- 【マジすか学園】センターとネズミの秘密の部屋
397 :名無しさん@秘密の花園[sage]:2011/10/01(土) 19:40:56.02 ID:15GatL7X - >>333です。
やっとこさ出来ましたので投下します! お待たせしてすみません。
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398 :名無しさん@秘密の花園[sage]:2011/10/01(土) 19:44:42.15 ID:15GatL7X - 「愛を知らない恋人」
私の視線の先には無駄にデカいシャンデリアが、その役目を果たさずに天井から吊るされていた。無数のスワロフスキーが散りばめられた俗な高級品が、この敷居に見合った物であるかどうかなんて私にはどうだって良かった。 電球の数を無意識に数えてみる。前に数えたときと変わらなかった。 白い壁に囲まれたこの部屋は、私たちが卑しい欲求を解消しにくる場所だ。 私の愛しい人の横顔は、暗がりの中で液晶画面の光に照らされている。私は彼女の細い足に手を伸ばした。 「触るな」 可愛らしい顔が低い声で言う。私は大人しく手を引いた。暫くしてご満悦な様子で笑みを浮かべながら画面を眺めて、満足したのか携帯を閉じた。 するとネズミは私の上にのし掛かった。 「キスして」 「触るなって言っただろ」 「気が変わった」 ネズミは自ら顔を寄せて私の唇を弄んだ。彼女のポーカーフェイスの裏に潜んだ陰謀に少し心が苦しくなったが、小さな舌がチロチロと歯列をなぞりだし、私は簡単に理性を放り投げ彼女に馬乗りになった。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー かつて人間がこの世に生を受けてから担った使命として、命を繋ぐことを目的とした手段は、いつからかその手段だけが独立して意味を持った。 セックスの根幹には底無しの性欲があって、何より無類の愛がある筈だ。最初の頃は私たちも、少なくとも私はそうであると信じていた。 しかしいつからか、彼女を抱く度に感じていた薄暗くぼんやりとした疑問は、色濃く確かなものになって目の前に現れた。 ネズミにとってのセックスは、私を掌の中で踊らせる為の手段でしかなかったのだ。 わざと抗ってみたり、たまに猫なで声で鳴いてみたりする私の恋人の征服欲は、マジ女のテッペンを取っても尚、留まる事を知らない。 矢場久根、素手喧嘩が衰退していく今、私たちマジ女に敵はもう居なかった。だから他校といがみ合う理由も、戦争をする必要もなかったのだ。それに私は彼女を守るために無闇に拳を握るのを控えていた。 しかしネズミはそれに対しても不満な様で、残酷にも血を見たがった。 ある日そんな彼女から提案があった。
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399 :名無しさん@秘密の花園[sage]:2011/10/01(土) 19:48:32.44 ID:15GatL7X - 「ネズミ様の駒に相応しいヤンキーオーディションを開催する」
街頭演説の如く机に立って言うネズミ。 「他校の奴らを食ってどうするんだ。マジ女で固めれば十分じゃないか」 「私は最強の帝国を作りたいんだ。何もマジ女に固執する必要はない。寧ろ嫌いだね、そういう仲間意識は」 「ラッパッパとは上手くやっていけると思うが」 「ネズミはネズミ色にしか染まらないんだよ」 秋の青空の下、私の返事に呆れたようにため息をついて、ネズミは紙とペンを取り出した。B5サイズの裏紙の真ん中に描いたのは大きな三角形。 斜辺を三等分するように底辺に平行な直線を二本引いて、その三角形は三段階の階級に分けられた。 「完璧な組織を作り上げるには身分制度が欠かせない」 そう言ってポケットからフリスクを2種類取り出す。蓋を外して白い粒を紙の上にばらまき混ぜ合わせた。 「なんだよこれ」 「白銅何枚かで買える陳腐な兵隊たちさ」 「混ぜたら分からなくなるだろ」 「一見同じに見えるけど、味見をすればすぐ分かる」 青い箱とピンクの箱から一粒ずつ取って舌に乗せた。私の目を見ながら味わって、片方一つを吐き出した。それは一番下の段に配置される。 「こいつは雑魚」 残りの一つを口から出して、二番目の段に置いた。 「こいつはちょっと使える」 それに、と言って更に取り出したのは一万円札。 「偏差値30の大好物だ」 ばらまいたフリスクを掴んで、ピン札の上に落としていく。白い粒の間から覗く福沢諭吉がミスマッチだった。 「あいつら自分の名前すら漢字で書けない癖に、これで物が買えるってことは知ってるようだからな」 「それだけじゃいずれ飽きるだろ」 「人間は金に飢えると滑稽なほど思考力を無くすんだ。うちの親父が良い見本。ヤンキーなんか元々思考力ゼロ以下なんだから諭吉さん見せれば尻尾振って着いてくる」 お札を押さえる二段分の台形と、残るは一番上の三角形。ネズミは噛んでいたガムを口から出して頂点に貼り付けた。 「ここはもちろん、私たち」 めでたくネズミ考案の新たなテッペン取り作戦が完成したようだ。
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400 :名無しさん@秘密の花園[sage]:2011/10/01(土) 19:54:26.09 ID:15GatL7X - 「何かご質問は?」
楽しそうに笑うネズミに、私は聞いた。 「組織が巨大化すると、その分リスクが上がるだろ。例え少し使える奴を置いていても」 「センターさん、少し偏差値上がった?」 私を小馬鹿にして、眉を浮かせながらネズミは答える。 「でもまだE判定だな」 黒い瞳がギラギラ光らせてネズミは机に手を置いた。 「問題が起きたらその時は、」 ネズミは薄っぺらな未来予想図を持ち上げてひっくり返した。重力に従って兵隊たちが落下し、机に当たる音が屋上に響く。重石を無くした価値ある紙は風に吹かれて飛んでいった。 「ポイすればいいだけのことさ」 欲に溢れた三角形の頂点には、自然の摂理に反した私たちだけが残った。すると徐にネズミは立ち上がり、私の膝の上に座る。 「…なにしてんだ」 「恋人の膝に座ったら犯罪か?」 「ネズミらしくない」 「お前の知らない私を見せてやるよ」 今まで再三勿体ぶって拒否してきた癖に、初めての口づけは、いとも簡単に彼女に奪われた。ネズミらしくない爽やかなミント味がした。こうして私は小さな策略家に従うことになったのだ。 ーーーーーーーーーーーーーーーーー 「4丁目のいつもの倉庫だから」 「ああ、分かった」 絨毯に散らばった制服を拾い上げて着替える私にネズミは言う。うつ伏せになりながらシーツにくるまり、さっきまで淫らに開いていたその白い足をパタパタと動かしていた。 目の前の大きな鏡に、スカーフを通す私が写った。彼女を苛めた手のひらを、今度は勝負の武器に変える準備にかかる。ボキボキと音を鳴らすと、先程とは違った刺激が血液を流れていくのを感じた。 「まだ帰らないのか?」 「疲れたからもうちょい居る」 「そうか」 いつもは私が準備を始めると彼女はシャワーを浴びるのだ。水の音が響くバスルームに「行ってくる」と声をかけても返事はないが。 私はドアノブに手を掛けて、気だるそうに寝転がるネズミからの見送りの言葉を待った。しかしその代わりに聞こえたのは彼女の携帯の着信音。 「もう集まってるって。さっさと済ませて来て」 今日は、先日他校から引き抜いた奴を取り返そうとする仲間からの申し入れだった。 「人数は?」 「ざっと二十」 「終わったら話があるから帰らないで待っててくれ」 「一時間以内に帰ってくればね」 「じゃあ三十分で戻る」 「どうぞご自由に」 戦争の火付け役の高らかな笑い声を背に私は部屋を出た。 続く
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