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440 :名無しで叶える物語(たこやき)@無断転載は禁止[sage]:2017/02/24(金) 07:09:02.88 ID:x/PCmNrC - お前の勝ちだ
乙
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1 :@無断転載は禁止[]:2017/02/24(金) 18:45:23.30 ID:x/PCmNrC - 建て直し
加入前の絵里のお話 アニメ設定準拠 SIDとの設定の食い違いはご愛嬌
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2 :@無断転載は禁止[]:2017/02/24(金) 18:46:58.49 ID:x/PCmNrC - 私は賢い。
自分でいうのもなんだけど勉強はできるし、普通の人よりも物事を深く考えてる自信があるし、ついでにいうと容姿も淡麗だ。 私は他の人よりも周りのことがよく見える。 そんな自信があったから生徒会長にも立候補した。 私なら他のどの生徒よりも音ノ木坂をよくできると思った。 生徒会長として大勢の前で話すのにも慣れきった頃、突然廃校の知らせが来た。 本当に突然で驚いたけど、私にも学校に対する愛着や思い入れがある。 私が阻止しなくちゃいけない。 私なら絶対阻止できるとその時は思った。
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3 :@無断転載は禁止[]:2017/02/24(金) 18:48:03.64 ID:x/PCmNrC - 希「廃校を止めたい?」
長い付き合いで現副会長の希に私の決意を話した。 入学した当初、私は他人と深く接することにあまりメリットを感じず、他の人を突き放していた。 でも希はそんな私に粘り強くアプローチをかけてきた。 今では希と一緒にいることを受けいれているし、正直彼女といると居心地がいい 希「うーん、うちも廃校は嫌やけど、難しいんとちゃうかな・・」 と弱気な希を奮い立たせて、廃校を阻止する方法について話し合った。 でも建設的な案は出なかった。 正確にはいくつか案は出たけど、吟味していくうちに実現の難しさやリスクを考えてボツにした、主に私が。
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4 :@無断転載は禁止[]:2017/02/24(金) 18:49:01.02 ID:x/PCmNrC - 希と別れて家に帰ってからも私は考え続けた。
決意は揺るがない。 私ならできると信じて疑わなかった。 ただ伝統があるとはいえ、とりたてて特徴のないこの学校を廃校から救うことのできる現実的な案は私から出てこなかった。
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5 :@無断転載は禁止[]:2017/02/24(金) 18:51:06.37 ID:x/PCmNrC - それから痺れを切らした私は考えがまとまらないまま、理事長に廃校阻止の活動をすすめる旨を伝えにいった。
けれども、それは理事長に完全に突っぱねられた。 『思いつきで行動しても状況は変わらない。』 理事長にこう言われて私はつい感情的になってしまった。 ・・それは私も同じ考えだったからだ。 でもそれを認めてしまうともう動けなくなる。 そんなことは認められない。 私は決めたのだ。 私がこの学校を救うと。 それでも良い考えが浮かばず私がくすぶっている中、彼女が現れた。
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7 :@無断転載は禁止[]:2017/02/24(金) 18:52:02.42 ID:x/PCmNrC - 彼女の名前は高坂穂乃果。
彼女は私と同じく廃校を阻止するために流行りのスクールアイドルを始めるというのだ。 そんな突飛な案認める訳にはいかない。 私はスクールアイドルというものをよく知らないけど、流行っているからといって今から一から始めたところで上手くいく訳がない。 現実的に考えて不可能だ。 賢い私には分かるのだ。 私は理事長に言われたのと同じ言葉で彼女を冷たくあしらった。 普通の人ならこれで諦めるはずだ。
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9 :@無断転載は禁止[]:2017/02/24(金) 18:53:16.27 ID:x/PCmNrC - ・・彼女は普通ではなかった。
彼女は新入生歓迎会の際にライブを行うために、体育館の使用許可を求めてきた。 私には何が彼女を突き動かすのか理解できなかった。 普通に考えたらできるはずがない。 まず徒労に終わるだろうことに熱を入れられるのは何故だろうか。 彼女が無鉄砲で賢くないからだろうか。
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10 :@無断転載は禁止[]:2017/02/24(金) 18:54:18.34 ID:x/PCmNrC - 希に口を出されたこともあって、彼女たちに体育館の使用許可を与えることになったが、私は逆にいい機会だと思った。
部活動の仮入部期間であることに加えて、彼女たちには知名度が全くない。 今から宣伝したところで人が集まるわけがない。 これで彼女たちも現実を学ぶだろう。 ただなんとなく予感があった・・。 彼女たちは・・彼女は諦めないんじゃないだろうか。 それはいつもの私らしく論理的に説明できるものではなかったけど、彼女は決して諦めない、そんな気がして仕方なかった
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12 :@無断転載は禁止[]:2017/02/24(金) 18:54:59.61 ID:x/PCmNrC - 私の考え通り、ライブにはほとんどといって言っていいほど人は集まらなかった。
・・ただ私の予感通り彼女は諦めなかった。 彼女たちは踊った。 踊りきった。 こんな状況の中でも
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14 :@無断転載は禁止[]:2017/02/24(金) 18:56:11.39 ID:x/PCmNrC - 彼女たちの踊りを見たとき、なんとなく胸がざわついて、昔バレエをしていた時のことを思い出した。
バレエは楽しくて仕方なかった。 いくつかのコンクールでも表彰された。 練習にも打ち込み、どんどん自分が上達していくのも感じた。 でもある時賢い私は気付いてしまった。 自分のバレエの才能があと一歩足りていないことに。 その世界で1番が取れないことに。 それでバレエは辞めてしまった。 1番が取れないならそれにメリットはないはずだから。
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15 :@無断転載は禁止[]:2017/02/24(金) 18:57:12.61 ID:x/PCmNrC - 私の判断は間違ってなかったはずだ。
・・そのはずなのに彼女たちの踊りを見ると胸がざわついて、モヤモヤする。 まるで私が間違っていたと面と向かって、言われているように感じる。 耐えきれなくなって、私はステージ近くまで行って彼女たちに言い放った。 『これ以上続けても意味がない』と 彼女は真っ直ぐな目で 『やりたいから続ける』 そう返してきた。 なぜか私はそれ以上言葉を紡ぐことができなかった。
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16 :@無断転載は禁止[]:2017/02/24(金) 18:57:58.62 ID:x/PCmNrC - その日、なんとなくおさめておいたライブの動画を見返す度に、胸がモヤモヤした。
胸のざわつきを止めたくて、動画をインターネットにアップしてみた。 素人の踊りだと、見るに堪えないと、この娘たちは間違ってると一蹴して欲しかった。 けれどもそこには応援のコメントばかりが返ってきた。
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17 :@無断転載は禁止[]:2017/02/24(金) 18:58:50.85 ID:x/PCmNrC - それからどうしても負けたくなかった私は理事長に彼女たちの活動の停止と生徒会の廃校の阻止の活動のお願いをしに行ったけど、取り合ってもらえなかった。
この頃には私は一体何をすればいいのか、何がしたいのかよく分からなくなっていた。 賢い私にも分からなかった。
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18 :@無断転載は禁止[]:2017/02/24(金) 18:59:42.12 ID:x/PCmNrC - 次に彼女たちに会ったとき、メンバーは6人に増えていた。
私を否定する人が増えたようでなんだか気分は良くなかった。 そこで私はアイドル研究部の話を持ち出した。 私はどうしても彼女たちを認めたくない。
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19 :@無断転載は禁止[]:2017/02/24(金) 19:00:27.14 ID:x/PCmNrC - それでも彼女たちはアイドル研究部の部長を引き連れて再び戻ってきた。
次々増える。 しぶといにも程がある。 そうしてメンバーが増えて新しい曲を歌い踊る彼女たちを見ると、胸のざわつきはさらに大きくなる。 私は負のスパイラルに閉じ込められているようだった。
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20 :@無断転載は禁止[]:2017/02/24(金) 19:01:10.74 ID:x/PCmNrC - 『あの娘たちに力をかしてあげれば?』
希にそう言われた。 そんなことはできない。 彼女たちを認めてしまえば、賢い私が間違っていたと認めることになる。 私のこれまでの生き方を否定することになる。
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21 :@無断転載は禁止[]:2017/02/24(金) 19:02:02.10 ID:x/PCmNrC - 私とは正反対に彼女たちの活動は順調なようで、お次はラブライブへのエントリーを申し出てきた。
理事長はすぐに了承した。 生徒会の廃校阻止への活動は認めないのに、彼女たちは認めるなんて・・一体私と彼女たちで何が違うのか、私には理解できなかった。 彼女たちと比べて私はスタートラインにも立てていないことに悔しさでいっぱいになった。 そして、この頃には廃校を阻止したいという思いよりも彼女たちに負けたくない、彼女たちを認めたくない、という思いのほうが大きくなっていたような気もする。
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22 :@無断転載は禁止[]:2017/02/24(金) 19:02:53.45 ID:x/PCmNrC - 亜里沙「お姉ちゃんはさ、賢いから時々考えすぎちゃうんだよね・・」
昔、妹にこう言われたことがある。 確かに最近の私の中は色んな考えが回りに巡ってグチャグチャだ。 家の中でもずっと難しい顔をしてたようにも思う。
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23 :@無断転載は禁止[]:2017/02/24(金) 19:06:15.98 ID:x/PCmNrC - そんな中、理事長から通達があった。
今度のオープンキャンパスの結果次第で廃校が決定するというのだ。 私は奮い立った。 私が廃校を阻止してみせる。 ・・それだけが彼女たちを認めないでいれる唯一の方法だと感じた。
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24 :@無断転載は禁止[]:2017/02/24(金) 19:07:05.07 ID:x/PCmNrC - だけどやっぱり私の中からは何も出て来なかった。
生徒会で意見を募集しても、建設的な案は何一つ出なかった。 それでも必死に考えた。 彼女たちに負けないために。 彼女たちを認めないために。
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25 :@無断転載は禁止[]:2017/02/24(金) 19:08:06.69 ID:x/PCmNrC - 決定打は妹の一言だった。
『これがお姉ちゃんのやりたいこと?』 私は気付いた。 気付いてしまった。 本当はずっと前から分かっていた。 私が彼女たちを認めたくない理由。 胸がモヤモヤする理由。 それは彼女たちがやりたいことをやって、楽しんでいるからだ。
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26 :@無断転載は禁止[]:2017/02/24(金) 19:09:05.61 ID:x/PCmNrC - 賢い私はこれまでメリットやリスク、周りの状況を考えて、何かしたいことがあっても目を背けてきた。
そうやって理由をつけて、素直にやりたいことができなかった。 でも彼女たちはそんなことは考えていない。 賢くない。 全力でしたいことをして、名一杯それを楽しんでいる。 それは賢い私にはできなかったことで、私はそんな彼女たちに嫉妬していたのだ。 そして、本当は・・。
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27 :@無断転載は禁止[]:2017/02/24(金) 19:10:10.11 ID:x/PCmNrC - 私は自分の気持ちを自覚して、何もできていない、何もできない自分を惨めに感じるようになった。
そんな私に彼女たちはダンスの指導をお願いしてきた。 私は自分勝手に嫉妬して、彼女たちを拒んできた罪悪感からその願いを了承した。 でもそこでも素直じゃない賢い私が顔を出した。
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28 :@無断転載は禁止[]:2017/02/24(金) 19:10:51.08 ID:x/PCmNrC - 練習の指導として、彼女たちに厳しく当たってしまった。
他にもやりようはあるのに。 本当はもう彼女たちを認めているのに。 それでも練習の終わりに、彼女たちは感謝の言葉を述べてきた。 それも私にはできないことで、私は更に惨めさを噛み締めた。
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30 :@無断転載は禁止[]:2017/02/24(金) 19:11:41.19 ID:x/PCmNrC - 私の心はもう完全に彼女たちを認めていた。
私は彼女たちが羨ましい。 そして、本当は・・本当は私もそっち側へ行きたい。 私も彼女たちと一緒になって、踊りたい。 彼女たちと夢に向かって、一直線に飛んでいきたい。 自分のしたいことを目一杯楽しみたい。
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31 :@無断転載は禁止[]:2017/02/24(金) 19:12:09.24 ID:x/PCmNrC - でも賢い私は今更そちらには行けない。
だって、それは賢くないもの・・。
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32 :@無断転載は禁止[]:2017/02/24(金) 19:12:44.34 ID:x/PCmNrC - 今までの自分を急に変えることは難しい。
少なくとも私にはできない。 希が私の本当の気持ちを理解して、助言してくれても私にはもうどうすることもできなかった。
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33 :@無断転載は禁止[]:2017/02/24(金) 19:16:17.90 ID:x/PCmNrC - そうして、動けなくなった私に彼女は、彼女たちは手を差し伸べてくれた。
その手を受け取ることは今までの自分を捨てることを意味するように思えたけど、私は何故かその手を取ることができた。
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34 :@無断転載は禁止[]:2017/02/24(金) 19:16:56.46 ID:x/PCmNrC - 手を取った瞬間、救われた気がした。
それは私じゃどうやっても剥がせなかった仮面を引き剥がされたような感覚で・・。
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35 :@無断転載は禁止[]:2017/02/24(金) 19:17:57.20 ID:x/PCmNrC - それから迎えたオープンキャンパスでの私の初めてのライブ。
・・そこには私が今まで見たことがない景色があった。 損か得かなんて考えず、失敗したときのことなんて頭に入れず、全力で踊って、全力で楽しんだ、その瞬間を。 ライブが終わった後も自然と笑顔が滲み出てきた。 いつの間にか賢い私はいなくなっていた。
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36 :@無断転載は禁止[]:2017/02/24(金) 19:19:07.60 ID:x/PCmNrC - 賢さは生きる上で重要だ。
物事を深く考える力や周囲の状況を考慮する力は決して無駄にならない。 ・・でも時には賢さだけでは始まらないこともある。 どうにもならないことがある。 たとえ荒唐無稽で無謀な挑戦だったとしても、後先考えず、自分のやりたいことを信じて、突き進む。 それが不可能を可能にかえる鍵になる。 彼女たちからそんなことを学んだ気がする。 ・・そして、これからは少しかしこくない私になってみよう。 彼女たちと触れ合って、私はそう思えた。
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37 :@無断転載は禁止[]:2017/02/24(金) 19:19:46.53 ID:x/PCmNrC - 完結
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