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名無しさん@秘密の花園
【アトリエシリーズ】ロロナのアトリエで百合

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【アトリエシリーズ】ロロナのアトリエで百合
742 :名無しさん@秘密の花園[sage]:2011/06/28(火) 01:18:01.85 ID:3O4M8Khe
 アールズ王国の王女メルルが、錬金術の力を使って国の発展事業に乗り出してからしばらく経った頃。
 各地の開拓は順調に進み、アールズの人口は飛躍的に増加していた。
 人が増えると同時に物の需要も増え、街のそこかしこには色々な店などが出来つつある。
 そんな新興の土地から、やや離れた場所。街の喧騒からは壁一枚隔てたような場所に、真っ白な壁が目にまぶしい、新しい建物があった。
「うわぁ……ステキな教会」
 街を見回っていてふと見慣れぬ建物を見つけたメルルは、近くに寄ってみて思わず声を上げた。
 全体を清潔感溢れる白で統一し、一見単純な造りに見えるが、ドアや窓枠など細かい所に目をやれば、実に細やかな工夫をされているのが分かる。
 今までのアールズにはなかった、洗練されたデザインの教会だ。
「人が増えてくると、こういう場所も必要になってくるんだ……あ。あの人、神父様かな?」
 熱心に窓拭きをしている人当たりの良さそうな中年の男性を見つけ、メルルは声をかける。
「こんにちはー」
「ああ、これはこれは姫様。どうもこんにちは」
 向こうはメルルのことを知っていたようだ。最近のメルルは街の中といわず外といわず駆け回っているので、新規の国民にもよく顔を知られている。
「あの、ここの神父様ですか?」
「いえ、私は当結婚式場のオーナーをさせていただいている者です」
「え? 結婚式場? 教会じゃないんですか?」
「教会にもできますが、ここは結婚式場として使うために建てられたのです。我々は冠婚葬祭を取り扱っておりまして――」
 人口が急激に増えたアールズでは、そういった儀礼・儀式の需要も増えてくる。そこを見込んでこの商売を始めたのだという。
「なるほど、結婚式……この国に新しく来た人達が、ここで根を張って暮らすなら、当然ここで家庭を作るんだもんね」
「その通りです姫様。つきましては一つお願いがあるのですが――」


【アトリエシリーズ】ロロナのアトリエで百合
743 :名無しさん@秘密の花園[sage]:2011/06/28(火) 01:20:48.47 ID:3O4M8Khe
「うーん、どうしようかなぁ……」
 アトリエへの帰り道。てくてく歩きながら、メルルは先ほどのオーナーからの頼みごとについて考えていた。
「結婚式のモデルなんて……簡単に引き受けてくれる人いるかなぁ」
 オーナーの頼みとは、結婚式場の宣伝に使うための写真のモデルを探してくれ、というものだった。正直戸惑ったが、せっかくメルルのことを見込んでの頼みなのだから、一肌脱ぐことにしたのだ。
「ダメ元で先生とジーノさんに頼んでみようかな。幼なじみ同士だし、遊び感覚で気軽にやってくれるかも」
 そんなことを一人呟いてから、メルルはアトリエのドアを開けた。
「ただいまー」
「あ、メルルちゃんおかえり」
「お邪魔してるわよ」
「あ、ミミさん。来てたんですね」
「近くに寄ったからついでにね」
 ミミに挨拶してから、メルルはトトリに件の話を切り出す。
「結婚式のモデル?」
「はい。今度新しく作られた式場で、実際の式の流れに沿って写真を撮るそうです」
「うーん……それって、エスティさんやフィリーさんじゃダメなの? 私より写真映えすると思うけど」
「それも考えたんですけど……あの二人に、特にエスティさんに、結婚式のモデルをやれって頼むのは、何だかとてつもなくデリケートな部分を刺激してしまうような気がして……」
「あー……確かに」
 メルルとトトリはしみじみと頷いた。
「というわけで先生、お願いできないでしょうか」
「分かったよ。メルルちゃんのお願いだしね」
 にっこり笑って承諾してくれたトトリに、ホッと胸を撫で下ろすメルルだった。
「それじゃあ次は――」
「ちょっと待ちなさい!」
 不意にミミが話に割り込んできた。
「なんですか? ミミさん」
 ミミは何やら険しげな表情で、メルルに問う。
「結婚式のモデル……ということは、新郎役もいるわよね。誰なの?」
「ああ、それは今からジーノさんに頼もうと――」
「ダメよ!!」
 鼓膜が一瞬キンとなるような大声。何事かとメルル、トトリは目を丸くする。
「絶対にダメ! 他の人なら良いわけじゃないけど、とにかくあいつはダメ!」
「ミ、ミミちゃん?」
「な……何でですか? ただのモデルだし、ホントに結婚するわけじゃないですよ」
「それでも十分に危険なのよ……!」
【アトリエシリーズ】ロロナのアトリエで百合
744 :名無しさん@秘密の花園[sage]:2011/06/28(火) 01:24:03.86 ID:3O4M8Khe
 トトリとジーノは小さな頃からずっと近くにいた幼なじみだ。その関係性は大人になった今でも幼少の頃とあまり変わることはなく、互いを男女として意識することも希薄である。
 だがしかし、そんな二人だからこそ、モデルとはいえ結婚式などしてしまえば、その場の雰囲気に呑まれて急速に互いを意識してしまうような事態がなきにしもあらず、だ。
(そんなことになったら、私は……私はあああぁ!)
 不吉な未来を想像して、頭を抱えて身悶えるミミだった。
「でも、ジーノさん以外だと、適当な人が思いつかないですし……」
「ふっふっふ……話は聞かせてもらったわ」
「え?」
 突如その場に響いた声。三人が一斉に振り向くと、
「フィリーさん!?」
「はーい、フィリーさんでーす!」
 妙にテンションの高いフィリーがそこにいた。
「いつの間にアトリエの中に……いやそれよりこんな時間に来て受付の仕事は?」
「メルルちゃん、今は細かいことを気にしてる場合じゃないでしょ」
 後半はかなり大事なことだが、フィリーは気にせず話を続ける。
「結婚式の新郎役を探しているんだよね」
「はい。フィリーさん、誰か心当たりが?」
「ふふ……トトリちゃんが花嫁になるなら、花婿はこの人以外にあり得ない……!」
「この人?」
「そう……」
 フィリーは高く右腕を上げて、天井を指差す。そのまま一気に腕を振り下ろし、ビシリと音が鳴りそうな勢いで「この人」を指した。
「え?」
「ミミちゃん?」
「わ……私?」
「そう……ミミちゃ、ミミさんが新郎になってトトリちゃんと結婚式を挙げるのよ!」
「ええええ!?」
 もはや決まったことのように断言するフィリーに、メルルは驚き声を上げた。
「ちょっと待ってください! 先生もミミさんも女で、それじゃ女同士で結婚式を挙げることになっちゃいますよ?」
「それがどうかしたの?」
「うわ、この人本気で微塵の疑問も抱いてない……」
 改めてフィリーに対し、ついていけないものを感じるメルルだった。
「ミミさんもそんなの困りますよね? ――って、うわっこっちはこっちでものすごい乙女みたいな表情に!?」
 トトリと自分が結婚式を挙げる……その言葉の響きだけでちょっと遠い所に行っていたミミは、メルルに呼びかけられ慌てて帰ってきた。
【アトリエシリーズ】ロロナのアトリエで百合
745 :名無しさん@秘密の花園[sage]:2011/06/28(火) 01:27:13.86 ID:3O4M8Khe
「じ……冗談じゃないわよ! 何で私が、トトリと、け、け、け、結婚式なんて、そんなステキな――じゃなくて望むところ――でもなくて、そんな、そんな……願ってもない、って違う! と、とにかく、その、そんな魅力的――じゃなくて、バカなこと、言わないでよっ!」
「本音がだだ漏れですよミミさん……」
「えー……じゃあ、ミミさんは引き受けてくれないの?」
「と、当然よ……と言いたいところだけど……メルル姫のたっての願いとあれば、無下には出来ないし、どうしてもって言うなら……」
 そう言いながら、ミミはメルルにチラチラと視線を送る。
 とある一件からメルルは、ミミのトトリに対する本当の心を知っている。なのでこの視線に込められた意味を、メルルは十二分に理解できた。
「えっと……どうしても、ミミさんにお願いしたいです」
「そ……そう。それなら仕方ないわね。協力してあげるわ」
「先生もそれでいいですか?」
「うん。ちょっと驚いたけど、ミミちゃんと結婚式なんて、楽しみかも」
「た、楽しみ!? トトリ、それってつまり、どういう――」
 無事(?)に決まったモデル二人は置いておいて、メルルはフィリーと話を進める。
「フィリーさん。女同士の結婚式なんて、どうするんですか?」
「本当はダブルウェディングドレスを見たいところだけど、今回はモデルとしてやるわけだから、ミミさんにはタキシードを着て男装してもらうの」
「なるほど……ミミさん、かっこいいし、似合いそうですね」
「でしょう! そしてなによりその隣に立つのは純白の花嫁衣装に身を包んだトトリちゃん……ああんもう! 想像しただけでどうにかなっちゃいそう!」
「どうにかなるのはアトリエの外でお願いしますね。頼みますから」
「それじゃ私、早速式場のオーナーと打ち合わせしに行ってくるね。ついでに衣装とメイクの手配もしてくるから」
「えっ、今から?」
 異常な行動力を発揮しているフィリーは、疾風のごとき勢いでその場を去って行った。


【アトリエシリーズ】ロロナのアトリエで百合
746 :名無しさん@秘密の花園[sage]:2011/06/28(火) 01:31:41.10 ID:3O4M8Khe
 数日後。結婚式(のモデル撮影)当日。
 気温は程よく、空は快晴。絶好の結婚式日和だ。
 式場内の新郎控え室。髪の毛を男性風に結って、細身のタキシードに身を包んだミミは、どこに出しても恥ずかしくない花婿になっていた。
「わぁ……予想以上にかっこいい……ミミさん、よく似合ってますよ」
「う……うん」
 緊張しているのか、ミミはメルルのほめ言葉にも上の空だ。
「失礼します」
 ノックをして入ってきたのは、人手不足のため手伝いに駆り出されているケイナだった。
「あ、ケイナ。こっちは準備万端だよ。先生は?」
「先程ドレスの着付けが終わりました。あとはヴァージンロードを歩くだけですよ」
「分かった。それじゃミミさん、行きましょう」
「ええ……」
 頷いたミミは、大きく深呼吸を何度か繰り返してから、控え室を出ていった。


 ミミの緊張はトトリのウェディング姿を見た瞬間、頂点に達した。しかし、撮影自体は式場のスタッフによって順調に進んでいく。
 まず二人並んでの写真を何枚か撮り、それから実際の結婚式の流れに沿いながらそれを撮影する。
 本来ならある程度省略して、要所要所の撮影だけすればいいのだが、約一名の受付嬢が本当の挙式と同じようにやるべきだと主張して譲らず、結局式場側が押し切られた。
 そのためにフィリーは、わざわざ新婦の父親役にステルクを、ベールガール&ボーイにちむちゃん達を連れてきて、おまけに自分は介添人を買って出る徹底ぶりだ。
 ちなみに、父親役と言われたステルクはかなりへこんでいたが、これはメルル姫の頼みでもあると言った途端、不必要なぐらい気合いを入れて引き受けてくれた。
 式は滞りなく進み、誓いの言葉まできた。
「新婦トトゥーリアよ。あなたは、健やかなる時も、病める時も、夫を愛し、夫を敬い、生涯この者を伴侶とすることを誓いますか?」
「はい。誓います」
 淀みなく断言するトトリに、ミミの体が熱くなる。
「新郎ミミよ、あなたは――」

 トトリとミミの結婚式を、メルルとケイナは参列者の席で見守っていた。
「フィリーさんがあんなこと言い出したときはどうなるかと思ったけど、なんの心配もなかったみたいね」
「そうですね……それにしても、お二人とも羨ましい……」
 ケイナはどこかうっとりした様子で式を眺めている。
【アトリエシリーズ】ロロナのアトリエで百合
747 :名無しさん@秘密の花園[sage]:2011/06/28(火) 01:38:24.68 ID:3O4M8Khe
「ケイナもやっぱりウェディングドレスって憧れる?」
「そうですね……一度くらい、着てみたい気がしますけど……」
「けど?」
「相手の方がいませんから」
「ええー、そんなことないでしょ。ケイナみたいに可愛くて家事全般得意で気立てが良くて、おまけに幸運まで呼び寄せる女の子、それこそ引く手あまただよ」
「そ、そんなことありません。仮にそうだとしても、私はメルルと――……」
「え、何? 後の方が聞こえなかったけど」
「な、何でもありません。ほら、お二人の式を見ないと」

 誓いの言葉は、緊張したミミが三回ほど噛んだぐらいで無事終わり、指輪の交換も、ミミの手が震えてなかなか指輪が入らなかったが、どうにか完了。
 そしていよいよ大詰め。
「では、誓いのキスを」
 厳かに司祭が告げ、ミミは深く呼吸をしてから、花嫁のベールを上げた。
 さすがにトトリも緊張しているのか、頬が微かに赤かった。
 ミミは体の震えをどうにか抑えて、自分の唇をトトリのそれに寄せる。
 そして――
「……え?」
「……あ」
「……あれ?」
 その場にいたほぼ全員が、あ然とした声を上げた。
「メルル、確か誓いのキスは……」
「フリだけでいい……って、ちゃんと事前に伝えてたんだけど」
 メルルとケイナの言う通り、フリだけのはずだったが、緊張のあまり聞き流していたか、それとも式の雰囲気に呑まれてしまったか、衆人環視の中、本当にトトリにキスしているミミだった。
「あ……」
 トトリの驚いた表情と、周囲の視線で自分のミスに気付いたミミは、今にも頭から湯気を出しそうなほど顔を赤くする。
「ト……トトリ、今のは、その……」
 弁解しようとするが、金魚みたいに口をパクパクするばかりで、言葉が出てこない。
「司祭様、早く結婚の宣言を!」
 フィリーに促され、司祭は固まっているミミとトトリの手を取って、慌ただしく結婚の宣言をする。
 その後の過程は略式にして済ませ、どうにか式自体は無事やり終えたのだった。


【アトリエシリーズ】ロロナのアトリエで百合
748 :名無しさん@秘密の花園[sage]:2011/06/28(火) 01:41:44.92 ID:3O4M8Khe
 新郎の控え室で、既に着替えたミミは、頭を抱えて落ち込んでいた。
「ああ……私としたことが、よりによって、あんな……あんな……」
「そう落ち込まないで下さい、ミミさん。うっかりしてただけなんですから、先生だって別に気にしてないですよ、きっと」
「うぅ……でも、気にしてなかったら、それはそれで、全く意識されてないみたいでショックだし……」
「そ、そうですか……」
 ならどう言って慰めればいいのかとメルルが悩んでいると、控え室のドアがノックされた。「あ、先生」
「ト、トトリ!?」
 控え室に入ってきたトトリを見て、ミミが体をこわばらせる。
「あ、あ、あの、さっきは、その」
「大丈夫だよ、ミミちゃん。怒ってないから」
 テンパっているミミに、優しく微笑むトトリ。
「いきなりだったからびっくりしたけど……そんなに気にしてないから」
「そ、そう……」
 トトリの言葉に、ミミは複雑な表情になる。
「それに、ミミちゃんなら全然嫌じゃないし」
「…………え?」
「それじゃあ私は先にアトリエに帰ってるね」
 パタリとドアが閉じ、トトリの足音が遠ざかり聞こえなくなる。
「嫌じゃない……それって……つまり……つまり……」
 ブツブツと呟いていたミミは、ふと思いついたようにメルルに尋ねる。
「あの……アールズの法律では、同性同士の結婚って」
「認めてませんよ、普通に」
 根深いミミのトトコンっぷりに、ため息を禁じ得ないメルルだった。


(おわり)

【アトリエシリーズ】ロロナのアトリエで百合
749 :名無しさん@秘密の花園[sage]:2011/06/28(火) 01:46:25.89 ID:3O4M8Khe
まだメルルそんなにやり込んでないけど、トトミミ一本書きたくなって書いた。
読んでくれた人、ありがとう。

最近徐々にSS増えてきて嬉しい。メルルを機にもっとアトリエの二次創作が盛り上がりますよーに。


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