- 【ガスト】アトリエシリーズで百合 2
142 :名無しさん@秘密の花園[sage]:2011/07/30(土) 00:57:53.16 ID:teBI2Qgq - カバン持ったケイナリスとデリンジャー持ったクーデリスも登場だな
おまけに人形つれたリオネラリスとハタキ持ったツェツィリスとブーメラン持ったフアナリスも参戦か ここからが本当の地獄だ…
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145 :名無しさん@秘密の花園[sage]:2011/07/30(土) 14:50:09.20 ID:teBI2Qgq - SS投下します。
>>77のシチュをイメージして書いてみました。期待に沿えているかは分かりませんが。
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146 :名無しさん@秘密の花園[sage]:2011/07/30(土) 14:53:35.29 ID:teBI2Qgq - 天気は快晴、気温は快適、風は優しくそよぐほど。絵に描いたように清々しい、そんなある日のこと。
大自然が恵んでくれた清々しさに喧嘩を売るように、アールズ街はずれのアトリエから、凄まじい爆音が響きわたった。 「ケホッ……ケホッ……あうー、またやっちゃった」 全身すすだらけなメルルが肩を落とす。毎度おなじみというほど頻繁ではないが、季節の変わり目程度には馴染みのある、調合失敗の光景だ。 「ごめんなさい先生……」 「落ち込まないでメルルちゃん。今のはかなり難しい調合だからね。失敗も良い経験だと思って、次に活かさないと」 トトリは優しく、しかし毅然とした口調でメルルを励ます。だいぶガックリきていたメルルだが、トトリにそう言われると再び目に輝きが戻ってきた。 「先生……分かりました! もう一度チャレンジしますね!」 「その意気だよ。あ、でもその前にお掃除をしないとね」 「あー、そうでしたね。大変そうだなぁ、これ……でも」 散らばった機材やすすだらけの床、壁、備品……見ているだけでうんざりするが、避けては通れない相手である。 しかしその時、汚れきったアトリエに一人の救世主が。 「失礼します。先ほど爆発があったと外の子供達が……ああ、思った通りですね」 「やっばりきてくれたーっ! ケイナ! お掃除手伝ってー!」 「もちろんですよ。あとは私にお任せ下さい」 アトリエ内の惨状を見るや、ケイナはメイドの本領発揮とばかりにイキイキとお掃除を始めた。 「ケイナちゃんが来てくれたらもう安心だね。私はちょっと用事があるから、出かけてくるね」 「あ、はーい。行ってらっしゃーい」 ケイナと一緒にアトリエをお掃除しながら、メルルはトトリを見送った。
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147 :名無しさん@秘密の花園[sage]:2011/07/30(土) 14:58:03.75 ID:teBI2Qgq - 並木通りから少し外れた小川のほとり。頭上に広がる木枝の隙間からは、キラキラと日の光がこぼれている。風に揺らぐ木々の音色、微かな川のせせらぎ。佇むだけで涼やかな気持ちになりそうな、そんな場所。
そこに一人、地べたに座って、じっと川を眺めている人がいた。 「……はぁ」 物憂げにため息をついているのは、先ほどアトリエを出てきたトトリだった。 「…………」 「こーら。何をため息なんてついてんのよ」 「えっ」 不意に声をかけられ慌てて振り向くと、そこにはトトリの親友であるミミが立っていた。 「ミミちゃん……どうしてここに?」 「別に、偶然よ」 そう言って、ミミはトトリの隣に腰を下ろす。 「――ていうのは半分嘘で、何だか暗い顔で歩いてる誰かさんを見かけたから、追っかけてきたんだけど」 「え……私、そんな暗い顔してた?」 トトリは自分の表情を確かめるように、頬に手を当てる。 「してたわよ。まあ、あんまり他の人には分からないかもだけど……」 「そっか……ミミちゃんだからだね」 トトリはホッとしたように表情を和らげる。 「それで? 何があったのよ?」 「何があったってわけでもないんだけど……」 「いいから話しなさいよ」 「うん……」 問われるままに、トトリはポツポツと話し出す。胸の内にたまっていた澱を吐き出すように。 「私、これからもちゃんと先生やっていけるのか不安なんだ」 「どうして? メルルには十分過ぎるほど慕われてると思うけど」 「うん……メルルちゃんはいい子だよ。やる気もあるし。でも、私だってまだまだ勉強しなきゃいけないことがたくさんあるし、先生としての仕事をキチンと果たせるのかどうかが不安なの。 さっきね、メルルちゃんが調合に失敗したの。励まして、それでメルルちゃんはまたやる気になったけど、後から思えば調合中にフォローできる部分があったんじゃないかって思って…… たとえばロロナ先生だったら、そういうのはすぐに気付いてフォローしてくれるけど、私はそういうところがまだまだ鈍くて、今日みたいなことになっちゃうんだ」 「ふぅん……新米教師の悩みってやつね」 「メルルちゃんのことは好きだし、教え甲斐もあるの。でも私は……やっぱりまだ先生になるの早かった気がして……」
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148 :名無しさん@秘密の花園[sage]:2011/07/30(土) 15:03:53.97 ID:teBI2Qgq - トトリは肩を落としてため息をつく。ミミはその様子を見ながら、さもありなんと心の中で頷いていた。
元々トトリは、素直だが内気で気の弱い性格だ。錬金術を身に付け冒険者としての経験を積むことで自信と積極性を身に付けたが、ミミと出会ったばかりのトトリには、多分に本来の性格が見て取れた。 そんなトトリが、急遽ロロナの代理として故郷を遠く離れ、一人慣れないアールズでアトリエを経営する。それだけでもかなりのプレッシャーなのに、そこにさして年も離れていない押し掛け弟子ときた。 おそらく、人には見せないところで、随分と思い悩んでいただろう。 「……トトリ」 「何? ミミちゃん」 「メルルがさっきの話を聞いたら、きっとこう言うわね」 ミミは咳払いを一つして、口を開く。 「何言ってるんですか先生! 私にとってトトリ先生は最高の先生なんですよ!」 「うわっ、ミミちゃん今の似てる!」 即興の声マネだったが、かなり似ていた。仕草までメルルをマネて握り拳だ。 「トトリ。あなたに錬金術を教えてくれたロロナさんは、完全無欠の優秀な先生だった?」 「え? ……それは、その……あんまり……」 言葉を濁すトトリだが、事実を言えば答えは「否」だろう。教え方が感覚的すぎて、トトリ以前にはまともな教え子すら得られなかったぐらいだ。 「でも、トトリにとってロロナさんは最高の先生だった。違う?」 「ううん。違わないよ」 「だったらもう、答えは一つじゃない」 ミミは優しく微笑みかけ、言葉を続ける。 「トトリ、あんたは頑張ってる。私もそれを知ってるけど、誰よりそれを分かってるのは、きっとメルルだと思うわ」 「メルルちゃんが……?」 「多分ね。頑張っていい先生になろうとしてる、そういうところも全部ひっくるめて、あの子はトトリを慕ってるのよ」 「そう……なのかな?」 「そうよ。だから、悩みながらでも、あの子の先生を続けるべきよ。トトリなら、きっとやり遂げられるわ。私が保証してあげる」 真っ直ぐにトトリの目を見据えて、ミミは力強く言い切った。 トトリも真っ直ぐにその視線を受け止め、頷いた。 「……分かった。私、もっと頑張ってみるね。ありがとうミミちゃん。ちょっと元気になれたよ」 「あら。ちょっとだけ?」 「あ、ううん。すごくだよ。すごく元気になれた」 「そう。それは何よりだわ」 冗談めいた口調でミミがそう言うと、ようやくトトリの顔に笑みが戻った。
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149 :名無しさん@秘密の花園[sage]:2011/07/30(土) 15:11:51.05 ID:teBI2Qgq - 「ごめんねミミちゃん。急にこんな相談しちゃって」
「これくらい、なんでもないわよ。また何か悩むことがあったら、いつでも言いなさい」 「ミミちゃん……」 「何よ?」 「ありがとう……ミミちゃんのそういうとこ、大好きだよ」 「なっ……急に何よ改まって……」 トトリのストレートな台詞に、たちまちミミの顔が真っ赤になる。 「ねえミミちゃん。もういっこわがまま言っていいかな?」 「いいけど……何?」 「その……」 トトリは少し照れたように頬を赤らめる。 「ミミちゃんに、ぎゅってしてほしいの」 「え……な、何で?」 「してほしいから……じゃダメ?」 「だ……ダメじゃないわよ……じゃあ、えっと……」 ミミはぎこちない手付きてトトリを抱き寄せた。 トトリはミミの胸元に顔をうずめて、大きく息をつく。 「ミミちゃん、いい匂い……」 「ば、ばか。何言い出すのよ」 恥ずかしがるミミだが、トトリを抱きしめる手は放さない。 「それにあったかい……こうしてると、ホッとする……」 トトリは小さな子供のように、澄んだ笑みをうかべていた。 「まったく……いつまで経ってもあんたは甘えん坊ね」 「違うよ……ミミちゃんだからだもん」 「……」 トトリの背に回した腕に、ミミは少しだけ力を込めた。大切な宝物を、優しく慈しむように。
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150 :名無しさん@秘密の花園[sage]:2011/07/30(土) 15:14:08.56 ID:teBI2Qgq - 機材の洗浄、備品の整理、床、壁、窓の拭き清め。全てを終えたアトリエ内は、さっきまでとは見違えるほどピカピカになっていた。
「よしっ! お掃除完了! ケイナ、いつもありがとう!」 「いえ、どういたしまして」 ほぼ九割ケイナのおかげでお掃除を終えたメルルは、気合い十分といった面持ちで調合釜の前に立つ。 「さて、それじゃあ調合再開――って、そういえば先生おそいなぁ」 時計を見てメルルは首を傾げる。買い物にしろ酒場で依頼を受けるにしろ、随分と経っていた。 「うーん……」 調合の手順自体は分かっているし、作業を始めても問題はない。今はケイナがいてくれるから、成功率も上がっている気がする。 しかし、メルルは手にしていた杖を傍に立てかけた。 「やっぱり先生が帰ってくるまで待ってようっと」 「では、お茶を入れましょうか?」 「あ、それも先生が帰ってくるまで待って。せっかくのケイナのお茶だもん。先生と一緒がいいよ」 「分かりました……それにしても、メルルは本当にトトリ様のことを慕ってるんですね」 ちょっぴり焼き餅な響きを含んだケイナの言葉だが、メルルは素直に大きく頷いた。 「もっちろん! 私にとってトトリ先生は最高の先生なんだから!」 (おわり)
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151 :名無しさん@秘密の花園[sage]:2011/07/30(土) 15:15:12.37 ID:teBI2Qgq - 以上。読んでくれた人、ありがとう。
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