- 梨子「ロストソングD.C.」
396 : ◆sHtux8fZAE (舞妓 どすえ)[]:2018/09/22(土) 21:26:04.03 ID:/BJd27qp - ーーー
梨子「……」 父「はい、梨子」コトッ 梨子「ありがとう……」 父「それにしても、突然でびっくりしたよ、連絡くれれば良かったのに」 梨子「ごめんなさい……」 父「いや、構わないんだがね、休日は庭の手入れくらいしかすることもないから」 梨子「……いつもしてるの?」 父「ああ、放っておいたら母さんに怒られるからな」 梨子「お母さん……いつも綺麗にしてたもんね」 父「……母さんの言ってた通り、少しずつ戻ってきているんだね」 梨子「……うん、本当に少しずつだけど……」 父「良かった、本当に」 梨子「……うん」 父「……この間の怪我は大丈夫かい?」 梨子「え?あ、うん、それは大したことなかったから」 父「そうか……あの時と全く一緒だから驚いたよ」 梨子「……」 父「本当に……人の事ばかり心配して……」 梨子「……そう、だね」
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397 : ◆sHtux8fZAE (舞妓 どすえ)[]:2018/09/22(土) 21:27:24.65 ID:/BJd27qp - 父「あぁそうだ、今更だが、今日はどうしたんだ?」
梨子「……特に用があったわけじゃないんだけど……なんかお父さんに会いたくなって……」 父「……」 梨子「……」 父「そういうところも変わらないな」 梨子「……えっ?」 父「何かあるとすぐ父さんの側に来るくせに、何もないなんて誤魔化すところがね、昔から変わらない」 梨子「そう……なんだ……」 父「……心の目でよく見なければものごとはよく見えない」 梨子「えっ?」 父「父さんが梨子にいつも言ってた言葉だよ」 梨子「……心の目……」 父「何に悩んでるのかは父さんには分からないし、そもそも年頃の女の子の悩みなんて、父さんがアドバイスしてあげられることはないけどね」 梨子「……」 父「いつだって答えは梨子の心にちゃんとあるはずだよ」 梨子「……私の……中に……」 父「ああ、梨子は多感な時期だ、色んな事を見て、色んな事を考えて、色んな事に迷うだろうけど、そんな時はじっと心を見つめて、心で見つめなさい、そうすれば自ずと答えは見つかるはずだ」 梨子「……こころを……」 父「さて、梨子、せっかくだからお昼でも食べていきなさい」 梨子「えっ?あ、わかった……」 父「母さんや梨子みたいに上手じゃないけどね、それなりに食べられるものは作れるようになったから」 梨子「……なんか不安になる言い方だね……」クスッ
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398 : ◆sHtux8fZAE (舞妓 どすえ)[]:2018/09/22(土) 21:28:09.34 ID:/BJd27qp - ーーー
梨子「……じゃあ私、そろそろ行くね」 父「帰るのか?」 梨子「うん、でもその前に行かなきゃいけない場所があるのを思い出せた……」 父「……そうか、気をつけてな」 梨子「うん、ありがとうお父さん」 父「なに、父親として当然のことをしただけだよ」 梨子「うん」 父「梨子、父さんはいつだって梨子の味方で、梨子のファンだからな」 梨子「ふふっ……ありがとう」 父「梨子、心の目でよく見なければものごとはよく見えない」 梨子「……肝心なことはいつも目で見えないんだ、だよね」 父「……!」
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399 : ◆sHtux8fZAE (舞妓 どすえ)[]:2018/09/22(土) 21:28:40.68 ID:/BJd27qp - 梨子「お父さんと話してたらまた少しだけ思い出せた」
父「……そうか」 梨子「本当にありがとう、また来るから」 父「ああ、いつでもおいで」 梨子「それじゃ」 父「梨子」 梨子「ん?」 父「いってらっしゃい」 梨子「……うん!行ってきます!」 父「全く、変わらないようでちゃんと成長してるんだな……」 父「……ただ、反抗期が来てないような気がするんだが……うむ……」
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- 梨子「ロストソングD.C.」
400 : ◆sHtux8fZAE (舞妓 どすえ)[]:2018/09/22(土) 21:30:15.06 ID:/BJd27qp - ーー
梨子「……」キョロキョロ 梨子「確か……この辺りだったと思うんだけど……」キョロキョロ 梨子「うーん……」 ワンッ 梨子「ん?」 ?「えっ……」 梨子「あっ……」 ワンワンッ 梨子「ナナ……」 ナナ「梨子……なんで……」
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- 梨子「ロストソングD.C.」
401 : ◆sHtux8fZAE (舞妓 どすえ)[]:2018/09/22(土) 21:30:48.82 ID:/BJd27qp - ーーー
ワンッワンッ 梨子「ふふっ、よしよし、覚えててくれたんだね」ナデナデ ワンッ ナナ「お茶でよかった?」コトッ 梨子「うん、ありがとう」 ナナ「……」 梨子「……あの、いきなり来て、ごめんね……」 ナナ「ううん、梨子が転校しちゃった時……もう会えないかと思ってたから、ちょっとびっくりしちゃっただけ」 梨子「……」 ナナ「でも、記憶が無くなったって聞いてたのに……」 梨子「少しずつだけど……戻ってきてるの」 ナナ「えっ……」 梨子「小さい頃のこととか……ナナ達と過ごした時のこととか……事故のこととか……」 ナナ「そっか……良かったね」 梨子「うん」
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402 : ◆sHtux8fZAE (舞妓 どすえ)[]:2018/09/22(土) 21:32:38.99 ID:/BJd27qp - ナナ「……」
梨子「……」 ナナ「あの時は……本当にありがとう」 梨子「……」 ナナ「それから……ごめんなさい」 梨子「ううん……ナナは悪くないよ」 ナナ「でも……梨子は私を庇ったせいで車に撥ねられて……」 梨子「もう過ぎた事だし、見ての通り今も元気にやってるから」 ナナ「梨子……」 梨子「ねぇナナ」 ナナ「ん?」 梨子「一つ聞いていいかな?」 ナナ「何?」 梨子「どうしてスクールアイドル辞めちゃったの?」 ナナ「……あんな事があったのに……続けてられないよ」 梨子「……」 ナナ「私が逃げ遅れたせいで梨子が入院して……記憶まで無くなって……それなのに私だけ続けるなんて出来ないよ……」
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403 : ◆sHtux8fZAE (舞妓 どすえ)[]:2018/09/22(土) 21:33:18.52 ID:/BJd27qp - 梨子「雪穂や亜里沙は?穂乃果先輩達は?」
ナナ「みんな引き留めてくれたよ……私だって最初は梨子のことを待ってようって思ってた……でもやっぱり続けられなかった」 梨子「……」 ナナ「雪穂も亜里沙も、他のみんなも今でも仲良くしてくれてるよ?……でもやっぱり自分のこと責める気持ちだけは無くならないから……結局スクールアイドルそのものから離れないと耐えられなかった……」 梨子「……」 ナナ「……ごめんね、せっかく梨子も記憶が戻ってきて良くなってるのに……こんな話して……」 梨子「……」 ナナ「……」 梨子「ナナ」 ナナ「……?」 梨子「ナナに見てほしいものがあるの」 ナナ「見てほしいもの……?」 梨子「えっと……これ」 『今日はみとしースペシャルライブに来てくれてありがとうございます!』 ナナ「これ、は……スクールアイドル……」
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- 梨子「ロストソングD.C.」
404 : ◆sHtux8fZAE (舞妓 どすえ)[]:2018/09/22(土) 21:34:54.06 ID:/BJd27qp - 梨子「今、私のいる学校のスクールアイドル……Aqoursって言うの」
ナナ「……どうしてこんなのを」 梨子「いいから見てて」 ナナ「……」 梨子「……」 『実はみんなにお知らせがあります!』 『Aqoursに新しいメンバーが加わりました!国木田花丸ちゃんと!』 『桜内梨子ちゃんです!』 ナナ「え……」 梨子「……」 ナナ「嘘……」 梨子「不思議だよね……」 ナナ「……」 梨子「何にも覚えてないのに……何にも知らないのに……私、懲りずにまたスクールアイドル始めちゃったの」クスクス ナナ「梨子……」 梨子「伝えに来るのが遅くなってごめんね……ナナや雪穂達とは一緒じゃなくなっちゃったけど……私は今もちゃんとスクールアイドルだよ」 ナナ「……っ」 梨子「だからもう自分を責めないで」 ナナ「り、こ……」グスッ 梨子「……私のせいで辛い思いさせてごめんね」 ナナ「梨子のせいじゃない!私……私が……うぅっ……」 梨子「ナナ……」ギュッ ナナ「うわぁぁぁん!」ギュウッ
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- 梨子「ロストソングD.C.」
405 : ◆sHtux8fZAE (舞妓 どすえ)[]:2018/09/22(土) 21:35:53.20 ID:/BJd27qp - ーーー
ナナ「……はぁ……」ズビッ 梨子「落ち着いた?」 ナナ「……久しぶりに会えたのに……みっともないところ見せてごめん……」 梨子「そんなの気にしないよ」 ナナ「ありがと……少し楽になれた気がする……」 梨子「良かった♪」 ナナ「梨子は今楽しい?」 梨子「えっ?」 ナナ「この新しいグループのみんなといて、楽しく過ごせてる?」 梨子「うん、どうして?」 ナナ「苛められてない?」 梨子「苛められてません」 ナナ「なら良かった」 梨子「なにそれ、もう」 ナナ「雪穂と亜里沙には言ったの?」 梨子「うーん……言ったというか……まだ記憶が戻ってない頃に一度会ってるの」 ナナ「そうなの?」 梨子「うん、まぁそれからまだ会えてないけど……」
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406 : ◆sHtux8fZAE (舞妓 どすえ)[]:2018/09/22(土) 21:36:55.75 ID:/BJd27qp - ナナ「……」
梨子「……」 ナナ「会いたい?」 梨子「えっ?」 ナナ「今日のこの時間だと……もう少ししたら男坂で練習始まるんじゃないかな」 梨子「……」 ナナ「離れたって言っても同じクラスだし、雪穂と亜里沙とは中学から一緒だしね、どこで練習してるかくらいは分かるよ」 梨子「……」 ナナ「きっと雪穂も亜里沙も喜んでくれるよ」 梨子「……うん」 ナナ「……」 梨子「……」 ナナ「考えてる暇があったらとりあえず動く!」 梨子「えっ?」 ナナ「凛先輩がいつも言ってたでしょ」 梨子「そう……だっけ」 ナナ「うん、だから行ってきなよ」 梨子「……わかった」 ナナ「……今日は本当にありがとうね」 梨子「ねぇ、ナナ、またみんなで会えるかな?」 ナナ「……どうかな、私達はもう卒業だから」 梨子「そう……だよね」 ナナ「でも、大丈夫、今日会えたから」 梨子「……うんっ」 👀 Rock54: Caution(BBR-MD5:1341adc37120578f18dba9451e6c8c3b)
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- 梨子「ロストソングD.C.」
407 : ◆sHtux8fZAE (舞妓 どすえ)[]:2018/09/22(土) 21:37:40.04 ID:/BJd27qp - ーーー
「じゃあ、まず一年生から」 「はーい」 「いくよー……スタート!」 タッタッタッタッ 「しっかり足上げてー」 タッタッタッタッ 「……」 タッタッタッタッ 「はい、お疲れー、タイムは?」 「うん、ちょっとずつ短くなってるよ」 「だいぶ体力付いてきたね、じゃあ次ー」 「はーい」 梨子「……」
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408 : ◆sHtux8fZAE (舞妓 どすえ)[]:2018/09/22(土) 21:38:37.61 ID:/BJd27qp - ーーー
亜里沙「お疲れ様、じゃあ10分休憩してから基礎ステップの練習ねー」 「はーい」 雪穂「亜里沙ー」 亜里沙「なに?」 雪穂「ブロック予選の曲なんだけどね」 亜里沙「うん……ん?」 雪穂「どうかした?」 亜里沙「……えっ」 雪穂「亜里沙……?」 亜里沙「……!」ダッ 雪穂「ちょっ!?どこ行くの!?」 亜里沙「梨子かもしれない!」 雪穂「えっ!?ごめん!ちょっと後任せる!」ダッ 「えっ?分かりましたー……?」
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409 : ◆sHtux8fZAE (舞妓 どすえ)[]:2018/09/22(土) 21:39:41.20 ID:/BJd27qp - ーーー
亜里沙「梨子!梨子ー!いるの!?」 雪穂「亜里沙、本当に梨子なの?」 亜里沙「忘れるわけないよ!あれは梨子だよっ!」 雪穂「亜里沙……」 亜里沙「梨子ー!」 雪穂「……」キョロキョロ 亜里沙「梨子ー!」 雪穂「あっ!亜里沙!あれ!」 亜里沙「やっぱり梨子だ!梨子ー!」 梨子「……」スタスタ 亜里沙「おーい!会いに来てくれたんだよね!」 梨子「……」スタスタ 雪穂「亜里沙、ちょっと待って」 亜里沙「なんで……止まってくれないの……梨子」 梨子「……」スタスタ 雪穂「……」 亜里沙「……どうしてこっち見てくれないの……」
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410 : ◆sHtux8fZAE (舞妓 どすえ)[]:2018/09/22(土) 21:40:22.92 ID:/BJd27qp - 雪穂「……亜里沙」
亜里沙「……なに?」 雪穂「私に合わせて」 亜里沙「えっ?」 雪穂「すぅ……音ノ木坂学院アイドル研究部!高坂雪穂ぉ!」 梨子「……」ビクッ 亜里沙「っ!同じくアイドル研究部!絢瀬亜里沙ぁ!」 雪穂「私達は!ν-tralとしてー!絶っ対決勝に行くからー!」 亜里沙「アキバドームで待ってるからー!」 梨子「……」 雪穂「はぁ……はぁ……」 亜里沙「……はぁ……梨子……」 梨子「……っ」 雪穂「……戻ろ」 亜里沙「でも……」 梨子「……」 梨子「……浦の星女学院!スクールアイドル部!桜内梨子っ!」
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411 : ◆sHtux8fZAE (舞妓 どすえ)[]:2018/09/22(土) 21:41:10.91 ID:/BJd27qp - 雪穂「……っ」ビクッ
亜里沙「梨子……!」 梨子「今度は……今度は必ず決勝に行くから!」 雪穂「……」 亜里沙「……」 梨子「形は違っても!約束を守るために!絶対!」 雪穂「約束……」 亜里沙「それって……!」 梨子「……っ」ダッ 雪穂「……」 亜里沙「ねぇ、雪穂……」 雪穂「……うん……きっと思い出せたんだ……」
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- 梨子「ロストソングD.C.」
412 : ◆sHtux8fZAE (舞妓 どすえ)[]:2018/09/22(土) 21:41:56.32 ID:/BJd27qp - ーーー
梨子「はっ……はっ……はっ……」 梨子「帰らなきゃ……っ」 梨子「謝らなきゃ……っ」 梨子「みんなに……っ」
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- 梨子「ロストソングD.C.」
413 : ◆sHtux8fZAE (舞妓 どすえ)[]:2018/09/22(土) 21:42:36.97 ID:/BJd27qp - ーーー
ガシャンッ 梨子「……はぁ……はぁ……」 梨子「……門……開いてない……」 梨子「はぁ……はぁ……そうよね……もうこんな時間なんだし……」 梨子「……何か挟まってる……紙?」 梨子「……」スッ 梨子「……っ!」ダッ 『初めて会った場所で待ってます 千歌』
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414 : ◆sHtux8fZAE (舞妓 どすえ)[]:2018/09/22(土) 21:45:11.66 ID:/BJd27qp - ーーー
梨子「……っ!」 梨子「……いたっ!」ザッ 梨子「はぁ……はぁ……はぁ……」 千歌「……」 ルビィ「梨子先輩……」 花丸「……」 鞠莉「ほんとに来たわね」 ダイヤ「……」 曜「梨子ちゃん……」 善子「り、リリー……」 果南「善子ちゃん待って」 梨子「……っ」 梨子「ごめんなさいっ!」 千歌「……」 梨子「練習行かなくなったり……勝手にいなくなって……自分勝手でした!」
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415 : ◆sHtux8fZAE (舞妓 どすえ)[]:2018/09/22(土) 21:46:39.67 ID:/BJd27qp - ルビィ「そんなこと……」
ダイヤ「ルビィ」 ルビィ「っ……」 梨子「どうすればいいか分からなくて……みんなに迷惑かけたくなくて……」 花丸「……」 梨子「でも……お父さんに会って……ナナや雪穂達と会って……気付いたの……」 善子「……」 梨子「私……心の底からスクールアイドルが好きだって!だから記憶がなくたって、またここでスクールアイドルを始めたんだって!」 果南「梨子ちゃん……」 梨子「だからっ!だから自分勝手で滅茶苦茶で!迷惑もいっぱいかけちゃうけど!また私をスクールアイドル部に入れてくださいっ!!」 鞠莉「……何を馬鹿なこと言ってるの」 梨子「っ……分かってます……馬鹿で最低な事を言ってるのは……でもっ……たとえ一緒に踊れなくても……せめて同じ部員としてーー」 千歌「梨子ちゃん、なんか勘違いしてないかな」 梨子「……えっ」
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- 梨子「ロストソングD.C.」
416 : ◆sHtux8fZAE (舞妓 どすえ)[]:2018/09/22(土) 21:48:25.56 ID:/BJd27qp - 千歌「スクールアイドル部を辞めた人なんていないよ」スッ
梨子「これ……私の書いた退部届……なんで……」 ダイヤ「全く、私が回収してなければ本当に受理されてましたわよ」 果南「ダイヤが先生に掛け合って保留にしてもらったの」 梨子「……どう、して……」 千歌「信じてたから」 梨子「……っ」 千歌「梨子ちゃんなら絶対戻ってくるって信じてたから」 曜「負けず嫌いな梨子ちゃんがこんなところで逃げ出したりしないって」 花丸「それでもヒヤヒヤしたズラ……」 千歌「だから、おかえり、梨子ちゃん」 梨子「っ……うん……うんっ……ただいまっ……」グスッ
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