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名無しで叶える物語(聖火リレー)
梨子「大人になろうよ」曜「オトナ?」

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梨子「大人になろうよ」曜「オトナ?」
93 :名無しで叶える物語(聖火リレー)[]:2018/04/23(月) 03:25:02.24 ID:0oS/QjV7
曜「……大人?」

梨子「そう、大人」

曜「なんだか最近、よく耳にする気がする」

梨子「へえ?そうなの?」

曜「千歌ちゃんも似たようなこと言ってたよ。私も大人にならなきゃ、みたいな」

梨子「千歌ちゃんが―――」

曜「私から卒業したいらしいんだ」

話を切り出すタイミングに迷っていたけどちょうどいいや。私は今置かれている現状を梨子ちゃんに明かすことにした。
私と千歌ちゃんの距離に限界を感じていること。
千歌ちゃんが私から離れたがっているということ。
昔からずっと灯してきた私の恋はもうすぐ消える寸前にあること。
千歌ちゃんを諦めなければ、いつまでも前に進めないということ。

曜「色んなものでぐちゃぐちゃになっちゃってさ。逃げ出したくなっちゃって」

梨子「それでここまで走ってきた、ってわけ?」

曜「そうだね。気付いたら浦の星に来てた」

まさか梨子ちゃんが居るとは思わなかったけど、と付け足す。
梨子ちゃんがくすくすと笑う。

梨子「昼間なら知ってる人に会うことも少ないと思ってたけど、やっぱり外に出るのは危険ね」

曜「いつも何してるのさ」

梨子「何にもしてない。部屋にひきこもってプレリュードと遊んでるくらい」

曜「ひきこもってるって」

梨子「私だってバイトの一つや二つはしたいし、するべきだと思ってるわよ。でもお母さんやお父さんは今は自分の時間を大切にしてほしいって言うから」

曜「そりゃまた、愛されてるね、梨子ちゃん」

梨子「愛され過ぎて、身動きが取れないの」

そう言うと梨子ちゃんは私の方をじっと見る。

梨子「千歌ちゃんもそうなのかもね」

曜「……どういう意味さ」

梨子「誰かさんが甘やかすせいで、誰かさん無しじゃ生きられない、自由がきかない体になってるんじゃない?千歌ちゃん」

そしてその不自由さを嘆いている。解放されたいと望んでいる。
私―――渡辺曜の存在が千歌ちゃんを縛り付けている?
梨子「大人になろうよ」曜「オトナ?」
94 :名無しで叶える物語(聖火リレー)[]:2018/04/23(月) 04:13:55.21 ID:0oS/QjV7
梨子「だからさ、曜ちゃんも大人になっちゃおうよ。千歌ちゃんのためでもあるのよ?」

曜「具体的にどういうことなのさ、大人になるって」

梨子「夢を捨てるのよ」

ああ、やっぱり。
私の脳内梨子ちゃんと同じようなこと言ってる。

梨子「夢とか、憧れとか、こだわりとか、そういうのは全部忘れるの。全部きれいな思い出にして、現実に生きることにするの」

曜「そんなの無理だよ。つらいに決まってる」

梨子「無理してでも、多少つらい思いをしてでも、そうしなきゃ永遠に変われないでしょ?」

梨子ちゃんがまたしても自嘲気味にほほ笑む。
やめてよ。
その笑顔、やめてよ。

曜「梨子ちゃんはさ、私に千歌ちゃんを諦めろって言ってるの?」

梨子「千歌ちゃんをこれ以上苦しめたくないなら、それが賢明な判断だと思うけど」

曜「なにそれ……」

賢明な判断?
いつからそんな平和主義になったの、梨子ちゃん?
やめてよ。
そんな大人な対応しないでよ。

梨子「千歌ちゃんのそばにずっと居続けたいって希望も、この際もう諦めるの」

もうやめてよ。

梨子「自分からじゃなくて、千歌ちゃんから告白されたい。千歌ちゃんからの気持ちを大事にしたい。そんな恋も忘れるの」

やめろ。

梨子「最初はやっぱり辛いかもしれないけど、時間が経っちゃえば、千歌ちゃんのことも意外とどうでもよく


曜「やめろ!」


怒声を震わすと同時に、私は梨子ちゃんの胸ぐらを掴んだ。
梨子「大人になろうよ」曜「オトナ?」
95 :名無しで叶える物語(聖火リレー)[]:2018/04/23(月) 05:36:30.47 ID:0oS/QjV7
曜「いいかげんにしてよ……!」

梨子「……いきなり手を出すなんて感心しないわね、曜ちゃん……!」

曜「さっきから聞いてれば、忘れろだ諦めろだ、簡単に言ってくれちゃってさ……!」

梨子「簡単になんて言ってないわよ……!無理してでもそうした方がいいって、曜ちゃんと千歌ちゃん二人のためを思って私は

曜「余計なお世話なんだよ……!」

身体が強ばる。

梨子「曜ちゃ……!くるしっ……!」

曜「千歌ちゃんのため……?違うよね?私と千歌ちゃんが二人で居るのが気に食わないだけでしょ?」

梨子「そんなこと……ない……!」

曜「梨子ちゃんは千歌ちゃんのことが忘れられない、だから内浦に戻ってきた、でも千歌ちゃんの隣には私がいる、告白できずにいる私のせいで気持ちよく告白することができない、梨子ちゃんはそんな現状が許せない!」

梨子「ちがう!」

曜「ちがくない!私が憎いんでしょ……?だったらそう言ってよ……!大人になれだとか見下ろしてないで、千歌ちゃんからさっさと離れろってそう言ってよ!」

梨子「ちがうって言ってるでしょ!」

梨子ちゃんの必死の抵抗によって私の手が振りほどかれる。
その呼吸はひどく荒れていて、地べたに座り込む。
プレリュードが主である彼女の下に近寄るってきた。

梨子「……もうこんなことで喧嘩したくないのよ」

呼吸が落ち着いてきた梨子ちゃんが、ゆっくりとそう告げる。

梨子「いつまでもこのまんまじゃダメなのよ……、お互いに傷つけあうだけで誰も幸せにならない、そうでしょ?」

曜「……そうかもね」

梨子「曜ちゃんは勘違いしてるかもしれないけど、私だって千歌ちゃんのことは諦めるわよ。曜ちゃんが諦めるなら、私だって諦めがつく」

でも、と梨子ちゃんは続ける。

梨子「それじゃあ釣り合ってないかもしれないわね。不公平かもしれない」

曜「……不公平?」

梨子「千歌ちゃんへの恋を諦めるのは私も曜ちゃんも同じ。だけど曜ちゃんは、千歌ちゃんの隣にずっと離れずに居続けるってことも、諦めることになるかもしれない。前者と後者は似て非なるでしょ?」

千歌ちゃんの言っていた、私からの卒業。
それが有する意味をちゃんとは理解できていないけど、変化を受け入れる覚悟は必然的に求められるだろう。
子供時代から抱いていた夢が断たれる現実を直視しなければならない。

曜「でも、公平にするってどうするのさ」

梨子「私ももう一つ何かを捨てればいい。その後者に同等のものとなると……まあ、私にはこれしかないわよね」

曜ちゃん、私ね。

梨子「プロのピアニスト、諦めるわ」
梨子「大人になろうよ」曜「オトナ?」
97 :名無しで叶える物語(聖火リレー)[]:2018/04/23(月) 07:31:59.10 ID:0oS/QjV7
曜「えっ……」

梨子ちゃんが、ピアニストになるのを、やめる?

曜「ちょっと待ってよ、さすがにそれは」

梨子「何かおかしい?」

曜「おかしいよ。おかしいことだらけだよ。どうして梨子ちゃんがそんなことするのさ」

梨子「だから言ったでしょ。不公平感を取っ払うためよ」

曜「不公平感―――」

梨子「共通項は子供時代からの夢ってところかしら」

曜「それはそうかもしれないけど」

梨子「曜ちゃんと千歌ちゃんがずっと一緒に居たのと同じくらい、私もピアノと一緒に生きてきたのよ。私がピアノを弾かなくなるってことは、二人が離れることに匹敵すると思うけど」

曜「……屁理屈にしか聞こえないよ。というか、私と千歌ちゃんが離れるって決定事項みたいに言わないで」

梨子「離れないの?」

曜「私は離れたくないよ」

私がそう言うと梨子ちゃんは、そうよね、と返した。
梨子ちゃんだって、本当はプロのピアニストになりたいはずなんだ。
昔も今も。

梨子「安心して。ピアノを弾かないってのは言い過ぎで、ピアニストになるのを諦めるだけよ。趣味で続けるのは確かだし、ピアノ教室の先生になるかもしれない」

私と千歌ちゃんの交流がおそらくこれからも続くのと同じように、梨子ちゃんとピアノの関係もそれなりに維持されるのだろう。
ただし今までのような距離感は望めないという条件付きで。

梨子「大事なものが少しだけ大事じゃなくなるだけよ」

曜「でも、私と千歌ちゃんの問題なのに、梨子ちゃんを巻き込んで、しかも将来の夢を奪うなんて、心苦しいよ」

梨子「曜ちゃんが苦しむ必要はないよ」

曜ちゃんは悪くないもの、と続ける梨子ちゃん。

梨子「悪いのは、ズルしてる私。今の曜ちゃんを利用して、ピアニストを諦める理由を作ってる、卑怯な私」

曜「……梨子ちゃん」

その声色が変わるまで私は気付いていなかった。
その少女の瞳から今にも一粒の涙がこぼれ落ちそうであることを。

梨子「だって、楽しくないんだもん、ピアノ」

そして、こぼれた。
梨子「大人になろうよ」曜「オトナ?」
99 :名無しで叶える物語(聖火リレー)[]:2018/04/23(月) 08:57:36.46 ID:0oS/QjV7
梨子「もう、逃げたいの。私、楽になりたいの」

涙が頬を伝っていく。

梨子「こんな思い、もうしたくないの」

涙が首筋に流れていく。

梨子「みじめな自分は、いやなの」

変わりたいの。変わらなきゃいけないの。
嗚咽交じりの声で梨子ちゃんはそう訴えた。

曜「梨子ちゃん……」

私も、プレリュードも、その場で立ち尽くしていた。
なんて声をかけていいのかも、何をすればいいのかも、私には分からない。
正解も不正解も分からない。
千歌ちゃんや周りの人からは完璧だ超人だなんて言われるけどさ。
一人の女の子にこんなにもあたふたしちゃうんだよ、私は。
正解をすぐに導き出せるほど優等生なんかじゃないんだ。
正解か不正解かやたらと気にしてしまうだけなんだ。
怒ってる顔や、泣き顔なんて、不正解を選んでしまったみたいで、あんまり見たくないんだ。
だからさ。
そんな顔見ないようにするためにさ。

梨子「!」

そっと、そして、ぎゅっと、彼女を抱き締める。
これならお互いに顔を見合わせることはない。
だから、思う存分、泣いていいよ。
梨子「大人になろうよ」曜「オトナ?」
101 :名無しで叶える物語(聖火リレー)[]:2018/04/23(月) 13:39:13.21 ID:0oS/QjV7
嗚咽。号泣。悲鳴。慟哭。
ダムが決壊したように梨子ちゃんは崩れた。
きっと今まで、私の前ではずっと強がっていたのだろう。
みじめに思われないように。同情されないように。
恋敵として肩を並べられるように。鏡写しとして機能できるように。
そしてそれは私も同じなんだ。
虚勢を張り合う騙しだましの関係のなか、どこかでかろうじてつながっていたかったんだ―――。


梨子「……曜ちゃん」

曜「ん?」

梨子「ごめんね」

いいよ、と私は返す。

曜「私の方こそ、さっきは突っかかっちゃってごめん」

梨子「もう終わった話でしょ」

曜「なあなあはダメだよ。そこはちゃんと謝りたいから」

梨子「律儀ね」

耳元から梨子ちゃんがくすりと笑う声が聴こえた。

梨子「やっぱり、曜ちゃんは優しいね」

曜「……それは褒められてるのかな」

梨子「馬鹿にしたいわけじゃなくて、本当に優しいのよ、曜ちゃんは。千歌ちゃんの甘えたくなる気持ち、よく分かる」

曜「梨子ちゃんだって甘えていいいんだよ?」

梨子「それはダメ」

曜「どうして」

梨子「戻れなくなるから」

曜「私は平気だよ」

梨子「曜ちゃんには千歌ちゃんがいるでしょ」

大好きな人を裏切るような、嘘をつくような真似は、もうしたくないの。
これ以上に秘密を重ねたくないの。

梨子「だから、今だけは、ただ優しくして」

曜「……分かった」

言葉は交わさない。
顔を合わせることもない。
その微熱の抱擁に、どれくらい時間が経ったのだろうか。
現在時刻なんか気にならないほどに、いつまでもその温もりに浸っていたいと思った。
梨子「大人になろうよ」曜「オトナ?」
103 :名無しで叶える物語(聖火リレー)[]:2018/04/23(月) 19:37:35.55 ID:0oS/QjV7
お互いに満足するまで抱擁をし合った私たちは、尾を引くことなくここで別れることにした。

梨子「ありがとう曜ちゃん」

曜「礼なんていいよ」

梨子「それくらい言わせてよ」

梨子ちゃんがにっこりとほほ笑む。
親しげに、されど寂しげに。

梨子「曜ちゃんのおかげで、やっと諦めがついたんだもの」

曜「……ほんとうに梨子ちゃんはそれでいいの?」

梨子「うん。千歌ちゃんのことも、ピアニストのことも、もう諦める」

曜「……そっか」

梨子「曜ちゃんは?」

千歌ちゃんのこと、本当に諦められる?
千歌ちゃんから離れられる?

曜「私も大丈夫。もう子供みたいなわがままは言わない」

妥協して。譲歩して。折り合いをつけて。
私もいいかげん大人になるんだ。

曜「最初はつらいかもしれないけど、梨子ちゃんも同じ痛みを感じてると思えば、耐えられるよ」

そっか、と返す梨子ちゃん。

梨子「私も、曜ちゃんがいるから別の道でも頑張れる気がする」

曜「それでもつらくなったら、電話でもしていいかな」

梨子「うん。私からもするかもしれない」

ねえ、曜ちゃん。

梨子「今日、曜ちゃんに会えてよかった」

曜「私も梨子ちゃんと久しぶりに話せてよかったよ。また今度お酒でも飲もう」

梨子「うん。それじゃあ、元気でね」

曜「またね」

梨子ちゃんに背を向けて私は来た道を戻る。
けして立ち止まって振り向いたりはしない。
きっと梨子ちゃんも私の方を振り返ることなく道を進んでいるはずだ。
別れ際を下手に長引かせないのが大人ってもんなんだ。
梨子「大人になろうよ」曜「オトナ?」
106 :名無しで叶える物語(聖火リレー)[]:2018/04/23(月) 23:42:48.67 ID:0oS/QjV7
ポケットに入れておいた音楽プレイヤーを取り出して、途中で停止したミュージックを再生する。
ゆっくり歩きたい気分に合わせてアップテンポからバラードの曲に変える。
感傷的な空気に浸りながら、梨子ちゃんとの会話を思い返す。

私たちは千歌ちゃんのことを愛していた。
友達としてではなく、恋愛対象として好きだった。
千歌ちゃんを譲りたくなくて、独り占めされたくなくて、私たちはいつも敵対してきた。
子供の喧嘩のように派手にぶつかったことも度々ある。
久し振りに再会できた今日だって、つい感情的になって衝突してしまった。
何も変わっちゃいない。成長しちゃいない。
こんな傷つけあうままじゃダメだってことは、私も梨子ちゃんも気付いてたはずなんだ。
大人になるってそういうことなんだ。
だからその一歩として、私たちはこの恋を諦めることにした。

それだけじゃない。
私は千歌ちゃん、梨子ちゃんはピアノ。
それぞれが大切に抱き締めていた宝物を手放すことで、私たちは前に進むことにした。
子供時代になる夢をも過去の思い出にする。
そうでもしないと私たちは大人になったことを自覚できないんだ。
青春時代のなかに取り残された心が、いつまで経っても目覚めないんだ。
浦の星から早く卒業するんだ。
現実は悲しいけど、この悲しみを分かち合える人がいるなら、それだけで救われた気持ちになる。
梨子ちゃんに出逢えて、本当によかった。


曜「……あ」

目の前には再び浦の星の校舎。
また、体が自然にここに戻ってきてしまった。

曜「早く卒業しようって言ったそばからこれって……どんだけ名残惜しいんだか」

でもそれも仕方ないか。
ここに来て、あの青春時代をフラッシュバックしない方が無理な話だ。

出逢いと別れ。
歓喜と苦悩。
団結と孤独。
恋と衝突。

青く未熟だった私たちが全力で走り抜けていった日々。
忘れることなんてできるわけがない。
体も心も、あの日々を忘れたくないんだ。
捨てたくないんだ。
諦めたくないんだ。

梨子ちゃん。
私は自分の気持ちにようやく気付いたよ。
私はまだ―――。

曜「まだ青色でいたいんだ」

私の体は、走り出した。


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