- なんで渡辺曜ちゃんって
39 :名無しで叶える物語(茸)[]:2018/04/17(火) 13:18:37.84 ID:3HJF2s6e - >>28
ここほんとすき 曜も可愛いし梨子も可愛いしでまさに俺得
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- 梨子「大人になろうよ」曜「オトナ?」
1 :名無しで叶える物語(茸)[]:2018/04/17(火) 13:35:37.64 ID:3HJF2s6e - 高校を卒業したのは3年前のことだ。
沼津にある大学に入学してからは、留年しないように勉強に励み、サークル活動に打ち込んで、アルバイトをこなしつつ、たまに地元のボランティアにも参加なんてしてたらあっという間に月日が経ってしまった。 地元からのちじんか
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3 :名無しで叶える物語(茸)[]:2018/04/17(火) 13:47:03.30 ID:3HJF2s6e - 途中で送信しちゃったよ
はじめから書き直す
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- 梨子「大人になろうよ」曜「オトナ?」
4 :名無しで叶える物語(茸)[]:2018/04/17(火) 13:51:01.43 ID:3HJF2s6e - 高校を卒業したのは3年前のことだ。
沼津にある大学に入学してからは、留年しないように勉強に励み、サークル活動に打ち込んで、アルバイトをこなしつつ、たまに地元のボランティアにも参加なんてしてたらあっという間に月日が経ってしまった。 地元からの知人が多かったことに加えてAquorsの知名度も相まって、友人に囲まれた賑やかな学生生活を送ることができたとは思う。 だけどそこに彼女は居なかった。 高校生活の2年間、いつも一緒に時間を過ごした、あの悪友は私の隣には居なかった。
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5 :名無しで叶える物語(茸)[]:2018/04/17(火) 14:03:17.55 ID:3HJF2s6e - 千歌「ねぇ、よーちゃん」
曜「ん?どうしたの千歌ちゃん」 春休みが明けて前期日程が始まり、私は千歌ちゃんと一緒に大学の食堂でたむろしていた。 千歌「どうしよおぅぅ、このままじゃ卒業できないよおおぅぅ」 曜「単位、まだ足りてないの?」 千歌「やばいようぅ、もう皆は取り終えてるってのにぃぃ」 千歌ちゃんを悩ませているのは大学の授業の単位数た。 卒業の条件としての最低単位数に未だ到達できておらず、前期どころか後期も授業を取らなければいけない危機的状況らしい。 曜「でもほとんど私と同じ授業取ってきたじゃん。一緒に勉強したこともあったし」 千歌「よーちゃんは取れててもチカが取れてないやつなんて沢山あるもん」 あるもん、じゃないよ。可愛いな。
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7 :名無しで叶える物語(茸)[]:2018/04/17(火) 14:27:23.26 ID:3HJF2s6e - 千歌「留年だけは絶対絶対ゼッタイ避けなきゃいけないんだよぉ……」
曜「……まあ、単位が足りてないからまたもう1年やり直しって言うのはねぇ」 千歌「つらいのだ……」 曜「でもね千歌ちゃん、言っちゃ何だけど半分は自業自得だからね。同じ授業受けようね!って約束したのに途中から来なくなったり、せっかくプリント用意してたのにレポート書くのサボったり、思い当たる節あるからね」 千歌「しょーがないじゃん、大学生だもん」 曜「大学生とは」 千歌「あーあ、なんで卒業しなきゃいけないんだろ。ずっと大学生でいたいなあ」 曜「千歌ちゃんそれ高校3年生のときも言ってたよね?ずっと高校生でいたいって」 千歌「チカは初志貫徹なのだ」 曜「頭良さげな言葉使ってるけど根っからのサボり魔ってことだからね」 千歌「でもよーちゃんも高校のとき思わなかった?いつまでもこうしてたいなーとか、卒業なんかしたくないなーって」 曜「そりゃまあ、思ったよ」 千歌「ずっとこうして3人で居られたらいいのなぁって」 それは、どうだろうね。
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9 :名無しで叶える物語(茸)[]:2018/04/17(火) 14:44:23.80 ID:3HJF2s6e - 私の高校生活は、中学生時代の私からすれば想像がつかないほどに、そして大学時代の私からしても絵空事に聞こえるように、劇的なものだった。
劇的で、刺激的で、衝撃的で。 千歌ちゃんと一緒に何かが出来たらそれでいいや、なんて考えていた一年生時代が空虚に思えるほど、私を人生を狂わせることになるイベントが起きた。 イベントというよりはアクシデントというべきか。 言ってしまえば不慮の事故みたいなもんなんだけど。 二年生の春に、私は彼女に出遭った。 同じ人に惹かれ導かれ、同じ人を愛することになり、同じ人の夢の為に共に走った、そんな鏡写しに遭遇した。 その恋敵―――桜内梨子は、ピアニストという夢をぶら下げながら内浦を離れていった。
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10 :名無しで叶える物語(茸)[]:2018/04/17(火) 14:59:19.49 ID:3HJF2s6e - あの会話は3年生の卒業式の前だっただろうか、後だっただろうか、今となってはよく覚えていない。
ピアノの音が耳に飛び込んできた私は、もしかしてと思って導かれるように音楽室に向かい、そして扉を開けた。 「あ、曜ちゃん」 彼女はドアの音に気付いてこちらを向くと、微笑みを浮かべながらそう言った。 曜「いい音だったからさ、梨子ちゃんかなと思って」 梨子「嬉しいこと言ってくれるわね」 曜「嘘つくの下手だからさ、私」 素直に思ったことは素直に言う。 彼女の前では私は素になれる。 仮面を外した本当の渡辺曜をさらけ出せる。 そしてそれは、梨子ちゃんにも同じことが言えた。 梨子「ここのピアノ、あんまり弾いてて楽しくないのよね」 曜「楽しくない?いい音だったじゃん」 梨子「いい音なんてどんなに古いピアノでも出せるの。ピアノのせいにするなんて力量不足よ」 淡々と言ってのける。音楽室の壁に反響する。
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12 :名無しで叶える物語(茸)[]:2018/04/17(火) 15:19:37.96 ID:3HJF2s6e - 曜「でも、ひいてて楽しくないんだ」
梨子「気が乗らないって言った方がいいのかな。相性が悪いのかも」 曜「相性」 梨子ちゃんは穏健そうに見えて意外と好き嫌いがはっきりしているタイプだ。 しいたけを蛇蝎の如く嫌っていた時期や、プレリュードの溺愛ぶりを見るにそれは明らかだろう。 梨子「プロのピアニストならコンディションも相性も関係なしに、いつだってノリノリでひけるんだと思うの。結局は私が未熟ってこと」 曜「それはしょうがないんじゃない?プロじゃないんだし」 梨子「そうね」 でも、と彼女は続ける。 梨子「それでも私はプロになりたい。子供の頃から憧れだったプロのピアニストに」 いつになく真剣な目をしている。空気に気圧される。 曜「プロってことは……卒業したらどうするの?」 梨子「内浦からは離れることになるわね」 あっさりと言いのける。 梨子「ねえ、曜ちゃん」 曜「なに?」 梨子「恋敵が消えて、嬉しい?」 静寂の音が音楽室に響く。
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- 梨子「大人になろうよ」曜「オトナ?」
13 :名無しで叶える物語(茸)[]:2018/04/17(火) 15:39:53.94 ID:3HJF2s6e - 曜「どういうことさ」
梨子「そのまんまの意味よ。千歌ちゃんを取り合うライバルが消えるんだから、曜ちゃんは内心ほくそ笑んでるんじゃないかなって」 曜「ほくそ笑むって」 梨子「擬音語にするならニヤニヤって感じかしら」 曜「ニヤニヤは何処となく微笑ましいから、こういう時はニタニタの方がいいんじゃないかな」 梨子「ニタニタ。いいね。採用」 曜「だけどね梨子ちゃん、ニヤニヤもニタニタも外れてる」 梨子「じゃあどう思ってるの?」 曜「何とも思ってないよ。梨子ちゃんの好きにすればいい話だし、無関係な私に発言権なんかないんだからさ」 梨子「引き留めたりしないの?」 曜「引き留めてほしいの?」 梨子「別に」 そう言って梨子ちゃんはニッコリ笑う。 ニンマリとも言うのかな? 梨子「でも、曜ちゃんがどんな反応するのかなーって気になってたのは本当よ」 曜「人のことを試すのは感心しないね」 梨子「無関心な人にそんなこと言われたくないわ」 無関心。無配慮。無反応。
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- 梨子「大人になろうよ」曜「オトナ?」
17 :名無しで叶える物語(茸)[]:2018/04/17(火) 16:01:06.04 ID:3HJF2s6e - 実際のところ、梨子ちゃんに対して全く関心がないと言えばそれは嘘になる。
からかわれたくないから虚勢を張っている。 2年の春に東京からここ内浦にやって来て その美貌と才能と経歴に千歌ちゃんが興味を示さないはずがなくて それは言うなれば運命の出逢いで Aquorsにとっての原点のようなもので そこから1年生や3年生、Seint Snowも巻き込んでいって どんどん強くなって どんどん大きくなって どんどん輝きが増していって 私と千歌ちゃんだけだったはずの小さな渦はいつのまにか竜巻のように広がって その中心核には当たり前のように梨子ちゃんがいて 梨子ちゃんが居なくたって千歌ちゃんの夢を叶えてみせるなんて胸を張れるほど、私は愚かなやつじゃない。 だけど、そんな人に対して嫉妬も憎悪もなく心から大好きなんて言い張れるほど、私は良いやつじゃない。
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- 梨子「大人になろうよ」曜「オトナ?」
21 :名無しで叶える物語(茸)[]:2018/04/17(火) 16:13:48.10 ID:3HJF2s6e - 梨子「残念ね」
曜「何が?」 梨子「面白い反応じゃなかったから」 曜「……」 いくらなんでもはっきり言い過ぎだと思う。 梨子「曜ちゃんってからかい甲斐があるのよね、個人的に」 曜「そんなの知らないよ」 梨子「からかったり、からかわれたり、そういうの苦手だもんね、曜ちゃんは」 曜「……冷やかしは好きじゃないだけだよ」 梨子「優しい人ね」 優しい人。 梨子「でもね曜ちゃん、優しい人が優しい人生を送れるとは限らないのよ?」 優しい人生。 梨子「信じるものは報われるとか、待ってれば必ず助けが来るとか、健気な気持ちさえあればハッピーエンドとか、そんな優しい結末あると思う?」 優しい結末。 梨子「ねえ、曜ちゃん。いつまで千歌ちゃん待ってるの?」
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24 :名無しで叶える物語(茸)[]:2018/04/17(火) 16:18:02.51 ID:3HJF2s6e - 遅筆で申し訳ないっす
ちょっとトイレ行ってきます
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26 :名無しで叶える物語(茸)[]:2018/04/17(火) 16:37:36.72 ID:3HJF2s6e - 曜「……千歌ちゃんのことは梨子ちゃんに関係ないでしょ」
梨子「あるわよ」 曜「何で?」 梨子「私の好きな人だもの」 曜「……私だって好きだよ。きっと梨子ちゃん以上に」 梨子「知ってるわよ、そんなこと」 恋敵のことは恋敵が一番よく知っている。 そう言いたげな眼光を放っていた。 梨子「だから曜ちゃんには負けたくなかった。今までの時間分を取り返さなきゃって思ってた」 曜「今までの時間分―――」 梨子「圧倒的な曜ちゃんのアドバンテージを埋めるために私は必死に頑張ってきた。東京から来た転校生なんて幻想が剥がれ落ちる前に、私自身を認めてもらえるように」 そして、と梨子ちゃんは続ける 梨子「ここに来て、やっと肩を並べられた気がするの」 梨子ちゃんが私たちと最初からずっと居たような感覚。 二年生になるまで一緒に居なかったのが嘘みたいな感覚。 安心感。一体感。連帯感。対等感。
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27 :名無しで叶える物語(茸)[]:2018/04/17(火) 17:03:42.63 ID:3HJF2s6e - 梨子「私ね、心の中では曜ちゃんともきっと親友になれるって思ってたの」
曜「え?」 梨子「だって、同じ人に惹かれて、その人の夢に導かれて、その人の夢の為に一緒に走って、そしてその人のことを愛しているなんて、まるで鏡写しじゃない」 曜「……確かに、そうかもね」 梨子「ここまで似た者同士なんて、今考えたら千歌ちゃんやよっちゃん以上に曜ちゃんは運命の人かもしんないわね」 曜「気持ち悪いこと言わないでよ」 鏡写しだとか、運命の人だとか、妙な言い回しでいちいち強調してくる梨子ちゃんを前にして、つい本音を口走ってしまった。 梨子「ごめんなさい」 そう言って梨子ちゃんはニンマリと笑う。 ニッコリなんて可愛らしい擬音語はこの場合ふさわしくない。 梨子「結局は他人なのにね。よくて恋敵かしら?」 曜「敵対関係のどこがいいのさ」 梨子「ある意味で特別よ?」 曜「気持ち悪い」 梨子「ふふ、曜ちゃんと話してるとついついからかいたくなくなっちゃうの」 曜「悪女め」 梨子「曜ちゃんの方がずっと悪女よ」 曜「なんでさ」 梨子「そりゃあだって―――曜ちゃんはとても優しい人だからよ」 曜「……?」 梨子ちゃんが言わんとしていることを上手く飲み込めない。 誉められてるのか皮肉を言われてるのかすらも分からない。
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29 :名無しで叶える物語(茸)[]:2018/04/17(火) 17:51:55.14 ID:3HJF2s6e - 梨子「まあ、真偽はともかくとして、親友には一応なれたと思ってる。曜ちゃんにとっても、千歌ちゃんにとっても」
曜「真偽はいいんだ」 梨子「友情を試すような真似をするの?なんてひどい人なの曜ちゃん……」 曜「うるさいよ!」 さんざん人を試しておいてよく言えるね! 梨子「友情なんてハッキリしてなくていいし、あの子と私は本当に友達なのかな?みたいな気苦労はするだけ無駄なのよ」 曜「まあ、いざ確かめたところで変な空気になるのな必至だしね」 梨子「友情は下手にハッキリさせる必要はない―――でも」 梨子ちゃんは再び真剣な表情になり、その両の瞳は私をしっかりと捕らえている。 梨子「恋愛は、ハッキリさせた方がいいと思うの」 曜「……その話に戻るんだね」 梨子「当たり前でしょ。私が東京に行くまでに片付けたい案件なんだから」 曜「大袈裟だよ」 梨子「大袈裟なんかじゃない。曜ちゃん、からかってるの?」 そんなつもりはないよ、梨子ちゃん。 だけど敢えてふざけたことを抜かしていいなら。 梨子ちゃんの真剣な表情、子供っぽくて私は結構好きだよ。
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- 梨子「大人になろうよ」曜「オトナ?」
30 :名無しで叶える物語(茸)[]:2018/04/17(火) 18:59:12.80 ID:3HJF2s6e - 梨子「私は東京を発つ前に自分の気持ちを千歌ちゃんに伝えたい。でも私より先に曜ちゃんに告白してほしいの」
曜「それは何?様子見?」 梨子「違う!」 ピアノの椅子から梨子ちゃんが立ち上がる。 梨子「私は……曜ちゃんの想いを知ってるの。ずっと一緒に居たから。見てきたから。曜ちゃんの想いを知れば知るほど、千歌ちゃんのことは諦めなきゃいけないって思ったの」 窓から射す斜陽が梨子ちゃんを照らす。 梨子「でも無理だった。忘れられなかった。諦めきれなかった。私はやっぱり千歌ちゃんのことが好きで、今でも千歌ちゃんのことが好きで、だけど曜ちゃんへの罪悪感も沸き上がってきて」 罪悪感?そんなの感じる必要なんかないのに 梨子ちゃんを苦しめている私の方がよっぽど罪悪感があるよ 梨子「ねえ、曜ちゃん、お願い。千歌ちゃんに告白して?好きって想いを伝えて?曜ちゃんなら大丈夫だよ、お似合いカップルだもん。そうすれば私は今度こそ諦められるから―――」 曜「ごめん」 嗄れかけていた梨子ちゃんの声が、断たれる。 曜「今は、告白するタイミングじゃないから」
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