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280 :名無しさん@秘密の花園[sage]:2011/06/05(日) 21:22:02.53 ID:IE3E2FcC - また数レスだけいただきます。
最近偏食気味なので、今回は別の組み合わせで。
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281 :名無しさん@秘密の花園[sage]:2011/06/05(日) 21:23:53.72 ID:IE3E2FcC -
「トオルン〜!」 「わっ…、ユタカ!」 とある朝、私が登校するとユタカがまた性懲りもなく、トオルさんに擦り寄ってた。 トオルさんの小さな頭を抱きかかえて、身体をスリスリさせている。 私は仕方なく、溜め息混じりにユタカを制した。 「ユタカ、トオルさんが嫌がってるでしょ。いい加減に離れなさい!」 「え〜っ、私とトオルンは愛を確かめ合ってるんですよー!」 「あんたの一方通行でしょうが!」 「嫌ですよ〜、まだ3分経ってな、うきゃっ!」 私はいつものようにユタカの茶色頭にチョップする。 ユタカみたいな直情タイプは事あるごとに躾けないとエスカレートするからねっ。 でもそのとき、何を思ったのか、ユタカが急に目を開いて、私を凝視し始めた。 「…ミポリン」 「何よ…?」 普段ユタカが見せない神妙な表情に、私は思わずたじろぐ。 私、変な地雷でも踏んだ…? すると、その数秒後にユタカがいつもの満面のデフォルメ笑みでこう呟いた。 「もしかして、嫉妬しちゃってます〜?」 「はっ!?」 「私とトオルンが身を寄せ合うまでの仲になっちゃったから、ミポリンが嫉妬しちゃってますよー!」 「そ、そんなワケないでしょっ!!」 顔を真っ赤にした私は腕を組んで、そっぽを向いた。 もうっ、これじゃ私がホントに嫉妬してるみたいじゃない…! ユタカが嬉々として騒いでいた間、終始無言だったトオルさんまでもが、 「…ミホ、嫉妬してるの?」 「ち、違うわっ、トオルさん誤解しないで!」 「あっはっは〜、ミポリンが照れてます〜っ、可愛、ぽぎゅっ!?」 壊れたスピーカーみたいにやかましいユタカの脳天に、私はさっきの百倍くらいの威力でチョップを叩きつけた。 頭から煙をあげながら、ユタカが地べたに萎んでいく。 「もう、ユタカなんて知らないんだからっ!」 私は頬を膨らませながら、自分の席にズカズカと戻る。 視界の端には、目を回すユタカの傍で居心地悪そうに右往左往しているトオルさんが見えていた。
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282 :名無しさん@秘密の花園[sage]:2011/06/05(日) 21:27:26.79 ID:IE3E2FcC -
放課後の教室。夕焼けが眩しい窓際で、私はひとり佇んでいた。 窓の外には、いつもの先輩たちと仲良く帰っていくトオルさんの姿が見えていた。 そのとき、私の視線がトオルさんの視線とぶつかる。私は思わず、顔を逸らしてしまった。 「私、バカだな…」 朝の騒動から放課後まで、私は徹底的にユタカを避け続けていた。 いつもユタカと組む体育の準備体操は他の友達と組んでいたし、教室移動もそうだった。お昼ご飯のときも…。 ときどき、トオルさんが心配そうな視線を送ってきたけれど、私は口を固く結んで何も反応しなかった。 もう高校一年生なのに、我ながら子供じみたことをしてるなと思う。 「(どうして、こんなに意固地になってるんだろう、私…)」 ユタカが謝ってくるのを待ってる? トオルさんが仲裁してくれるのを待ってる? …それとも? 「はぁ…」 窓に片手を当てながら、深い溜め息をつく。すっかり袋小路だ。 とにかく、明日からどうやってユタカに対すれば良いのか、考えるしかない。 暗く沈んだ気持ちのまま、そろそろ帰ろうかと心に決めたそのとき、 「!」 カラカラと、教室のドアが静かに開いた。 肩を震わせて振り返ると、そこには一番会いたくなくて、一番会いたかった女の子が立っていた。 私よりも背が小さいけれど、明るくて天真爛漫な私たちのムードメーカー。 「はぁ、はぁ…ミポリン」 息を切らしつつも、申し訳なさそうな顔を浮かべた、ユタカ。
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283 :名無しさん@秘密の花園[sage]:2011/06/05(日) 21:29:08.57 ID:IE3E2FcC -
「…もう帰ってたと思ったわ」 「私もミポリンはもう帰ってると思ってたんですけど、今さっきトオルンから…、」 そういえば、さっきトオルさんと目が合ったんだった。 たぶん、その後にすぐトオルさんがユタカにメールしたのかな。 「…あのさ、ユタカ」 私はユタカの反応も待たずに、胸に手を当てながら呟いた。 「私、やっぱり嫉妬してたのかも…」 ユタカが私に会いに来てくれたという事実が、私の心の整理をしてくれたのかもしれない。 自分でもびっくりするくらいにすんなりと、私は本心を吐露することができていた。 こんなことで頭を悩ますのは、他の人から見たらとてもくだらないことかもしれない。 それでも、私にとっては大事なこと。 「…」 ユタカが何て返してくるかが不安で、私の心は揺らいでいた。 だからこそ、 「ミポリン…!」 ユタカが私に抱きついてきたとき、あまりの衝撃に意識が飛ぶかと思った。 「ゆ、ユタカ?」 私より背の低いユタカの頭、髪の毛からユタカの香しい匂いが漂ってくる。 その影響もあってか、私はぎこちなくユタカの背中に手を回した。 ユタカの身体は驚くほどに暖かい。きっと、走ってここまで来てくれたんだろうな。 「ミポリン、私はミポリンもトオルンも大好きです」 「…」 「だから、嫉妬なんてしないでください」 「…ユタカ」 「私とミポリンは二人で一つ。一心同体ですから」 本当にユタカらしい、飾り気のない真っすぐな言葉だった。 互いの鼓動が互いに伝わる。互いの想いが互いに伝わる。 「でも、ミポリンが寂しいっていうのなら、私はこんな風にいくらでもミポリンを抱きしめてあげます」 「…うん、ありがとね」 そう小さく呟いた後、 私はユタカの頭に鼻をうずめ、肺がいっぱいになるくらいに息を吸った。 やっぱり、私はユタカが好き。
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284 :名無しさん@秘密の花園[sage]:2011/06/05(日) 21:32:08.83 ID:IE3E2FcC -
そんな歴史的和解から数分後。 夕焼けが帰宅生徒の背を照らす帰り道、 私とユタカは年甲斐もなく手を繋ぎ、二人並んで歩いていた。 ふとユタカが私の手を解いて、前に踏み出る。そして背を向けたまま、 「ミポリン、私、二つだけ再確認したことがあります」 「…何よ?」 妙に思わせぶりな態度をとるユタカに対して、私は目を瞬かせながら問う。 すると、ユタカはくるりと振り返り、燦々とした笑顔を向けてきた。 思わず、目を逸らしたくなるほどの眩しさで。 「ひとつは、私はやっぱりミポリンが大好きってことですっ」 「…ばか」 私は頬を掻きながら、呟く。 やっぱりユタカはばかだ。何の恥ずかしげもなく、恥ずかしいことを言う。 こっちが照れてしまうほどだ。 私はユタカのこういうところが嫌い。でも好き。 そんな想いを巡らす私の様子を見て、ユタカは満足気に頷いた。 そして、再度口を開く。 「そして、もうひとつは…さっきミポリンに抱きついたときに思ったことなんですが、」 ユタカが私の胸をビッと指差して、威風堂々、言い放った。 「ミポリンはやっぱりド貧乳だってことです!!」 次の日、ユタカは全身打撲で学校を休んだ。
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