くないよ」ニコッ 善子「変態が変態じゃないっていうレベルの言い訳ね、それ」 ルビィ「えーっ」
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- 善子「ダイヤがお見合い!?」
259 :名無しで叶える物語(らっかせい)[]:2019/04/16(火) 06:20:50.04 ID:QGw0HLcF - 鞠莉「子供のころ以来だわ、ここ」
善子「まだ子供でしょ」 鞠莉「もう大学生よ」 善子「まだ高校生でしょ」 鞠莉「…………」 鞠莉「……ねぇ、善子って私のこと――」 善子「しっ!」 鞠莉「移動するわよ」 鞠莉「……嫌いでしょ」ボソッ ルビィ「お姉ちゃんに関わってるときはルビィも花丸ちゃんも似たようなものだよ」 ルビィ「気にしないほうが良いと思う」 鞠莉「そう?」 ルビィ「うん」 ルビィ「それに、鞠莉ちゃんの声って大きいし目立つし、特徴的だから」 ルビィ「静かにしてたほうが良いとはルビィも思ってるよ」 鞠莉「……ルビィ、変ったわね」 ルビィ「えへへっそうかな?」 ルビィ「ルビィも大人っぽくなった?」 鞠莉「ある意味では、ね」
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- 善子「ダイヤがお見合い!?」
260 :名無しで叶える物語(らっかせい)[]:2019/04/16(火) 06:31:38.13 ID:QGw0HLcF - 善子(周りにもデートしてるっぽい感じの人がいる)
善子(……どういう趣味してんだか) 善子(いや、アクセントと言うか、奇をてらうなら無しじゃない?) 善子(ダイヤ……距離、近いわね) 善子(気づいてる?) 善子(すぐ隣に男がいること) 善子(私たちが見守ってること) 善子(歩くたびに動く綺麗な手を、隣にいる男がチラチラ見てること) 善子(……ダイヤ、手を握るのはやめて) 善子(その手を汚すのはやめて) 善子(そんなことされたら、私は……その手を切り落とさなくちゃいけなくなる) 善子(……ぁ) ダイヤ「見て、このお魚。自力で発光するんですって」 「深海なんて光が届かないのに、凄いですよね」 「自力で光ることが出来るような進化をするなんて」 トンッ 「あっ」 ダイヤ「?」 「ご、ごめん……くっつきすぎたね」 ダイヤ「……ふふっ、気にしないで」ニコッ 善子(なんで……そんな嬉しそうに笑ってるのよ) 善子(ねぇ、ダイヤ……どうして?)
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262 :名無しで叶える物語(らっかせい)[]:2019/04/16(火) 07:20:10.43 ID:QGw0HLcF - 善子(断るんじゃなかったの?)
善子(恋愛になんてうつつを抜かしていられないんじゃなかったの?) 善子(なのに、なのに……なのになのになのに……っ!)ギリッ 善子「なんでそんなに、笑ってるのよ」 善子「おかしいじゃない、狡いじゃない」 善子「そんなに近づいて、そんなに幸せそうに……」グッ ガシッ 善子「っ!」 ルビィ「……落ち着いて」 善子「ルビィ……あんたは落ち着いてられるの?」 善子「ダイヤが男なんかにあんなに……」 ルビィ「お姉ちゃんが嫌がってないなら、仕方がないよ」 ルビィ「最後にどうなるのかは分からないけど……でも」 ルビィ「……ううん、結果次第だね」 ルビィ「もちろん、途中でキスしようだとか、抱きしめようだとか」 ルビィ「そういうことがあったら、その時はね」ニコッ 鞠莉「そ、その時はって……ルビィ?」 ルビィ「ん〜?」ニコニコ ルビィ「その時はその時だよ」
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- 善子「ダイヤがお見合い!?」
263 :名無しで叶える物語(らっかせい)[]:2019/04/16(火) 07:33:55.96 ID:QGw0HLcF - ――――
――― ―― ダイヤ「……今日はありがとうございました」 「いえ……その、私も楽しかったです」 「あ、いや、そうじゃないですね」 「えっと、楽しんでいただけたようで……」 ダイヤ「ふふっ」 「っ」 ダイヤ「落ち着いてください」 ダイヤ「私は十分、楽しかったんです。短い時間ではありましたが、温かみを感じる時間でした」 ダイヤ「大丈夫、自信を持ってください」ニコッ 「……」グッ 「黒澤さん!」 ダイヤ「……はい」 「その、まだ……二日しか知り合っていませんし」 「まだ、お互いのことは全然わかりません」 「ですが、でも……だからこそ」 「もう少し、知り合いたいと思っています」 「これからも、時々……会うことは出来ませんか?」 ダイヤ「………」 ダイヤ「……わたくしから促しておいて、申し訳ございません」 ダイヤ「今は、そういうことを考えられなくて」 「………」 ダイヤ「貴方は良い人ですわ。優しくて、一途で、一生懸命で」 ダイヤ「だからこそ、わたくしのような人間には勿体ない」 ダイヤ「……申し訳ありません」
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- 善子「ダイヤがお見合い!?」
283 :名無しで叶える物語(らっかせい)[]:2019/04/16(火) 20:17:58.03 ID:QGw0HLcF - 花丸(たくさんの本。という話を聞いてか)
花丸(檀家の男の人も加えて、学校へと向かうことになった) 花丸(重い荷物と言うのは建前で) 花丸(お祖父ちゃんだけでは不安だっていうのは、容易に分かった) 花丸(あの黒澤家の長女が行方不明になった……という話は) 花丸(瞬く間に広がったという) 花丸(いや、広めた。というのが正しいかもしれない) 花丸(そうすることで地域全体の協力を得られる) 花丸(少なくとも、黒澤家の言葉を無碍にはできないし) 花丸(ここで恩を売っておけば、今後救われることだろうから) 花丸(そのせいか) 花丸(自分で誘拐して自分で助けるなんてマッチポンプをやっているのではないか) 花丸(そんな噂が聞こえてきているのは、気のせいじゃないと思う) 花丸(本当、黒澤家は大きい) 花丸(いろんな意味で大きすぎて、ルビィちゃんには背負いきれない) 花丸(善子ちゃんには得難い) 花丸(…………)
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- 善子「ダイヤがお見合い!?」
284 :名無しで叶える物語(らっかせい)[]:2019/04/16(火) 20:45:52.59 ID:QGw0HLcF - 花丸(朝から多くの人が出歩いている異様な景色を横目に、浦女へと辿り着く)
花丸(理事長である鞠莉ちゃんの連絡を受けて待機してくれていた警備員さんに駐車場の方の入り口を開けて貰う) 花丸(……流石に、学校にはいないずらね) 花丸(入り口は締まってて中には入れないから) 花丸(当然と言えば当然だけど……)チラッ 「よじ登れば入れますよね」 花丸「ダイヤさんはそんなことしないずらよ」 「それはそうかもしれませんが……」 花丸「それに、正門や駐車場の入り口はカメラがあるから」 花丸(少しわかりにくい位置にあるカメラを指さして、檀家のおじさんに伝える) 花丸(女子高というのもあって) 花丸(こんな辺鄙な位置にありながら、そういった防犯面の意識は高い) 花丸(残念ながら、抜けている部分もあるけど) 花丸「だから多分、あれの中身は見てると思う」 花丸「あれを見ても、ダイヤさんの姿はなかったんじゃないかな……」 花丸「防犯カメラの映像は夜でも見れるし……」 「……すみません」 花丸「ううん。それより、早く本をもって帰るずら」 花丸「あんまり長居してると、変に怪しまれそうで……嫌だから」 「そうですね」
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- 善子「ダイヤがお見合い!?」
285 :名無しで叶える物語(らっかせい)[]:2019/04/16(火) 21:04:38.73 ID:QGw0HLcF - 「おぉっ」ガクッ
花丸「わわっ」ギュッ 「……お、重いですね」 花丸「えへへっ、いくらでもって言われて沢山詰めちゃったずら」 「だからってひと箱に詰めなくてもよかったんじゃないですか?」 花丸「今更言われても困るずら」 花丸「詰める前のマルに、言ってきて欲しいずら」ニコッ 「そんな無茶なこと言わないでくださいよ」 花丸「ふふふっ」 花丸(ダイヤさんがいなくなって、不謹慎と言われるかもしれないけれど) 花丸(冗談を言って、笑う) 花丸(もしも過去に戻れるのなら、戻りたい) 花丸(でも、現実はそんなに優しくない) 花丸「……人生は振り返れるが、後戻りすることは出来ない」 花丸「まったくもって、もどかしいものずら」 花丸「………」 花丸「さ、戻ろっ」
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- 善子「ダイヤがお見合い!?」
286 :名無しで叶える物語(らっかせい)[]:2019/04/16(火) 21:12:42.78 ID:QGw0HLcF - ―――――
――― ―― 花丸(ひと箱の大きな段ボールを積んで、車を走らせる) 花丸(さっさと帰ろう。そう思っていたマルだったけれど) ルビィ「嘘だ!!」 花丸(男の人がダイヤさんを降ろしたと言っていた場所のすぐ近く) 花丸(上がった大きな悲鳴を聞いては、無視をするわけにはいかなかった) 花丸「おじさん、停めて!」 キキィ…… ガチャッ バタンッ 花丸「ルビィちゃん!」 ルビィ「ぁ……」 ルビィ「は、花丸ちゃん……これ……」 花丸「ルビィちゃん?」 花丸「……それ、なに?」 花丸(今にも崩れそうなルビィちゃんの手の中には) 花丸(薄汚れた何かがぽつんっと、置かれていた) ルビィ「…………っ」 花丸「え?」 ルビィ「お姉ちゃんの、靴……」 ルビィ「お姉ちゃんの、左側の靴」 花丸「………」 ルビィ「茂みの中に落ちてたって」 ルビィ「どうしよう……どうしよう、花丸ちゃん」
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- 善子「ダイヤがお見合い!?」
288 :名無しで叶える物語(らっかせい)[]:2019/04/16(火) 21:29:57.20 ID:QGw0HLcF - 花丸(……駄目だったね、ルビィちゃん)
花丸(ルビィちゃんの殺す覚悟は、殺される覚悟じゃなかった) 花丸(ルビィちゃんの失う覚悟は、奪われる覚悟ではなかった) 花丸(だから、たった少しの違いでそんなにも……) 花丸「………」フルフル 花丸(いや、今はそうじゃないずら) 花丸「ルビィちゃん、しっかりして」 花丸「本当にダイヤさんの靴ずらか? 間違いないずらか?」 ルビィ「ルビィが、お姉ちゃんの靴を間違えると思う?」 ルビィ「……間違いないんだ。間違いなく、お姉ちゃんのなんだ」 ルビィ「でも、でも……」 ルビィ「でもね、ルビィは……!」 ルビィ「ルビィは……そうじゃないって、信じたいよ」 花丸「……そうずらね」ギュッ 花丸「そうじゃないって、信じよう」 花丸(見つかった左の靴) 花丸(なら、ダイヤさん自身は?) 花丸(ぽつりぽつりと、そんな言葉が聞こえてくる) 花丸(一体、何から逃げようとしたのか……そんな言葉が聞こえてくる)
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- 善子「ダイヤがお見合い!?」
289 :名無しで叶える物語(らっかせい)[]:2019/04/16(火) 22:00:15.13 ID:QGw0HLcF - 花丸「靴以外には何もなかったんですか?」
「靴が落ちていた辺りを重点的に探しているが」 「残念ながら、それ以外には何も」 花丸「……じゃぁ、逃げ切れたのかもしれないずらね」 ルビィ「……なら、どうして帰ってこないの?」 ルビィ「ううん、分かってる」 ルビィ「逃げ切れなかったんだ」 ルビィ「靴が脱げるくらいに頑張ったのに……逃げ切れなかったんだ!」 花丸「ルビィちゃん、落ち着――」 パシンッ ルビィ「落ち着いてなんていられないよ!」 ルビィ「お姉ちゃんがいなくなったんだよ?」 ルビィ「こんな、かたっぽの靴だけ残して」 ルビィ「それで落ち着いてられるわけないよ!」 ルビィ「なんで、なんで花丸ちゃんはそんなに落ち着いていられるの!?」 ルビィ「おかしいよ!」 花丸「…………」 ルビィ「ぁ……」 ルビィ「……ご、ごめん」 花丸「ううん、気にしなくていいよ」 花丸(初めからずっと、自分でおかしいって言い続けてきてるのに……今更ずら)
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- 善子「ダイヤがお見合い!?」
290 :名無しで叶える物語(らっかせい)[]:2019/04/16(火) 22:13:56.93 ID:QGw0HLcF - 花丸(でも……忠告はしたはずなんだ)
花丸(中途半端な気持ちで、入ってきちゃだめだよ。って) 花丸(……仕方がないずらね) 花丸「ルビィちゃんは覚悟してたはずだよね?」 花丸「ダイヤさんを失うこと」 花丸「なのに、どうしてそんな取り乱してるの?」 花丸「……結局、ルビィちゃんはその程度だったんだね」 花丸「善子ちゃんにせよ、男の人にせよ」 花丸「いつか、誰かがこんなことをするって想像は出来たはずだよね?」 ルビィ「……っ」 花丸「それをしなかった、それから目を背けてた」 花丸「ルビィちゃんは中途半端だったんだ」 ルビィ「そんなことない……」 ルビィ「……そんなこと、ないっ」 ルビィ「覚悟はしてた、出来てた」 ルビィ「ただ……突然すぎただけ」 花丸(それは言い訳だよ) 花丸(それは、覚悟ができていなかった人の、言い訳だよ) 花丸「なら、覚悟はしておいたほうが良い」
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- 善子「ダイヤがお見合い!?」
291 :名無しで叶える物語(らっかせい)[]:2019/04/16(火) 22:40:31.49 ID:QGw0HLcF - 花丸「片方の靴しかない、ほかにダイヤさんのものは見当たらない」
花丸「ルビィちゃんが言ってたように、ダイヤさんはもう……」 ルビィ「っ」 花丸「だから、覚悟をしておいたほうが良い」 花丸「認めないなんて、目を背けないほうが良い」 花丸「……壊れるよ」 ルビィ「え?」 花丸「中途半端な覚悟は、ルビィちゃんを壊しちゃうよ」 花丸「二度と、戻れなくなっちゃうよ」 ルビィ「………」 花丸「どうする?」 花丸「今のルビィちゃんなら、元に戻れる」 花丸「ダイヤさんのことを悲しむことのできるルビィちゃんに戻れる」 花丸「でもきっと、それは辛いよ」 花丸「いちどでも、その背中を押してしまったのだから」 花丸「その中途半端な挫折は、永遠に……ルビィちゃんの足を引き摺らせてしまう」
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- 善子「ダイヤがお見合い!?」
292 :名無しで叶える物語(らっかせい)[]:2019/04/16(火) 23:36:06.90 ID:QGw0HLcF - ルビィ「……分かってるよ」
ルビィ「大丈夫、ルビィはちゃんと分ってるよ……」 ルビィ「この前、背中を押したときに覚悟はしたんだ」チラッ ルビィ「………」グッ 花丸(それでいいなら、マルは止めないよ) 花丸(でも、覚悟はしておいてね) 花丸(現実は、優しくないんだよ) 花丸(追い詰められた人にほど、非情にできているものなんだよ) 花丸「ルビィちゃんは、靴の件を聞かれるよね」 花丸「……マルはこのことは黙っておく」 花丸「特に、善子ちゃんに知られたら大変なことになりかねないからね」 ルビィ「うん」 花丸(……でも、動き出した歯車は止まらない) 花丸(明日には広まっちゃうかな) 花丸(警察は、男の人を捕まえるかな) 花丸(どうなるんだろう) 花丸「見つかると良いね」 ルビィ「そうだね」 花丸(何が。とは言わないでおく) 花丸(そうすれば、ルビィちゃんは笑顔でこたえられるから……) 花丸(けれど) 花丸(そんなルビィちゃんの気丈さをあざ笑うかのように) 花丸(その日の夕方、捜査を受け入れた縁談相手の男の人の車から、血の付いたダイヤさんの髪留めが見つかった)
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