- ひびき高等学園(元戸畑中央高校)
102 :名無し生涯学習[sage]:2017/01/06(金) 19:02:16.12 ID:NJUMo0dO0 - a
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103 :名無し生涯学習[sage]:2017/01/06(金) 19:02:59.04 ID:NJUMo0dO0 - [第二章第六十二話 三つ巴とはカオスの象徴であるとは言…わないが調和のとれたモンなんてこの世の中少ない訳であってカオスかコスモスの違いなんて誰にも良く分からない、こともない]
雪崩にも似た崩落の音は王都に響き渡った。その最中にも竜の咆哮は轟き、美しい白壁の町は軋みを挙げている。 王城門前、広い王城入り口へと入る門は崩落。門前の開けた空間と一階ホールは完全に分断されていた。 王城門前、その地でも血で血を拭う修羅の戦いが存在している。 この混戦の最中に置いて最良の事態と最悪の事態を挙げるとすれば、それはこうであるだろう。 先ず最良の事態、それは一対一、もしくは数対一に振り分けられ、力量も同等になった事だろう。 既にテナスとテルベーラの戦いは幕を閉じ、各地で混戦が繰り広げられている。その修羅の地、曇淀の暗雲の下で雪の舞う最中に三人の人影があった。 レラとオルガ、イフ。恐らく実力は同等、やや前者が有利の形であった。 彼等の周りの地面は抉れ、カルデラの様に凹んでいる。まるで地震か何かあった様に白地の隆起は激しくなっていた。その隆起の一つがまた崩れた。 「はぁっ……はぁっ!!」 荒く白い息を靡かせてレラは盛り上がった岩壁へと転がり込んだ。 全身が汗で濡れており、バトルSに似た孔龍石で出来ている軽い鎧が軋む音がしてまた姿を映す。 その、刹那――彼女の背後の岩壁は崩落した。 だが異質――その形容が彼女の敵対者であるイフには全く無かった。 迅竜の肉体を使い打たれた業物、夜刀【月影】を持つ手がカタカタと震えながらも、一瞬テナスと対峙したルクシドールの様な雰囲気を彼からは感じ取らなかった。 だが、この状況下―― (センセのクソ力でも押されとる……! まともにやったら殺される! 隙でもあらへんと……) 例え、考えても、何も、変わらない。岩陰から覗くとオルガとイフは鋭い大剣を交えていた。 刀身が火花を散らし雪を解かす。瞬きすら全く許されない。 それによってオルガの体力は徐々に削られているのは明らか。 彼にとっては幾分、長く辛い時間である。だが、それはイフにとっても同じである。 やはり、相手よりも素早く大剣を振る為には相当な体力を消耗していたのだ。 人が静止状態にある場合、【界】の状態維持時間は短くて数分から十分程度、達人に至れば数十分持つ。
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104 :名無し生涯学習[sage]:2017/01/06(金) 19:04:17.53 ID:NJUMo0dO0 - 戦いから既に二分が経過、激しい動き、竜の火球やブレスによる心理的警戒等により相当な消耗をしていたのは間違いないだろう。
剣と剣がまたぶつかり合い、力が拮抗する状態となった。 「流石、ナイツ一小隊を皆殺しにした男だ……やりあえるとはッ光栄だね……!」 ――もう何度目だ。そう感じながらもオルガは囁きかけた。 「……笑えねェ冗談だなそりゃぁ。ナイツ、か……。ククッ! ガッ……ギン! 甲高い金属音と共に氷大剣『ダオラ=ディグリベグ』と水場に生息する大型の魚竜種ガノトトスの鱗で水属性を与えられた大剣『流刃剣ガノトトス』を手に構えた両者はお互いに位置を取った。 「俺ァよ、今でもあの時のにやついた顔が頭から離れねェんだよ! 胸の傷が疼きやがる! そう、あの男を殺してこそ俺の目的は達成される! 俺の強さが証明される!」 「……いやぁ、君じゃ勝てんよ」 オルガは汗を拭い、鋼龍の甲殻により鍛えられた氷大剣の刀身に目線を置いた。 刃先から刃の根元まで少し色がくすんでいた。雪の影響で切れ味が悪くなっている証拠だ。 その時、言葉に反応したイフはピクリと眉を上下させ破顔した。 ――殺意。 それを見た刹那、レラは岩壁の後ろへ身を翻し、嘔吐した。頬を涙が伝い足が震える。 だがオルガは顔色一つ変えず平静に靡く灰髪を手で払う。彼に恐怖は無いのか、そうレラは痛感する。 オルガの目には今までどれ程の恐怖が映りそれに耐えてきたか、年21の彼女に未だ計り知れない問題であった。 尚もオルガは続ける。 「君が人を殺める理由がそこにあるのだとすればそれは信念も何も無い唯の独りよがりだ。信念を貫こうとするラルダナーガスには勝てやしないよ」 「テメェ……!」 オルガはそう言うがそれに反応したイフの顔はますます、凄まじく歪んだ。 レラは恐怖に手が震え、口元を押さえながら状況を探ろうとする。 だが、イフの叫びでもなく錬機竜の咆哮でもなく彼女の耳にはオルガの声と届いた。 「レラ! 逃げろ!」 「――え?」
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105 :名無し生涯学習[sage]:2017/01/06(金) 19:05:20.21 ID:NJUMo0dO0 - 彼女にとっては思慮外の提案、しかし至極当然の事実である。
「君じゃ足手纏いだ! うまく均等に戦力が分散した今、城内への加勢へ行ってくれッッ!!」 ――つまり、逃げろという解釈、そしてその結果を彼は望んでいた。 レラはオルガの言葉に躊躇した。 もし逃げればオルガが殺される可能性は高い。 だが逃げなければ自分が殺されるだろう。 己か師か―― 二者択一。 どちらも確定事項ではないが両者が生き延びられるという確信は彼女には無かった。 オルガの言葉はそれを踏まえた上でのものだった。 鼓動が精神を揺さぶり、太刀の柄を持つ手が、噛み締める唇が、行け、行け、とレラに命令する。 だが、足が雪解け水のぬめりの影響でもなく自然と竦む。 背後でまた得物が掠り、拮抗し、そして火花を散らす。 焦燥感と迷いの狭間で彼女は苦しんでいた。絶対的恐怖に。 ――畜生……っ! その一念が彼女を苦しめる。 そしてある言葉が彼女の脳裏には常に浮かんでいた。 ―――――――――――――――――― ――5年半前、果ての大陸南西部セクメーア砂漠最西端、ユーブル国境付近の村郊外―― 『ヴオォォォオオオオォン!!』 縦横の長さ約千キロメートル広大な果ての大陸、その西部に位置する海沿いの砂原に黒角竜の咆哮が木霊した。 相対しているのは、少女唯一人。深緑の甲殻とマカライト鋼、金属の硬度を上げる鎧玉等によって強化された防具、レイアシリーズを身に纏っている。 手には雷属性の太刀、斬破刀が確りと握られていた。新品で霞仕立ての上物だ。 季節は温暖な春を向かえ、繁殖期で気が立っている興奮した角竜の巨躯が砂を抉る。 まだあどけなく危なっかしい動作で埃と砂塵の舞い散る煙のカーテンを突き破りながら彼女は太刀を構えた。 少女の予想通り、黒の巨躯が――空を断った。
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106 :名無し生涯学習[sage]:2017/01/06(金) 19:06:40.18 ID:NJUMo0dO0 - 良く見れば黒角竜の体躯には裂傷が多々見受けられ、血が滴っていた。
だが、命のやり取りで片方が無傷で済む場合、それは圧倒的力の差があるからだ。 当然、狩人専門訓練場を出た彼女には下位のディアブロスでも凄まじい強敵であった。 カンカンとした日照りと湿度の低い環境は、動き回り躍動する。 太陽も日差しも乾燥も住み慣れたものには歓迎されただろうが彼女にとっては酷く苦痛であった。 砂塵が口の中に入り、ただでさえ、蜃気楼と砂塵で視界は悪いのだから至極当然といえるだろう。息を切らしつつもあと少し、あと少し、という意思を保ち続けていた。 ――レラ・ペイル十五歳。 「いけるかーっ?」 後ろから声を掛けられるが構う余裕は全く無い。 盲目に二角竜ディアブロス亜種に太刀を振るい続ける。レラは柄を強く握り締めた。 「ほお……」 後ろから声を掛けた人間はモノブローズを指先で弄りながら、立っている岩山から声を張り上げた。 「そろそろ昼飯だァァ! 早く済ませろよォォ!」 レラは少し、首を上下させた。対峙する敵の畏怖角竜は尻尾を空で振り回した。 嘗て、否、十数年程前ギルドから追われる身となり迫るギルド中佐格を次々と退けてきた彼は圧倒的な『力』に酔いしれ、それを正義とし、人を相手に血飛沫を散らしていた。 ついた渾名が黒髪と尖った相まって金獅子、彼の猟団の団員の名は殆ど其処から来ていると言っても過言ではない。 だが、それも束の間だった。彼の前に一人、男が現れた。 黒髪の男は下卑た笑みに顔を包んだイフに対し、無言で彼に接近する。 そして怒気と殺気を放つイフに対し言った。 「手前ェのやってる事ァ、クソヤローのすることじゃねェ。そうだろ?」と。 イフは得意げになり、だが神妙な面持ちで答えた。 「ならなんだ? 俺ァ神か? ハッハッハッハ! 門下生にでもなろうってのか!」 そう思ったのも無理は無い。 何故なら 「意味を履き違えてるな。俺は肯定なんざしちゃいねェ、ゴミクソヤローのする事だ、と言いたかったんだが?」と囁いた。 次回 第二章第六十三話[修羅の地、王都ラナ]
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107 :名無し生涯学習[sage]:2017/01/06(金) 19:07:03.76 ID:NJUMo0dO0 - 古風な表現が多いので2部がこれまたきっついの何の(笑 えねェ)
刹那、とかダルっちい感じが多いのでもっと簡略な表現を使ってみようと思います。 描写云々はそれからですね^^ こっからですから、クライマックスは(何回それ言った
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