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緑桃 桃視点
名無しさん@秘密の花園
ももいろクローバーZで百合萌え★2

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ももいろクローバーZで百合萌え★2
633 :緑桃 桃視点[sage]:2012/05/02(水) 20:35:24.07 ID:z4sVteCy
私のお姉ちゃんは口うるさい。
それに変に真面目で、意外に気分屋で、超ネガティブで、かわいい動物の赤ちゃんだって怖がって私の手を離せないくらい情けない。

「遅れました〜」

「っ……あーりん!」

何してたの、どこにいたの、とママみたいに矢継ぎ早に杏果に聞かれて目を白黒。
今日は朝ケータイ充電するの忘れてて、迎えにきてくれたともみんの車の中で電源切れちゃったの。
しかも、GWの渋滞にバッチリ巻き込まれちゃって、かれこれ一時間くらい遅れちゃったの。
それ自体は連絡さえすればよかったんだけど、ともみんも携帯事務所に忘れちゃってて、連絡取れなくて。

「……って訳で連絡できなかったの。ごめんね?」

まあ無事でよかったじゃん、とかともみんウッカリだなーとか軽い口調のメンバーに軽口を返してレッスンに合流しようとしたんだけど。

「……にそれ」

「え?」

「携帯充電するの忘れて連絡取れないとか……子供じゃないんだから」

どう見ても誰が見ても怒ってます!って顔で杏果が言ってきたのだ。杏果……心なし目が腫れてる?

「あ……うん、ごめ……」

「公衆電話だってあるじゃん、事務所の番号だってわかるっしょ。一時間も連絡つかないままとか……ありえない」

「……それは私が悪かったけど、そこまで言わなくてよくない?」

「言うよ!だいたい……」

「はい!いつまでくっちゃべってるの!続き始めるよ!」

声を荒げた杏果も、先生の言葉にぐっと口を結んで黙りこくった。
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634 :名無しさん@秘密の花園[sage]:2012/05/02(水) 20:36:13.99 ID:z4sVteCy
結局レッスン中、杏果とは一言も喋ることはなく、目もほとんど合わなかった。

「はい、今日はここまで。お疲れ様。……ゆっくり休みなさい」

ゆっくり休みなさいっていうのは多分私と杏果に。レッスン中チラチラ見たけど、いつものキレが全くなかったから。……まあ私も人のこと全然言えない。杏果がチラついて集中してなかったから。

「うわー、雨じゃん」

「え、嘘、傘ない」

しおりんの言葉にばっと反応する杏果。……傘、あるけど、声かけ辛い。

「あれ、詩織今日折りたたみと二本あるって言ってたよね?」

夏菜子ちゃんの言葉にしおりんはぎくっ、って効果音がしそうな顔で振り向いた。

「あ、じゃあ玉井……」

「あーっ、あー、高城!さっき傘貸すって約束したよね!?」

「え?……あ、あー!言った言った!貸して!」

二本あると聞いて当然借りようとした杏果を遮るようなしおりんとれにちゃんの会話。

「え?高城今日傘……」

「夏菜子傘ないんでしょ!?入れてあげるから帰ろ!」

「え?……いや私も傘持って……え?」

最後までぽかん、としてた夏菜子ちゃんは、しおりんとれにちゃんに両脇抱えられてレッスン場から出て行ってしまった。
残されたのは明らかに怒ったお姉ちゃんと、私。

「……ってちょっと待ってよ」

追っかけて扉を開ければ、ぎゃいぎゃい騒ぐ夏菜子ちゃんをなだめるしおりんとれにちゃん。

「謝っときなよ、ちゃんと。杏果すっごい心配してたから」

「え?」

れにちゃんの言葉に戸惑いを隠せない。だって、いきなりそんなこと言われても……。……なぜか一緒に夏菜子ちゃんも戸惑ってるし。

「ずーっと携帯手放さないし、ちょっと時間空いたら半泣きで電話かけてたよ。充電したんでしょ?電源入れてみなよ、たぶん着歴すごいよ」

続くしおりんの言葉には返す言葉もなく。
なーんにもわかってない夏菜子ちゃんを連れて二人は帰って行った。

部屋に戻ると杏果は黙々と着替えて、帰る準備をしていた。コンセントにつないでおいた携帯の電源を入れて、見たこともない不在着信の数にびっくり。

……心配、させちゃったのかあ。

「……傘、あるよ。一緒に帰ろ?」

「………………うん」

無視されちゃうかなって思ったけど、杏果は小さく頷くと、まだ準備が終わってない私を黙って待っててくれた。
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636 :名無しさん@秘密の花園[sage]:2012/05/02(水) 20:38:40.73 ID:z4sVteCy
「……」

無言で歩く帰り道。
二人入ったピンクの傘に雨が落ちる音が響いて、こんな状況じゃなければすごくロマンティック。

「……さっきは、言いすぎて、ごめん」

いつ、どうやって謝ろうと思ったら、先に沈黙を破ったのは杏果で。
それを聞いたらなんだか急に悪かったなって、あんなことして心配かけて何やってんだろって思えてきて。

「……っうぇ!?な、なんで泣くの!?」

「だ、だって、杏果、怒ってたのに、先に謝るからぁ……悪いこと、したのは私じゃん……」

ほら顔拭いてって差し出されたハンカチで急にこぼれた涙を拭いて。

「……ごめ、ごめん、心配、かけて、ごめんね、杏果ぁ……」

「ん、……もういいよ、だからもう絶対しないで」

10センチ程も低い位置にある肩口に顔を埋めたら、ポンポン、って優しく背中を叩いてくれた。
こんなときだけ、ずるい。

「ほら、顔上げて……傘は下げて」

「え?」

傘を持っていた方の手を、上からぎゅっと握られて。頭が当たりそうなほど低い傘の下。
そっと近づいてきた長いまつげ。唇に触るだけの、優しいキス。

「もう心配かけないでね。……約束だよ」

私のお姉ちゃんは口うるさい。
それに変に真面目で、意外に気分屋で、超ネガティブで、かわいい動物の赤ちゃんだって怖がって私の手を離せないくらい情けない。

……でも、私のことが大好きで、私が泣いてるときはぎゅってして優しくキスもしてくれる、ステキな恋人。

大量の着信履歴は半分ママからで、おうちに帰ってすっごい叱られたとか?
傘の下でしたキスは、あの三人に見られてて、次の日高城愛の劇場で再現されて杏果が真っ赤になってキレたとか?
忘れた頃に杏果に照れながら渡されたプレゼントの中身が電池で充電できる携帯充電器だったとか?……それはまた、今度話すね?
ちゃっぽんしてこよーっと。おしまい。


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