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名無しさん@秘密の花園
【ガスト】アトリエシリーズで百合 4

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【ガスト】アトリエシリーズで百合 4
309 :名無しさん@秘密の花園[sage]:2012/12/09(日) 21:40:04.20 ID:kpBsG6Yv
SS投下します。
トトリエ時代のトトミミ。
【ガスト】アトリエシリーズで百合 4
310 :名無しさん@秘密の花園[sage]:2012/12/09(日) 21:42:59.63 ID:kpBsG6Yv
 朝のアーランド。ミミは人ごみの中を歩いていた。ただ歩いているわけではなく、道のそこそこに立ち並ぶお店を眺めている。
 お店といってもほとんどが屋台か、あるいはゴザを敷いて売り物を並べている簡素なものだ。野菜や果物など生鮮食品が多いが、それ以外にも自家製のパンやドーナツ、ジャムなどを売っている店もあった。
 いわゆる朝市である。元々気候が温暖で土地も肥沃なアーランドだが、共和国になってから街道の整備と物流の促進に力が注がれ、流通する食料もかなり豊富になってきている。そのお陰でこういう場所に並ぶ商品も、時節を問わずバラエティに富んでいた。
 まだ日が昇ってそう間もない時間だというのに、市場には大勢の人が行き交っている。涼やかな朝の大気と人々の熱気が渾然となって、一種独特の空気を作っていた。
「う〜ん……」
 ミミは野菜の並ぶお店をつらつらと眺めながら、何やら考え込んでいる様子だった。
「とりあえず適当に見繕って……」
「あーミミちゃんだ。おはよー」
「っ!」
 突然背後から声を掛けられ、ミミの肩がびくりと震える。慌てて振り向くとそこにいたのは、
「何だロロナさんか……」
「がーん! 挨拶したのに『何だ』って言われたー!」
「あ、すみません。別に悪意があったわけじゃ」
 いい年した女性が口で「がーん!」とか言う辺りにツッコミも入れたかったが、ミミはとりあえずフォローと謝罪を優先しておく。
「分かってるよ。トトリちゃんじゃなかったからガッカリしたんだね?」
「ちっ……違います!」
 訳知りげに微笑むロロナに、慌てて否定するミミだった。
「市場で会うのって初めてだね。ミミちゃんもお買い物?」
「はい。食料品を買い出しに」
「ミミちゃんが料理するの?」
「ええ。料理だけでなく、身の回りのことは自分でするようにしています」
「へーそうなんだ。えらいねー」
 間延びした口調だが、ロロナは真面目に感心している様子だった。
(例えばここでトトリだったら「ミミちゃん、貴族なのに召し使いさんとかいないの?」なんてことを言ってくるんでしょうね……)
 ミミは胸中でごちる。貴族という存在が形骸化して幾星霜。旧来通りの家人を持つ貴族などごくごく少数だ。
【ガスト】アトリエシリーズで百合 4
311 :名無しさん@秘密の花園[sage]:2012/12/09(日) 21:46:27.47 ID:kpBsG6Yv
「ロロナさんもお買い物ですか?」
「うん。普通のご飯の材料を買いにね」
 わざわざ『普通の』とつけるのは、つまり錬金術を使わないで作るという意味か。錬金術士といえど、普段食べるものまで錬金術で賄うわけではないらしい。
「ロロナさん、料理するんですか?」
「するよー。こう見えても昔、師匠がアトリエでぐーたらしてた頃は、何年も家事やってたんだからね」
 えっへん、と胸を張るロロナ。別に威張るようなことでもないが。
「ところでミミちゃんは何買うの?」
「普通に野菜とかですね……今の時期だと根菜類が良いでしょうか」
「あーそうだね。カブのシチューとかふろふき大根とか、寒い夜なんかに良いよね」
 具体的なレシピを思い浮かべて、ロロナは食欲が湧いてきたのか、今にもよだれを垂らしそうな表情になる。
「ミミちゃんのオススメは?」
「そうですね……馬鈴薯をたっぷり使って肉じゃがとか」
「へえ。ミミちゃん結構家庭的なんだ」
「わ、悪いですか」
「全然悪くないよ。むしろ可愛いよ。ちなみにわたしが得意なのはね――」
 方や一流の錬金術士、方や新進気鋭の冒険者。だというのに、朝の市場でまるで若い主婦のような会話をしている二人だった。



「トトリちゃん、わたしちょっと出かけてくるね」
「はーい。いってらっしゃい」
 ある晴れた日のこと。仕事に一段落つけたロロナは、後片付けを終えるや、トトリに一声かけて出かけてしまった。
「最近先生お出かけ多いなあ……クーデリアさんのとこかな?」
 何となく呟いてから、トトリは自分の仕事を再開した。今受けている依頼の内容とコンテナの中身をチェックする。
「えーと……この辺はすぐに持っていけるかな。調合しなきゃいけないのはこれとこれと……材料ちょっと足りない分は、買って済ましちゃおう」
 チェックを終えたトトリは、早速納品と買い物に出ようとアトリエのドアを開けた。
【ガスト】アトリエシリーズで百合 4
312 :名無しさん@秘密の花園[sage]:2012/12/09(日) 21:50:27.24 ID:kpBsG6Yv
「クーデリアさん、こんにちは」
 納品できる分の依頼報告を終えたトトリは、ついでにクーデリアのところに足を伸ばしていた。
「ああ、こんにちはトトリ。ちょっと聞きたいんだけど、ロロナは今アトリエにいる?」
 クーデリアがそう訊ねると、トトリは首を傾げた。
「出かけてますけど……クーデリアさんの所には来なかったんですか?」
「来てないわよ。ていうかあいつ、最近妙に付き合い悪いっていうか、しょっちゅうどこか行ってるみたいなんだけど」
「確かに最近ロロナ先生お出かけすること多いですけど……」
 トトリはてっきりクーデリアの所に遊びに行っている思っていたが、どうも違うらしい。
「そう……あんたも行き先は知らないわけね」
「すみません」
「いや、いいのよ。別に気にしてるわけじゃないし」
 口ではそう言いながら、クーデリアはそわそわと落ち着かない様子だった。
「ロロナ先生、どこに行ってるのか聞いてみましょうか?」
「いいわよ。そんなわざわざ」
「でもクーデリアさん、先生のこと心配してるんじゃ」
「してないわよ。あの子だってもういい年なんだから。そんな旦那の浮気を心配する女房じゃあるまいし――」
 バサッ、と音が鳴って、トトリとクーデリアの視線がそちらへ向く。明らかにトトリ達の会話を立ち聞きしていたフィリーが、何やら動揺した様子で書類束を落としていた。
「す、すみません、私のことは気にせずどうかお話を続け――」
「フィリー……あんたロロナのこと何か知ってるわね」
「ギクッ!」
 ここまで分かりやすい図星なリアクションも珍しい。
「ししししし知りません知りません! 私は何も見てませんし出来るだけ遠巻きに事態の推移を観察してネタとして美味しくなるまで見守ろうだなんて微塵も思ってません!」
「あんたのそういう分かりやすいところ、嫌いじゃないけど一切褒める気になれないわ……いいから知ってること全部吐きなさい!!」
「ひっ!? ……わ、分かりました、話しますから怒鳴らないで下さい〜」
 クーデリアの一喝で従順になったフィリーは、大人しく話を始める。
「実はその……先日偶然、ロロナさんがある人と並んで歩いているのを目撃しまして」
「ある人って?」
「それは――」
 フィリーはチラッとトトリの方に目をやって言い渋る気色だったが、やがて口を開いた。
「……ミミさんです」
【ガスト】アトリエシリーズで百合 4
313 :名無しさん@秘密の花園[sage]:2012/12/09(日) 21:54:04.29 ID:kpBsG6Yv
「ミミちゃんと先生が?」
「はい。しかもかなり楽しそうに」
 意外な組み合わせに驚くトトリとクーデリア。
「……でも別に、ただ二人が一緒に歩いてたってだけでしょ。それぐらいなら――」
「いえ、それだけじゃないんです。珍しい組み合わせだったから、どこに行くんだろうと思ってしばらく見てたんですけど……二人ともそのまま大通りにある誰かのお家に入っちゃったんです」
「大通りにある家って……それってロロナの実家じゃないの」
「えっ……」
「ええーっ! あそこロロナさんの実家だったんですか!? ということはまさか、ロロナさんがミミさんをご両親に紹介する段階まで一足飛びに進んでるとか!?
 でもロロナさんにはクーデリア先輩、ミミさんにはトトリちゃんがいるはずなのに、何ていう斜め上な展開!
 幼なじみと師弟関係が絡んだ三角関係ならぬ四角関係だなんてこれはますます目が離せな――痛たたたたたた! 痛い! 痛いです先輩! ほっぺたもげちゃいますぅ!」
「片一方ぐらいもげた方がいいわよあんたは」
 妄言を垂れ流すフィリーの頬を思い切りつねりながら、クーデリアは大きなため息をついた。
「ったく……何が四角関係よ。あのロロナがそんな真似するわけないでしょうが。トトリも、この馬鹿の言うことは右の耳から左の耳で気にしなくていいからね」
「……」
「トトリ? 聞いてる?」
「あっ、はい! 聞いてます」
「……とにかく、仕事もあるだろうし、帰りなさい」
「はい……」
 力なく頷いて、トトリはギルドを去っていった。
【ガスト】アトリエシリーズで百合 4
314 :名無しさん@秘密の花園[sage]:2012/12/09(日) 21:58:30.01 ID:kpBsG6Yv
 気にしなくていい。とクーデリアに言われたが、気になってしまうのはどうしようもないわけで。
 気が付くとトトリは、アトリエに帰る道から外れて、大通りに入っていた。
「先生の実家は……確かこのへん……あ」
 あった。フリクセル家の表札が出ている、大通りに面したごく一般的な一軒家。そこがロロナの実家である。
「……つい来ちゃったけど、今先生がいるかどうかは分からないんだよね……それにいきなりわたしが訪ねるのもおかしいし、理由もないし……」
 トトリは独り言を呟きながら、玄関前をうろうろしている。端から見るとちょっと挙動不審だ。
「うーん……やっぱり帰ろうかな」
 そう言って、踵を返す。と、
「あ。何か声がすると思ったらトトリちゃんだ」
「せっ、先生!?」
 唐突にドアが開いて、エプロン姿のロロナが姿を見せた。
「どうしたのトトリちゃん? こんなところで」
「えっと、それは、その……」
「まあいいや。ちょうどいいところだったし、上がって上がって」
「え、あの」
 戸惑うトトリを、ロロナは半ば強引に家の中に引っ張り込んでしまった。
「今お父さんもお母さんも旅行中で留守だから。遠慮しなくていいよ」
「はあ」
「ロロナさん、焼き上がったので味見を――」
 トトリ達が居間に入ったところで、奥のキッチンからエプロン姿のミミが出てきた。
「ト、トトリ!? 何でここに!?」
 トトリの顔を見て、ミミは大いに慌てふためく。
 ミミがこの家にいるということは、トトリもある程度予想していた。
 だがしかし。それ以上に看過することの出来ない事実が、今、トトリの目の前に存在していた。
「ミミちゃん……どういうことなの……?」
 努めて感情を押し殺したような、抑揚の無い声。視線はミミを見ているはずだが、どこか焦点が合っていない。
「どういうことって、何がよ?」
「何で……ロロナ先生とペアルックなの?」
「はい!?」
 トトリの問い掛けに目を丸くするミミ。だが確かに、今のミミはロロナと同柄のエプロンを身に付けており、ペアルックと言えなくもない。
「どういうことなのミミちゃん?」
 強く答えを求めながら、トトリの問い掛けは、あくまでも静かだ。ミミは若干気圧されながらも、どうにか対応する。
【ガスト】アトリエシリーズで百合 4
315 :名無しさん@秘密の花園[sage]:2012/12/09(日) 22:03:03.48 ID:kpBsG6Yv
「落ち着きなさいトトリ。これはそんな、ペアルックとかじゃなくて、たまたまここにあったエプロンを借りたらそうなっただけで――」
「そもそもミミちゃんは何でロロナ先生の実家にいるの?」
「それはその……あんたには関係ない話で――」
「わたしに言えないようなことなの?」
「ちがっ……そんなんじゃなくて、えっと、ほら、前にツェツィさんにも――」
「お姉ちゃんだけじゃ飽き足らずにロロナ先生にまで手を出したの?」
「人聞き悪いどころじゃないこと言うなっ! ちょっとトトリ本当に落ち着きなさい! さっきから変な電波受信してるわよ主にギルドの受付から!」
「うふふ、やきもち焼いてるトトリちゃん可愛いなぁ」
「ロロナさんも笑ってないで早く誤解を解いて下さい!」


 ――数分後。
「……つまりミミちゃんはロロナ先生にお料理を習っていたんだね」
 トトリはミミの説明を受けて、ようやく納得して落ち着いた様子だった。
「料理っていうか、ほぼパイの作り方になってたけどね」
「普通にオーブンでパイ焼くの久しぶりだったから、つい楽しくて夢中になっちゃったよ」
 ロロナは笑顔で呑気なことを言っているが、トトリは渋い表情だ。
「それだったら、別に隠さず言ってくれたら良かったのに」
「ごめんね。でもミミちゃんがトトリちゃんには内緒にしてって言うから。だからばれにくいように場所もわざわざわたしの実家にして」
「ちょっ、ロロナさん……!」
 内緒にしてと言っていたことをあっさりばらされ、ミミは大いに焦る。
「ミミちゃんが? どうして?」
「うぐ……」
 首を傾げるトトリだが、ミミは口をつぐんで答えようとはしない。
「ミミちゃん、何で?」
「……」
「あ、そうだ。パイ焼けたんだよね。トトリちゃんも一緒に食べよ」
 トトリ達のやり取りを尻目に、ロロナはニコニコしながらキッチンへ向かい、すぐに三人分に切り分けたパイを持ってきた。
「ミミちゃんが焼いたパイだよ」
「あれ? これって――」
 ロロナが持ってきたパイを見て、トトリが少し驚いたように声を上げる。
「おさかなパイですね」
「うん。わたしがトトリちゃんのお姉さんから習ったのを、ミミちゃんに教えてあげたんだ」
 おさかなパイ――ヘルモルト家伝統の料理で、トトリの大好物でもある。
【ガスト】アトリエシリーズで百合 4
316 :名無しさん@秘密の花園[sage]:2012/12/09(日) 22:05:58.62 ID:kpBsG6Yv
「おさかなパイ、トトリちゃんが大好きだって言ったら、ミミちゃんすごく張り切ってたよ」
「んなっ……そ、そんなことありませんから!」
「えー? だってミミちゃん、トトリちゃんに食べて欲しくてお料理頑張って勉強してたんじゃないの? だから内緒にしてって」
「ミミちゃん、そうだったの?」
「ちっ、違うわよ! そんなわけないでしょ! 私はただ純粋に料理のレパートリーを増やしたかっただけで――」
「まあ、細かいことは置いといて、早く食べよ」
 故意なのか天然なのか、ロロナはあくまでマイペースだ(本当にただパイが食べたいだけなのかもしれない)。
「ほらトトリちゃん。焼きたてホカホカだよ」
「あ、はい……」
 勧められるままに、トトリはおさかなパイを一口食べてみる。
「……美味しい」
「でしょう。ミミちゃんお料理の基礎もしっかりしてるし、物覚えがいいから教え甲斐があったよ」
「ミミちゃん」
「……何よ?」
「凄く美味しいよ」
「――っ! さ、さっき聞いたわよそれは」
「うん。でももう一回言うね。ミミちゃんのおさかなパイ、凄く美味しい。作ってくれて凄く嬉しいよ」
「〜っ……べ、別に、あんたのために作ったわけじゃ……」
「こんなに美味しいなら、ミミちゃんのお料理毎日食べたいなぁ……」
「っ……!」
 何の含みもないトトリのその呟きに、ミミの顔は一気に真っ赤に染まってしまう。
「トトリちゃん。それって何だかプロポーズみたいだね。毎朝僕のみそ汁を作ってくれ、みたいな」
「え? あ」
 気付いたトトリの頬も少し赤くなる。
「もう! 先生ってば」
「照れない照れない。良かったねミミちゃん。トトリちゃんのために頑張ってた甲斐があったね」
「さっ、さっきからロロナさんは余計なことばかり言わないで下さい!」
 いちいち茶々を入れるロロナに、とうとう顔を真っ赤にして咆えるミミだった。


 その後――
 ミミはトトリにアイテムを依頼に来るのと同じような頻度で、何かと差し入れをするようになったとかならないとか。


おわり


※構ってもらえなくて拗ねてたクーデリアさんは、ロロナ先生が美味しくいただきました。
【ガスト】アトリエシリーズで百合 4
317 :名無しさん@秘密の花園[sage]:2012/12/09(日) 22:10:42.40 ID:kpBsG6Yv
以上。読んでくれた人、ありがとう。

図鑑眺めてて気付いたけど、アーランドってお米やお箸だけじゃなくて、ソースやマヨネーズ、さらには味噌や醤油もあるらしく、食生活に関してはかなり現代日本に近いような気がする。


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