- みつどもえで百合 【2卵性】
237 :長女三女の事情-H[sage]:2011/10/01(土) 00:03:31.59 ID:R8ykBa72 - ふたば「みっ、みっちゃん! 大丈夫っスか?」
みつば「ふ、ふたば? 痛っ……」 これで、ふたばじゃなくてひとはだったらどうしようかと思ったわよ! ふたば「ち、血が出てるっスよ! みっちゃんが死んじゃうっス!」 え? 血? 本当で? みつば「ちょ! あんた、どんな勢いで扉開けたのよ!」 ふたば「意外と元気そうっスね、よかったっス」 みつば「良くないわよ!」 あぁ、頭に響く……。大きな声出すんじゃなかった。 って言うか、さっきから血が止まらない。額切ると大量に血出るらしいけど大丈夫なんだろうか? まぁ、クリスマスにひとはがサンタ役した時――――アレは額ではなかったけど――――は今の私の比じゃなかった気がするし大丈夫……たぶん。 みつば「とりあえず、タオル持ってきなさいよ!」 ふたば「わかったっス!」とてちてとてちて そういえば、ふたば先に帰ってると思ったんだけど……今帰ってきたのかしら? よくよく思い出せば、服も若干濡れてたし、どこかで変体パンツとでも遊んでたのかも知れない。 そんなことを考えて座り込んだまま額を押さえて下を向いている、扉を開けてすぐのところに紙袋が二つあるのが視界の端に入った。 何かしら? ――と疑問に思うまもなく、階段を上がる音が聞こえてきて、すぐに―― ふたば「タオルもって来たっス!」 ――と、ふたばの声が―― ひとは「み、みっちゃん……氷、持ってきたから……冷やして」 ! ひとはまで来るなんて予想外……いや、ふたばが大げさに言えば来る可能性の方が高いはず。 予想していなかった方がどうかしてる。 ひとは「……大丈夫?」 恐る恐るって感じで聞いてくる。 きっと私が怒ってるものだと思ってるに違いないだろう。 下を向いたままだった私は視線を上げる。心配そうに覗き込む二人の姿が写る。 みつば「あ、ありがと」
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240 :長女三女の事情-K[sage]:2011/10/01(土) 00:09:09.40 ID:R8ykBa72 - ひとは「(じゃあ、着るの?)」
みつば「(……)」 ひとは「(あの服を……しかも、ペ、ペアルックで登校って人類に出来るの? 雌豚なら出来るの?)」 私は、何も答えずふたばに少しだけ視線を向ける。 まだ先ほどと変わらない不安げな顔。 みつば「(ひとは……人を捨てる時が来たようね)」 ひとは「(ちょ! みっちゃん! 早まらないで、私が何とかするから!)」 そう言うと、ひとははふたばの前に立ち「コホン」と咳払いをして口を開いた。 ひとは「この服、ふたばのお金で買ったの?」 え! そこなの!? いや、確かに気にはなってたけど、そこから明日、着ない方向に? ふたば「ん、箪笥の中でお札を小生が見つけたっス!」 ひとは「っ! それ今月分の食費だよ!」 衝撃の事実! その後有耶無耶になったお陰で助かった。 ……。 ……気になる。ひとはの怒った理由。 ふたばの服の件で喧嘩の発端となった言葉は思い出せた。 “ちょっと私のお洒落な服、洗濯し忘れるとかどういうことよ! あんたらしくもないミスしないでよね!” 何気なく言ったこの台詞から機嫌が悪くなったのは確かだった……やっぱりこの台詞がいけなかったのだろう。
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241 :長女三女の事情-L[sage]:2011/10/01(土) 00:11:29.40 ID:R8ykBa72 - 杉崎「そんなの、あんたが三女を過大評価してるから、へそ曲げたんじゃないの?」
みつば「へ?」 杉崎「だって、“あんたらしくもないミスしないでよね”って言ってから怒ってたんでしょ? その台詞が理由っていうなら、怒る要素ってそれくらいじゃない?」 みつば「???」 杉崎「何? 意味わかってないの? あんな言い方だと三女が失敗しない完璧超人みたいって言ってるのよ!」 仲直りを経て、ペアルックを着ずに済んだ翌日の事。 気になりすぎて、つい杉崎に聞いてみた。まともな答えなんて返ってこないと思っていた結果がこれ。 なるほど……たしかにそうかも知れない。 私はひとはのことを運動と社交性以外は完璧な妹だと思っていたかも知れない。 宮下「そういうの、変にプレッシャーになっちゃんだよな」 空気を読まずに宮下が登場。……盗み聞きとは性格悪い奴! と、思ったが、実際そうなのかも知れない。 ひとはは、家事を当たり前のようにしていて、私達はそれに甘えていたのかも……。 ひとはは何でも出来て当たり前……そんな空気を作ってしまっていたのかもしれない。 宮下「それより、三女が完璧超人? 何言ってるんだ! 三女ほど私の助けが必要な奴なんていないぞ!」 ……ひとは、本当苦労してるわね……。 私のこと言われてる訳じゃないけどじゃないけど、張り倒してやりたい。 杉崎「そ、それより……ぷっ、何その額?」<ピロリロリーン> あからさまな話題転換は有り難いのだけど……。 私の額にはでっかい絆創膏。それを見て吹き出す杉崎。だ、か、ら! 撮るな! 額を手で隠してもなお鳴り止まないシャッター音。最悪……。
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242 :長女三女の事情-M[sage]:2011/10/01(土) 00:12:54.03 ID:R8ykBa72 - 〜 愚妹(ひとは視点) 〜
なんとか、みっちゃんと仲直りは出来た。 でも、流石にみっちゃんの服をあのままにして置いて良いわけが無い。 出来れば直して、喜んでもらいたい。 家に帰ったら修繕しないと。 松岡「ねぇねぇ三女さん、みっちゃんと仲直りできた?」 ひとは「っ! な、何でそのこと……」 みっちゃん? いやふたばだろうか? 松岡「あ! こっくりさんが……えっと“て”……に濁点に……“き”…“た”……“よ”! 仲直りできたのね!」 何これ怖い。 ひとは「だ、誰に聞いたかしらないけど……大した喧嘩じゃなかったし」 松岡「でも昨日は随分落ち込んでたよね」 え……わ、私そんな風に見えてたの? ……ここはこっくりさんの力で乗り切ろう! そう思って指先に力を入れて“そんなことない”って動か――って動かないし! 松岡「昨日ずっと上の空だったし、いつのまにか先に帰っちゃうし――」 うう……恥ずかしい、顔が熱いし真っ赤なのだろう。 そして十円が全然動かない! ダメだ、とりあえずこの場から逃げよう! そう思って指を離そうとした時―― 松岡「ダメよ! 指を離せば祟りがあるわ!」 逃げれないし……何この拷問。もうしばらく松岡さんとはこっくりさんはしないで置こう。
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243 :長女三女の事情-N[sage]:2011/10/01(土) 00:14:28.29 ID:R8ykBa72 - みつば「ただいまー…ひとは? あんたなんで先に帰――? 何やってんの?」
家に帰ってから修繕作業に四苦八苦していた時、みっちゃんが帰ってきた。 本当はみっちゃんが帰ってくる前に何とかして置きたかったんだけど、やっぱり十分足らずじゃ無謀だったかな? まだ、全然掛かりそうだ。 ひとは「……昨日の服の修繕」 みっちゃんの問いに私は端的に答える。 みつば「え……わざわざ直してくれてるの? べ、別にいいわよそんなの捨てちゃいなさいよ」 ……気を使ってるんだろう。本当、なんで日頃は鬱陶しい行動が目立つのに、こんなにも優しい所があるんだろう? だからってお言葉に甘えて、服をゴミ箱に捨てるなんて酷いことしないけど。 ひとは「……新しいの買えばお金掛かるし……それに私がしたくてやってるだけだから」 当たり障りの無い適当な理由と、小さな声で私の本音を言って作業を続ける。 みつば「そ、そう?」 態度から見るに本音の方も聞こえたかな……別にいいけどね。 ひとは「ちょっと変な破れ方だから、上手く直らないかもしれないし、着たくないなら捨てちゃって」 みつば「せっかくあんたが直したもの捨てないわよ!」 ……。 あー、もう。なんでこう素直じゃない癖に良くわからないタイミングで……。 不意打ち気味にそういう事言うの止めて欲しい。 私は作業の手を止め、みっちゃんに言ってやる。 ひとは「じゃあ、雌豚の刺繍も付けてあげるよ」 みつば「余計なもの付けなくていいわよ!」 「まったく……」と言いながら私の座る炬燵テーブル――――別に炬燵を付けてるわけじゃないけど――――を挟んだ向かい側に座る。 何か話でもあるのだろうか? 作業を再開せずにみっちゃんのほうを見ていると、落ち着きが無いというか、何か躊躇っているような様子。言っちゃ悪いが気持ち悪い。 しばらくして、急に覚悟を決めた様に顔を上げ、意外な事を言ってきた。
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244 :長女三女の事情-O[sage]:2011/10/01(土) 00:16:28.17 ID:R8ykBa72 - みつば「きょ、今日は私が夕飯作るわ!」
……。 ひとは「何言ってんの?」 みつば「だから、今日の夕飯は――」 ひとは「もう献立決まってるから、邪魔しないで」 みつば「邪魔って何――」 ひとは「邪魔は邪魔だよ」 みつば「……」 黙ってしまった。 何がしたいのか良くわからないが、ふたばの買ってきた服の件で今月の食費は厳しいのだ。 みっちゃんに自由に料理させるわけには行かない。 みつば「じゃあ…………夕飯の準備手伝うわ」 ひとは「それは、助かるけど……いったい何が狙い?」 みつば「……」 またも、黙ってしまった。意味がわからない。 私は何も言わずに修繕作業を再開した。 言いたくないなら別に言わなくていい。 それに、せっかく手伝ってくれるのに、下手に言及して手伝わないとか言われたら勿体無いし……。 ……も、勿体無いって言うのは別にみっちゃんと料理できるとかそういうことじゃなくて……えっと、 そ、そう、人手が減ったら勿体無いって意味だ。うん、それ以外に無い……絶対に無い。 そんな無駄な考えに自分で無駄な突っ込みを心の中で入れるという、無意味だし不必要な思考をしている時、 みっちゃんが、頬杖して横を向きながら、少し言いにくそうに口を開いた。 みつば「あ、あんたに甘えすぎてたかな……ってちょっと思ったから今日だけ特別に手伝って上げようかと思っただけよ」 私に甘える……? 少し疑問に思ったが、すぐ、料理や、洗濯、家事全般を私が担当している事を言ってるのだと気が付いた。 確かに、そうかも知れないけど、今更な気がする。 その疑問が顔に現れて居たかどうか判らないが、みっちゃんはその答えに近いのかどうなのか良くわからない答えを口にする。 みつば「あんたも、人間。一昨日や昨日で、あんたもミスするんだって判ったわ」 そして、その台詞は、私が聞きたかった言葉でもあった。 みつば「そ、そうそう! あんたは完璧な“丸井ひとは”じゃなくて優秀な私の愚妹ってことよね!」 その後続けたみっちゃんの言葉は、一言多くて台無しだ。 でも―― ひとは「ありがと……」 ――私の口から自然に出た言葉は、自分でも驚く素直な感謝の言葉だった。
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245 :長女三女の事情-P[sage]:2011/10/01(土) 00:23:32.88 ID:R8ykBa72 - 〜 蛇足(みつば視点) 〜
みつば「ちょ! なんで雌豚の刺繍入れたのよ!」 ひとは「名前入れておかないと、誰のか判らなくなると思って」 みつば「そうそう、この、雌豚のマークが“私の”ってひと目で判る……ってだったら“みつば様”って入れなさいよ!」 ひとは「のり突っ込み下手だね。あ、“みつば様”って入れるから貸して」 みつば「……やっぱり恥ずかしいから名前は入れないでくださいひとは様」 ひとは「だが、断る」 本当、こんなにひとはと馬鹿みたいなやり取りするのが楽しいのに、会話をしてなかったのが勿体無い。 と言っても、実際一日くらい会話しなかっただけなんだけど……私、どんだけひとはとの会話が好きなのよ……。 夕飯の準備の時も楽しかった。あれなら毎日……いや、それは何だがひとはと料理するのが楽しみにしてる様で恥ずかしい。 ひとは「ねぇ、みっちゃん。結局上手く直ってないし、雌豚と入れちゃったしいらなかったら本当にすてちゃっていいよ?」 さっき渡した服を広げながら、結局は刺繍をし直さずに聞いて来た。 みつば「す、捨てないわよ! 外に着てくのはアレだけど、ちゃんと部屋着として使ってあげるわよ!」 そういって広げていた服を取り返す。 捨てるわけ無い。その服は破れる前の時よりも、大事なお気に入りの服だから。 ……絶対外じゃ着ないけど。 おわり 〜〜〜以上本編〜〜〜 毎度長い文章読んで頂きありがとうございます。 本当は前半で終了予定でもう少しふたばを絡ませる予定でした タイトルの「事情」=「次女」を指してたんだけど、全然そんなこと無かったorz 前半部分で納得できず後半部分の流れに方向転換(全体的にも多少修正)した為 いつにも増してgdgdです……。 感想などあればお願い致します。
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251 :名無しさん@秘密の花園[sage]:2011/10/01(土) 21:36:09.07 ID:R8ykBa72 - 245です
>>246-250 感想ありがとう御座います! >>248 猫の名前付ける回なんてのも良かったなー
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