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209 :@無断転載は禁止[]:2016/05/29(日) 09:06:25.40 ID:IKap7prb - あれは、いつの頃だったか――
しとしとと、雨が降っていたことを覚えています。 道場の中で、黙々と木刀を振る私―― 海未「・・・・・・二百九十九ッ・・・・・・三百ッッ」 そこまで数え、ふうう、と大きく息をつく。 汗だくのまま――木刀を握る、手を見つめる。 海未「・・・・・・・・・・・・」ハァハァ この頃の私は――人並みの表現なら、いわゆるスランプに陥っていて。 自分の思い描く理想の動きが出来ず、試合で苦戦することも多く。 思い悩んでいた時期であったと思います。 海未(これが――穂乃果なら) 海未(涼しい顔をして――乗り切ってしまうのでしょうか) 一瞬、心の底に澱のような感情が湧きかけ、私は頭を振る。 海未(――駄目です。今の私のこの状況は、私自身が未熟であるが故) 海未(それを――大切な、穂乃果相手に――僅かとはいえ――) ――嫉妬、などと。
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210 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@無断転載は禁止[sage]:2016/05/29(日) 09:07:36.27 ID:IKap7prb - 海未父「――精が出るな」
その時、道場に静かに入ってきたのは―― 海未「――父様」 稽古中は、常に厳しい表情を崩さない父が――この時ばかりは、柔和な表情を浮かべていて。 今にして思えば、悩む娘のことを、気遣っていてくれたのかもしれません。 海未父「しかし――迷いがある」 海未「・・・・・・・・・・・・!」 海未父「時に、ひたすら我を忘れて稽古に励むことで、道が開かれることもあるが――」 海未父「迷いがあるまま、ただ我武者羅に剣を振るだけでは、真の答には辿り着けんぞ」 海未「・・・・・・・・・・・・」 父の、静かながらも的をえた指摘が、私の心にちくりと刺さる気がして。 海未「その、答がわからないから――苦悩しています」 思わず、私の口から弱音が漏れる。 海未「父様――“剣の道”を極めるとは、一体どういうことでしょうか」 海未「私がこの先、剣を振り続けて、果たして辿り着けるものでしょうか」 顔を伏せ、父の顔は見ずに、堰をきったように私は言葉を漏らす。
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211 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@無断転載は禁止[sage]:2016/05/29(日) 09:08:24.53 ID:IKap7prb - 海未「わからないのです。不安になるのです――こうして、剣を振り続けていても」
海未「剣を握っていても、どんどんその剣が、私の言うことを聞かなくなっていくような――」 じわ、と、思わず、目の奥が熱くなる。 海未「私には――例えば穂乃果のような、突出した才能はありません」 海未「いけないと思いつつも、考えてしまうのです」 海未「これが穂乃果なら、私などとっくに超えて、その先に行ってしまうのではないかと――」 海未父「――海未」 静かで。それでいて、大木を思わせる厳かな父の声が―― 私の言葉を、遮る。 海未父「剣が無くては――“道”は、極められんか」
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212 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@無断転載は禁止[sage]:2016/05/29(日) 09:09:06.72 ID:IKap7prb - 私は、思わず顔を上げました。
そこにあったのは――口元に、優しい微笑を浮かべる、父の顔。 海未父「“剣”とは――そんな、不便なものか」 海未「え――?」 父は、淡々と続ける。 海未父「確かに、穂乃果ちゃんも凄かろう」 海未父「しかし――海未。お前が穂乃果ちゃんになる必要は無い」 海未父「追いつこう、追い抜こう、などと気負わずに。お前は、お前なのだから」 海未「しかし――」
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213 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@無断転載は禁止[sage]:2016/05/29(日) 09:10:03.93 ID:IKap7prb - 父は、木刀のひと振りを手に取り、刀身を見つめる。
海未父「――海未。お前が信じ続けてきた“剣”とは――」 海未父「“剣の道”とは、そんなにも頼りなく、不便なものなのか」 海未「それは・・・・・・」 海未父「剣を振るい、相手を打ち倒す。それもまた剣だろう」 海未父「しかし、瑣末な技術のみに囚われ、相手を打ち倒すことだけが――“剣”の全てなのか?」 海未「・・・・・・・・・・・・」 海未父「もしも、“我”も相手も、全てを受け入れる境地に達することができたなら――」 海未父「そこには最早、剣すらも不要」 海未「剣すらも・・・・・・?」 海未父「――海未」 再び、穏やかな眼差しで、私を見る父。
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214 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@無断転載は禁止[sage]:2016/05/29(日) 09:10:52.48 ID:IKap7prb - 海未父「信じてみなさい。お前が信じてきた“剣”を」
海未父「信じてみなさい。他ならぬ、お前自身を――園田海未を」 海未父「穂乃果ちゃんにも、他の誰にもない――」 海未父「“お前だけの剣”が、必ずあるはずだ」 海未「父様――・・・・・・」 さらさらと。 雨の落ちる音だけが、広い道場に聞こえていました。
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215 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@無断転載は禁止[sage]:2016/05/29(日) 09:12:13.08 ID:IKap7prb - …………
…… 満身創痍の海未は―― その、傷だらけの体とは裏腹。 しっかりと、顔を上げ――目の前の穂乃果を、見つめていた。 自然と、心中に浮かんだのは――あの、雨の日の記憶。 海未(父様――・・・・・・) その時の海未は、父の言葉を―― “穂乃果の影を追うのではなく、自分の個性を信じて道に打ち込むべし”と解釈し。 スランプを脱することが出来た。 それもまた、真実であろう。 しかし―― ――“我”も相手も、全てを受け入れる境地に達することができたなら―― ――そこには最早、剣すらも不要。 その言葉の意味は、わからないままだった。 だが――今。 海未(ようやく――わかりかけてきた気がします) 不意に、海未は――戦いの最中だというのに。 ふっ、と、天を仰ぐ。 海未(真の、“無刀”――)
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216 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@無断転載は禁止[sage]:2016/05/29(日) 09:13:14.53 ID:IKap7prb - にこ「海未・・・・・・どうしちゃったのよ? なんか急に、ボーっとしだして・・・・・・」
にこ「・・・・・・はっ!? まさか、さっきのスープレックスの打ち所が悪くて・・・・・・!?」 希「んな訳あらへん――と、思うけれど・・・・・・」 希(――気のせい? さっきまでの、むき出しの闘志――“殺気”と言ってもいい――) 希(それが、収まってるような――?) 絵里「海未・・・・・・」 真姫「な、なんだか・・・・・・今の、海未・・・・・・」 真姫「隙だらけのような・・・・・・だけど、一分の隙も無いような・・・・・・」
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218 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@無断転載は禁止[sage]:2016/05/29(日) 09:14:20.78 ID:IKap7prb - 穂乃果(あの、“感覚”――)
膝をつき、頬を冷たい汗が伝うのを感じながら。 穂乃果は、先刻の“感覚”を思い起こす。 穂乃果(信じられないけれど――間違いない) 軽く深呼吸し、ゆっくりと身を起こす。 穂乃果(また、“あれ”を受けたら――まずい) 天を仰ぎ―― 一見、隙だらけに見える海未。 穂乃果(やられる前に、やらなきゃ――!) そんな海未に対し、再び理事長のボクシングの構えを取り、 ダッ 一瞬で海未との間合を詰めた――その刹那。 海未が、穂乃果を見つめる。 その、琥珀色の瞳と、視線が重なった―― 瞬間。 ザシュッ 穂乃果「ッッ!!?」 穂乃果の体が崩れ。 向かっていった海未の真横を、素通りするように。 地面に、崩れ落ちる。 ドサッ 穂乃果「・・・・・・・・・・・・ッッ!!」 苦痛を、噛み殺したかのような表情で。 地面に、倒れこむ穂乃果。
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219 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@無断転載は禁止[sage]:2016/05/29(日) 09:15:41.09 ID:IKap7prb - 『たッ・・・・・・倒れたァァ〜〜〜〜ッッ!!』
ワアアアッ 『高坂穂乃果、初めてのダウンッッ!! し、しかし・・・・・・ッッ』 『わからないッッ 我々の目には、何も見えませんッッ』 『ただ立ち尽くす園田海未の横に倒れている高坂穂乃果ッッ 一体何が起きている、この最終決戦!!』 オオオオッ 穂乃果「う・・・・・・み、ちゃん・・・・・・ッッ」 息を切らせながら―― 穂乃果が、地面に手をつき、ゆっくりと身を起こす。 その横で、振り返らず、ただ立ち尽くしている海未。 穂乃果「すごいよ、海未ちゃん・・・・・・こんなことがッ・・・・・・できる、なんて・・・・・・ッッ」 海未「――貴方なら」 ぽつりと、呟き―― 振り返り、身を起こそうとしている穂乃果と、目を合わせた海未。 海未「“受け取ってくれる”と――信じていました。穂乃果」 穂乃果「・・・・・・・・・・・・ッッ」
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220 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@無断転載は禁止[sage]:2016/05/29(日) 09:16:29.04 ID:IKap7prb - にこ「な・・・・・・何が、起こってるっていうの・・・・・・!?」
困惑しながらも――ただならぬものを感じ取るにこ。 その横で―― 希「エリチ――まさか、海未ちゃん」 つつ、と、汗を流す希。 絵里「ええ――おそらく、そうだわ」 場内を凝視したまま、答える絵里。 絵里「海未は――!」 穂乃果「“斬った”んだね――海未ちゃん」 なんとか、立ち上がった穂乃果が――海未に問いかける。 答える代わりに、静かに向き直り、穂乃果と正対する海未。 その表情は――穏やか。 穂乃果「既に――“三度”」 海未「ええ――その通りです」 ザワザワ
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221 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@無断転載は禁止[sage]:2016/05/29(日) 09:17:49.10 ID:IKap7prb - 海未「“一の太刀”――“八文字”」
海未「頭から胴体にかけて、幹竹割りに。逆八文字、左右に分かれることから――」 穂乃果(やっぱり・・・・・・ッッ) 海未「“二の太刀”――“大袈裟”」 海未「左肩から、反対側の脇腹にかけて――」 穂乃果(合ってる・・・・・・ッッ) じんわりと、穂乃果の全身に、汗がまとわりつく。 海未「そして、“三の太刀”――“喉”」 海未「がら空きだったので――すみません」 穂乃果「・・・・・・・・・・・・ッッ!!」 英玲奈「ま・・・・・・まさか・・・・・・ッ」 あんじゅ「園田海未は・・・・・・ッッ」 ツバサ「ええ――それしか、考えられない」 場内を凝視したまま、ツバサが呟く。 ツバサ「“イメージ”だけで――高坂穂乃果を、斬った」
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222 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@無断転載は禁止[sage]:2016/05/29(日) 09:19:17.50 ID:IKap7prb - 凛「そ、そんな!? そんな、魔法みたいなこと・・・・・・ッッ」
観客席の中の凛が、花陽の言葉に、思わず立ち上がる。 花陽「でッ・・・・・・でも、そうとしか考えられないよ」 花陽の表情も――驚愕で、固まっている。 花陽「海未ちゃんは・・・・・・ッッ」 絵里「“穂乃果を斬る”という――リアルなイメージ」 絵里「それを、穂乃果の意識に強烈に叩きつけて――」 希「イメージだけで――穂乃果ちゃんを、斬った」 希「強烈なイメージを叩きつけられた穂乃果ちゃんは――その“ダメージ”を、リアルに感じてもうた」 にこ「そッ・・・・・・そんな・・・・・・マンガじゃないのよッ!?」 なおも信じられず、にこが声を上げる。 にこ「マンガならよく見るわよ、達人がイメージだけで相手を攻撃するとか!!」 にこ「でも、そんなことが現実に出来るなんて・・・・・・ッッ」 真姫「いえ――確かに、信じがたいけど――ありえない話じゃないかもしれない」 と、意外に落ち着いた様子の真姫が、口元に手を当てて語る。 真姫「――“レオン・C・フリードマン”って、知ってる?」
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223 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@無断転載は禁止[sage]:2016/05/29(日) 09:20:50.38 ID:IKap7prb - ――2004年。
新進気鋭であった心理学者、レオン・C・フリードマンが発表した1本の論文は、当時の学会に大きな衝撃をもたらした。 彼は、自らの論文の中でこう語っている。 『人は、意識のみで人を殺しうる』――と。 彼は、年齢・性別・生い立ちもバラバラな20名の男女を対象に、ある実験を行った。 全くの他人が、特定の感情を持って被験者を見た場合、被験者の脳波がどのような反応を示すかを測定したのである。 特に何も考えずに被験者を見た場合――被験者の脳波に、特異な変化は見られない。 しかし、“愛情”を強くイメージして被験者を見ると、見られた被験者の脳波は穏やかとなり―― 反対に、被験者に危害を加えるような、“悪意”を強くイメージして見つめられた被験者の脳は―― 実際に、身体を傷つけられた時に発せられるものと、極めて酷似した電気信号を発したというのである。 被験者の中には、発汗、動悸といった、極端な反応を見せた例もあった。 人の“意識”が、全くの他人になんらかの作用を及ぼすということが、科学的に証明された瞬間であった。
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224 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@無断転載は禁止[sage]:2016/05/29(日) 09:22:46.15 ID:IKap7prb - 真姫「――勿論、様々な要因が重なり合った結果だと思うわ」
真姫「相手からの視線、相手の僅かな表情の変化――」 真姫「その中でも、特に大きな要因と考えられているのが――“準静電界”」 にこ「“準静電界”――?」 真姫「生物の体内では、常に微弱な電気が生じているわ。脳からの指令、臓器の活動、細胞間の伝達、全てで電気的な信号が生まれる」 真姫「そんな、体内にある微弱な電気が体の外側ににじみ出て、見えない電気のベールで全身を包み込んでいる――」 真姫「これが“準静電界”と言って、人間に限らず、生物は皆これを持っているわ」 真姫「サメやナマズのように、この“準静電界”を敏感にキャッチできる生物もいるけれど――」 真姫「人間も、それを微弱ながらキャッチできるらしいの」 絵里「人間が、電気を――?」 真姫「見てもいないのに、“気配を感じる”ってよくあるでしょ? これは、人が他人の“準静電界”をキャッチしたからなのよ」 希「つまり――視線、表情、そして体が発する電気信号――」 希「これらを通して、“意識”を――“イメージ”を、相手に伝えることは――!」 真姫「――不可能じゃない、ってことよ」
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226 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@無断転載は禁止[sage]:2016/05/29(日) 09:24:07.35 ID:IKap7prb - ツバサ「でも――当然のことながら、全ての人間が、そんな芸当が出来る訳はないわ」
あんじゅ「相手が、限りなくリアルに感じるほどのイメージを――相手にぶつけて、攻撃するなんて」 ツバサ「気が遠くなるほどの日々の鍛錬――そして、意志の力」 ツバサ「それらが、結実しなければ――・・・・・・」 英玲奈「園田海未に――それほどの力が」 ツバサ(穂乃果さんとは違う。園田海未に、もともと大きな才能があった訳じゃない) ツバサ(繰り返される日々の地味で地道な鍛錬、幾度もの挫折と再起、経験――) ツバサ(それらの積み重ねと、このトーナメントでの激闘を経て――辿り着いた境地、とでも言えばいいかしら) ぐ――と、ツバサが、拳を握る。 ツバサ(今の私に――できる? 今の園田海未と、同じことが――) 穂乃果「・・・・・・・・・・・・ッッ」 身を起こし――海未と向かい合う、穂乃果。 三度、身を斬られたあの“感覚”は、はっきりと体と脳裏に残っている。 にもかかわらず―― 目の前の海未に、殺気は、無い。 何も――無い。 ただ、穏やかな表情で、穂乃果を見つめるだけ――
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227 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@無断転載は禁止[sage]:2016/05/29(日) 09:25:15.94 ID:IKap7prb - 穂乃果(なんで――?)
穂乃果(今の、海未ちゃんは――すごく、穏やか) 穂乃果(まるで、優しく包み込む――海、みたいな――) と―― 海未「――穂乃果」 海未が――微笑む。 殺気など、なにも無い。 ただ、愛しい相手を、包み込むような――微笑。 フワッ 穂乃果「・・・・・・ッ」 穂乃果が気づいた時には―― 海未は、穂乃果を優しく抱くように。 いつの間にか、その身を、穂乃果に預けていた。 全く、殺気も何も無かったからこそ―― 気づいた時には、包み込むように、体が触れ合っていた。 次の瞬間。
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228 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@無断転載は禁止[sage]:2016/05/29(日) 09:26:30.76 ID:IKap7prb - シュバッ
穂乃果「ッッ!!?」 穂乃果の呼吸が、一瞬、止まる。 海未に、体を抱かれたまま。 また、はっきりと――身を斬られる、感覚。 穂乃果「・・・・・・・・・・・・ッッ」 海未が――手を離すと。 穂乃果の体が、その場に崩れ落ち――膝を、つく。 絵里「また――“斬った”」 にこ「穂乃果を、抱いたまま――?」 真姫「でも――変よ。強いイメージをぶつける、と言っても――」 真姫「今の、海未には――殺気は、無い。相手を傷つけるような、強い意志は――感じられない」 希「・・・・・・いや。なんとなく――わかってきたかもしれへん」 口元に手を当てた希が、呟く。
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230 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@無断転載は禁止[sage]:2016/05/29(日) 09:28:01.17 ID:IKap7prb - 希「確かに、今の海未ちゃんには――さっきまでの、むき出しの闘志――“殺気”と言ってもいい――」
希「それは、感じられへん。むしろ、真逆や」 希「愛しい誰かを、慈しむような――相手の全てを受け入れたかのような、大らかさを感じるんよ」 にこ「確かに・・・・・・」 希「まるで、抱きしめたくなるような――そんな、殺気とは真逆の“意志”やからこそ、今、穂乃果ちゃんは完全に無防備になってもうた」 絵里「でも、その後は――」 希「そうや。“攻撃”の瞬間だけ――海未ちゃんは、強い“意志”をぶつけてる」 希「むき出しの闘志を、そこら中に撒き散らすんやなく。ただ、攻撃の瞬間だけ、一点に束ねた強烈な“意志”をぶつける――」 希「――触れるもの、皆傷つけるような殺意、攻撃の塊ではなく」 希「愛しい相手を、受け入れて、包み込んで。その中で、時には厳しい意志をぶつける――」 真姫「そ、それって・・・・・・まるで・・・・・・」 絵里「普段の、穂乃果に対する海未・・・・・・そのものじゃない」
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231 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@無断転載は禁止[sage]:2016/05/29(日) 09:29:42.43 ID:IKap7prb - 理事長(これは・・・・・・まるで、普段の穂乃果ちゃんに対する、海未ちゃんの想い、そのもの・・・・・・)
理事長(海未ちゃんにとって――穂乃果ちゃんは、愛しい、とても大切な存在) 理事長(そんな穂乃果ちゃんを受け入れ、包み込み、慈しみつつ――) 理事長(時には、厳しい態度で接することもある。決して、優しいだけでも、厳しいだけでもない――当たり前の、愛情) 理事長(これは――そんな、海未ちゃんの愛情が、形になったもの――?) と――その時。 横たわることりの手を握る、理事長の手に―― ほんの僅かに、握り返される感触を感じ――思わず理事長は、ことりの顔を見る。 ことり「う・・・・・・み・・・・・・ちゃ・・・・・・」 目に入ってきたのは―― うっすらと、目蓋を開き。 息も絶え絶えに、弱々しい声で呟く――ことり。 理事長「ことり――気づいたの!?」 ことりは――僅かに、頷くと。 ことり「そう、だよ・・・・・・海未、ちゃん・・・・・・」 ことり「海未ちゃん、は・・・・・・いつもの、ままで・・・・・・」
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232 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@無断転載は禁止[sage]:2016/05/29(日) 09:30:44.54 ID:IKap7prb - 海未(そう・・・・・・答は、最初から、明らかだったのです)
海未は――穏やかな心境で。 ひとり、心中で呟く。 海未(自分も、相手も、全てを受け入れる) 海未(自分の想いを、受け入れて――そして、ありのままの穂乃果も、受け入れる) 海未(そこにあるのは――いつもの、感情) 膝を崩した、穂乃果が。 穂乃果「」ギリッ 歯を、喰いしばり―― ダンッ 地面を、踏み締める。 海未(穂乃果の才能を妬むでもなく――羨むでもなく――) 海未(ただ――受け入れる) ブンッ 地面を踏むと同時に、勢いよく身を起こした穂乃果が―― その勢いそのままに、海未の頭部目掛け、空手の後ろ回し蹴りを繰り出す。 凛「希ちゃんの蹴りッッ」 花陽「あの体勢から、一瞬で――!」
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233 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@無断転載は禁止[sage]:2016/05/29(日) 09:31:42.58 ID:IKap7prb - しかし。
フワッ 蹴りの軌道を見極めた海未は、ごく自然に、穂乃果の蹴りを避け―― トンッ また――穂乃果の体に、身を預ける。 海未(そう。例え、どんな才能にあふれていたとしても――) 海未(また、例え、才能が無かったとしても――) 海未(穂乃果は――穂乃果) 海未(才能のあるなしなど、関係ありません) 海未(私は、穂乃果の才能ではなく――“穂乃果”という人間が、好きなのですから) そして―― ザシュッ 穂乃果「ッッ!!!」 叩きつけられた、“斬撃”に―― 目を見開いた穂乃果が、天を仰いだ。 海未(今、私に――願いが、あるとしたら) 海未「ただ、今は――勝ちたい。大好きな、貴方に――」
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234 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@無断転載は禁止[sage]:2016/05/29(日) 09:33:25.54 ID:IKap7prb - 『もうッッ・・・・・・疑う余地はありませんッッ』
『我々の目には見えない攻撃がッッ・・・・・・高坂穂乃果を追い詰めているッッ!!』 オオオオッ 穂乃果「・・・・・・あ・・・・・・」 がく、と穂乃果の体から、力が抜ける。 海未に体を預けたまま、膝が崩れかける―― ――が。 グッ ――踏みこらえる。 顔を伏せたまま―― ぎり、と穂乃果が、歯を喰いしばる。 穂乃果「私、だって――」 穂乃果「負けたく、ない」 ポスッ ――と。 海未の胴を――穂乃果が、突く。 海未「――?」 ダメージは、無い。 今までの穂乃果の、怒涛の攻撃に比べると、遥かに弱々しく、頼りなく――
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235 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@無断転載は禁止[sage]:2016/05/29(日) 09:34:21.92 ID:IKap7prb - ポスッ
先程とは反対の手で――再び、突き。 ぐ、と、当たった瞬間、力は感じるが―― これも、弱々しい。 海未「穂乃果・・・・・・?」 穂乃果「海未ちゃん、は・・・・・・すごい、よ・・・・・・」 穂乃果「・・・・・・でも」 と―― 穂乃果が、顔を上げる。 穂乃果の双眸に宿るのは―― 再びの、闘志の炎。 穂乃果「穂乃果だって――負けたく、ないの」 バッ 次の瞬間、海未の上段目掛け、穂乃果が前蹴りを放つ。 咄嗟に身を引き、穂乃果と距離をとる海未。 『不意打ちの前蹴りッッ!! まだ諦めません、高坂穂乃果!!』 オオオオッ
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236 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@無断転載は禁止[sage]:2016/05/29(日) 09:35:12.59 ID:IKap7prb - 真姫「穂乃果・・・・・・ッッ」
にこ「――そりゃ、そうよね」 にっ――と、にこが、笑みを浮かべる。それは、絵里や希も同様。 絵里「・・・・・・ここまできたら」 希「とことんまで――」 ツバサ「・・・・・・やり合わなきゃね」 英玲奈「ああ」 あんじゅ「当然ね」 ツバサ「――憧れの相手だからこそ、負けたくない」 ツバサ「それこそが――ファイターの、そしてアイドルの、性(さが)」 海未「穂乃果・・・・・・」 穂乃果「・・・・・・なんでだろね。まるで、ラブライブの決勝の、直前みたい」 穂乃果「・・・・・・ううん。その時よりも、強い気持ちかも」 海未を見つめながら――ぽつぽつと、言葉をこぼす。 穂乃果「だから――!」 そして――穂乃果が、再び拳を構え、海未に向かう。 海未は、そんな穂乃果を真っ直ぐ見つめ―― シュバッ
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237 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@無断転載は禁止[sage]:2016/05/29(日) 09:36:20.85 ID:IKap7prb - 穂乃果「ッッ!!!」
“想いの刃”が、穂乃果を貫く。 ――しかし。 穂乃果「――ッッ」ギリッ 穂乃果は――止まらない。 そのまま、海未の前に、右足を踏み込み―― バッ 海未のボディ目掛け、渾身の突き。 咄嗟に身を引き、海未が回避する。 『果敢に海未に向かっていきます、高坂穂乃果ッッ!!』 オオオオッ 凛「い、今も――見えなかったけど、海未ちゃん、“斬った”んじゃ――!?」 花陽「う、うん・・・・・・たぶん、そう」 凛「でも今度は、穂乃果ちゃんが耐えたッ・・・・・・!?」 花陽「――ひとつだけ。あの、イメージの斬撃を破る方法があるよ」 花陽「それは・・・・・・ッッ」
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238 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@無断転載は禁止[sage]:2016/05/29(日) 09:37:21.02 ID:IKap7prb - ピシッ
穂乃果「うッ・・・・・・!!」 “斬られる”、穂乃果。 しかし、 穂乃果「・・・・・・ッあああああッッ!!」 叫び――海未に向かって、駆ける。 バッ 繰り出した突きを、再び避ける海未。 穂乃果「」ハァハァ 海未「貴方は――」 ぽつりと、海未が呟く。 海未「流石です――穂乃果」 希「強い“意志”の力で、ぶつけられる攻撃――」 希「それを防ぐ術(すべ)は――余りにも単純。しかし、余りにも成し難い――」 にこ「そ、それって・・・・・・」 絵里「――単純な話よ」 絵里「ぶつけられる“意志”を――さらに強靭な“意志”をもって、打ち破ること」
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239 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@無断転載は禁止[sage]:2016/05/29(日) 10:44:39.97 ID:IKap7prb - 英玲奈「しかし――実際にダメージを感じるほどの、園田海未の強い“意志”に耐えることは――」
ツバサ「――当然、並大抵の精神力で、成せることじゃない」 あんじゅ「でも、高坂穂乃果は――」 ツバサ(生まれ持った天才性の他に、彼女が持つ――もうひとつの、大きな武器) ツバサ(それが、この――強靭な、“意志力”) 理事長(廃校の危機、観客ゼロのファーストライブ) 理事長(ことりの留学を巡るμ'sの解散騒動で、一時はどん底に落ちたこともあったけれど――) 理事長(どんな窮地からも。そこから這い上がり、常に強い意志で、周りを牽引してきた――穂乃果ちゃん) 理事長(どん底を経験し、そこから不屈の意志で這い上がったからこその、強靭な心――) 理事長(『成し遂げる』――その強い意志で、ついには全国のスクールアイドルの頂点にまで登りつめた) 理事長「誰よりも強靭な“意志力”こそが――穂乃果ちゃんの、原動力」 ことり(・・・・・・そう) 僅かに、口元を動かすが―― 声が、出ない。 それでも、ことりは――目元を、緩ませる。 ことり(それでこそ・・・・・・) ことり(・・・・・・穂乃果ちゃん)
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240 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@無断転載は禁止[sage]:2016/05/29(日) 10:45:38.57 ID:IKap7prb - 穂乃果「・・・・・・海未ちゃん」
息を切らせながら――穂乃果が、言葉を発する。 穂乃果「海未ちゃんの、想いは・・・・・・痛いほど、伝わってくる・・・・・・けど」 と――顔を、上げ。 穂乃果「そんなんじゃ・・・・・・まだまだ、足りないねッ」 汗を浮かべながら――にっ、と、口元を上げる。 穂乃果「本物の刀じゃないんだから・・・・・・ッッ」 穂乃果「穂乃果はッ・・・・・・全然、へっちゃらだもんねッ」 その強気の言葉とは裏腹に、流れ落ちる汗が、決して海未の攻撃が楽なものでないことを如実に物語っている。 しかし――穂乃果の心もまた、折れない。 海未(そう――) 海未(それでこそ――私とことりが憧れた、穂乃果) 穂乃果が気合を入れるように、自らの頬を、両手でぱん、と叩く。 そして、拳を構え―― 穂乃果「ファイッットォッッ!!」 気合と共に、海未に向かって駆ける。
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241 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@無断転載は禁止[sage]:2016/05/29(日) 10:47:00.53 ID:IKap7prb - 海未「――!」スゥッ
ピシッ 穂乃果「・・・・・・ッッ!!」 “斬られる”――が、 穂乃果「うッああああッッ!!!」 叫びながら――歩を進め、海未の前で、左足を踏み込む。 海未「ッ!!」 海未の反応が遅れる。 そのまま、突き出した穂乃果の左拳が、海未の胴に当たるが―― パスッ またしても、その力は、頼りない。 海未(穂乃果・・・・・・?) バッ 海未が、穂乃果を振り払うように手刀を振り―― 穂乃果は、海未と距離をとる。 穂乃果「・・・・・・もう・・・・・・少し・・・・・・」 穂乃果「あと・・・・・・ちょっと、だと、思うんだけどなぁ・・・・・・」ブツブツ 海未「・・・・・・・・・?」 ぶつぶつと、何かを呟く穂乃果に――海未が、怪訝な表情を浮かべる。 真姫「さっきから、なんで、あんな弱々しい突きを・・・・・・」 にこ「穂乃果・・・・・・もう、限界ってこと?」 希「――いや」 真姫やにこと対照的に、穂乃果の様子を見つめる希と絵里の表情は、未だ油断が無い。 希「なんか・・・・・・まだまだ穂乃果ちゃん、“とんでもないこと”をしでかしそうな気が・・・・・・ッ」
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242 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@無断転載は禁止[sage]:2016/05/29(日) 10:47:54.68 ID:IKap7prb - 穂乃果「はぁ・・・・・・はぁ」
強靭な意志で、海未の“斬撃”に耐える穂乃果だが、その息は荒い。 海未「穂乃果――」 穂乃果「ふぅ、はぁ・・・・・・あと、もうちょっと・・・・・・ッッ」 亜里沙「な・・・・・・なに言ってるの? 穂乃果さん・・・・・・ッ」 雪穂「わからない、けど・・・・・・ッ」 雪穂(海未ちゃん――油断しないで) 雪穂(お姉ちゃんはッ・・・・・・“やらかす”よ。最後まで・・・・・・ッッ) 穂乃果「」スゥッ ダッ 息を吸った穂乃果が、海未に向かって駆ける。 海未は、穂乃果の瞳を見つめ―― シュパッ 斬る――が。 穂乃果「―――!!」 海未「ッッ!?」 穂乃果の瞳から放たれる、強靭な“意志”を感じ取り―― 一瞬、ひるむ。 そして―― ズンッ
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243 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@無断転載は禁止[sage]:2016/05/29(日) 10:49:11.45 ID:IKap7prb - 穂乃果が、左の足を海未に向かって踏み込むと同時に。
左の拳を、海未の胴に当てる。 その――刹那。 ぞく―― それは、海未の中の、動物としての生存本能だったのか。 はたまた、このトーナメントを通して培った、武道家としての勘だったのか。 1秒の10分の1にも満たない時。穂乃果の拳が体に当たった瞬間―― 海未の全身の細胞が、一斉に危険信号を発した。 そして―― ズンッッ 海未「ッッ!!?」 波紋のような衝撃が、穂乃果の拳を中心に、海未の全身を駆け巡り―― 海未は――目を見開いたまま。 その場に――倒れた。
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244 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@無断転載は禁止[sage]:2016/05/29(日) 10:49:52.19 ID:IKap7prb - 一瞬、気が遠くなり――
頬に触れる、ひんやりとした土の感触に、我に返る。 同時に、全身の血液が逆流するような悪寒、吐き気―― 海未(私ッ・・・・・・倒れて・・・・・・ッ!? 一体・・・・・・何が・・・・・・ッッ) 冷静に、呼吸を整えようとするが―― 海未「かッ・・・・・・はッ」 海未(声が・・・・・・出ません、か・・・・・・) 徐々に――覚醒してきた頭で、海未はひとつの結論に至る。 この、“技”は―― 海未(――“八極拳”!!) 海未(綺羅ツバサのッ・・・・・・“発勁”・・・・・・ッッ!!)
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245 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@無断転載は禁止[sage]:2016/05/29(日) 10:50:30.51 ID:IKap7prb - ウオオオオッ
一瞬、静まった場内が、怒涛のような喚声に包まれる。 『はッ・・・・・・“発勁”ですッッ!!』 『あの綺羅ツバサが使う、伝説の八極拳が今、園田海未に炸裂しましたッッ!!』 ワアアアアッ 希「まッ・・・・・・まさか・・・・・・ッッ」 にこ「綺羅ツバサの・・・・・・八極拳までッ・・・・・・!?」 真姫「しかもあれは、“侵透勁”――“発勁”の中でも最上位に位置する、高等技術・・・・・・ッッ」 絵里「あの、人間離れした綺羅ツバサの技術まで、使うなんて・・・・・・ッッ」 絵里(穂乃果自身も――進化しているの? この、闘いを通して――)
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246 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@無断転載は禁止[sage]:2016/05/29(日) 10:51:46.04 ID:IKap7prb - 海未「ぐッ・・・・・・う、」
地に倒れ、うめく海未の前で―― 穂乃果「えへへ・・・・・・なかなか、上手く出来なかったけど・・・・・・ッ」 に、と、口元に笑みをこぼす、穂乃果。 穂乃果「海未ちゃんに・・・・・・一矢、報いた、かな・・・・・・?」 海未「・・・・・・・・・・・・ッッ!」 花陽「“練習”・・・・・・してたんだ・・・・・・!」 目を見開き、場内を凝視する花陽、凛。 花陽「さっきまでの、弱々しい“突き”はッ・・・・・・“発勁”を使おうと試みてたってこと・・・・・・ッッ」 凛「このッ・・・・・・極限の闘いの、最中にッ・・・・・・!?」 ツバサ「・・・・・・・・・・・・ッッ」ギリッ “その光景”を目の当たりにしたツバサが――奥歯を、噛みしめる。 あんじゅ「ツバサの、“発勁”まで・・・・・・! あんなの、真似しようと思って出来るものじゃない・・・・・・ッ」 英玲奈「高坂穂乃果・・・・・・彼女は、どこまで・・・・・・ッ」 と―― 不意にツバサが、ふっ、と笑みをこぼす。 あんじゅ「ツバサ――?」
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247 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@無断転載は禁止[sage]:2016/05/29(日) 10:53:00.22 ID:IKap7prb - ツバサ「最後の、最後まで――こちらの予想を、上回ったわね」
英玲奈「何――?」 ツバサ「穂乃果さんは――“精神面”でも“肉体面”でも、園田海未に打ち勝った」 ツバサ「防御不能と思われた、イメージの“斬撃”を、強靭な“意志”で打ち破り――」 ツバサ「そして最後に、私の“発勁”をも使い、園田海未を打ち倒した」 ツバサ「精神と肉体――その両面で、完膚なきまでに園田海未を叩き潰したのよ」 あんじゅ「・・・・・・・・・ッ!」 理事長「もう・・・・・・決まり・・・・・・?」 理事長が、ぽつりと、そう漏らした時。 ぐ――と、ことりの手を握る両手に、僅かな、握り返される力を感じ。 はっ、と、ベッドに横たわることりの顔を見る。 ことりは―― モニターを、見つめながら。 その瞳には。 強い――意志の、光。 何かを――願うような。信じるような。 ことり「・・・・・・・・・・・・ッッ」 理事長「ことり・・・・・・?」
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248 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@無断転載は禁止[sage]:2016/05/29(日) 10:54:04.84 ID:IKap7prb - ――まだだよね、海未ちゃん。
――まだ、立てる。 海未「くッ・・・・・・ふぅッ・・・・・・!」 ――だって、海未ちゃんは、私に勝った人だもの。 ――海未ちゃんの“想い”は、誰にも負けないよ。 海未「げッ・・・・・・がはッ」 ――勝とう、海未ちゃん。 ――勝って、穂乃果ちゃんに、想いを伝えて。返事をもらおう。 海未「うッ・・・・・・ぐうぅッ・・・・・・!」グググッ ――だって、そのために。 ――ずっと、頑張ってきたんだから!! 海未「うッ・・・・・・ああッッ!!」 ――私も、応援するから。 ――勝とう。海未ちゃん。 海未「勿論です――ことり」 海未は―― 立ち上がった。
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249 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@無断転載は禁止[sage]:2016/05/29(日) 10:55:23.18 ID:IKap7prb - ワアアアアッッ!!
揺れるほどの歓声が、場内に響き渡る。 『またしてもッッ・・・・・・またしても立ち上がった!! 園田海未ッッ!!』 『最後まで決して諦めずッッ 立ち上がり続ける海未の姿に、かの戦友、南ことりの姿が重なって見えるのは私だけでしょうかッッ!?』 オオオオオッ 穂乃果「海未、ちゃん・・・・・・」 海未「・・・・・・・・・・・・ッッ」ハァハァ にこ「海未・・・・・・!!」 希「ほんまに・・・・・・」 場内を凝視しつつも、ふ、と口元に笑みを浮かべる、希。 希「・・・・・・好きなんやな。穂乃果ちゃんの、ことが――」 真姫「でもッ・・・・・・海未の体力も精神力も、もう限界のはずよ」 絵里「この状態で、これ以上、イメージの“斬撃”が通用するかもわからない――」 絵里(それでも――勝てるの? 海未・・・・・・ッッ)
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250 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@無断転載は禁止[sage]:2016/05/29(日) 10:56:21.07 ID:IKap7prb - 海未「ぐぅ・・・・・・ふぅ」
かろうじて、立ち上がった海未だったが―― 穂乃果の“発勁”は、その体に深刻なダメージを与えていた。 全身がシンバルと化し、体中の臓器がかき回されたかのような感覚。 こみ上げてくる吐き気。 海未(ことりッ・・・・・・貴方は、こんなものを何発も喰らって・・・・・・ッッ) ぐ、と、なんとか両足で、地面を踏み締める。 海未(――私の体力も、限界に近い) 海未(イメージの“斬撃”も、今の穂乃果に対しては、決定打とはなりえない――) 海未(――それでも) 傍目には、絶望的な状況にも関わらず―― 海未は―― に、と、笑みを浮かべた。 海未(それでも――) 海未(負ける気が、しません)
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251 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@無断転載は禁止[sage]:2016/05/29(日) 10:57:37.88 ID:IKap7prb - 穂乃果「海未ちゃんが――立ち上がるなら」
穂乃果が、左足と左拳を前に出し、八極拳の構えを見せる。 穂乃果「最後まで――」 穂乃果「やるよッッ!!」 タンッ 海未に向かって、穂乃果が踏み込む。 ズンッ 海未「ッッ!!」 咄嗟に海未が後ろに引き、穂乃果が突き出した左拳を避ける。 海未(まだですッ・・・・・・“ここ”ではない・・・・・・ッ) 穂乃果「まだまだぁッ!!」 ズンッ 今度は右足を踏み込み、右肘を突き出す穂乃果。 それも、ギリギリで体を引き、かろうじて避ける海未。 海未(もっとッ・・・・・・引きつけて・・・・・・ッ) 『かろうじて避けるが海未、防戦一方!!』 ワアアアッ 雪穂「うッ・・・・・・!!」 亜里沙「海未さんッッ!!」
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252 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@無断転載は禁止[sage]:2016/05/29(日) 10:58:44.35 ID:IKap7prb - 体を引き、避ける海未だが――穂乃果はさらに、距離を縮める。
その時、 ガクッ 海未「ッ!?」 海未が、砂に足を滑らせ――僅かに、体勢を崩す。 穂乃果「――!!」 穂乃果は、その隙を逃さない。 海未が避けられない間合まで踏み込み―― そして、突き出した左拳が。 ズンッッ 海未の、胴に――直撃する。 海未「がふッッ」 再び、“発勁”を喰らった海未が、呻くが―― 穂乃果は――見た。 喰らう瞬間。 海未の口元が、僅かに、笑うのを――
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253 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@無断転載は禁止[sage]:2016/05/29(日) 11:00:36.27 ID:IKap7prb - グンッ
穂乃果「ッッ!!?」 次の瞬間、穂乃果は、自らの体が引き寄せられるように崩されるのを感じる。 海未は――叩き込まれた穂乃果の、左手の手首を、右手で握っている。 左手で、穂乃果の右腕の裾をつかむ。 そのまま、体を後ろに押し倒すと同時に、両足で、穂乃果の胴を垂直に蹴り上げる―― ツバサ(まさか――“これ”を、狙っていたッッ!?) ツバサ(足を滑らせたように見えたのも、演技ッ!?) ツバサ(“この技”は――!) 希「柔道の――」 絵里「巴投げッッ!?」 柔道の巴投げは、自らが背中から倒れこむと同時に、足で相手の胴を蹴り上げ、真後ろに倒す技である。 しかし――この、海未の“投げ技”は。 相手を、垂直に蹴り上げ、投げ上げるため――相手の体は、一瞬、宙に浮く。 空中に浮いた穂乃果は、そのほんの一瞬だけ、無防備になる。 その時――
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254 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@無断転載は禁止[sage]:2016/05/29(日) 11:02:00.28 ID:IKap7prb - 海未(穂乃果――)
穂乃果は、見た。 自分を、空中に投げ上げた海未が―― 咄嗟に、右手に、“何か”を握ったのを。 海未(貴方は、強い・・・・・・ッ) 海未(ですがッ・・・・・・勝つのは、私・・・・・・ッ) 海未(否――) 海未が、素早く身を起こすと同時に。 右手を、宙に浮いた穂乃果に向けて突き出す。 海未(勝つのは――“私たち”) 海未(私と――) 海未が、その右手に持っていたものは。 握って、突き出したものは。 それは―― 海未(――ことりですッッ!!) ことりから、託された。 穂乃果の攻撃を受けた際、闘技場のどこかに取り落としていたはずの。 短刀の――柄。 ドグッッ 穂乃果「ッッ!!?」
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255 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@無断転載は禁止[sage]:2016/05/29(日) 11:03:07.15 ID:IKap7prb - 宙に浮いた、穂乃果の水月を。
海未が右手に握った、短刀の柄が直撃する。 穂乃果「ッ・・・・・・かッ・・・・・・ッ!?」 ドサッ 穂乃果の体が、地面に落ち―― 穂乃果「ぐッ・・・・・・〜〜〜〜〜・・・・・・ッッ」 表情を苦痛に歪ませ―― 悶え、起き上がることが出来ない。 『きッ・・・・・・』 『効いたァァ――――――ッッ!!!』 ワアアアアッッ!! 『“発勁”を喰らった瞬間、穂乃果を空中に投げ上げた海未ッッ』 『宙で無防備になった穂乃果の鳩尾(みぞおち)へ・・・・・・ッ』 『先刻、激しい攻撃を受けた際に取り落としていたはずの短刀を逆手で握り、その柄を直撃させたのですッッ!!』 ウオオオオッ 理事長「ことりのッ・・・・・・短刀で・・・・・・!?」 ことり「・・・・・・・・・・・・」 ことりが―― 口元に、僅かな微笑を浮かべる。
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256 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@無断転載は禁止[sage]:2016/05/29(日) 11:04:12.19 ID:IKap7prb - にこ「海未・・・・・・ッッ」
真姫「“これ”をッ・・・・・・狙ってた、っていうのッ・・・・・・!?」 希「穂乃果ちゃんの怒涛のラッシュで、取り落としていた短刀・・・・・・ッ」 希「“発勁”を避けながら、誘導してたんや・・・・・・! 短刀が落ちていた場所まで・・・・・・ッッ」 絵里「そうか――今や、体力面でも、技術面でも、穂乃果には太刀打ちできない海未だけれど――」 絵里「そんな海未が――穂乃果を、上回れるものがある。そして穂乃果が、決して海未を上回れないものがある」 にこ「え――?」 絵里「それは――」 絵里「――“経験”」
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257 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@無断転載は禁止[sage]:2016/05/29(日) 11:05:20.95 ID:IKap7prb - ツバサ(園田海未の、武道家としての“経験”が――穂乃果さんに対して、一矢を報いた形になったのね)
ツバサ(天性の才能と精神力だけで、圧倒的な戦力を見せる穂乃果さんに対し――) ツバサ(園田海未は、きっと膨大な時間をかけた鍛錬、稽古、そして数多くの試合を通じて、ここまで実力を伸ばしてきたはず) ツバサ(汗を流し、地を這い、泥をすするような、永い時を通じて得た、膨大な“経験”――) ツバサ(それは、唯一、穂乃果さんが決して上回ることが出来ないもの) ツバサ(園田海未は――常に、考え続けていたはず。どうすれば、穂乃果さんに一矢報えるのか) ツバサ(だから―― 一度手放した武器さえも、再び反撃に“利用”した) ツバサ(“経験”の浅い穂乃果さんにとっては、一度捨てたに等しい武器がまた使われるなんて、考えもしなかったはず――) ツバサ「予想を上回ったのは――園田海未も、ね」
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258 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@無断転載は禁止[sage]:2016/05/29(日) 11:06:35.15 ID:IKap7prb - ――貴方がくれた、この短刀が――私を、救ってくれました。
――ありがとうございます、ことり――そして―― ――もう少しだけ――使わせてください。 決勝戦の前に――ことりに伝えた言葉を、思い返す海未。 海未(ことり・・・・・・また貴方に、助けられました) 海未(・・・・・・ありがとうございます) 穂乃果「うッ・・・・・・くぅッ・・・・・・!?」 地面に倒れ、呻く穂乃果は――まだ、起き上がれない。 海未「穂乃果――」 そんな穂乃果に対し――語りかける、海未。 海未「貴方は・・・・・・強い。そして、本当に凄い人です。穂乃果」 海未「ですがッ・・・・・・私は・・・・・・“私たち”は、負けない」 穂乃果「・・・・・・・・・・・・」 海未「貴方は、16人の力を使って闘っている」 海未「しかし、それは――“借りて”いるだけ。“真似て”いるだけ――」 穂乃果「・・・・・・・・・・・・!!」 海未「私は――貴方のようなことはできません」 海未「ですが――“背負う”ことなら、できる」 穂乃果「―――」 海未「私は、ここまで敗れた15人の意志も背負って――最後まで、貴方に挑む」 海未「私と、ことりと――“私たち”の意志は――」 海未「決して貴方にッ・・・・・・屈しませんッッ」
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259 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@無断転載は禁止[sage]:2016/05/29(日) 11:08:08.63 ID:IKap7prb - 穂乃果「・・・・・・・・・・・・」
と――穂乃果は。 ぐぐ――と。体を震わせながら、身を起こす。 海未「穂乃果――?」 穂乃果「勘違いしてるよ――海未ちゃんは」 顔を、伏せたまま。 ぽつりと、呟く。 穂乃果「海未ちゃんやことりちゃんは、穂乃果に憧れてるって、言ってくれたけど・・・・・・」 穂乃果「穂乃果だって・・・・・・ふたりに、憧れてたんだよ?」 海未「え――?」 穂乃果「穂乃果は――」 穂乃果「海未ちゃんや、ことりちゃんみたいに――なりたかった」 ぽつぽつと――言葉をこぼす、穂乃果。 穂乃果「海未ちゃんみたいな、強くて、まっすぐな人になりたかった」 穂乃果「ことりちゃんみたいな、優しくて、気持ちの強い人になりたかった」 穂乃果「ふたりは――穂乃果とは、全然違う」 穂乃果「穂乃果に無いものを、たくさん持ってる――憧れの、ふたりなんだよ?」 海未「・・・・・・・・・・・・」
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260 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@無断転載は禁止[sage]:2016/05/29(日) 11:09:37.93 ID:IKap7prb - 穂乃果「μ'sのみんなだって――そう」
穂乃果「絵里ちゃんも――希ちゃんも、にこちゃんも――」 穂乃果「凛ちゃんも、花陽ちゃんも、真姫ちゃんも」 穂乃果「みんなみんな――穂乃果に無いものを持ってるもの」 顔を伏せたまま――どこか弱々しく、呟く穂乃果。 穂乃果「穂乃果は――みんなみたいに、なりたかった」 海未「穂乃果・・・・・・」 穂乃果「こんなこと言ったら、海未ちゃんたちは怒るかもしれないけれど・・・・・・」 穂乃果「穂乃果・・・・・・自分がすごいなんて、思ったこと――ないよ」 穂乃果「自分がどうなりたいかもわからずに。ただ元気なだけで――」 穂乃果「周りのみんなの、すごいところを――真似ることぐらいしかできない」 穂乃果「・・・・・・みんなみたいに、なりたかったから。すごくかっこいい、みんなと同じようになりたかったから」 穂乃果「だから――みんなの技を、頑張って使っただけ・・・・・・」 海未「・・・・・・・・・・・・」
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261 :名無しで叶える物語(やわらか銀行)@無断転載は禁止[sage]:2016/05/29(日) 11:10:38.22 ID:IKap7prb - 海未(穂乃果――・・・・・・)
海未は―― 心中で、ひとり、呟く。 海未(私は――危うく、勘違いするところでした) 海未(例え、特別な才能があったとしても――) 海未(穂乃果自身は――“特別な存在”でも、なんでもない) 海未(普通に笑い、普通に泣き、普通に悩む――) 海未(ただの――普通の、女の子だったのに・・・・・・) 海未「・・・・・・穂乃果」 海未は――優しげな口調で、語りかける。 穂乃果が――そっと、顔を上げる。 その表情は、どこか、泣き出しそうな―― 海未「今・・・・・・本当の意味で、私の気持ちが、固まりました」 海未「穂乃果・・・・・・」 海未「私は――貴方が、好きです」
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