- ヨハネ「私が出会った」ルビィ「天使」
207 :家 ◆YmvLytuhUo (やわらか銀行)[]:2018/09/13(木) 02:57:36.01 ID:E6TOnV8o - 数日後…
ルビィ「ねぇ、ヨハネちゃん」 ヨハネ「なに?」 ルビィ「もう少しで一月……終わっちゃうね」 ヨハネ「…そうね」 ルビィ「うん……」 「…………」 ルビィ(…いいのかな、このままで) ルビィ(このまま何もしないで、ヨハネちゃんとお別れして…いいのかな)
|
- ヨハネ「私が出会った」ルビィ「天使」
208 :家 ◆YmvLytuhUo (やわらか銀行)[sage]:2018/09/13(木) 02:58:34.68 ID:E6TOnV8o - ─
「わあ! クマさんのぬいぐるみだぁ! これ貰っていいの?」 「ええ、私からの誕生日プレゼントよ」 「ありがとうヨハネちゃん! ルビィ大事にするね」 「ヨハネちゃん、はいこれ!」 「ルビィが出来ることってこれくらいしかないから」 「……でも、こんなの割に合わないわよ」 「ヨハネちゃんに貰って欲しいの」 「ありがとねルビィ…大切にする」 「うん!」
|
- ヨハネ「私が出会った」ルビィ「天使」
209 :家 ◆YmvLytuhUo (やわらか銀行)[sage]:2018/09/13(木) 02:59:52.50 ID:E6TOnV8o - 「私ね、正直こんな関係はすぐに終わるものかと思ってたわ」
「うん、ルビィも」 「ルビィもね、本当は夢なんじゃないかなぁってそう思ってたの」 「フフッ…ルビィからすれば不思議な体験だものね」 「でも今は夢じゃなくて良かったなぁって」 「そう…」 「ルビィは楽しかったよ、ヨハネちゃんと一緒に暮らせて」 ─
|
- ヨハネ「私が出会った」ルビィ「天使」
210 :家 ◆YmvLytuhUo (やわらか銀行)[sage]:2018/09/13(木) 03:00:49.13 ID:E6TOnV8o - ルビィ(……ううん、よくない)
ルビィ「やっぱりこのままじゃ駄目だよ!!」ガタン ヨハネ「うわっ! なによ、どうしたのよ急に!?」 ルビィ「ごめんねヨハネちゃん、ルビィちょっと用事があるからお出かけしてくるね!」ダッ ヨハネ「いやそれはいいけど……ってもういないし、早っ…」 ヨハネ「というか駄目って何が…………もしかして」 ヨハネ「私たちのこと、言ってるの?」 ヨハネ「…確かにそうかもしれないわね、今のままじゃきっと…後悔する」 ヨハネ「…………よし」
|
- ヨハネ「私が出会った」ルビィ「天使」
211 :家 ◆YmvLytuhUo (やわらか銀行)[sage]:2018/09/13(木) 03:02:40.55 ID:E6TOnV8o - ========
シスター「─成程、ルビィさん担当の天使が彼女の友達で」 シスター「ルビィさんに接触したのはそれが理由だと」 ルビィ「うん、だからルビィのところに来たってヨハネちゃんが」 シスター「……ああ、そう…」 シスター(…やっぱり私情じゃないですか)ハァーッ ルビィ「シスターさんは知らなかったの?」 シスター「いえ、私もその天使のこと自体は知っていましたよ…ただ」 シスター「ヨハネとの関係性は存じていませんでした、天界に見直しを申し付けたのも人がいい彼女ならやりかねないと思っていましたから」 シスター「ですがまあ、そのような背景があったのなら色々と納得は出来ますがね」
|
- ヨハネ「私が出会った」ルビィ「天使」
212 :家 ◆YmvLytuhUo (やわらか銀行)[sage]:2018/09/13(木) 03:04:04.39 ID:E6TOnV8o - ルビィ「そっか」
シスター「それで? 何故その話を私にしたんですか?」 ルビィ「それは、あの……ヨハネちゃんのことを守ってほしくて」 シスター「守る? 何から?」 ルビィ「ヨハネちゃん、今までいろんな天使さんに酷いこと言われてきて……ずっと一人っきりで」 ルビィ「それに、ヨハネちゃんのお友達になった天使さんも今は会えないんだよね? ……だから」 ルビィ「苦しいと、思うの」
|
- ヨハネ「私が出会った」ルビィ「天使」
213 :家 ◆YmvLytuhUo (やわらか銀行)[sage]:2018/09/13(木) 03:04:51.09 ID:E6TOnV8o - シスター「…………」
ルビィ「だからあの、そういうときにシスターさんが味方になってくれたら…」 シスター「…言いたいことは大体分かりました、そのうえで答えさせてもらいましょうか」 シスター「嫌ですよ、冗談じゃない」 ルビィ「ど、どうして…?」 シスター「自分の問題くらい自分で解決しろというのもそうですが、何より」 シスター「私は彼女のことが嫌いなので」
|
- ヨハネ「私が出会った」ルビィ「天使」
214 :家 ◆YmvLytuhUo (やわらか銀行)[sage]:2018/09/13(木) 03:05:28.46 ID:E6TOnV8o - ルビィ「…………」
シスター(…突き放すためとはいえ、この子には少々酷でしたか) シスター「まあつまりはそういうことです、分かったら─」 ルビィ「……」バッ シスター「…どうして頭まで下げる必要があるんですか」 シスター「貴女の好きな人に対して、嫌いだと抜かした相手ですよ」 ルビィ「……それでも、お願いします」
|
- ヨハネ「私が出会った」ルビィ「天使」
215 :家 ◆YmvLytuhUo (やわらか銀行)[sage]:2018/09/13(木) 03:06:25.29 ID:E6TOnV8o - ルビィ「ルビィは、天界にいけません……ヨハネちゃんのこと、助けられません…だから」
シスター(…ここまで離れたくないとは、一言も言っていない) シスター(全てヨハネの今後のためを想って……この子は、自分の気持ちを) シスター「……これ以上は、流石に無様が過ぎますね」 シスター「分かりました、私の負けですよ……ですからもう、顔を上げてください」 ルビィ「シスターさん…! あ、ありがとうございます!!」 シスター(…それに、姿だけとはいえ私はこの子の姉ですからね) シスター(あまりこの子を幻滅させるようなことをするのは、ダイヤさんにも悪い…)
|
- ヨハネ「私が出会った」ルビィ「天使」
216 :家 ◆YmvLytuhUo (やわらか銀行)[sage]:2018/09/13(木) 03:07:40.47 ID:E6TOnV8o - ルビィ「よかったぁ…これでヨハネちゃんもきっと」
ルビィ「シスターさん、本当にありがとう」ニコッ シスター「いえ、私は…」 シスター「……」 シスター「……ルビィさん、一つ昔話をしましょうか」 ルビィ「え?」 シスター「いや昔と言うほどでもなく、割と最近のことなんですけどね」 ルビィ「なんのお話し?」 シスター「そうですね…彼女がヨハネと名乗っているその理由について、ですかね」
|
- ヨハネ「私が出会った」ルビィ「天使」
217 :家 ◆YmvLytuhUo (やわらか銀行)[sage]:2018/09/13(木) 03:08:48.26 ID:E6TOnV8o - ルビィ「! 知ってるの!?」
シスター「それなりに調べはしました…ある程度はですけど」 シスター「ただ、そのうえで知っておくべきことがあります、ヨハネが観察を担当していた少女のことです」 ルビィ「ヨハネちゃんの?」 シスター「はい、彼女の観察対象の名前は津島善子」 シスター「沼津出身の12歳で、現在小学6年生…今年の3月に小学校を卒業し、4月から中学生へ」 シスター「つまり、ルビィさんと同い年というわけですね」 ルビィ「ルビィと同じ…」 ルビィ「あの…シスターさん、その女の子が何かヨハネちゃんと関係あるの?」 シスター「関係大有りですよ、何せヨハネという名前は本来、その善子さんが名乗っていたものですからね」
|
- ヨハネ「私が出会った」ルビィ「天使」
218 :家 ◆YmvLytuhUo (やわらか銀行)[sage]:2018/09/13(木) 03:09:59.63 ID:E6TOnV8o - ルビィ「え!? じゃあどうしてヨハネちゃんが」
シスター「そこが理由に繋がるわけですよ、彼女…善子さんもまた、とても運の悪い女の子でしてね」 シスター「遠足当日に雨が降る、クジ引きには一回も当たったことがない、何もないはずの道端で転んだりと…例を挙げるとキリがないのですが」 シスター「とにかく、そういったことが頻?に彼女の身に起きていたんです」 ルビィ「す、すごいね……」 シスター「そしてそんな善子さんが名乗りはじめたのがこのヨハネという名前でした」
|
- ヨハネ「私が出会った」ルビィ「天使」
219 :>>218修正(やわらか銀行)[sage]:2018/09/13(木) 03:12:58.62 ID:E6TOnV8o - ルビィ「え!? じゃあどうしてヨハネちゃんが」
シスター「そこが理由に繋がるわけですよ、彼女…善子さんもまた、とても運の悪い女の子でしてね」 シスター「遠足当日に雨が降る、クジ引きには一回も当たったことがない、何もないはずの道端で転んだりと…例を挙げるとキリがないのですが」 シスター「とにかく、そういったことが頻繁に彼女の身に起きていたんです」 ルビィ「す、すごいね……」 シスター「そしてそんな善子さんが名乗りはじめたのがこのヨハネという名前でした」
|
- ヨハネ「私が出会った」ルビィ「天使」
220 :家 ◆YmvLytuhUo (やわらか銀行)[sage]:2018/09/13(木) 03:14:28.11 ID:E6TOnV8o - シスター「由来はこうです、自分がこんな目に遭っているのも、きっと神様の怒りによって堕天使にされてしまったからなんだと」
ルビィ「!」 シスター「そう、天使である自分の美しさが神の怒りに触れたからという、聞く人が聞けば頷きそうな理由をつけてね」 シスター「そうして彼女は自身を ─神によって悪魔に変えられた存在─ 堕天使ヨハネと名乗り、生きることにした」 シスター「勿論そんなことは実際には起きていませんよ、分かっているとは思いますけど」 ルビィ「うん」
|
- ヨハネ「私が出会った」ルビィ「天使」
221 :家 ◆YmvLytuhUo (やわらか銀行)[sage]:2018/09/13(木) 03:15:33.85 ID:E6TOnV8o - シスター「ただ、善子さんにはこういう話が必要だった」
シスター「つまりはですね、この話は運の悪い彼女が前向きに人生を歩むために」 シスター「そう自身に言い聞かせている、いわば自己暗示のようなものだと私は解釈しています」 シスター「ですが、重なったんでしょうね…そういうところが」 ルビィ「じゃあ、ヨハネちゃんは…」 シスター「ええ、あの天使は善子さんに自分の面影を垣間見たんですよ」
|
- ヨハネ「私が出会った」ルビィ「天使」
222 :家 ◆YmvLytuhUo (やわらか銀行)[sage]:2018/09/13(木) 03:16:58.52 ID:E6TOnV8o - シスター「そしてそんな善子さんを放っておけなくて、自分が見守ろうと思った」
シスター「彼女が善子さんを選んだのはそういう理由です」 ルビィ「ヨハネって名前を使っているのも、自分が本当の…天使だから?」 シスター「かもしれませんね、姿は見えずとも善子さんにそれを証明するために」 シスター「いかにも彼女が考えそうなことです」 シスター「だからこそ、私はあの天使が嫌いなんですけどね……深入りしすぎなんですよ毎回」
|
- ヨハネ「私が出会った」ルビィ「天使」
223 :家 ◆YmvLytuhUo (やわらか銀行)[sage]:2018/09/13(木) 03:18:33.76 ID:E6TOnV8o - ルビィ「……」
シスター「人の命は重い…形を移ろい続ける私たちが背負うには余りにも過ぎた代物です」 シスター「なのに、そんなものを事あるごとに全て抱えようとすれば、いずれその身を亡ぼすことは想像に難くありません」 シスター「そういう理由も含めて不干渉にしているんでしょうが」 シスター「大馬鹿者ですよ彼女は、天使であることの意味を…全く理解していない」
|
- ヨハネ「私が出会った」ルビィ「天使」
224 :家 ◆YmvLytuhUo (やわらか銀行)[sage]:2018/09/13(木) 03:19:30.99 ID:E6TOnV8o - ルビィ「…シスターさん、優しいんだね」
シスター「…どうでしょうね、自分では分かりかねます」 ルビィ「そうかなぁ? ルビィは優しい天使さんだと思うよ」 シスター「あまり実感が湧きませんが……まあ貴女の前なら、それも悪くはないかもしれませんね」クスッ シスター「…っと話が逸れてしまいましたが、まあ彼女の事情は大体そんな感じです」 シスター「理解していただけましたか?」 ルビィ「うん、ありがとうシスターさん」
|
- ヨハネ「私が出会った」ルビィ「天使」
225 :家 ◆YmvLytuhUo (やわらか銀行)[sage]:2018/09/13(木) 03:20:56.61 ID:E6TOnV8o - シスター「そうですか、それは何よりです」
ルビィ「でも、どうしてルビィに話してくれたの?」 シスター「ああ、それはですね……ルビィさんが一つだけ勘違いをなさっていたので」 ルビィ「勘違い?」 シスター「はい、自分では彼女を助けられない、貴女はそう言いました」 シスター「でもね、そうじゃないんですよ…守るのも、助けるのも」ポン ルビィ「んっ…」 シスター「貴女にしか出来ないことなんです、私に頼むこと自体が間違っているんですよ」ナデナデ
|
- ヨハネ「私が出会った」ルビィ「天使」
226 :家 ◆YmvLytuhUo (やわらか銀行)[sage]:2018/09/13(木) 03:22:04.18 ID:E6TOnV8o - ルビィ「ルビィにしか、出来ない……」
シスター「先ほどの話を聞いて、ルビィさんはどう思いましたか?」 ルビィ「ルビィは…」 シスター「何か言いたいことがあったはずです、それが答えですよ」 トンッ ルビィ「!」 シスター「いきなさいルビィ、大丈夫、そのときまで私が何とかするから」 ルビィ「…うん! ありがとう……お姉ちゃん!」タッ
|
- ヨハネ「私が出会った」ルビィ「天使」
227 :家 ◆YmvLytuhUo (やわらか銀行)[sage]:2018/09/13(木) 03:23:22.83 ID:E6TOnV8o - シスター「……お姉ちゃん、ですか…まあ確かに」
シスター「私らしくはなかったかもしれませんけど」 シスター「……それにしても」 シスター「あー全く嫌ですねえ、これじゃあ私も始末書ものじゃないですか」 シスター「しかも、おかげで私情がどうだの深入りしすぎだの自己満足だの、ぜーんぶ自分に跳ね返ってきてますし」 シスター「本当に冗談じゃありませんよ、最悪です。 ……けどまあ」 シスター「自分自身が正しいと思った判断を下す。これだけは何一つ曲げていませんがね」フッ シスター「なればこそ、貴女たちも貫いて見せなさい……その想いを、誰が何を言おうともね」
|
- ヨハネ「私が出会った」ルビィ「天使」
228 :家 ◆YmvLytuhUo (やわらか銀行)[sage]:2018/09/13(木) 03:24:01.74 ID:E6TOnV8o - ルビィ「ルビィがヨハネちゃんに出来ること…」
ヨハネ「私がルビィに出来ること……」 「それは──」
|
- ヨハネ「私が出会った」ルビィ「天使」
229 :家 ◆YmvLytuhUo (やわらか銀行)[sage]:2018/09/13(木) 03:25:11.60 ID:E6TOnV8o - そこからの時間は早いか晩いか…しかし、少なくともその日が来るまでの間
それは二人にとって瞬くほどのものであっただろう そう、あれからまたさらに日は巡り……そして ついに3月─── 黒澤ルビィ、卒業の日である。
|
- ヨハネ「私が出会った」ルビィ「天使」
230 :家 ◆YmvLytuhUo (やわらか銀行)[sage]:2018/09/13(木) 03:25:57.24 ID:E6TOnV8o - 今回はここまでです、そろそろ終わります
|