- スイートプリキュア♪で百合7
407 :321[sage]:2011/06/09(木) 01:26:55.84 ID:67owjJAB - >>329の続きです。
遅くなってスミマセン。
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- スイートプリキュア♪で百合7
408 :321[sage]:2011/06/09(木) 01:27:53.47 ID:67owjJAB - 「まもなく13時05分発フランス行の搭乗手続きを開始いたします」
空港内に響くアナウンスに和やかなムードからしんみりとした雰囲気になった。 まだたくさん話したいことも、もっと触れ合いたい気持ちもあるけれど、グッと我慢して響を送り出す。 「…もう、行っちゃうんだよね」 「うん」 時計の針が進む度、言葉が少なくなる。 響も同じでなんともいえない沈黙がお互いを包んだ。 なんとかこの空気を変えようと響の為に作ったケーキを響に渡す。 「これ…よかったら飛行機の中で食べて」 「えっ?いいの?やった〜!!ん〜何のケーキかな?」 鼻歌を歌いながらケーキの箱を開けようとする響を必死で止める。 今ケーキの中を確認されたら私、恥ずかしくて死んじゃうよ… 「ちょっと、ここで開けないでよ!」 「えぇ〜、別にいいじゃんか〜」 「ダメ!!これは飛行機の中についてから食べて欲しいの」 「ちぇ、奏がそこまで言うなら我慢するよ…でも、しばらくは奏のケーキ食べれないのか〜…なんか寂しいね」 「寂しいのは私のケーキが食べれないだけなの?」 「そうだね、奏のケーキが食べれないのはすごく寂しいよ」 「ひーびーきー?」 「だって、奏のケーキが食べれないってことは奏とも逢えないってことだよ?」 響の言葉に嬉しさと恥ずかしさを感じて一瞬で顔が真っ赤になる。 「///…私も響と逢えないのは寂しいよ…」 お互い真っ赤になり、今日何度目か分からない沈黙が続く
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409 :321[sage]:2011/06/09(木) 01:29:25.03 ID:67owjJAB - それから思い出したように響は私の手を握りながら話す。
「///―あ、あのさ、私も奏に渡したいものがあるんだ」 「え?あ、うん…」 「えっと…あ、あった!奏、ちょっと目瞑ってくれる?」 「なんでよ?」 「まあまあ、いいからいいから、ね?」 「もう!…これでいい?」 「OK♪そのまま動かないでよ」 「きゃっ!!」 突然響に抱きしめられた。 なにが起きたのか分からなくて、響の腕の中でもぞもぞと動いていたら「動かないで!!」と怒られてしまった。 「できた!もういいよ」 「―!!響、これ…」 私の胸元には小さなダイヤが埋め込まれたペンダントがつけられていた。 ペンダントと響の顔を交互に見ていると満足そうに笑う響が私の頬を撫でる。 「うん、すごく似合ってる」 「あの…ひびき?」 「あげるよ、それ。ほんとは指輪がよかったんだけどね」 顔を真っ赤に染め、はにかみながら笑う響にどうしようもなく胸がときめいた。 「ばか…大切に、するから」 「うん。…それじゃそろそろいってくるよ」 照れたような笑みから悲しそうに笑う響にツキンと胸が痛んだ。 緩む涙腺を必死で押さえる。 響を笑顔で送ると決めたから…じゃないと、響が安心して行けないから… だから、今は、泣けない。 「気をつけてね…」 震える声を、泣きそうになる気持ちを心の底に押し付けて、小さく息を吸ってから今の私の最高の笑顔を響に送る。 「いってらっしゃい、響」 泣きそうな笑みを浮かべ、私の元へ一歩、二歩と近づいてくる。 そして三歩目で引き寄せるように私を抱きしめる。 「必ず迎えにくるから、だから、ちょっとだけ待っててね」 「うん、響が帰ってくるの待ってるから」 私を抱きしめていた腕が、ぬくもりが、匂いが、私から離れていく。 そして、目に涙を溜めながら響が笑顔で手を振る 「いってきます。奏」 響の後姿を見送りながら私も手を振る。 これから私と響は別々の道を歩いていく。 終わりでもあり、はじまりでもあるこの時を私は絶対に忘れない。
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410 :321[sage]:2011/06/09(木) 01:30:35.98 ID:67owjJAB - 「あ〜!!一番大事なもの忘れてた!!」
空港内に響の叫び声が響く。 それから慌てながら私の元へやってくる。 大事なものってまさか… 「チケット?まさかパスポート?」 心配してる私をよそに響は私との距離を詰めていく。 そして二人の距離がなくなったとき、唇に柔らかい感触が伝わる。 「――!!」 真っ赤になる私に響はまるでいたずらが成功した子どものように笑いながら耳元で囁く 「いってきますのチュウ♪大好きだよ奏、いってきます」 「ばか、ばか、さっさといってきなさいよ」 響の胸元を叩きながら恥ずかしさを紛らわす。 「たはは、連絡するからね」 響を叩いていると恥ずかしさが治まってきた。 少し強引に響を引き寄せると私も響の耳元で囁く 「うん、私も…響、だ、大好き…」 「うん…いってきます」 ゆっくりと離れていき、今度こそ出国ゲートをくぐっていく。 小さくなっていく響の姿に寂しさが募っていく。 響を想って泣かないと決めたのに、溢れ出る涙を、響がくれたペンダントを両手で握りしめ、必死で押さえる。
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411 :321[sage]:2011/06/09(木) 01:32:36.72 ID:67owjJAB -
―数年後― 「―加音町出身の北条響さんが国際ピアノコンクールで優勝しました。また、北条さんは別の国際コンクールでも優勝しており、今、世界がもっとも注目しているピアノ演奏家です―」 TVから流れる響のコンクール受賞のニュースに心が躍る。 「響、またコンクールで優勝したんだ。まったく、こういうことは全然言わないんだから…」 響のことがTVや雑誌で取り上げられる度に私は、響が私の知らない、遠いところで頑張ってる。私もまだまだ頑張らなくちゃ!と思う。 「さて、今日も一日頑張りますか!」 厨房へ向かうと今日のケーキの仕込みをはじめる。 カランコロン 開店直後の店内にお客さんの来店を告げるベル音が響く。 「いらっしゃ―まぁ」 「おや―」 「しー!」 本日一番乗りの女性は口元に人差し指を添えながら息を潜める。 その様子にこのお店のオーナーと若々しい女性店員はにこにこしながら奏のいる厨房を見る 「おっと、これは失礼。奏なら厨房にいるから…それと、今日はもう休んでいいって伝えてくれるかな?」 「ありがとう、おじさん、美空さん」 ひそひそと話し終わると足音を立てないようにゆっくりと歩いていく。 そして厨房の中へ入ると身を低くして、テーブルの上に並んでいるケーキをすばやくひとつ取るとそのまま口へ運んでいった。 「こら奏太!!また勝手にケーキ食べ―」 叱る奏がピタリと止まる。それから信じられないといった顔へ変わっていく 「ん、おいしかった♪奏は変わらないね〜、なんか中学の時を思い出すよ」 私の声に奏は止まっていた思考を動かし始めたようだ。 そして確認するように私の名前を呼ぶ 「ひ…びき…?」 「うん、ただいま」 「ほんとに響なの?」 まだ信じられないみたいで何度も何度も私の名前を呼ぶ。 「うん、迎えにきたよ。奏」 私が両手を広げて奏の名前を呼ぶと、持っていたボウルや泡立て器をテーブルに置くと飛び込むように抱きついてきた。 優しく抱きしめると奏のからだが微かに震えている。 「おっと…奏、泣いてる?」 「ばか…連絡ぐらいよこしなさいよ」 静かに涙を流す奏になんだか申し訳なくて素直に謝った 「ごめん」 「響が連絡くれなかったから苺のショートケーキ作ってないよ」 「えぇ〜、そんな〜」 口を尖らせながらブーブー言ってるとなだめるように奏は私の顔を撫でる。 「後で作ってあげるから…おかえりなさい、響」 「うん…ただいま、奏」 誰もいない厨房で惹かれあうようにキスをした。 久し振りに感じる奏のぬくもりに心がじんわりとあたたかくなった。
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412 :321[sage]:2011/06/09(木) 01:34:58.07 ID:67owjJAB - ―おまけ―
「そうそう!あの時飛行機で食べてっていってたケーキに入ってた手紙―」 「な、な、な、何のことかな…?」 「だーかーらー、ケーキと一緒に貰った手紙だよ」 「言わないで…お願い…」 「なんで?」 「なんででもよ」 「どんなに離れてても私は―」 「わわわわ!やーめーてー」 「ぷっ、奏、顔真っ赤」 「うるさい…」 「奏、今まで寂しい思いや不安な思いをさせてしまったけど、これからはずっと奏の傍にいるから。悲しいことも、楽しいことも、たまにはケンカしちゃうかもしんないけど、二人なら絶対に乗り越えられるから。だから…私と一緒に大切な時間を過ごしてくれませんか?」 「ばか…ばか、ばか。ばか響…そんなの、そんなのいいに決まってるじゃない!」 「うん」 「私だって、響といろんなこと感じたい。響がつらいときも、寂しいときも。楽しいときも幸せだと感じるときも、響と一緒に感じたいの…」 「うん…二人でいろんなこと感じていこう、奏」 「ひびき…」 -END-
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413 :321[sage]:2011/06/09(木) 01:40:01.55 ID:67owjJAB - 仕事が忙しくてなかなか進みませんでしたが何とか完結しました。
不思議ですね、仕事が忙しいときは書きたいネタがポンポンと出てきてたのに落ち着くとなかなかででこない… しかもそのネタはあまり覚えていないという… それでは長々と失礼しました。 最後に スイートは最高です。もうスイートなしでは生きていけないかも…
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