- 【SS】果南 「恋にオちる」 千歌 「それは“悪夢”だよ」
42 :名無しで叶える物語(ささかまぼこ)[]:2017/12/07(木) 22:14:57.48 ID:+Re2MPj/ - 2ND-DAY 『???』 0:42
気付けばまた、私は“そこ”にいた。 いや、乱雑に積まれたブロックなどは同じだが、厳密に言えば周りの雰囲気が少し違う。 果南 「また、ここ…あれっ、なんで…」 果南 「私バーで飲んでて、梨子が突然来てそれで…」 果南 「…って、ブロックが崩れてる! は、はやく登らなきゃ!!」 昨日と同じようにブロックを動かし、階段を作る。上へ上へと登り、やっとのことで辿りついたのは出口ではなく、聖堂のような場所だった。
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43 :名無しで叶える物語(ささかまぼこ)[]:2017/12/07(木) 22:15:27.44 ID:+Re2MPj/ - ?? 「…どうやら、生き延びたらしいな」
果南 「ひぇぇっ!!?」 聖堂に辿り着き、突然話しかけられた私は悲鳴をあげた。 話しかけてきたのは人間ではなく、二足歩行をする“羊”だったのだ。 果南 「羊!?」 ?? 「羊…? そうか、俺がそう見えるか。俺にはあんたが羊に見える」 辺りを見回すと、羊はその人だけではなかった。頭を抱え悶え苦しんでいる者、ベンチに腰掛け涙を流す者…みんな羊の姿をしていた。
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44 :名無しで叶える物語(ささかまぼこ)[]:2017/12/07(木) 22:16:09.59 ID:+Re2MPj/ - ?? 「ここでは、自分以外の人間の姿は羊に見えるらしい」
果南 「…ってその声、昨日私に登り方を教えてくれた!」 ?? 「あぁ、そうだ。…名乗っておかないと、他と区別がつかないか。俺のことは高野と呼べ」 果南 「た、高野…さん? こ、ここはどこなんですか!?」 高野 「夢…だよ。お前の、そして俺のな」 果南 「夢…?」
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45 :名無しで叶える物語(ささかまぼこ)[]:2017/12/07(木) 22:16:55.76 ID:+Re2MPj/ - 高野 「ここを1度でも見たが最後、毎晩のようにここに来ることになる」
高野 「ここにいる全員が同じ運命だ。…死にたくなければ、登るしかない」 果南 「し、死ぬ!?」 高野 「あぁ。途中で落ちていく羊を見たか? あいつらはみんな死んだんだ。もし落ちれば、俺たちだって同じだ」 果南 「な、なんでこんなこと…」 高野 「さぁな、こっちが聞きたい」
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46 :名無しで叶える物語(ささかまぼこ)[]:2017/12/07(木) 22:17:41.38 ID:+Re2MPj/ - 高野 「…とにかく、死にたくなければ登り続けるしかない」
果南 「またあんなのを登るの!? …ここにずっといるんじゃダメなの?」 高野 「たしかにここは休憩所のようなものだが、ここにいると、その間は何があっても夢から覚めない。この世界から抜け出すには、とにかく上を目指すしかない」 果南 「そんな…」 高野 「準備が出来たら、奥の聖堂に行け。そうすれば次のステージに案内される」 果南 「上に行けば、助かるんですか!?」 高野 「確証はないが、それしか希望がない。今はただ、信じて上を目指すしかないんだ」
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47 :名無しで叶える物語(ささかまぼこ)[]:2017/12/07(木) 22:18:19.63 ID:+Re2MPj/ - 高野 「…じゃ、俺は先に行くからな!」
果南 「そ、そんな…! もっと色々教えてよ!」 高野 「生きてたら、またどこかで会おう!」 果南 「そ、そんな…!」 果南 「……私も、上に行かなきゃいけないの?」
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48 :名無しで叶える物語(ささかまぼこ)[]:2017/12/07(木) 22:19:04.54 ID:+Re2MPj/ - 恐る恐る、奥へと進む。
聖堂のような建物の中に入ると、人ひとりがやっと入れるような空間に、椅子がひとつだけ置かれていた。 椅子に腰掛けると、どこからともなく少年のような声が聞こえてきた。 少年 『…ようこそ、告解の部屋へ。また新しい子羊が来たみたいだね』 果南 「だ、誰っ!?」 少年 『管理者…といったところかな。この“悪夢の世界”のね』 少年 『あんた達は選ばれたんだ。近々皆、死ぬことになる』 果南 「はぁっ!?」 少年 『でも殺す前に、あんたの命の価値を確かめたい。だから質問に答えてもらうよ』
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49 :名無しで叶える物語(ささかまぼこ)[]:2017/12/07(木) 22:20:04.90 ID:+Re2MPj/ - 【第1問】です。
結婚とは人生の始まりですか? それとも、終わりですか? 1.始まり 2.終わり 安価 >>51
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52 :名無しで叶える物語(ささかまぼこ)[]:2017/12/07(木) 22:30:34.00 ID:+Re2MPj/ - 果南 「こっち…かな」
【結婚は人生の始まりだ】 少年 『なるほど、そっちを選ぶんだ』 果南 「なんの意味があるのさ、これ」 少年 『さっきも言ったろ? あんたの命の価値を確かめているのさ』 少年 『……さぁ、そろそろ行こうか』 果南 「ま、待って! まだ心の準備が!」 少年 『あとがつっかえるだろ。さ、行くよ』 部屋全体が揺れる。 信じられないことだが、今私がいる部屋自体がロケットのように飛び、次のステージに案内されているらしい。 果南 (こんなの…耐えらんないよっ…!) ーーーーーー ーーーー ーー
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53 :名無しで叶える物語(ささかまぼこ)[]:2017/12/07(木) 22:31:13.47 ID:+Re2MPj/ - 果南 (着いた…)
ブロックの上に進んだ時、また地響きのような音が下から聞こえた。 現れたのは、昨日と同じ手。しかし、以前よりも確実に私に迫ってきていた。 果南 「うわぁっ!!? は、早く逃げないと!」 ーーーーーー ーーーー ーー
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- 【SS】果南 「恋にオちる」 千歌 「それは“悪夢”だよ」
54 :名無しで叶える物語(ささかまぼこ)[]:2017/12/07(木) 22:33:15.91 ID:+Re2MPj/ - 果南 「はぁっ…はぁっ…! と、扉だ!」
やっとの思いで扉にたどり着き、ドアノブに手をかける。 途端、私を追いかけ続けていた手が突然伸び、私の目の前まで迫ってきた。 果南 「うっ、うわぁぁっ!!」 扉を急いで開くと、奥から昨日と同じように、白い光が溢れ出す。 その光に照らされた巨大な手は徐々に石化し、バラバラに砕け散って言った。 果南 「た、助かったって…こと? やった!」 扉の奥に逃げ込み、二度と来たくないという思いを込めて、力強く扉を閉めた。 ーーーーーー ーーーー ーー
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55 :名無しで叶える物語(ささかまぼこ)[]:2017/12/07(木) 22:34:50.38 ID:+Re2MPj/ - 【第2階層】
Great escape!! You survived.
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56 :名無しで叶える物語(ささかまぼこ)[]:2017/12/07(木) 22:35:32.66 ID:+Re2MPj/ - 2ND-DAY 果南の部屋 9:17
果南 「…………はっ!!」 …まただ。布団の上で全身に汗をかいている。 何か、すごい悪夢を見ていた気がするが、何も覚えていない。 果南 (…あれ、なんで私、裸で寝てるんだ?) 服を着ようと起き上がると、左腕がなにかに引っかかった。…いや、なにかに“掴まれて”いる。
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57 :名無しで叶える物語(ささかまぼこ)[]:2017/12/07(木) 22:36:21.76 ID:+Re2MPj/ - 果南 (えっ…隣に誰か…いる?)
布団をめくって現れたその人物に、心臓が口から飛び出るような感覚を覚えた。 …自分と同じく全裸になった梨子が、静かに寝息を立てていた。 果南 (……嘘でしょ……) ーーーーーー ーーーー ーー
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58 :名無しで叶える物語(ささかまぼこ)[]:2017/12/07(木) 22:37:11.87 ID:+Re2MPj/ - 1ST-DAY 都内のバー 23:00
果南 「今までどこで何してたの!? 心配したんだよ!?」 梨子 「ごめんなさい…しばらく忙しくて連絡取れなくて。なんか、こんだけ年数が経ってから改まって連絡するのも…」 果南 「そんなの気にしなくていいのに…。ほら、座って座って」 梨子 「はい。失礼します」 既にカクテル・グラスを持っていた梨子を向かいに座らせる。 約10年ぶりに再開する梨子は、あの頃よりも随分大人びて見えた。 果南 「あっ、みんなも呼ぼうか。みんな喜ぶよ」 梨子 「あっ…待って!」ガシッ! 携帯を持った手を、梨子に強く握られる。 お酒が回っているからなのか、梨子の手がとても冷たく感じた。
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59 :名無しで叶える物語(ささかまぼこ)[]:2017/12/07(木) 22:38:14.41 ID:+Re2MPj/ - 果南 「梨子…?」
梨子 「今日ここに来たのは、果南さんとお話がしたくて…」 果南 「私と?」 梨子 「はい。…再開するなら、果南さんと一番最初に会うって決めてたんです」 果南 「な、なんで私と? 曜とか千歌の方が…」 梨子 「いえ…。果南さんがいいんです」 梨子は顔を火照らせ、俯く。 梨子の手は、私の腕から離そうとしなかった。 果南 (…綺麗な手……。爪の形も、すごく…)
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60 :名無しで叶える物語(ささかまぼこ)[]:2017/12/07(木) 22:39:08.26 ID:+Re2MPj/ - 梨子 「…隣、座ってもいいですか」
果南 「……えっ、あぁ、うん、もちろん!」 果南 (ダメダメ、何考えてんの私は。私には千歌が…) 梨子 「…なんだか疲れてます? さっきも机にひとり突っ伏してましたし」 果南 「あぁ…ううん、大丈夫。ちょっと仕事が忙しくてね」 梨子 「そっか…果南さんもすっかり大人になっちゃったんですね」 果南 「そんな、梨子だって十分大人っぽく…」 梨子 「私なんてまだ子供です。果南さんに比べれば」
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61 :名無しで叶える物語(ささかまぼこ)[]:2017/12/07(木) 22:39:59.50 ID:+Re2MPj/ - 梨子 「…果南さんの唇、すごく綺麗」
果南 「な、何言い出すのさ急に」 梨子 「果南さんは大人だから、私が知らないことも、いっぱい知ってるんですよね」 梨子 「私が経験したことないことも、果南さんならいっぱい経験してるんですよね」 果南 「わ、私はそんな……むぅっ!?」 突然、唇が塞がれた。梨子の唇に。 梨子のイメージカラーと同じピンク色をしたカクテルに濡らされた梨子の唇が、私の唇に、歯に、舌に触れる。 時々漏れる梨子の吐息が口の中に流れ込み、私の心臓に直接届くような感覚を覚えた。 梨子 「……ぷはっ」 果南 「な、何を急に…!」
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62 :名無しで叶える物語(ささかまぼこ)[]:2017/12/07(木) 22:41:10.35 ID:+Re2MPj/ - 梨子 「私、ずぅっと果南さんとこうしたかったんです」
果南 「り、梨子…」 梨子 「やっと、二人きりになれましたね」 果南 「いや、ほら、周りに他のお客さんとかいるし……むぅっ!?」 梨子 「……んっ………はぁっ…。私には、果南さんしか見えませんけど?」 果南 「な、何言って…!」 梨子が唇についた私の唾液の味を確かめるように、舌で自分の唇を舐める。 その仕草に、私はただ、釘付けになっていた。 ーーーーーー ーーーー ーー
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63 :名無しで叶える物語(ささかまぼこ)[]:2017/12/07(木) 22:42:12.01 ID:+Re2MPj/ - 2ND-DAY 果南の部屋 9:18
果南 「あの後、確かしばらく飲んで……」 果南 「だめだ、覚えてない…」 梨子 「ふぁ……おはようございます、果南さん」 果南 「…ッ!! り、梨子…!」 梨子 「…ふふっ、昨日は暗くてよく見えなかったですけど、やっぱり果南さんの肌、綺麗ですね」 果南 「き、昨日…暗くて……!?」 梨子 「…覚えてないんですか? 昨夜のこと」 果南 「いや…曖昧というか…なんというか…」
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64 :名無しで叶える物語(ささかまぼこ)[]:2017/12/07(木) 22:43:18.60 ID:+Re2MPj/ - 梨子 「ふふっ、慌ててる果南さん、可愛い」
果南 「か、可愛い…っ!?」 梨子 「…って、あぁ…もうこんな時間。行かないと」 梨子 「ごめんなさい、急に押しかけたのに。予定があるんで、今日は失礼しますね」 果南 「あっ、うん…」 梨子 「…じゃ、また今夜」 私の言葉を待たず、梨子は私の家をあとにした。残された私はというと、ただベッドの上で千歌の絶望し泣きじゃくる姿を思い浮かべては冷や汗を流していた。 果南 「事故…だよね。そうだよ、これは事故…事故なんだから…!! 落ち着け松浦果南!!」 ーーーーーー ーーーー ーー
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65 :名無しで叶える物語(ささかまぼこ)[]:2017/12/07(木) 22:44:30.64 ID:+Re2MPj/ - 戸惑えば戸惑うほど、
それは愛してるということなの。 ―アリス・ウォーカー
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66 :名無しで叶える物語(ささかまぼこ)[]:2017/12/07(木) 22:46:04.67 ID:+Re2MPj/ - 本日はここまでとさせていただきます
安価協力ありがとうございました 次回の更新も明日を予定しております
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