- アナウンサーで百合だのかんだの [無断転載禁止]©bbspink.com
35 :名無しさん@秘密の花園[sage]:2020/03/28(土) 22:11:51.79 ID:oDBalPOV0 - >>33
夕暮れ時の海のそばにある、終着駅。遠くに橋がかかって、もう光り輝き始めている。 「忙しいところ連れてきて、ごめんなさいね。一度るりさんと一緒に行きたかったの。」「そんなことないよ、にぃみちゃん、こういう場所が好きなんだね。」 さっき降りた電車はドアが閉まり、反対方向へと折り返していった。 ここは鉄道マニアにはお馴染みの駅らしく、駅から出られない駅として有名なのだそうだ。この頃は訪れる乗客のために、小さな公園が用意されている。 私と彼女は公園の中を歩いていく。 「私、今年もカレンダーのプロデューサーを担当することにしました。でも、早朝の仕事もレギュラーで入ってきて、去年以上に辛いんです。」 「タイトルは「にいみだらけ」?(笑)」 「もう、それはやめてください(苦笑)」 そうしていくうちに、陽は沈み、工場や橋の光が、辺りを、二人を包んでいく。
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36 :名無しさん@秘密の花園[sage]:2020/03/28(土) 22:13:32.00 ID:oDBalPOV0 - >>35
「今年のかれんだー、私は11月、去年入った海老原さんと一緒です。」 (いいなあ、海老原さんと交代してよ)己の願望はいつも通り押し込めて(笑) 「でも海老原さん、とくダネを半年で卒業になって、心が折れてしまい、フィールドキャスターやっていても、心ここにあらずと言うか。私は彼女をどう励ませばいいのか・・・。」 「・・・冷たいこと言うようだけど、自分が気付いて動かない限り、にぃみちゃんがどうこう言っても、どうすることもできないよ。」 こんなきついこと、言うつもりじゃなかったのに。彼女の顔が強張ってるのがわかる。 「できることは、いつもあなたを見ている、気にしていると伝えること。海老原さんから聞かれる時のために、何気ないことでも書き留めて置けばいいよ、その妄想カレンダーノートに(苦笑)」 思わず笑う彼女。その笑顔にちょっと救われる。 「そして、尋ねられたときに、アドバイスをする。海老原さんももう子どもじゃないんだから。私は子どもっぽいけどさ。」「そんなことないですよ、私の何倍も経験してきた人の発言ですよ。」 遠くで汽笛が響いている。こんなロマンチックな風景の中に、私と彼女。まるで恋人のようだ。 「私、ここにるりさんを連れてきたのは、誰もいないところで、どうしても相談に乗って欲しかったからです。」 えっ、突然のことに、戸惑う私。 「今、私には好きな人がいます。」 もしかして、それは、わ・た・・・。 「一緒に大学祭の実行委員をしていた人です。」
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37 :名無しさん@秘密の花園[sage]:2020/03/28(土) 22:14:50.85 ID:oDBalPOV0 - >>36
その後どうしたのか、どう帰ったのか、記憶が曖昧だ。海老原アナの時とはまるで正反対の、しどろもどろな言葉の羅列。まっすぐに見られなかった彼女の笑顔。 そしてホームに入ってきた電車でも、彼女から離れて、押し黙って座っていた。行きの電車では隣同士であれだけ楽しく話をしていたのに。 「るりさん、今度のプレミア、楽しみにしてますね。」「うん、それじゃあ、またね。」 彼女の後ろ姿が、どこか幸せそうに見えた。その姿をいつまでも、いつまでも眺めていた。その姿が消えた頃、涙が溢れてきた。素直に「にぃみちゃん、良かったね」と言えなかった私。
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