トップページ > なんでも実況J > 2009年10月01日 > yYG7gi3+

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風吹けば名無し
瀬戸山かな
せやろってレスするのやめろ
なんJ(野球ch)で村作って遊ぼう!
【天使】瀬戸山かなと戯れるスレ【かなきゅん】
スザンヌはRioの劣化版で間違いないよな?
野球漫画の主人公は投手という風潮
わしずんだ
2ちゃん始めてから性格が悪くなった
2009年の野球chなんJを象徴する人物を10人挙げよう
虫タイプだけでどうにか勝ちたい
セリーグに日本人10勝投手がいない球団があるらしい

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せやろってレスするのやめろ
19 :風吹けば名無し[]:2009/10/01(木) 00:00:57.63 ID:yYG7gi3+
せやっ
なんJ(野球ch)で村作って遊ぼう!
103 :風吹けば名無し[]:2009/10/01(木) 00:34:23.83 ID:yYG7gi3+
とりあえず初めてみた
【天使】瀬戸山かなと戯れるスレ【かなきゅん】
326 :風吹けば名無し[]:2009/10/01(木) 00:38:14.81 ID:yYG7gi3+
コテに信者がいるとかきもすぎるわ
スザンヌはRioの劣化版で間違いないよな?
2 :風吹けば名無し[]:2009/10/01(木) 01:00:55.22 ID:yYG7gi3+
えっ
野球漫画の主人公は投手という風潮
14 :風吹けば名無し[]:2009/10/01(木) 01:17:12.96 ID:yYG7gi3+
あぶさん
わしずんだ
38 :風吹けば名無し[]:2009/10/01(木) 01:50:43.86 ID:yYG7gi3+
こんな流れになってたのかw
俺も以前書いた一場のSSを投下したいんだけど童話が終わってからのがいいだろうか
わしずんだ
45 :風吹けば名無し[]:2009/10/01(木) 01:54:02.87 ID:yYG7gi3+
俺のはもう完成してて投下はすぐ終わるから童話の人の完結を待つよ
わしずんだ
49 :風吹けば名無し[]:2009/10/01(木) 01:56:47.51 ID:yYG7gi3+
いちばまつざきはどうしようもないなw
2ちゃん始めてから性格が悪くなった
21 :風吹けば名無し[]:2009/10/01(木) 01:59:28.77 ID:yYG7gi3+
>>14
これだけはあるあるww
野球好きの仲間内で猛虎弁を流行らせてしまったがソースは2chなんて言えない…
2009年の野球chなんJを象徴する人物を10人挙げよう
10 :風吹けば名無し[]:2009/10/01(木) 02:04:52.66 ID:yYG7gi3+
辛い
わしずんだ
76 :風吹けば名無し[]:2009/10/01(木) 02:08:13.75 ID:yYG7gi3+
そりゃアリメーなwww
じゃ、俺のも投下したいんだけど
7月くらいに作ったやつだから今見るとおかしい所があるけど気にしないでね
わしずんだ
78 :風吹けば名無し[]:2009/10/01(木) 02:08:48.60 ID:yYG7gi3+
2013年。日本シリ−ズ、第七戦

インコースにズバッ、と決まったーっ!神宮のヒーロー、一場靖弘、17奪三振で完投勝利ッ!
最後は日本人最速!160キロの直球!
ヤクルト、日本一だぁーーーーーっ!

おれの名前は一場靖弘。
今でこそ、野球選手として絶頂を極めている俺だが、
おれの野球人生は順風満帆ではなかった。
今日は、おれが野球人として大成するまでの道程を話したい。
わしずんだ
79 :風吹けば名無し[]:2009/10/01(木) 02:09:16.69 ID:yYG7gi3+
「一場、ヤクルトに行ってくれ」
2009年開幕直前、監督からトレードが告げられた。
おれは毎年この時期、このままの成績では今年はおれじゃないか、と怯えていた。
しかし、その一方でおれは期待されているから大丈夫、という変な安心感も抱いていた。
ロマン枠、というやつだ。
炎上、好投、炎上、炎上、好投……。
この繰り返しで首脳陣、ファンはおれに期待を抱いていた。
だが、2008年おれは一勝もできず、シーズンを終えた。
その結果がトレードだった。
残酷だが、当たり前の現実。
おれはイーグルスに要らない選手だった。
わしずんだ
81 :風吹けば名無し[]:2009/10/01(木) 02:09:58.61 ID:yYG7gi3+
悔しさで、足が震え、手には汗がにじんだ。
相手が、プロとしてあがりを迎えた宮出さんというのも
おれのプライドに傷を付けるのに十分だった。
「わかりました。今まで本当にありがとうございました」
おれには、そう強気を装う事しかできなかった。
わしずんだ
83 :風吹けば名無し[]:2009/10/01(木) 02:10:41.23 ID:yYG7gi3+
「一場、残念だったな…」
おれを見送りに来てくれた鉄平が本当に残念そうに言ってくれた。
「これもプロだよ。向こうでしっかりやるさ」
「田中はお前に懐いてたから悲しむだろうな」
田中将大。ルーキーの頃から面倒を見ていたが、格の違いを常々見せ付けられていた。
おれはトレード要員、あいつはWBC。
あいつがおれに懐いてるなんてもう思えなかった。
住む世界が違う。スターとおれと、では。
「…じゃあ、行くよ。みんなによろしくな」
こうしておれは仙台を去った。
新しい環境に希望などなかった。
この時、おれは少しでも長くプロにしがみつく事しか考えてなかった。
わしずんだ
87 :風吹けば名無し[]:2009/10/01(木) 02:11:19.48 ID:yYG7gi3+
東京につくと、荒木コーチの指導が始まった。
しかし、おれはこの指導を受け入れられなかった。
制球を意識したセットポジションでの投球。
おれのピッチングからはかけ離れたものだった。
おれの持ち味は直球。
真っ向勝負こそがロマン。
求めるのは三振。
頑なにそう思っていた。
そんなおれが、いい結果を残せるはずもない。
おれは移籍初年度を2勝4敗、防御率4.92で終えた。
納得はできなかったが、実力だった。
おれは霧のかかった心のまま、シーズンオフを迎えた。
わしずんだ
88 :風吹けば名無し[]:2009/10/01(木) 02:11:57.66 ID:yYG7gi3+
「あなた、鉄平さんから電話よ」
シーズンオフ、自宅でくつろいでいる俺に懐かしい名前が告げられた。
同い年の犬鷲戦士は今年、打率.328の好成績を収め、
おれとは対照的に野球人生の絶頂を迎えつつあった。
「おぉ、どうした?」
おれは、しばらく野球とその関係者からは離れていたいという思いを隠して受話器をとった。
「一場、いっしょに自主トレしないか」
もはや球界を代表するバッターになりつつあった彼からの意外な誘いだった。
しかし、おれは
「いや、おれは今年は一人でやろうと思う。悪いな」
スター選手と並んで自主トレなどできない。そう思ってしまった。
おれは逃げるように受話器を置いた。
わしずんだ
90 :風吹けば名無し[]:2009/10/01(木) 02:12:55.43 ID:yYG7gi3+
妻の心配そうな視線が心に刺さった。
おれはその視線から逃げるように明るく振舞った。
「はは、たいした用事じゃなかったよ」
「自主トレのお誘いだったんでしょう?」
やっぱり聞かれていたか。
「ああ、でもおれは今年はマイペース調整で……」
「うそを言わないで!あなた、鉄平さんから逃げたのよ
 スターになった鉄平さんとの間に勝手に壁を作ってるんだわ」
妻がこんなに声を荒げたのは初めてだった。
そして妻の言葉は真実としておれの心に刺さった。まさに図星だった。
「お、おれは……」
「私の好きな一場靖弘はもっと強かったわ。 私が好きだったのは神宮のヒーロー、一場靖弘なのよ!」
わしずんだ
92 :風吹けば名無し[]:2009/10/01(木) 02:13:55.31 ID:yYG7gi3+
妻は「あなたが輝きを取り戻すのを待っています」と置手紙をして出て行った。
ショックだった。
妻はおれのふがいなさをずっと感じていたのだ。
かつて神宮でヒーローだったおれと、今のおれとのギャップにおれ以上に苦しんでいたのだ。
手紙に滲んだ妻の涙が、おれに罪悪感を抱かせた。
彼女の愛情を裏切っていた。
そう考えると胸が苦しくなり、手紙を読み終わる頃には、妻の涙の跡をおれの涙がかき消していた。
やるしかない。おれの心は決まった。
おれは野球人だ。
失ったものを取り返す方法は、野球しかない。
いつだって、野球はおれを輝かせてくれた。
野球の神様。許されるなら、もう一度おれをマウンドで輝かせてくれ。
わしずんだ
93 :風吹けば名無し[]:2009/10/01(木) 02:14:30.92 ID:yYG7gi3+
決心をつけたおれは、ある場所に向かった。
おれの第二の故郷。
かつて、事件を起こしたおれに、唯一野球を許してくれた地。
思い出の街、仙台へ。
鉄平に会う必要があった。
彼が、何の理由もなくおれを呼ぶとは思えない。
何かヒントがもらえるはず。
おれの投球を劇的に変えるヒントが。
わしずんだ
96 :風吹けば名無し[]:2009/10/01(木) 02:15:05.18 ID:yYG7gi3+
おれは、イーグルスのクラブハウスに1年ぶりに足を踏み入れた。
もう関係者でもなんでもないおれだったが、
なんとか頼み込んで鉄平に会わせてもらえたのだった。
「鉄平、さっきはすまなかったな」
「やっぱり来たな」
鉄平はジムで汗を流していたが、おれを快く迎え、
昔と変わらない、どこか抜けた笑顔をおれに向けてくれた。
しかし、彼の体はおれの知ってる頃とは別人のように鍛えられていた。
おれが腐っている間、鉄平はどれだけ努力したのだろう。
そう思わせる、作りこまれた肉体だった。
わしずんだ
98 :風吹けば名無し[]:2009/10/01(木) 02:15:58.39 ID:yYG7gi3+
おれは鉄平と一緒にグラウンドに出た。久しぶりのKスタのグラウンドだ。
いろんな思い出が胸に溢れて、軽くキャッチボールをするだけで、少し目頭が熱くなった。
「一場、軽く投げてくれよ」
「ははは、抑える気でやってやるよ」
おれは、バッティングピッチャーの位置に立ち、鉄平に球を投げ込んでいった。
カーン、カーン、カキーン!
本当に抑える気で行ったおれの球はことごとく打ち返された。
まだ調整不足の段階とはいえ、少しショックだった。
「鉄平はホントすごいバッターになったんだな」
おれは素直な感想として、そう言った。
しかし、鉄平から返ってきたのは意外な言葉だった。
「一場、この球はお前の球じゃないだろう」
わしずんだ
99 :風吹けば名無し[]:2009/10/01(木) 02:16:30.53 ID:yYG7gi3+
「おれの球じゃない?」
「そうだ。変に制球を意識して、つまんないピッチャーになっちまったな」
それは確かに、おれが昨シーズンずっと思っていた事だった。
しかし、図星を突かれると、人間頑なになってしまう。
「でも、制球を乱して、チームに迷惑をかけるわけにはいかないんだよ。
 おれは自分のピッチングを捨ててもチームに合わせる必要があるんだ」
「それで結果が出なくてもか!」
鉄平の一言でおれは頭に血が昇った。
「好き勝手言いやがって!」
「へぼにへぼと言っているだけだろ!」
おれ達は取っ組み合いになってしまった。
本当は鉄平の言うことが正しい事は解っていたのに。
わしずんだ
102 :風吹けば名無し[]:2009/10/01(木) 02:17:07.10 ID:yYG7gi3+
「お前ら、何をやっとるか!」
取っ組み合いを続けるおれ達に懐かしい怒号が響いた。
「の、野村監督……」
「久しぶりの顔がおるが、もうウチの選手じゃないだろう。
 負け犬が戻ってきたと思われたくなければ、さっさと出て行け!」
「か、監督、そんな言い方は……」
鉄平がさっきまで取っ組み合っていた事も忘れて監督を宥める。
しかし、おれは惨めな気持ちだった。
負け犬が戻ってきた。
確かに今のおれはそうだ。
「……失礼しました!」
おれは監督の顔も見ずに、グラウンドを後にした。
わしずんだ
104 :風吹けば名無し[]:2009/10/01(木) 02:17:53.58 ID:yYG7gi3+
「おい、待てよ!一場!」
車に乗り込もうとするおれに鉄平が駆け寄る。
「鉄平、今日はホントに悪かったな」
「おれも悪かったよ。これ、持ってってくれ」
鉄平がくれたのは一枚のDVDだった。
「これは?」
「見ればわかるよ。今度は交流戦で会おうな」
そういうと鉄平はさっさと帰ってしまった。
「なんなんだ、これ……」
おれは、車のDVDプレーヤーで早速再生してみることにした。
わしずんだ
106 :風吹けば名無し[]:2009/10/01(木) 02:18:35.35 ID:yYG7gi3+
画面に映ったのはクラブハウスの一室。
そこで、野村監督がテレビを見ている映像だった。
「なんだ、これ。隠し撮りか?」
まったく訳がわからない映像だが、野村監督の声が聞こえてきた。
「…ワインドアップはやめたんか…」
「なんで、インコースを攻めないんだ?相川のリードか?」
「もっと強気に攻めていけば……持ち味をいかしておらん…」
ところどころしか聞こえなかったが間違いない。
「監督……。おれの試合を見てくれてたのか……」
野村監督は、おれの事を必要ないと切ったのだと思っていた。
しかし、それは違った。
わしずんだ
108 :風吹けば名無し[]:2009/10/01(木) 02:19:07.03 ID:yYG7gi3+
後で、知った話なのだが、このトレードは野村監督が自ら、
環境を変えれば、おれが力を発揮できるかもしれないという考えで行ったトレードだったらしい。
神宮のヒーローだったあの時を思い出して、だ。
最初からやらなければならない事は決まっていたんだ。
ただ、がむしゃらに。
あの頃のように。
おれは野球をやるしかないんだ。
わしずんだ
112 :風吹けば名無し[]:2009/10/01(木) 02:19:40.02 ID:yYG7gi3+
再び、神宮に戻ってきたおれはすぐにトレーニングに入った。
最初はただ、がむしゃらに走りこんだ。
走って、走って、吐いて。
それからまた走った。
流した汗と一緒に甘えが抜けていった。
インナーマッスルも、トレーナーと相談して正しく鍛えていった。
春季キャンプが始まる頃、おれの体は生まれ変わっていた。
おれの努力を認めてくれた高田監督は、おれを一軍キャンプに呼んでくれた。
わしずんだ
113 :風吹けば名無し[]:2009/10/01(木) 02:20:11.83 ID:yYG7gi3+
「一場さん、ちわっす」
「おう、ヨシノリか。調子はどうだ?」
佐藤由規。かつてはおれも背負った11番を背負う期待の若手だ。
彼は、8勝5敗の成績で新人王を獲得していた。
かつてのおれなら、スター候補生の彼と目を合わせていなかっただろう。
しかし、今は違う。
おれは神宮のヒーローに返り咲く。
同じ土俵に立ってみせる。
「一場さん、なんか目つきが違いますね」
「はは、いろいろあってな」
おれたちは、並んでブルペンでの投球を始めた。
わしずんだ
116 :風吹けば名無し[]:2009/10/01(木) 02:20:33.99 ID:yYG7gi3+
ズバンッ!
「おぉ、由規!いいボール来てるぞ」
ブルペンキャッチャーが賞賛する。荒木コーチも頷いている。
確かに、由規の球は隣で見てるだけでも伝わってくる凄みがある。
だが、負けてられない。
「お願いします!」
おれは投球モーションに入った。
ワインドアップモーションで、だ。
「おい、一場……」
コーチが驚いて、制止しようとする。
黙ってみていろ。
一場靖弘のピッチングを見せてやる。
わしずんだ
117 :風吹けば名無し[]:2009/10/01(木) 02:20:56.30 ID:yYG7gi3+
ズバァーン!
「い、一場さん……!」
隣の由規が驚く。
カベとコーチは声も出ないようだ。
まだまだだ。おれはもっといい球を投げれる。
「どんどん行きましょう!」
こんな気持ちで投げるのは久しぶりだった。
コーチも由規もおれの投球に注目している。
かつておれはみんなの期待を背負って投げていた。
あの時をもう一度。
神宮のヒーローよ、蘇れ。
おれは黙々と球を投げ込んだ。
わしずんだ
119 :風吹けば名無し[]:2009/10/01(木) 02:21:29.79 ID:yYG7gi3+
「一場さん、すごいですよ!」
トレーニングを終えた由規がおれに駆け寄ってきた。
「いや、おれはまだまだだよ。お前こそ、すごいじゃないか」
素直に相手を賞賛できる。こんな気持ちになれるのも久しぶりだった。
「なんか今年の一場さん、絶対やれそうな気がします」
「はは、まだ早いだろ」
おれは謙遜する。いや、調子に乗る余裕もないのだ。
「いや、僕も今年の一場はやるとおもうよ」
どこからともなく声がした。
「だ、誰ですか!?」
「やだなぁ、僕だよ」
声の方向に気づき、目線を落とす。
わしずんだ
121 :風吹けば名無し[]:2009/10/01(木) 02:21:51.40 ID:yYG7gi3+
「か、カツオさん!」
声の主は小さな大エース、石川雅規さんだった。
「ブルペン見せてもらったよ。オープン戦楽しみにしてるよ」
そういうと、カツオさんはさっさと帰ってしまった。
「カツオさん……」
エース級の投手に認められた事で、おれは手ごたえを感じた。
この調子ならいける。
そして、キャンプはあっという間に終わり、おれはオープン戦を迎えた。
わしずんだ
122 :風吹けば名無し[]:2009/10/01(木) 02:22:25.46 ID:yYG7gi3+
今日のオープン戦、おれは先発を任された。
「一場、お前の頑張りをおれはずっと見てた。
 今日は五回行くぞ。成果を見せてくれ」
高田監督の言葉が、胸に沁みた。
相手は因縁の楽天。
ねじ伏せてみせる。
おれはそう誓った。
わしずんだ
123 :風吹けば名無し[]:2009/10/01(木) 02:22:55.57 ID:yYG7gi3+
久しぶりのKスタのマウンドに登る。
1番渡辺直さん、2番高須さん、3番は鉄平。
決して油断できない上位打線だ。
おれは第一球を投げる。
「ボール!」
審判がボールを告げた。
球速は143キロ。
おかしい。
ブルペンではこんなはずじゃなかったのに。
おれの体はガチガチになり、結局先頭を歩かせてしまった。
高須さんには難なく送られ、得点圏で鉄平との勝負になった。
わしずんだ
124 :風吹けば名無し[]:2009/10/01(木) 02:23:25.73 ID:yYG7gi3+
「一場はまだ変わっとらんのか」
わしは、つい声に出してしまった。
わしがこのチームの監督を引き受けた初年度。
一場だけがローテーションを守ってくれた。
そして、時折見せる彼のポテンシャルに惹かれた。
この投手を一流に育ててみせる。
そう思ったものだった。
しかし、わしには出来なかった。
結局、一場をヤクルトに放出。
環境が一場を変える事を祈るしかなかった。
「全く……」
自分と、一場のふがいなさには溜息しか出なかった。
わしずんだ
126 :風吹けば名無し[]:2009/10/01(木) 02:23:55.16 ID:yYG7gi3+
「くそっ」
プロに入ってから、おれはいつもこうだった。
打者に対して向かっていくことが出来ない。
マウンドに上がると常に不安が付きまとった。
おれは変われたと思ってたのに。
根っこの部分では臆病な「ノミの心臓」のままだったのか。
「体が動いてくれねぇ……」
おれはロージンバックを手に取り、マウンドを蹴り上げた。
その時。
「何やってんすか!ビビってんじゃないっすよ!」
懐かしい声が聞こえた。
「田中……」
わしずんだ
127 :風吹けば名無し[]:2009/10/01(木) 02:24:25.41 ID:yYG7gi3+
何で声をあげたのか。自分でもわからなかった。
自然と声が出てしまったのだ。
一緒に練習してても一場さんの素質は抜群だった。
いつか一緒にローテの柱になる。そう思ってたのに。
一場さんはトレードに出されてしまった。
俺がWBCに行っている間に、何も告げずに。
俺が活躍すると、一場さんは俺と距離を置くようになった。
俺にはそれが悲しかった。
「自分の力を出せばいいでしょ!向かっていけよ、一場さん!」
他人の事でこんなに声を荒げたのは何時ぶりだろう。
おれは皆に止められてやっと奥に引っ込んだ。
わしずんだ
128 :風吹けば名無し[]:2009/10/01(木) 02:24:58.22 ID:yYG7gi3+
「田中……」
スターになって、おれの事なんか眼中にないと思っていた。
だが、田中はおれを励ましてくれた。
楽天ベンチをよく見ると、かつてのチームメイトが、おれに目を向けていた。
そして、誰からともなく、また声をあげた。
「一場ー!お前の球なんて当たっても怖くねぇから安心しろや!」
「そうだー!向かってこいよ!」
「全部打ち返してやっからよー!」
みんなは笑いながら、おれを野次っていた。
こんなに優しい野次は初めてだった。
おれはやっとバッターボックスに目を向ける事ができた。
「来いよ、一場!」
わしずんだ
130 :風吹けば名無し[]:2009/10/01(木) 02:25:20.25 ID:yYG7gi3+
鉄平がバッターボックスでおれを待ち構えていた。
絶対に抑える。
いつの間にかおれの緊張は消えていた。
最高のボールを投げよう。
これがおれの第一球だ。
おれはランナーを無視してワインドアップで投げた。
「ストライク!」
観客から歓声があがる。
鉄平も驚いていた。
インハイに最高のボール。
球速は自己最速タイの154キロだった。
わしずんだ
131 :風吹けば名無し[]:2009/10/01(木) 02:25:50.12 ID:yYG7gi3+
おれは結局初回に山崎さんのタイムリーで一点を失った。
しかし、その後を抑え、五回を被安打3、失点1、7奪三振でマウンドを降りた。
最高のピッチングが出来た。
おれはマウンドを五回を抑えた後、楽天ベンチに向き直った。
みんなが笑っていた。
あの野村監督もだ。
「ありがとうございました!」
出せる限りの大声でおれは叫んだ。
その瞬間、Kスタ全体から拍手と歓声が起こった。
おれはプロに入って初めて野球人として喜びを感じていた。
わしずんだ
132 :風吹けば名無し[]:2009/10/01(木) 02:26:21.64 ID:yYG7gi3+
試合が終わって球場を出ると、おれにとって一番嬉しい人が迎えてくれた。
「見ててくれたのか」
おれが一番愛する人。おれの妻がそこにいた。
「私の一場靖弘が帰ってきてくれたわ。おかえりなさい」
妻は目に涙を浮かべていた。
「はは、ひどい顔だよ」
そういうおれも、ひどい顔だったかもしれない。
嬉しさと涙で顔はくしゃくしゃだっただろうから。
おれたちは人目をはばからずに抱き合っていた。
わしずんだ
133 :風吹けば名無し[]:2009/10/01(木) 02:26:49.51 ID:yYG7gi3+
そして時は流れ、2013年。
2010〜2013年まで4年連続で二桁勝利を記録。
最多勝2回、最多奪三振3回、最優秀防御率を一回獲得した。
今シーズンはチーム状態もよく、おれを中心に
由規、カツオさん、那須野、野間口らで先発陣を形成。
勝ち星を荒稼ぎし、日本シリーズに進出した。
特に俗に「一場世代」と呼ばれる3人で40勝したのが大きかった。
この3人が1つのチームに集まって才能を開花したのはすごい偶然だろう。
おれは野球の神様に感謝した。
わしずんだ
134 :風吹けば名無し[]:2009/10/01(木) 02:27:16.80 ID:yYG7gi3+
楽天との日本シリーズは熾烈を極めた。
岩隈さん、田中がいる楽天は短期決戦に強い。
3勝3敗で最終第7戦にもつれ込んだ。
先発はおれに任された。
「スワローズ、先発メンバーを紹介します。ピッチャー一場、背番号11…」
先発メンバーがアナウンスされる。
「一場、任せたぞ!」
共に戦ってきた仲間たちがおれを送り出してくれる。
「よっしゃー!絶対勝つぞーっ!」
「おう!」
おれたちは決戦のグラウンドに向かった。
わしずんだ
136 :風吹けば名無し[]:2009/10/01(木) 02:27:40.44 ID:yYG7gi3+
この最終戦も予想通りの激戦になった。
相手先発の田中はもはや球界のエースに成長し、おれたちはゲッツー崩れの間に
一点を取るのが精一杯だった。
おれは、8回まで2失点。
因縁の相手、鉄平に2ランを打たれていた。
このままでは負ける…。
そう思ったときだった。
カキーン!
グラウンドに快音が響き渡った。
「これは入るか!?入りそうだ!桑原、この土壇場で逆転2ラン!
 スワローズ逆転だーーーーっ!」
わしずんだ
138 :風吹けば名無し[]:2009/10/01(木) 02:28:05.65 ID:yYG7gi3+
これで勝てる!おれはそう確信した。
ベンチ内はもうお祭り騒ぎで、桑原はもみくちゃになっていた。
「一場、代わるか?」
高田監督が交代を示唆した。
「いえ、行かせてください。お願いします!」
しかしおれは続投を志願した。
絶対に抑える自信があった。
おれはエースだから。
「よし、わかった。お前と心中しよう!」
監督はおれのわがままを聞いてくれた。
ベンチは歓声に包まれていた。
わしずんだ
139 :風吹けば名無し[]:2009/10/01(木) 02:28:37.33 ID:yYG7gi3+
9回のマウンドに上がったおれは
代打中村ノリさんを三振、1番渡辺直さんを四球、2番高須さんを捕邪飛に抑えた。
渡辺さんに盗塁を決められ、得点圏で迎えたのは……。
3番鉄平。
「解き放てー!ここで打つんだ!男の意地にかーけてー!」
懐かしいチャンステーマに球場が包まれる。
思えばいろんな事があった。
あの時鉄平がおれを呼んでくれなければ。
野村監督がおれをトレードに出してなければ。
おれはここにいなかっただろう。
野球の神様、本当にありがとう。
わしずんだ
140 :風吹けば名無し[]:2009/10/01(木) 02:29:07.88 ID:yYG7gi3+
そして、カウントは2-2。
2ストライクまで追い込んだものの、ファウルで粘られ、すでに9球を投げていた。
「ふぅー」
このままじゃいずれ打たれる……。
絶対に打たれるわけにはいかない。
一呼吸おいて、おれは、あの時と同じようにモーションに入った。
あのオープン戦と同じように。
ランナーがいたって関係ない。
バットにかすらなければ何の問題もないのだ。
スタジアムはおれのワインドアップにどよめいていた。
わしずんだ
141 :風吹けば名無し[]:2009/10/01(木) 02:29:34.89 ID:yYG7gi3+
どよめくスタジアムに対して、おれの心は驚くほど穏やかだった。
これ以上ないほど、体からは力みが抜け、フォームには一分の無駄も入らなかった。
リリースの瞬間が何秒にも感じられた。
その瞬間に渾身の力をこめてボールを弾いた。
この時すでにおれは勝った、と思っていた。
ズバッとミットにボールが突き刺さる。
鉄平のバットは今度こそ空を切っていた。
「よっしゃあああああああああああっ!」
おれは滅多にあげない雄叫びをあげた。
日本一、野球人として最高の瞬間だった。
わしずんだ
142 :風吹けば名無し[]:2009/10/01(木) 02:30:00.89 ID:yYG7gi3+
おれがここまで来るのには、数々の苦難があった。
壁にぶつかって腐ったときもあった。
でも、みんなのおかげでおれはここまで来れたんだ。
おれは感謝している。
今度は野球の神様にではない。
野球人としての一場靖弘に関わってくれた全ての人たちに、だ。

一場靖弘物語      〜完〜 
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