- アナウンサーで百合だのかんだの [無断転載禁止]©bbspink.com
29 :名無しさん@秘密の花園[sage]:2020/03/26(木) 22:25:57.52 ID:K+h9fN6L0 - >>27
テーブルにはいつの間にか、缶ビールと実家からの落花生、そして彼女は普通にウーロン茶を飲んでいる。喫茶店でコーヒーを頂いていたように落ち着いた姿に、つい見惚れてしまう。 「るりさん、私の顔に、何かついてます?」「えっいや、どう?この落花生。千葉では結構極上ものなのよ。」 「・・・このピーナッツ、甘味があって、とても柔らかいですね。」 「違うよ、あくまでも落花生!千葉特産の!」 にこやかな笑顔で彼女は私に話す。 「いいですね、るりさんには誇れる地元の名産があって。私は東京生まれの東京育ちだから、ひよこくらいしかなくて。」 「ひよこ、大好きよ。東京に来てからも、見つけたら買って食べるんだから。実家帰りも、お土産はひよこ一択!」 「・・・ひよこを食べるるりさん、一度見てみたいなあ。」 「にぃみちゃん、それウーロン茶なのに、ホントは酔ってる?(笑)」 本当に酔っているのは私なのに。
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30 :名無しさん@秘密の花園[sage]:2020/03/26(木) 22:29:34.23 ID:K+h9fN6L0 - >>29
「でも、普段お酒は飲めないの?」 「大学の頃はもっぱらハイボールでしたね。」 そして彼女は、ポツポツと自分の身の上を語り出した。 大学時代は学園祭の実行委員として駆けずり回ってたこと。大学生の意識調査の研究発表を見ていた人に誘われて、エミー賞の視聴者レポーターに抜擢されたこと。そこからアナウンサーという職業を意識し出したこと。 私は大人しそうに見える彼女の行動力を垣間見た気がした。 「アナウンサーって、舞台できらきら輝くミスやミスターがなるものと思っていたから、その舞台裏にいた自分がなれるなんて、思わなかった。」 「すごいよ、それこそシンデレラストーリーじゃない。こういう人こそ、アナウンサーになるべきなのよ!」鼻息が荒くなった私に、彼女は淡々と話した。 「私はシンデレラへの階段を昇っていった。でも、シンデレラにはなれなかった。」 私は彼女の言葉を理解できなかった。理解する前に酔いが回り、いつしかテーブルに突っ伏して寝ていたようだ。
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31 :名無しさん@秘密の花園[sage]:2020/03/26(木) 22:33:38.70 ID:K+h9fN6L0 - >>30
気がつくと、私はベットに運ばれていたようだ。早くに目は覚めたけど、少し頭が痛い。今日はロケがあるのに、大丈夫なのかな。そう思って枕元を見ると、お菓子とメモ書きが。 「同期が福岡で買ってきたお土産です。ほんの少しですみません。機会があれば、今度はひよこ買ってきますね。にいみ」 早速袋からお饅頭を取り出し、口に頬張る。別の人の福岡土産なのに、なぜか彼女の思いのこもった味がした。 「さあ、準備しないと。」ある程度部屋が片付いたので、久しぶりに通り道ができている(笑)シャワーでも浴びて、酔いを少しでも覚まさないと。 そう思ってベットから降りる。その通り道に、何かが落ちている。「新美有加様」と書かれた、ビニールの包みが。そして中に、いくつもの錠剤が。 私は、彼女が今まで見せていなかった、そして、彼女の見ては行けない姿を見てしまったようだ。
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