- 【ガスト】アトリエシリーズで百合 2
501 :名無しさん@秘密の花園[sage]:2011/09/01(木) 00:18:50.83 ID:Lr1wRw/7 - SS投下します。
カップリング特になし。強いて言うならトトミミ。 メルルとフィリーが酒場で会話をしているだけな内容です。
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502 :名無しさん@秘密の花園[sage]:2011/09/01(木) 00:20:47.36 ID:Lr1wRw/7 - 「まったく分かってないのよね!」
ある日のこと。メルルが酒場に仕事を探しに来ると、そこには珍しく荒れているフィリーがいた。 「どうしたんですフィリーさん? 何が分かってないんですか?」 「あっ、メルルちゃん! ちょっと聞いてよ! これなんだけど――」 メルルの姿を見るや、フィリーは一冊の本を取り出した。 「これは……小説ですか?」 「うん。この前アーランドで出たばっかりの新作の恋愛小説」 人口の増加に伴う物流の促進、加えて印刷所や図書館といった施設の充実によって、ド田舎だったアールズでも新しい書籍が手に入りやすくなっている。 フィリーが手にしている小説も、そういう経緯でここにある、ごく普通の読み物である。一体何が問題なのか、メルルは首を傾げた。 「この本がどうかしたんですか?」 「どうしたもこうしたもないわよ! 期待してたのに内容がひどいのよ!」 「はあ……どうひどかったんですか?」 別にさしたる興味はなかったが、フィリーの方が話したがるだろうと思い、メルルは尋ねてみる。 「まずね、この小説の謳い文句はこうよ! 『禁断の恋に堕ちる二人の少女を描く、魅惑の純愛ファンタジー!』」 「禁断の恋って、やっぱりそっち系ですか……」 「もちろん! 私のメインディッシュだもん!」 「偏食は良くないですよフィリーさん」 メルルの突っ込みはスルーして、フィリーは話を進める。 「それで内容なんだけどね、主人公はとある小さな国のお姫様で、あるときそのお姫様が悪いドラゴンに誘拐されちゃうの」 「これでもかってくらいファンタジーの王道展開ですね」 「捕らわれの身になったお姫様があわやドラゴンの餌食に――というところで助けに来たのが」 「王子様とか勇者様、ではないんですよね?」 「そう! お姫様を助けたのは、たまたまドラゴンの巣に材料探しに来ていた魔法使いの女の子なの!」 「ドラゴンの巣に材料探しって、何だか錬金術士みたいですね」 「まあ、実際作中で似たようなことしてるけど。それはさておき、ドラゴンをやっつけた魔法使いに感動したお姫様は、そのまま魔法使いの押し掛け弟子になっちゃうの」
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503 :名無しさん@秘密の花園[sage]:2011/09/01(木) 00:25:08.88 ID:Lr1wRw/7 - 「はあ……お姫様だったり押し掛け弟子だったり、何だか私に似てるなぁ」
「魔法使いの方は最初迷惑がるんだけど、姫様のひたむきさにだんだんと心を開いていくの。 お姫様の方も王様や周りの人に魔法使いになることを反対されたりするんだけど、少しずつ問題を解決していって……そうしていくうちに、お姫様と魔法使いの間には、師弟関係とは違った淡い思いが芽生えていくの……」 「ふむふむ……その話しぶりだと、フィリーさん好みの展開で問題ないようですけど」 「あるのよ。このあと大いに」 フィリーは声を落とし、表情をこれ以上ないほど曇らせる。 「紆余曲折を経て二人がお互いに抱く気持ちを恋だとハッキリ自覚して、あとは告白とその後のチョメチョメを残すのみとなったところでね――」 フィリーは声を震わせ、天を仰いだ。 「あろうことかっ、魔法使いの女の子がっ、魔法の薬でっ、自分を男の子にしちゃうのよーっ!」 涙さえ浮かべて、フィリーは悲痛な叫びを上げた。 「えーと……つまり、女の子同士だと結婚やら色々できないから、男の子になったってわけですよね。ファンタジーなんだから、それくらいいいんじゃないですか?」 「いいわけないでしょ! 私は純粋な女の子同士のラブラブだけを期待してたのに、何で余計なもの生やしたりするのよーっ!」 「あの、フィリーさん……ここ、一応公共の場所っていうか、あなたの職場……」 生やしたり、はまずいだろうと思ったが、幸い聞き耳を立てているような人はいなかった。 「お姫様は男の子になった魔法使いのプロポーズを受け入れて、二人はいつまでも幸せに暮らしましたとさ……そんなわけでお話はめでたしめでたしだけど、百合百合詐欺にあった私の心は深〜く傷ついてるの」 「何ですか百合百合詐欺って」 「よくあるのよ! 百合ものを匂わせておいて、蓋を開けたらふたなりだったり、男の人が混じってハーレムになったり、純粋な百合を求める私達百合女子と一部百合男子を絶望の淵に陥れる、悪鬼の如き所業よ」 「そこまで言うほどのことですか……?」 「言うほどのことなのよ! というわけでメルルちゃん! 傷ついた私の心を癒すために、何か新鮮なネタをちょうだい!」 「新鮮なネタですか? さっき釣りに行ってたステルクさんが、新鮮な川魚をお裾分けしてくれたんですけど、持ってきましょうか?」
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504 :名無しさん@秘密の花園[sage]:2011/09/01(木) 00:30:02.59 ID:Lr1wRw/7 - 「そういう意味のネタじゃなくて、リアルなエピソードを聞きたいのよ。何かあるでしょ。最近ケイナちゃんとアトリエでイチャイチャしてたとか、お城でイチャイチャしてたとか、採取先でイチャイチャしてたとか、ソファの上でイチャイチャしてたとか、ベッドの中で――」
「どんだけイチャイチャさせる気ですか。ケイナは真面目ですから、人目につくようなところでそんなことしません」 「つまり人目につかないところでは――」 「ノーコメント!」 フィリーの質問をピシャリと遮るメルルだが、『答えない』という答えを与えているのは、嘘のつけない素直な性格ゆえか。 「じゃあ他に何かない? イチャイチャじゃなくてもいいし、他の人の話でもいいし」 「うーん……そういえば、この間アトリエにミミさんが来てた時にですね、お姫様抱っこの話題になったんですよ。ミミさん、昔ケガしたトトリ先生をお姫様抱っこで運んだことがあるとか」 「おお! それはぜひとも見てみたいシーンね!」 「ミミさんが『あの頃のトトリはすごいひ弱だったのよね。まあ今もあんまり変わってないけど』みたいなことを言うと、トトリ先生が『そんなことないもん! 今だったら私の方がミミちゃんをお姫様抱っこできるよ!』と返しまして」 「ふんふん」 フィリーは興味津々といった面持ちで、メルルの話に聞き入っている。 「それでミミさんが『ああいう持ち方は見かけより難しいのよ? あんたじゃ一秒も保たず倒れるに決まってるわ』て言うと、先生なんだかムキになっちゃいまして『平気だよ。ミミちゃんぐらいならラクラク持ち上げるんだから』 するとミミさん『面白いわね。じゃあやってみなさいよ。ホントにラクラク持ち上げられたら、あんたの言うこと何でも聞いてあげるわよ』と、今思えば負けフラグ満々なことを言っちゃいまして」 「てことは、トトリちゃんお姫様抱っこできたんだ。ラクラク」 「そこはホラ、錬金術士ですから。腕力を増強するアクセサリーとか色々」 「なるほど。それでどうなったの?」 「貴族に二言は無い、ってことでミミさんはトトリ先生の言うことを聞くことになりまして。 それで先生『せっかくお姫様抱っこされたんだから、お姫様みたいな格好してるミミちゃんが見たいな』ってことでミミさん、普段なら絶対着ないようなフリフリのドレス姿にされてしまいました」
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505 :名無しさん@秘密の花園[sage]:2011/09/01(木) 00:34:46.34 ID:Lr1wRw/7 - 「ちょっとメルルちゃん! そんな美味しすぎるシチュエーションで私を呼んでくれないなんてひどいじゃない!」
「そんなこと言われましても……それでまあ、衣装は私の滅多に着ないやつを貸しまして、いかにも女の子らしいデザインのドレスをケイナがささっとサイズ調整したんですけど…… 何ていうかミミさん、貴族の肩書きは伊達じゃないっていうか、すっごい可憐で、私よりよっぽどお姫様みたいで」 「う〜……それは見たかった……女房を質に入れてでも見たかった〜」 「いないものをどうやって質入れするんですか。それでですね、大変身したミミさんにトトリ先生のテンションがものすごいことになりまして。 興奮を隠そうともせず『こんなこともあろうかとマークさんから借りてて正解だったよ!』とか言いながら、三脚付きのごっついカメラでミミさんを激写しまくってました。ミミさんはずっと恥ずかしがってたんですけど、その様子がまた可愛らしいのなんのって」 「写真あるの!? 焼き増し! 焼き増ししてメルルちゃん!」 「無理ですよ。トトリ先生用に一枚ずつだけ現像したあと、ミミさんがフィルムを没収しちゃいましたから」 「そんなぁ……」
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506 :名無しさん@秘密の花園[sage]:2011/09/01(木) 00:36:30.54 ID:Lr1wRw/7 - 「まあとにかく、そんなことがありました」
「え? それだけ? 終わり?」 「はい。終わりですけど」 「え〜? その先があるんじゃないの? 可憐に変身したミミさんを、トトリちゃんがお持ち帰りしちゃったり、部屋まで送って行ってそのまま狼さんになっちゃったり!」 「ありませんてば」 「そっかぁ……でも面白いお話だったよ。ありがとうメルルちゃん。傷付いた心がだいぶ癒されたよ」 「それは良かったです」 「今度トトリちゃんに写真見せてくれるよう頼んでみるね」 「その時はミミさんと遭遇しないよう注意してくださいね。それじゃあ」 「うん、またね」 軽く手を振ってフィリーと別れ、メルルは酒場を出た。 「フィリーさんの趣味って、やっぱり変わってるなぁ……」 そんなことを呟きながら、メルルはアトリエへの帰り道を歩いていく。 「そういえば何かを忘れているような…………あ」 はたと立ち止まり、メルルは呟く。 「お仕事探しに行ってたの忘れてた……!」 間抜けな自分に呆れながら、メルルは今歩いてきた道を慌てて引き返していった。 しかしこのあと戻った酒場で、またしてもトトリやミミやケイナのことでフィリーと話し込んでしまい、仕事のことを忘れそうになってしまう。何だかんだで、フィリーの趣味に馴染みつつあるメルルだった。 おわり
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507 :名無しさん@秘密の花園[sage]:2011/09/01(木) 00:37:08.18 ID:Lr1wRw/7 - 以上。読んでくれた人、ありがとう。
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